10月号の編集後記にも書きましたが、俺はビートルズというデビュー以来47年間に渡り全世界で愛され続ける不良どものお陰で人生を踏み誤った男であります。当時ビートルズの極東における版権を持っていたからという理由だけでシンコー・ミュージックなどという出鱈目な会社に入社してヤクザな編集稼業に手を染め、人生の裏街道をひた走るようになってしまったのです。ビートルズに関しては解散後の各メンバーのソロ諸作も当然マストで聴き込み、ブートもソロを含めて散々買ったし、関連本も散々買い漁りました。終いには作る側にも回って駄本作りに資源の無駄使いをしてしまったけれど。わははは。
そんな性分なもので、今回のオリジナル・アルバム一挙リマスター化に関しても否応なしに付き合わざるを得ないのです。ポールもリンゴもヨーコさんもオリビアもオッケーを出している音源ですからね。だがしかーし。オリジナル盤全13枚に編集盤『パスト・マスターズ』2枚組をバラで全部買うだけで38,600円(すべて日本盤、1枚につき2,600円、2枚組は3,700円)。これに上記14アイテムとミニ・ドキュメンタリーDVDを収録したボックス・セットが35,800円、更にモノラル盤を収録したボックス・セットが39,800円…要するに全部を買うとなると114,200円掛かるわけです。あいにくコチトラ引越しして赤貧の極み。とてもじゃないが買えん。それで致し方なく、ひとまずバラ売りのオリジナル・アルバムを月一で自分のご褒美として買うことにしました。んー、何ともいじらしい…。自分で言うなよって感じですが、昔はそうやって少ない小遣いでせっせと買い揃えたもんです。ちなみに俺の持っている『ビートルズ・フォー・セール』は中古のアメリカ盤。これだけ国内盤でない。理由は単純に安かったから。対訳や解説も読みたいから日本盤が良かったんだけど、中学生の時分だと背に腹は代えられない時もあるんです。それゆえ国内盤は買わずに早22年が経過なのです。
というわけで、先日ようやくファースト・アルバムの『ブリーズ・プリーズ・ミー』を買いました。パッケージとしては非常に味気なかった以前のCDと違って、画像が鮮明になった写真も豊富なアートワークがまず嬉しい。肝心な音ですが、全体的に歌とコーラスが随分と前に出て聴こえると言うか、クリアになった印象。クリアになり過ぎて『ミズリー』のコーラスが微妙にズレているのを感じたりもするし、『プリーズ・プリーズ・ミー』でコーラスが間違っているのを発見できたり、『アンナ』のジョンの声の残響が凄く広がっていてライブ感が異常にある。あとベース。音の粒が塊となって跳ねまくっている感じ。この辺はポールがだいぶ口を出したのかなぁ。白眉はラストの『ツイスト・アンド・シャウト』。元から名演ですが、ジョンの唄いっぷりが鬼気迫るものとして実感できます。トータル的に言えば、確かに以前のあの音のこもりは何だったんだという気がするし、各パートやハーモニカの音の分離は凄まじく良い。アビイ・ロードのプロジェクト・チームはいい仕事してると思うし、これならこの先買い揃えようという気にもなった。ただ、従来のCDでもオッケーっちゃオッケー…な気もする。稀代の名曲と名演は古いCDでも充分に堪能できるのだから。個人的にはその程度のブツかなと。俺は気に入ったので買い続けますけど、既にお持ちの方は別のCDにお金を落としても何ら問題はないと思ったです。
俺としては、このデビュー・アルバムが47年前に吹き込まれたもの…ほぼ半世紀前の音源であることに今回気づいて、何だかそっちのほうが感慨深かったです。中学生の時は発表からまだ四半世紀前の作品だったのに。そりゃこっちも必死こいて白髪染めしたりするようになるわな。陰毛に白いのが出たら染めるのはやめようと思ってますけど。ははは。でも、この歳になってまた改めてビートルズのアルバムを1枚ずつ買い揃えていくのも何だか悪くない。あの頃みたいにピュアなマインドを取り戻せそうな気もするし、今は自分が信じられたものをもう一度確認する時期なのかもしれんです。(しいな)
posted by Rooftop at 00:03
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