ロックンロールの本質を浮き彫りにする明暗と陰影
その昔、村上龍が村上春樹との対談集『ウォーク・ドント・ラン』の中で“三作目で飛べ”と自身に言い聞かせるように語っていた。曰く、「処女作は体験で書ける、二作目は一作目で習得した技術と想像力で書ける、体験や想像力を使い果たしたところから作家の戦いが始まる」と。その作家論に従うならば、Lonesome Dove Woodrowsにとって三作目となるフル・アルバム『Chiaroscuro』〈キアロスクーロ〉において、彼らは彼らにしか成し得ぬ娯楽性の高いロックンロールを遂に確立したと言えるだろう。絵画における漸進的諧調により立体性を表す明暗効果をその音楽性に導入したことで、極めて多彩かつ多才なバンドであることを彼らは見事に証明してみせた。色彩の濃淡はおろか、その気になればモノクロームを総天然色に染めることもできるロックンロール。その懐の深さを余すところなく伝える傑作アルバムの誕生だ。(interview:椎名宗之)
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