まぁそれはさておき。無事最新号も発刊に漕ぎ着けたことだし、掲載してある自分担当のインタビュー後記をつらつらと書き連ねてみようと思う次第です。実際のインタビュー記事を読了後にご一読頂ければこれ幸いであります。
■フラワーカンパニーズ
11月はツアーに出突っ張りということで、11月号校了直後の10月末に強行取材。市ヶ谷ソニー、メンバー4人勢揃い。そう、次作はトラッシュではなく7年8ヶ月振りのメジャー復帰作なのである。
さっぱりCDが売れないこのご時世に、齢40にもなろうというおっさんバンド(失礼)がまさかのメジャー返り咲きだなんて、何とも夢のある話じゃねぇですか奥さん! 数ある音楽系フリー・マガジンの中でもとりわけシニアに優しいRooftopはもちろん手厚くフォロー。今回のメジャー復帰に懸けた意気込みとロックンロールの終身刑の身になった4人の男たちの音楽に対するたぎる思いを余すところなく聞いてみた。表紙巻頭に据えている某液体雑誌のインタビューに比べて格段に面白い自負あるです(笑)。
これは余談だが、俺がかつて働いていた会社は入社当時このフラカンと斉藤和義さんがマネジメント部門の二大柱で、本社ビルの垂れ幕でもこの両名が大々的に宣伝されていた。その話を振った後の圭介さんの名回答にも注目。確かにまだ音楽業界はバブリーでしたよね。
最新作の『たましいによろしく』、お世辞抜きですこぶる良い。過剰に枯れることなく、キレの良いロックンロールをしなやかに奏でるこの滋味に富んだ境地はやはりアラフォーなフラカンならでは。掛け値なしの傑作。
そう言えば、圭介さんは同じタイミングで単行本も出したんですよね。えーと、タイトルはと…ナニ、produced by Jui…。ほぅ。何も見なかったことにしよう(笑)。
■キウイロール(蛯名啓太:現ディスチャーミング・マン)
キウイロールに対する個人的な思いは本誌のインタビューを読んでもらうとして(暑苦しいのでここでは割愛)、何よりもまず長らく廃盤の憂き目に遭っていた彼らの音源が2枚にわたる編集盤として世に出ることをkocoroから嬉しく思う。そのリリース元が他ならぬセクレタ・トレーズ(ナートのセイキさんが主宰するインディペンデント・レーベル)なのもファンとしては安心で、事実、質実ともにとても愛の籠もった作品となっている。ZKから出ていた諸作品が余りに法外な値段でオークションで取引されているのを見て悲しい気持ちになったが(メンバー自身が一番悔しかっただろう)、それも今回の編集盤が出ることで解消されるだろう。
そんなキウイロールのインタビュー。当初はボーカルの蛯名君だけでなくギターのオグ君かベースのサンチェ君を交えた対話を希望していたが、結局蛯名君とのタイマン語りと相成った。
こういうすでに存在しないバンドのインタビューはバランスを取るのが難しくて、たとえば解散のくだりになると各人の言い分があるし、誰かが不在ならばどこか欠席裁判的なアンフェアな匂いを拭えない。本当はそこを避けたかったのだが、結果的には蛯名君単独のほうが話がブレず、良かったと思う。
蛯名君にはその前の週にもディスチャーミング・マンのレコーディング現場で会っていた。その時に「来週のインタビューよろしくね」という挨拶がてら、今回のオムニバスについていくつか訊いてみたいことを先走って訊いてしまった。が、あくまでそれはそれ。公式の場での発言がすべてなので、事前に訊いてしまったことも含め、改めてじっくりと話を訊いた。
インタビューの前日はアルバムの完成打ち上げを朝までやっていたらしく、夕刻に代々木のルノアールへ到着した時の蛯名君はその疲れがまだ残っていた様子。本誌のインタビュー後に別誌のセイキさんとの対談が控えており(蛯名君はそのまま札幌へ帰郷)、時間を思いのまま使えるわけではなかったが、それでも1時間以上にわたってあれこれ話が訊けた。
インタビューの途中、蛯名君からこんなことを言われた。
「なんか結構ぶっちゃけた話になってきたなぁ…まぁ、椎名さんもそういう話が好きだと思うから話すけど…」
まるで旨味のある話に群がるハイエナのような言われ方だが(笑)、インタビューアとしてはしてやったりの瞬間だ。相手がこちらにある程度の信頼を置いてくれた表れなのだから、心の中でガッツポーズである。これぞインタビューの醍醐味なり。
セクレタ・トレーズのスタッフの話によると、蛯名君が今回のオムニバスについて語り尽くしたインタビューは本誌のみらしいです。『FOLLOW UP』には蛯名君の全曲解説記事があるみたいだけど。かつて『迷子の晩餐』を見るためにシェルターに足繁く通っていた同志の皆さんには是非読んで頂きたい。キウイ解散に至るくだりは、自分で原稿をまとめていてとても辛かったです。
写真は取材中の蛯名君。前日までの呑み疲れは窺えたが、ディスチャーミング・マンの新作を録り終えて晴れ晴れとした表情だったのが印象的でした。(しいな)