光と闇が交錯する人生を往くすべての人に捧げる、愚直なまでに赤裸々で真摯な詩
何の因果か、このページにふと目を留めたあなたは幸運な人だ。ここ最近どんな音楽を聴いても感受性がさっぱり応答しないとあなたがお嘆きならば、尚のことラッキーだ。このインタビュー記事が、ANOYOという特異なポエトリー・リーディングを全面に押し出したユニークなバンドをあなたが知るきっかけになるのなら、こんなに嬉しいことはない。このページに掲載されている不可解なアーティスト写真や珍奇なジャケット写真に決して惑わされないように。これは生きることに直結した、余りに赤裸々な詩を聴かせる彼らなりの照れ隠しなのだと僕は思う。平易な言葉で日常の混沌と憂いを描出し、それを明るいエネルギーに転化する原田の歌声と、確かな技術に裏打ちされたバンド・アンサンブルが音の塊となって混濁する様は得も言われぬ昂揚感をもたらす。ライヴで感涙を催すこと必至の大作「24区」が重いテーマを孕んでいるだけに、ヴォーカルの原田大輔が書く詩と世界観につい心を奪われがちだが、デビュー・アルバム『リカオン』には何処にも属さない(属せない)未曾有の音像と日本語ロックの新たな可能性が満ち溢れていることに注目して欲しい。「歌は世につれるが、世は歌につれない」とは山下達郎のけだし名言だが、ANOYOは世が歌につれないことを充分に認識した上で音楽という表現の可能性に懸けている。その姿勢が愚直なまでに真摯だからこそ、“俺達は一人じゃないんだ”というありふれた言葉が強固なリアリティと共に僕達の心に深く突き刺さるのだ。(interview:椎名宗之)
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