ギター バックナンバー

DISK RECOMMEND ('08年04月号)

LOFT PROJECTのスタッフがイチオシのCD・DVDを紹介!!
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★以下のジャケットをクリックすると、各レビューが読めます。

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UNCHAIN / rapture

RZCF-77005 2,730yen(tax in) / IN STORES NOW

光り輝き続ける新世代ロックの名盤、ここに誕生

96年結成にして初のフルアルバムとなるUNCHAINの『rapture』は実に多彩で多才な14曲の楽曲で構成された記念すべき集大成的名盤だ。その内容は既発のミニアルバムとシングルで魅せた様々なタイプの代表曲6曲と新たに書き上げた新曲8曲をバランスよく配置、融合し旧譜からの楽曲が新曲と違和感なくすんなり聴ける、全体像としては全くの新しい作品と言っても過言ではない出来映えとなっている。元々同世代のバンドの中でもどこか異質なロックを奏でていたUNCHAINはもちろんその根底にあるだろうソウルやファンクの匂いをプンプン感じさせるのだけれども、明らかにそれらとは違った音楽、それはソウルをロックに取り入れようとしたのではなくソウルフルなロックを奏でた、そう、内面から滲み出るソウル感が自然とロックの中に溶け込んで新しいロックを作り上げ異彩を放ち始めたのだと思う。そのソウルフルなロックが満載なのがこの“歓喜”と名付けられたアルバムなのである。“春”の高揚感をテーマにし、UNCHAIN節満載の爽快なナンバー『Signs Of Spring』(M-1)ではスタートするこのアルバムは全編に“光り輝く”というキーワードを散りばめ全体的に明快なイメージを持たせている。その代表的な1曲が続くリードトラックとなっている『Let Me Be The One』(M-2)であり、これまでのUNCHAINが持つ全てを更に濃厚にした1曲、聴くもの全てに幸福を齎すこと間違いなしな楽曲に仕上がっている。その『Let Me Be The One』を“陽”とするならば良い意味で“陰”な楽曲が続く『Don't Need Your Love』(M-3)であったりする。“陰”とは言いつつも彼らのバックボーンとなる多彩な音楽性からその雰囲気を微塵も感じさせないところがUNCHAINの持ち味であったりする。これらの3曲が本人たちはUNCHAINの3つの顔と評していたが決してそれだけに留まらない。まだまだ色んな顔、色彩を持つ楽曲が続いているのだから。例えばこのアルバムでは異色とも言えるソウル色強い『Life Is Wonder』(M-7)であったり、UNCHAINの楽曲の中では珍しくロックテイストな『Quarter』(M-11)であったり。またほぼ全ての詞/曲を手がけているのがヴォーカル/ギターの谷川であるが、その中でギターの佐藤が作った2曲『Precious』(M-4)「Always Shining」(M-10)がアルバム自体を一辺倒にしない良いアクセントを与えている。ここまでアルバムのことを散々語った上で、今一度UNCHAINというバンドの音楽性を表す言葉は何だろうと考えたのだがやはり一向に思いつかない。一見ストレートでシンプルなロックを奏でたかと思えば、捻くれまくったファンクネスな楽曲があったり、ラテンフレイバーなリズムを取り入れた楽曲であったりどうやったらこういう音を奏でられるのかが全く以て理解不能なのである。誰にも真似が出来ない、言わば“UNCHAIN”という音楽なのだろうなということで自分自身を納得させるに至った。これからも色んな音楽の良いところを全て吸収し新しい音楽を作り上げていくのがUNCHAINであり、その持ち前の創造性豊かなポップセンスで新たな世界を作り上げていくことだろう。次なるステップが非常に楽しみである。


(植村孝幸)


宇多田ヒカル / HEART STATION

TOCT-26600 3,059yen(tax in) / IN STORES NOW

最新アルバムが3月に発売になり、アルバムタイトル同名の曲も、劇場版ヱヴァンゲリオン、カップヌードル、他タイアップに使用されている曲も、街のあちらこちらでかかっている。本当に何故なんだろう。家で聴こうが、歌舞伎町で聴こうが、どこで聴いてもその曲の透明感が揺るがないように思うのは。
ファンだからそう感じるのか、自問自答するけれど毎回リリースがあるたびにそう思う。その揺るがないという印象は、歌詞にも。アルバム収録曲でカップヌードルとタイアップの『Kiss&Cry』の歌詞に「日清カップヌードル」という単語がある。パッケージも味もすぐに想像できてしまう、私には所帯じみた印象の言葉だけれど、曲を聴けばその曲の一部。曲は所帯じみてなんかいない。音と言葉が溶け合った、透明で大きな力を持つ何かの力として頭に残る。そんな力がたくさん詰まっている1枚を手にできた充実感。宇多田ヒカルのアルバムを買う時はいつもこの気持ちを味わって、堪らない気持ちになる。
通して聴くとまた格別であったりして。10曲目の『テイク5』はぶつっと終わって『ぼくはくま』に流れる。なんでぶつっときれたのか、『テイク5』の歌詞を見るとその意図がわかったような気がして、また堪らなくなる。こんなにいくつもの堪らない充実感が数千円で買えるというのはどういうことなんだろう。ああ。


(斉藤友里子)


エレファントカシマシ / 桜の花、舞い上がる道を

UMCK-5193 1,000yen(tax in) / IN STORES NOW

昨年末からシングル・アルバムとリリースラッシュのエレファントカシマシが今春、さらに壮大な楽曲を発表した。「桜」をテーマに、というよりは桜を人生に例え繋げた春にふさわしい、明日に向かって歩き出すすべての者への応援賛歌。必ず巡って来る「春」。もちろん四季のひとつであり、それを人生に置きかえてもスタートの季節・時期といったイメージがまず浮かぶだろう。そんな、世が華やぎ胸おどる季節に、背を向けうつむき避けていたこともある…コレも誰もが経験し得る「春」であろう。そんな人生の難儀さに、「きのうまでより、今日、いまからがすべてのスタートなのだ。」「過去は超えられる。輝く明日が待っている。」と、力をくれる。初っ端、歌い出しからグッとココロを掴まれる。さらにサビの印象強さと、宮本の歌の力強さ。一曲に注がれたそのすべてで、これからも歩み続け生きていかなければならない我々を大いに励ます。これまでのエレファントカシマシの楽曲でももちろん四季は沢山表現されてきたが、「春」を、「桜」を、じつに前向きな気持ちで聴く者をも輝ける未来へ導いてくれるこの曲は、さまざまな経験・生活を重ねてきた今の宮本だからこそ生まれてきたのだろうと、私は、思う。
人生を歌っている、恋愛を歌っている、日々を歌っている。自分を超え、未来にはきっとなにかが輝き待っている。行こうじゃないか!と。


(Naked Loft:川上恵里)


ALMIGHTY BOMB JACK / YES!

TFP-ABJ0001 1,260yen(tax in) / IN STORES NOW

地元名古屋で絶大な人気を誇る実力派スカバンドALMIGHTY BOMB JACKが、日本全国に様々な作品を発表しているデザインプロダクション<TERRY FUNK PRODUCTS>とタッグを組んで企画した盤がこの作品である!何故に高須クリニックをモチーフにしているのかは不明であるが、アッパーなタイトル曲を始めM-2やM-3のスカチューンでは思わず首が動き出してしまう始末。またM-4のファンクチューンではもれなく腰が動く始末である。そして名古屋でCMソングにもなった、彼らのキャッチーな代表曲『SMASH THE REALITY』も収められているのがたまらない。いろいろな要素を組み込んだサウンドが魅力のALMIGHTY BOMB JACKではあるが、本作では正に原点回帰とも言える勢いとノリがシンプルに感じ取れ、楽しさ大好きなファンは必聴の1枚になるであろう。そうそう、自分も間違えてしまったのだがCMソング収録と記してあるこの作品。決して高須クリニックのCMソングではありません。ご注意を(笑)。


(TIGER HOLE:ISHIKAWA)


CAVALERA CONSPIRACY / infikted

RRCY-21301/ IN STORES NOW

ブラジルの至宝カバレラ兄弟がステージで一緒に演奏した!そんな奇跡のようなニュースを聞いたのがたしか2006年だった。それから2年。なんとカバレラ兄弟が再びタッグを組み、アルバムを作ったのである。それがこのCABALERA CONSPIRACYMの『infikted』である。この兄弟は『ルーツ』という大名作を作っているが、このアルバムはそれよりももっと初期のオールドスクールなスラッシュメタルが全開である。そう、みんなが待っていた『ビニース・ザ・リメインズ』や『アライズ』のような! ギターの奴も凄い巧いし、まったくもって言う事無しのこのアルバム。メタリカをサマソニに見に行ったおっさんにもSOULFLYやSLIPKNOTとか大好きな若い子にもおすすめです!ライブが激観たいので関係者の誰かLOUDPARKとかによんでくださいー。
ちなみにイゴールは金髪のイメージがあったんですが、いつの間にか大仏様の様になっておられてびっくりしました。そんなイゴールと俺は同じ誕生日です!


(下北沢SHELTER:ゴミ カバレラ)

   
   

CHRIS WALLA / FIELD MANUAL

BARK69 輸入盤 / IN STORES NOW

Death Cab for Cutieのキーボード、コーラス、プロデュースもしている、いわばバンドの司令塔というCHRIS WALLAのソロアルバム。同じくDeath Cab for CutieのメンバーがやっているバンドでPOSTAL SURVICEがありますが、やはりこちらの方がバンドの中心人物のソロ、というだけあってDeath Cab for Cutieに近いですね。というかデスキャブではヴォーカルではないはずなのに声や歌いかたもモロ、みたいな曲もありますがギターがDeath Cab for Cutieに比べて出てる感じがします。まあジャンルの名前のというのはあまり使い過ぎるとカッコ悪いとは思いますが、実際会話では結構出るもので、じゃデスキャブみたいなバンドはなんだろう? インディーロック? インディーじゃないし。ギターポップ? 古いっぽい。とか思ってましたが、どこか雑誌かなんかで“USネオギターポップ”という言葉が出てて、ああ“ネオ”、確かにそうかも知れないなあ、と思いました。


(LOFT RECORDS/TIGER HOLE:オオサワシンタロウ)


 

KEMURI / ラスト・ライヴ・DVD「ALIVE 〜The Last Show“our PMA 1995〜2007”〜」

IOBD-21040〜1 6,090yen(tax in) / IN STORES NOW

昨年12月9日、約10年以上に渡り、日本のスカ・パンクシーンの代表といえる活躍をしてきたKEMURIがZepp Tokyoにて、その終止符を打った。本作品[Disc 1]にはラスト・ツアー最終日のZepp Tokyoでの模様を余す所無く、36曲にも及ぶ模様を完全収録している。当日会場に足を運んだ人、惜しくもチケットを手に入れる事の出来なかった人、全ての人達があの日に起きた感動と興奮で胸を熱くする作品となっている。[Disc 2]には解散宣言から、アメリカでのレコーディング、そしてファンの事を第一に考えた2度に及ぶ全国ツアー、夏フェス等と約1年間密着したドキュメンタリーとなっており、ナレーションはKEMURIの大ファンである俳優の佐藤隆太氏が担当している。ボーナストラックも収録され、ファンにとっては感動モノの豪華作品となって届けられている。沢山の人達が、音楽という枠を越えてpositive mental attitude=肯定的精神姿勢という前向きすぎるメッセージに助けられたか。その数は計り知れない。そんな彼等の集大成を是非とも体感して欲しい。自分自身を振り返ると共に、その心強さを忘れないで欲しい。そして、今後の彼等の活動にも注目していきたい。


(下北沢SHELTER:平子真由美)


  

KEN YOKOYAMA / Third Time's A charm

PZCA-38 2,300yen(tax in) / IN STORES NOW

文句なしの3rdアルバム。シングル『Ricky PunkS』の続編、言わずと知れた“Day dream Believer”のカヴァーリングはKennyならではの傑作。今回のアルバムは気合いの入り方が全く違うような気がする。タイトル通り正に“3度目の正直”。とても大きな期待をしていただけに、それを簡単に跳ね返す応え方をしてくれてすごく感動した。先日はギタリストColinに代わり元KEMURIの南氏が加わり更なる飛躍を予感させる。Colinがいなくなるのはやはり寂しいが、彼もまた彼自身のバンドU・K・Lで活躍してくれるだろう。
KennyのPUNK ROCKスタイルは誰にマネができるだろうか。Hi-STANDARD活動休止後、次々と名曲を生み続ける“Ken Yokoyama”。彼は停滞を知らない。1st、2nd、3rdとアルバムの内容もどんどん凄みを帯びて行くばかり。流石としか言いようがない今回のアルバム。全曲に渡りライブ映えする彼の楽曲たちは、いつも爆音でアパートの部屋に流す。苦情が来たって関係ない。そのときはその時。しょうが・ファッキン・ない。HAHAHA!!!


(Loft A:入澤悠斗)

   
   

the court / リクノコトウ

HKP-015 2,100yen(tax in) / 4.02 IN STORES

名刺がわりに届けられたミニアルバムからおよそ1年半、山梨出身の3ピースバンド・the courtの初のフルアルバムが堂々完成! 春から初夏にかけてのワクワクする感じだとか、風が吹いた後の爽快さなどが詰まっている今作は、正統派ポップ・ロックナンバーからスローテンポの聴かせる曲まで、一貫して「攻め」の姿勢を感じます。それは今までポスト○○と評されることの多かった彼らが、the courtにしか出せないサウンドとはこういうものだ! という自信がよりしっかりしたものになったからなのかなと思いました。キラキラしたところも残酷なまでの無情さも含めて童話のような詞世界も、鴇崎智史(Vo&G)の透きとおったヴォーカルによって深く表現されています。また、歌唱力の高さが特筆されることの多い彼ですが、ギターの腕も素晴らしい! 唐突ですが“日本のアンガス・ヤング”と言ってもきっと過言じゃないはずです。そしてCDよりも更に彼らの実力を感じられるライブは観て損はありません。響く歌声に胸を突き刺されること必至! ゼヒ会場に足を運んでみてください。


(Naked Loft:松本杏)


 

SHEENA&THE ROKKETS / JAPANIK

VICL-62803 3,000yen(tax in) / 4.23 IN STORES

現在21歳の俺は、活動30周年を迎えた偉大なる「シナロケ」の歴史に関しては知る由もありません。しかしどうやら、この『JAPANIK』というアルバムにとってそんなことは問題じゃあないということが、聴いてすぐにわかりました。そこにはロックンロールの格好良さと面白みがぎっしり詰まっていて、歴史とか世代とか年齢なんてものを全部かわして、ど真ん中に伝わってくるものがあったのです。つまりロックンロールが持ってる1番大事なことを、改めて教えてくれているような気がして。それが俺には無性に嬉しいことでした。俺のような若造には出せない声で、音で、俺のような若造のハートに火をつけてくれることが、滅茶苦茶嬉しかったのです。
そしてやっぱり、鮎川誠さんのギターは、とてつもなく格好良い。冒頭『PLANET GUITAR』(タイトルだけで既に素晴らしいと思います)の最初の「ギャーン」1発で興奮してしまうし、『形見のネックレス』のソロはとてもブルースだし泣けるし、極めつけの『挑戦状〜DiPINTO HOP〜』は曲全体にギターの力があってグサグサと胸にきてしまいます。後半に目白押しのカバー曲群も最高!『My Way』はシナトラじゃなくてシド・ビシャスのカバーであり、『What A Wonderful World』はサッチモじゃなくてラモーンズのカバーであり、さらに待ってましたの『Johnny B. Goode』。フィーリングも音も全てが、キレまくっています。
『JAPANIK』という作品は、例えばローリング・ストーンズのニュー・アルバムがいつだって格好良いのと同じように、「シーナ&ザ・ロケッツはいつも変わらず無敵のロックンロール・バンドである」ということを我々聴き手に知らしめてくれます。


(a flood of circle Vo./Gt. 佐々木亮介)


 

Sotte Bosse / Blooming e.p.

UPCI-9027 2,200yen(tax in) / IN STORES NOW

カフェやセレクトショップでよく耳にする音楽がある。コーヒーを飲んでいる時、洋服や雑貨を選んでいる時、ふと耳に残る音楽がある。口コミやインターネット、テレビのスポットから広がり、今や確固たる人気を誇るSotte Bosse。Sotte Bosseという名前は知らなくても、この声を、この音をどこかで聴いたことがある人は多いと思う。そんなSotte Bosseの新作『Blooming e.p.』。春をテーマにした全6曲が収録されている。カバーアーティストとして名を知らしめていったSotte Bosseだけれど今回はオリジナル曲が多いのも注目すべきところ。もちろん今までカバーしてきた名曲たちに引けを取らない名曲ばかりで、「さすが!」と思わずにはいられず、「Sotte Bosse=カバーアーティスト」というわたし達のイメージを大きく覆してくれた。カーテンの隙間から春風が降り注ぐような、まるで呼吸をするように自然に歌うボーカル・Canaの歌声は甘く優しく、私たちを包み込んでくれる。ポカポカした匂いと共に、耳で春を感じさせてくれたり、優しさを実感できるそんなアルバム。ちょっと眠たくなった昼下がりや、ポカポカ陽気の電車の中で聴いたら、いつもとはちょっと違う、素敵な時間が過ごせるかもしれない。


(新宿LOFT:チーさん)


 

シナトラ / あっぱれ!!

ZEGA-2002 3,000yen(tax in) / IN STORES NOW

2004年に結成されたシナトラのファーストアルバム『あっぱれ!!』が遂にリリースされた。ロックと和が融合した彼らの楽曲は、祭り囃子を聴いた途端、どこか胸躍るような、音の鳴る方へ早足で向かったあの時のような、ワクワクとした気持ちを思い出させてくれる「あっぱれ!!」な作品。シナトラという正真正銘の日本男児から生まれた力強く勇ましい楽曲は、『あっぱれ!!』を引っ提げて新しいステージへと向かおうとしている彼らの勇敢な姿のようにも見える。
昨年末ぐらいだったかな。ボーカル・トキオさんに偶然会って話をしている時に、「今度、和太鼓入れてライブやろうと思ってるんですよ。」「それ、絶対おもしろいですよー。」みたいなやりとりをしたと記憶があるんですが、その頃からトキオさんは日本全国に和太鼓武者修行に出て練習に励んでいた。『あっぱれ!!』では、和太鼓は良い具合に曲の中でエッセンスとなり、さらには法螺貝も使用されたり、映画『GROW-愚狼』の主題歌となった『エンドロール』や、音楽業界と瓦屋さんとの初コラボレーション曲『日本人なら瓦屋根』など、色とりどりの全10曲。日本人ならではの歌で、再び煮えたぎるマグマのような血が巡り、体を熱くしてくれるような1枚。


(Rooftop:やまだともこ)


 

NUM★42 / PUNK MASH UP JAPAN!

PLUCK-01 809yen(tax in) / タワーレコード限定販売

ヘッドロックのオーガナイザーであり、パンクロックDJとしても八面六臂の活躍を続けるnamijinがヴォーカル&ベーシストとして参加するカヴァー・パンク・バンド、NUM42が放つ3rdアルバムは、初のオール日本語カヴァーである。しかも、素材となる原曲はチェリッシュの『てんとう虫のサンバ』、チューリップの『心の旅』、井上陽水の『夢の中へ』、赤い鳥の『翼をください』といった70年代のフォーク/ニューミュージックが中心だ。パンクと70年代フォークの“MASH UP”(2つないし複数の曲をひとつの曲に合成する音楽制作手法)とは何とも大胆かつ破天荒な発想だが、そこは昨年前代未聞のDJワンマン・ライヴを敢行するなど“常に不可能を可能に替える男”namijinのこと、DJならではの独自のセンスと着眼点でNOFXやTHE CLASH、THE BLUE HEARTSの楽曲を巧みに盛り込んだその内容は理屈抜きに楽しめる。とりわけ、日本のロック史上最高峰と言うべき大名曲『マーラーズ・パーラー』で実現した本家PANTAとの共演(ヘッドロックでお馴染み、大和の俵積田等も参加)は特筆すべき最大級の“MASH UP”ではないか。音楽とは本来底抜けに楽しく自由なものであるという普段はつい忘れがちなことを、namijinの仕掛けるNUM★42やヘッドロックナイトは気付かせてくれる。本作はそれに加え、日本にも良質な歌がたくさんあることを判りやすく教えてくれる。その意味で、生まれながらのハイブリッド性を宿命とする日本人であることを素直に誇りに思える作品と言えるだろう。


(Rooftop:椎名宗之)


 

パウンチホイール / TITLE

TEMU-1001 1890yen(tax in) / 4.18 IN STORES

約2年越しの新作。前作『チェンジ・ザ・ワールド』リリース以降はライブ活動を中心に活動していたが、中でも新宿ロフトでの3ヶ月連続自主企画がとても印象に残っている。もちろん自分がこの企画をお手伝いした事もあるのですが、この企画のライブ時から発表していた新曲達がようやくこの1枚に収まったかと思うと何だか感慨深い。自分達が発信している音楽に何の疑いもなく、ただひたすらに良い曲を聴かせようとしている姿は天下一品。こんなにもいくつになっても青くさいバンドは他にはいないんじゃないのか? と思う位、青春まっただ中のパウンチホイール。本作はコレクターズの加藤氏をプロデューサーに迎えた所も聴き所。長年バンドを組んでいる加藤さんから沢山の事を教わったであろうから、バンドとしての成長具合をこの1枚でしっかりと感じる事が出来るでしょう。この新作のあれこれをこの誌面上の「happy talk」で聞いているので、是非読んで欲しい。


(SONG-CRUX:樋口寛子)


浜田真理子 / 純愛

SFS-001 1,260yen(tax in) / IN STORES NOW

「そんな中途半端な愛なら どうぞ持っておかえりください」
ゆるやかなピアノに乗せた 穏やかな拒絶からはじまる歌。浜田真理子という女性がはかなげに歌う。
「そんな中途半端な愛でも 喜ぶ誰かにおあげなさい」
美しい二文字の言葉でまとめられたこの詩は、単なる愛や恋を描いているわけではなく、シンプルでありながら、女の本質を露呈していて男性には恐ろしくもあると思う。
「私をようこそ 愛するなら」と覚悟を問う。ここで脱落するならば、冒頭の言葉で捨てゼリフを吐くのだ。命を燃やして「あなた」を想い、それを生きた証にする。けれど、その命すら人の心と同様、不意に失いそうで不確かなものだからこそ、歌の中の女性は本物だけを待っているのだ。「身を焦がすような炎なら…」 純愛というものに憧れを抱き、捨て身で墜ちてゆく。そんな情景を美しいと感じる自分は、日本に生まれてよかったと思う。是非聴いてみて下さい。


(新宿LOFT:岩波 亜朱香)


hymns named as veto / The world is hope

210yen(tax in) / hymns named as vetoの物販にて購入可能

もはやこれは完全なる答えになるだろう。hymns named as vetoと出会った時、完全にそう確信した。はじめてこの音を聴いたとき神が宿っているとさえ感じた。美しすぎるメロディに重なる繊細なシンセサイザーのしらべ。それと共に鳴り響く重音なギターとベース。意外と単純な構成かも知れないが、この人数でなしえる音とは到底思えない音作り。ロック? 空間系? ポストロック? シューゲイザー? いやそんなジャンルなんてモノは彼らにはいらないだろう。そう、もはや人間が作り出した音とは思えないほどの芸術性の高いメロディに僕は完全に支配されてしまっている。と言うか、あなたも是非ライブに足を運んだり、CDを購入してみてください。驚異の大型新人の誕生かもしれません!


(新宿LOFT:HxGxK)


Futoshi Takagi / lyrics

BRCDS-8035 2,300yen(tax in) / IN STORES NOW

我らの兄貴高木フトシが作品的には2年の沈黙を破って産み落としたソロ音源がリリースされた。ただその2年間沈黙していたわけでは無くて、高木フトシがパーマネントとして活動しているいくつものバンドでのライブを数多く繰り広げていた。その数々のスタイルのバンドを経験し、その上で1つの答えとしてこのソロ名義音源が発表された。ここに詰め込まれている音楽は、今までの高木フトシの中で一番素直に等身大の目線で、日常から想像する旅の世界、人間が思い描く空想の世界までを連想させる。この作品を聴くと、ふと思いだす様々な感動にふれることが出来ます。旅に出るときに持って行きたい1枚です。
高木フトシの魅力は絶対ライブだと思っていたが、こんな作品を発表され、また新たな彼の魅力に引きずり込まれてしまいました。


(新宿ロフト店長:大塚智昭)


BECK / MUTATIONS

UICY- 6151 1,980yen / IN STORES NOW

MUTATIONS ~ミューテイションズ
僕は、『ミューテイションズ』というアルバムを“平凡の集合体”だと考えている。『メロウ・ゴールド』や『オディレイ』ほどの驚きはこのアルバムにはない。僕たちが抱いている「ベック」という人物はミュージシャンでもありマジシャンでもあるからだ。最新アルバム『ザ・インフォメーション』ではステッカーをつけ、買った人自らジャケットをデザインできるうえ、全曲のPVを撮ったDVDまでもCDの特典で発売した。また来日した際には、無料のアート展を開催たりとベックマジックを起こしている。本作は98年に出たベックの3作目。アルバム1枚すんなり聴くことができる。変な意味でくせもなく、聴きやすい1枚だ。冒頭で挙げた“平凡”を変な意味でとってほしくはない。これまでのブルース&ヒップホップから脱会し、全体をフォーク色でまとめ上げたこの作品は、日常を普通に過ごすベックの姿が目に浮かぶ。日常なくしてクリエイティブな発想は生まれないのだ。 小さな歌の集合体だからこそミューテイションズ(=突然変異)が起こりうるのかもしれない。


(下北沢SHELTER:池田賢太郎)

 
 

Marvelous / ATTACK

KCRD-1001 1300yen(taxin) / 4.09 IN STORES

フジファブリックのドラムとしてデビュー時からメンバーとして活躍していた足立房文がフジファブリックを脱退して、その後どうするのだろう? と思っていた矢先に届いたバンド結成の話。しかも足立自身がボーカル&ギターを担い、中心として活動していくというのではないか! 初めてその話を聞いた時、正直“ピン”と来なかったが、足立君は“Marvelous”を組んでから、まるで人が変わったかの様にバンド話を熱心にしてくるので応援せずにはいられなかった。初々しいさもありつつも、でも前から活動していたかの様などんと構えた音像が心地良い。デモCDを作りつつ、ライブ活動中心に活動していた結果がようやくこの1枚に収まった。次はどこに向けて“Marvelous”は走り出していくのでしょうか? とても楽しみだな。それにしても足立君はなんて器用な男の子なのだろうか?『ATTACK』を聴く度に思う。


(SONG-CRUX:樋口寛子)


Y.U.G. / ほほえみ返し

500yen(tax in) / ライブ会場で販売中!!

どこに行っても究極の問題児(!!)として名を馳せている植木遊人が、ついに最強のメンバーを手に入れ、再びバンドとして始動した! その名もYUJIN UEKI GROUP。略してY.U.G.!! 前のバンドを解散して約2年ソロでの活動を続け、途中でバンドを組んだり、時に心が折れたり、彷徨い、模索し続けてきた。さまざまな荒波にもまれ、時には陸まで押し戻されたりもしたが、がむしゃらに活動してきた結果、ようやくいい形になったのだ。Y.U.G.としての初音源『ほほえみ返し』がリリース!!! 人間的には全くシンプルではない植木が歌う『シンプルワールド』と、温かいギターの音色から始まる心が和らぐほっこりソング『ほほえみ返し』。荒削りなところもあるが、ソロで演奏された曲たちはバンドという形態になり力強いロックサウンドへと進化した。植木が作るストレートな詞も魅力のひとつ。
残念ながら、現在このCDはライブ会場限定となっているが、彼を知るにはまずライブで! と思うので、ライブを見てCDを手にするのが一番良いだろう。汗だか涙だか鼻水だかわからない液体をたれ流し、顔をクシャクシャにして歌い、叫び、吠える独創的な彼のステージは、見ている者に何かしらの感情を湧かせることは必至。そして、植木の今後が、とても楽しみだ。


(Rooftop:やまだともこ)


risette / risette

FTBM-1002 2,200yen(tax in) / 4.02 IN STORES

Vo:常葉ゆう、G:Tsugai、G:森野誠一の3人で結成されたrisette。今回リリースされるニューアルバム、その名も『risette』は、お洒落なカフェミュージックといった感じです。「休みの日には1人でカフェに行きます」とか「あそこのカフェがいいんですよ」とか言う人に憧れます。私の場合、カフェはたまにしか行きません。1人ではほとんど行かないですね。だって1人で行ったら何して良いのかわからなくて、しまいにはソワソワして目が泳いじゃう。だから、居心地も悪いし、コーヒーも席に座ってすぐに急いで飲んじゃったし、という感じでやることもないからそそくさと店を出る。そんな状態だから、もちろんコーヒーの味も楽しめない。だから、家でコーヒーをおとして、何にも気にすることなく落ち着いて本を読んでる時間が一番好き。今は季節も良いから、窓を開けて心地よい春の風を感じたりしたら、もっと幸せな気分になれちゃう。その時に、『risette』が部屋のコンポからユラリと流れてきたら、雑然とした部屋が素敵なカフェに早変わり。軽やかな女性ボーカルの常葉ゆうさんの歌声が暖かなそよ風のように、気持ちを和らげてくれるアルバム。素敵です。


(Rooftop:やまだともこ)


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吉川晃司 / THE SECOND SESSION
〜KIKKAWA KOJI LIVE 2007 CLUB JUNGLE EXTRA TARZAN RETURNS〜

DVD:TKBA-1115 6,800yen (tax in) / IN STORES NOW

総勢12名の巧者達と繰り広げる至上のセッション・バトル

先月号の当欄で紹介した『THE STORY OF TARZAN』に続き間髪入れずに発表された吉川晃司の映像作品は、昨年12月30日・31日の両日にわたって国立代々木競技場第二体育館で行なわれたライヴの模様がパッケージされたものである。四半世紀近く第一線を疾走し続けてきた熟練ミュージシャンがツアーを終えた節目に何となく出しました、という類のものでは断じてない。目下最新作にして最高傑作である『TARZAN』の収録曲を中心としながら、自らの代表曲を総勢12名(!)にも及ぶ名うてのミュージシャンとのセッションを通して新たな息吹を与えるという試みは、安定を求める表現者には決して思い浮かばぬ発想だ。気心の知れた同じミュージシャンと同じ楽曲を同じアレンジでプレイしたほうが破綻もなく、ライヴの出来も一定の水準を保てるだろう。だが、常に創造と破壊を繰り返して未知の領域へ飛び込んでいこうとする吉川にとって、そんな生温いやり方では当然飽き足らない。他者との摩擦係数の高さが未曾有の刺激を生み、得も言われぬ快楽を与える。それを表現者の信条としてきた吉川にとって、この2夜のライヴは己の矜持を懸けた新たな挑戦だったのだ。その挑戦が見事に実を結んでいく過程を余すところなく記録しているという点で、このDVDは極めてスリリングなドキュメンタリー作品だと言える。もっとも、スリリングな内容でなければ作品として世に問う意義もないだろうし、地位と名声に胡座をかくことなく表現者としての本懐を遂げようとする吉川の動向は常に破天荒で、だからこそ理屈抜きに面白い。何せギター4本(吉川を含めれば5本になる)、ベース2本、ドラム3セット、それにキーボードとサックスとヴァイオリンという編成である。どれも凄腕という言葉ではとても済まされぬ面子ばかりだ。その面子に向かって、吉川は己の肉声ひとつで無謀にも果敢に闘いを挑むのだ。そう、まさに“無謀が生き抜くルール”(「Juicy Jungle」)と言わんばかりに。
僕はこのライヴを両日共体感したオーディエンスの一人だが、掛け値なしに素晴らしいものだったと断言できる。弥吉淳二(g)、菊地英昭(g)、小池ヒロミチ(b)、ホッピー神山(key)という昨年のツアーからの布陣に加え、SATOKO(ds:FUZZY CONTROL)、広瀬“JIMMY”さとし(g:44MAGNUM)、うじきつよし(g)、そうる透(ds)、後藤次利(b)、村上“ポンタ”秀一(ds)、武田真治(sax)、岡村美央(vln)という顔触れだけを見ても、吉川ファンならずとも大いに食指を動かされるだろう。この巧者達が楽曲ごとに編成を変え、それぞれの持ち味を十二分に発揮するのだ。セットリストと演者の組み合わせの妙、プレイに漲る圧倒的なテンションは、2005年の年末に同会場で行なわれた『THE FIRST SESSION〜エンジェルチャイムが鳴る夜に〜』を遙かに凌駕している。 全22曲を一息に聴かせる2時間強に弛緩は一切ない。見所はすべてと言い切って文章を締めたいところだが、個人的にグッと体熱が上がったポイントを思うままに列挙してみる。岡村のヴァイオリンとホッピーのピアノ、そして吉川の歌声だけで奏でられる『Rainy Lane』で幕を開けるという選曲とアレンジの意外性、それと同じ編成からいきなりバンド・サウンドに切り替わる『TARZAN』での緻密な演出、菊地と広瀬という日本のHR/HM界屈指のギタリストによる『プレデター』での居合い抜きのようなギター・バトル、『Honey Dripper』で縦横無尽にステージを駆け抜けるうじきの圧倒的な存在感(『INNOCENT SKY』でのギター・ソロも素晴らしい)、村上の『MY PLEASURE』に収録されていた『飾りじゃないのよ涙は」の華麗なる再演、『サイケデリックHIP』で後藤が奏でる超絶チョッパーの凄まじい破壊力、『スティングレイ』を『ムサシ』のアレンジで聴かせるというハイブリッドな楽曲バトル、オール・キャストで披露される本編ラスト『A-LA-BA・LA-M-BA』の圧巻さ。アンコールで披露された『a day・good night』(30日)と「Cloudy Heart』(31日)が共に収録されているのも嬉しい。とにかくこのライヴは吉川のキャリア史上エポックと呼ぶに相応しいものなのだが、吉川はそれすらも軽やかなステップにして次なるスリリングな場所を貪欲に求めてトップギアで加速していく。その己の本能に趣くがままの姿がこのDVDでも随所に刻まれている。それゆえに僕はいつも吉川晃司という不世出の表現者から目が離せないのだ。


(Rooftop:椎名宗之)

 
posted by Rooftop at 07:00 | バックナンバー