ギター バックナンバー

BARGUNDIE('08年3月号)

BARGUNDIE

“カッコいい”というのはこういうことなんだ!


2008年3月。また音楽界に新しいジャンルが生まれた!? THE COLTS、ザ・マックショウの岩川浩二(Gu)と原宿にあるアパレルショップ『RED MOTEL』のTAKA5H1(B)が中心となって立ち上げたプロジェクト。それがBARGUNDIEだ。この2人に加え、元ザ・ハイロウズの大島賢治(Dr)とTHE COLTSの多田三洋(Key)という腕の確かなミュージシャンが参加。そこに女性ボーカリストのAIRRYが花を添える。ファーストアルバム『DRESSED TO KILL』は80'sやNEW WAVEを彷彿させるキレのいいサウンドとかっちりと世界観の固まった歌詞にかなりのインパクトを感じる。メンバーが集まって、演奏し、それが音源として発売される。ここまでの流れは彼らを“バンド”と呼ぶことに何の違和感もないものだ。しかし、果たして彼らを“バンド”と分類していいのだろうか。このプロジェクトの首謀者であるTAKA5H1と紅一点のAIRRYにその真意を語ってもらった。(interview:古川はる香)


限りなくバンドに近いクリエイティブ集団


──まずこのバンドの成り立ちを教えていただけますか?

TAKA5H1:僕は元々音楽経験者なんですけど今は洋服屋さんなんですよ(現在『RED MOTEL』内でブランド『P.SLIDER』を展開)。最近の洋服と音楽カルチャーがリンクしない感じがすごくいやで。ファッションと一緒に、自分でも音楽をやれたらなと思ったのがきっかけです。それで、たまたま周りに音楽やってる友達がいたんですよ。「やろう」って言ってすぐできる人を集めないと時間がかかってしまうから。

──「じゃあ練習からはじめよう!」ってなると時間かかりますよね。

TAKA5H1:そうそう(笑)。岩川さんも大島さんも多田さんも、元から音楽やってる人ですから。歌ってるAIRRYだけは未経験者なんですけどね。

AIRRY:そうなんですよ。

TAKA5H1:バンドなんか一度もやったことがなかったのを、なんとなく「やってみれば?」って声かけたところから始まって。だから自分たちにバンドをやってる意識はあんまりないんです。でも“ユニット”って言い方もされたくない。限りなくバンドに近い、クリエイティブなことをしたい集団ですかね。

──音楽をやりたいと思ったときに、「こういう路線で」というのも決めてたんですか?

TAKA5H1:僕のブランド自体“ロックブランド”みたいなくくりに入ってるんですけど、もうちょっと違うものにしたかったんです。80年代を意識してるのは、音とカルチャーがミックスされた時代だから。ファッションを含めて音楽も色とりどりで、“こういう感じじゃないとダメ!”っていうのがないから。80'sやNEW WAVEっていうのをキーワードで出してるけど、それはジャンルのことではなくて、カラフルなものをなんでもやれたらなっていうのが一番強い。メンバーが元々ロックの人だから、サウンドはストレートなロックになってますけど、そこにAIRRYの歌やジャケットのアートワークがプラスされることで、ちょっとポップになればっていうのを意識してますね。

──ガリガリのロックはちょっと違う?

TAKA5H1:そういうのはダサいじゃないですか(笑)!? だって、AIRRYなんて「別にライブやりたくない」って言ってるから! でもそれは「今のライブハウスに魅力を感じない」っていう純粋な意見なんだよね。それはわかる。とりあえず今、アルバムを1枚作ったけど、だからってレコ発ライブをやらなきゃいけないとは思ってないんです。音の聴かせ方をひとつ表現できて、次はどう見せていくかをメンバーで話し合ってるところなんです。そういう意味でもバンドっていうのとはちょっと違うかもしれないですね。

──やりたいことはもっと別のところにあって、表現の方法のひとつが音楽ってことですか?

TAKA5H1:そう。本当にひとつ。3本柱のひとつくらいかな。でもかなり大きいものではあるけど。

発展途上だからこそ可能性は限りない


──AIRRYさんは歌ってるのと話してるのでかなり声のイメージが違いますね!?

AIRRY:そうですか? あんまり言われたことないけど(笑)。

──歌はかなりハードなイメージですけど、話してるとかわいらしい雰囲気です。

AIRRY:あ、喋り方がわりとアニメっぽいって言われますね(笑)。

TAKA5H1:AIRRY自身はハスキーな声にあこがれてるんですよ。アルバムに『LOST MY EYES』って歌の中で、“視力をなくしてもいいからその声を手に入れたい”ってAIRRYが書いてるんですけど、それくらいコンプレックスらしいです。

──歌声を聴いたときに懐かしい気持ちになったんですよ。日本でいうとバービーボーイズの杏子さんとかSHOW-YAの寺田恵子さんを思わせるような歌い方で。

TAKA5H1:そうですね。あの頃の女性アーティストのバンドはちゃんとロックをしてた。今はあくまでロックテイストだったり、そのときの題材としてロックをしてるだけのことが多くて、歌ってる女性自体がロックしてるかっていうと、そこは“ハテナ”ですよね。だから何の説明もなしに、80年代の女性ボーカルに聴こえたのはうれしいですね!

──AIRRYさんの歌入れはすんなりいきました?

AIRRY:いってないねー(笑)?

TAKA5H1:泣いてたもん。歌入れで。岩川さんがツアーに行っちゃって、スタジオで俺と2人で歌入れしてたら「思った声が出ない!」って。俺が違う部屋で作業してたら急にAIRRYの声が聴こえなくなって、どうしたのかと思ったらうずくまって号泣してたの!

AIRRY:自分がイメージしているものに届かないもどかしさというか、悔しさが。

TAKA5H1:今いくべきところには充分達してるんだけど、ひとつできると次が見えてしまうからね。そこで葛藤があったんじゃないかな? さっきCDの歌声と実際の喋り声のイメージが違うって言ってたけど、それはしゃがれるまで歌ってたからなんだよね。2時間くらい歌いっぱなしだったから。それで最後の力をふりしぼって歌ったのが音源になってる。

AIRRY:それはあるかも。そこまでハードな歌を歌うような声って、一発目では出ないんですよ。わりと普通にキレイになっちゃうというか。

──完成したものを聴いての感想は?

AIRRY:ボーカルのことを言い出したら、まだ私も発展途上なんできりがないんですけど、今やれることは出せたかな。トータルでカッコよければいいんです(笑)!

TAKA5H1:他のメンバーがある程度完成してる中、僕とAIRRYはミュージシャンじゃない。だけどそういう発展途上なところにこのバンドの可能性が残ってる。だから次の段階にいろんな可能性があって、アイデアとそこに一緒に着地してくれる仲間がいれば、なんでもできるんじゃないかって。

──次の展開はまだ見えない?

TAKA5H1:そうですね。ただ、さっき言った80年代テイストをクラシックな音楽とか古臭いものだってとらえないでほしい。アンティークやビンテージの家具が家にひとつあると、まわりに置いている現代のものも世界観が変わるじゃないですか? そういう存在でありたいとはすごく思う。サウンドはその時代を継承しつつでいいんだけど、ただ感覚が止まってるようなアーティストはおもしろくないと思うんです。

──「昔はよかったよ」的な?

TAKA5H1:そうそう。それと一緒にはしてほしくない。自分のバックグラウンドには80年代とかロックしかないけど、その上でアンテナをはって、吸収できるものは吸収していく。僕ら以外でもそうやってるアーティストたちが本当の意味で活躍できるような場所を作る突破口になりたいんです。

“カッコいい”の感覚に経験や知識は関係ない


──AIRRYさんはどういう音楽を聴いてたんですか?

AIRRY:若いときはレディオヘッドが大好きだったんですよ。あとはコートニーとか。私は世代的に90年代のほうを聴いてるかも。

TAKA5H1:まぁ80年代はピンと来ない世代だからね。

AIRRY:もちろんメンバーに比べたら知識も経験も少ないんだけど、カッコいいと思える感覚は変わらないんじゃないかと思ってて。こんなメンバーの中に未経験者が入ることにもちろんプレッシャーはあったんだけど、カッコよさを感じる部分は自分の感覚をすごく信じてる。だからやっていけるかなって。まだまだ未完成なんですけど(笑)。

──今回が初レコーディングだったんですよね?

AIRRY:前に一度やってるんですよ。岩川さんとTAKA5H1と。

TAKA5H1:前に僕のブランドで、毎年クラッシュのトリビュートを出してたんですよ。僕、前に岩川さんとバンドをやっていて、THE COLTSが出来た当初いたメンバーなんですけど、当時“東京○○”ってバンド名が流行ってて、僕らは“東京クラッシュ”って名前で大貫(憲章)さんの『LONDON NITE』とかによく出ていたんです。そんなことがあったから、ジョー・ストラマーが亡くなったときに、久しぶりにライブでもやろうかって話になったんです。それから毎年、年に1回追悼ライブをやるときに無料CDを配ることにしたんですよ。これで追悼ライブは最後だって年のCDでAIRRYに歌ってもらったんです。思えばそのときからこのからBARGUNDIEは始まってたんだよね。

AIRRY:バンドの由来、それじゃん(笑)!

TAKA5H1:そうだった。今思い出した(笑)。

──TAKA5H1さんが言うように、音楽カルチャーとファッションをリンクさせるには、メンバーが『P.SLIDER』の服を着て、どんどんライブをやっていくことがわかりやすいかなと思うんですけど、それは違うんですよね?

TAKA5H1:それもひとつの手なんですけど、押しつけがましくなっちゃうでしょ。バンドやってる人がブランドも始めましたっていうような。

──BARGUNDIEのライブを見に行くなら、『P.SLIDER』を着ていかなきゃ! ってなるのも違う?

TAKA5H1:うん。僕が作ったものを着ろとは思わなくて、ライブハウスにおしゃれして来てくれればいい。バンドの物販ってあるでしょ? あれって高くても3000円くらいが上限なんですよね。ライブハウスに来る時はそんなにお金持ってこないから。それだと作るものも限られてきて、ロゴが入ったTシャツ程度になってしまう。僕らの夢としては、ライブハウスとか映画館とかでステージをやっていて、その外に2階建てバスとか借りてブティックをやるの。ライブも見れて、洋服も買える。そういうこともやっていきたいなというのはある。もちろん突拍子もないことを考えてるのはわかってるんだけど(笑)。将来的にそれを考えてるから、ライブハウスをまわって、動員増やして、CDの売り上げが1万枚いったとしても、僕が行きたいところには結びつかない気がする。今、自分なりのやり方を試行錯誤してるところ。別に「俺ならできるぜ」ってえらそうなことを言いたいわけじゃないんですよ。ただ、こうなればいいなって夢を語ってるだけなんです(笑)。



BARGUNDIE

DRESSED TO KILL
DLBG-2001 / 1,890yen(tax in)
P.SLIDER
3.12 IN STORES
★amazonで購入する
BARGUNDIE are :
Vo. AIRRY(アーリー)
G. KOZZY IWAKAWA 岩川浩二(THE COLTS, THE MACKSHOW)
B. TAKA5H1(P.SLIDER, ex.RALEIGH)
Key. MITSUHIRO TADA 多田三洋(THE COLTS)
Dr. KENJI OSHIMA 大島賢治(ex.THE HIGH-LOWS)

BARGUNDIE official website
http://www.bargundie.com/

RED MOTEL official website
http://www.red-motel.com/

posted by Rooftop at 19:00 | バックナンバー