反比例しない初期衝動と飽くなき表現の追求
── 極上の総天然色サウンドが辿り着いた新たなる地平
次のフル・アルバムは自らのバンド名を冠したものにするというかねてからの“公約”を、アーチン・ファームが遂に果たした。来たるヴァレンタイン・デーに、彼らは満を持して『URCHIN FARM』というメジャー移籍後初となるオリジナル・フル・アルバムを発表する。洋の東西も今昔も問わず、自身のバンド名がタイトルとなっているアルバムに駄作がないように、本作がモノクロームから虹色まで変幻自在の総天然色サウンドを生み出すことに全身全霊を注いできた彼らの最高傑作であることは改めて言うまでもないだろう。 このインタビューを終えて彼らと雑談をしている最中、バンドとしての道程を山に喩えるなら今はどの辺りを歩いていると思うか? という僕の何気ない問いに、リーダーのMORO(g, cho)は「まだ登っている感じはしないですよ。山を登る武器を手に入れて、ようやくすべての準備が整ったところです」と凛々しく答えた。その“武器”とは、楽曲のクォリティや演奏力の高さばかりではなく、サポート・メンバーだった○貴(key, cho)が正式に加入したことによって得たバンドの確たる音楽性とメンバー間の絆の深さ、そしてすべての迷いを払拭した末に勝ち取った揺るぎない自信なのではないか。バンド結成当初の抑え難い初期衝動と一切の妥協を排して表現と対峙するその姿勢を携えたまま、彼らは軽やかにその第2章の幕を開けようとしている。僕には、愚直なまでに自分達にしか創れない音楽を模索し続けてきた彼らに音楽のミューズがやさしく微笑みかけているように思えてならない。(interview:椎名宗之)
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