ギター バックナンバー

ELECTRIC MAMA ('08年2月号)

ELECTRIC MAMA

壁をぶち壊せ!
異色で出色の最少編成2ピースR&Rバンド、衝撃の爆音デビュー!

破天荒なドラムとドスの利いたハスキーな歌声で観る者をただただ圧倒する上田亜里沙、ギター・アンプとベース・アンプの両刀使いで直情径行のギターを奏でる大島健司から成る異色の爆音2ピース・バンド、エレクトリック・ママ。審査委員長に布袋寅泰を迎えたオーディション『LOCK ON ROCK』で見事グランプリを獲得した彼らが、メジャーデビュー・アルバム『THE WALL』を発表する。ブルースを分母に置きつつも、ロックが本来持ち得たダイナミズムを湛えたその音楽性は非常にポテンシャルが高く、正統と革新を自由に行き来する様が何とも頼もしい。今どき珍しいほど頑なに先人の生み出したロックンロール・エチケットを守り、ライヴでは耳をつんざく暴音、爆音、轟音をステージ上からブチかます。楽曲同様に新人らしからぬ気っ風の良さも相俟って、その深く歪み切ったサウンドには凛とした佇まいがある。目前に立ちはだかる理想と現実に威勢良く“壁をぶち壊せ!”と連呼する彼らの歌には、既成概念を突き破る大胆不敵さと強靱な意志が充満しているのだ。末恐ろしいルーキーが登場したものである。(interview:椎名宗之)

音の足りなさよりも気合いで行こう

──もともとは5人編成のバンドとして活動していたそうですね。

健司:そうなんですよ。最初の5人はお互いの知り合いを掻き集めてやっていたんですけど、バンドを続けていくうちにそれぞれが違う夢を求めて辞めていったんです。ドラムが辞め、ギターとベースが辞め…それでこの2人が残ったんですよ。そこから新たにメン募するよりも、亜里沙と僕は音楽の趣味が近かったので、まずは手っ取り早くスタジオに入ろうと。で、セッションを何回かやってみて案外行けるんじゃないかと思ったんですよね。最初はそういう軽いノリやったんです。

──あれ、亜里沙さんはドラムじゃなかったんですか。

亜里沙:歌だけだったんですよ。10代の頃からずっと歌だけやってました。

──ということは、この2ピースになってからドラムを始めたと?

亜里沙:それがですね、バンドを組みたいと思ってて高校1年の時にドラムを1年間だけ習ってたんですよ。ホントは歌をやりたかったんですけど自信がなくて、自分の性格に合うのはドラムじゃないかなと思って。それで、この2人になって5年振りに本格的に叩くことになったんです。触ってはおったから感覚は多少残っていたにしても、ほとんどまた一から始める状態だったんですよ。

──しかも、今度は歌も同時に唄うことになって。

亜里沙:歌と一緒にドラムを叩くようになって、それ以前のドラムだけ叩いてた時とは全く違う叩き方をしていたんですね、気が付いた時には。全然別モンでした。

健司:5人バンドの時のヴォーカルも亜里沙だったし、そこは続けてやってもらおうと。僕のギターだけでは物足りないし、やっぱりビートが欲しくて、亜里沙が「じゃ、叩こうか」と。

──結果的にはこの編成自体にオリジナリティが生まれたわけですね、図らずもですが。

亜里沙:でも、それができたのは当時ホワイト・ストライプスという同じ男女2人組のバンドがいたことも大きいんですよ。ライヴ・バンドとして2人でもできることを証明してるし、それなら私らにも絶対できるはずやと思ったんで、そこから勇気を貰ったところはありますね。

──当初からブルースに根差したロックを志向していたんですか。

健司:そうですね。始めた当初はもっとブルース色の濃かった感じだったんです。

──憂歌団みたいな感じ?

亜里沙:ええ。地元の神戸でセッションのできるバーに仲間同士でよく行ってたんですけど、その時に憂歌団のドラマーの島田さん(島田和夫)が一緒にやって下さったこともあるんですよ。

健司:神戸はブルース・バーとかが多いんですよね。

亜里沙:そう、普通の酒屋さんが趣味で地下にスタジオを作っていて、毎月第4土曜日とかにセッションをしに集まるオッチャンがいっぱいおるんです。そのスタジオを5、6時間使っても「高校生は500円でええわ」みたいな(笑)。

──ドラムとギターだけだとどうしても低音が欲しくなると思うんですが、敢えてベースを入れようとは思わなかったんですか。

健司:亜里沙との共通の音楽的趣味というのが大きかったので、もし仮にメンバーを増やすとしても、まず僕達の共通項に合わないとイヤだなと。でも、それに合うメンバーを探すっていうよりも見つからへんやろみたいな感じでおって、それやったら2人の共通する部分をおっきくしていこうと思ったんです。音の足りなさよりも気合いで行こう、って言うか。

亜里沙:多分、ちょっとアホなんですね(笑)。普通…普通って言い方はあんまり好きやないけど、足りないものを補って探すのがやり方としてひとつあると思うんです。でも、その時は足りなくても寄せ付けたくないみたいなヘンな意地があって。そこを上手いことすり抜けてこの2人でやり続けることに目を向けてたんだと思いますね。

──2人の共通項というのは、たとえばローリング・ストーンズのようなロックとかですか。

健司:そうですね。あとは(レッド・)ツェッペリンとかも聴きますし。最初は3コードだけのブルースをよくやっていたんですけど、そこからシンプルで格好良く見せられるロックを追求していこうと思っていたら、パンクとかも聴くようになって。初期の頃はもっと複雑でサイケっぽい感じもあったんですけどね。

亜里沙:ギター・ソロだけで10分、15分弾いたりとかね(笑)。

健司:うん(笑)。もっとこう、骨格だけで見せていこうと思うようになったんです。とにかくシンプルで格好いいものをやろうと。

electric farfrance

LOCK ON ROCK』でグランプリを獲得

──そんな2人が一躍注目を浴びたのは、ジャパン・エフエム・ネットワーク38局が主催するオーディション・イヴェント『LOCK ON ROCK』でグランプリを獲得したことで。これはどんな経緯で応募したんですか。

健司:オーディションの存在は知らなかったんですけど、2人で初めてライヴをやった時からお世話になっている神戸のバックビートというライヴハウスの店長が「こんなのあるねんけど」って応募用紙を持ってきて。そこに“総合プロデューサー、布袋寅泰”と書いてあって、エエッ!? と驚いたんですけど(笑)。

──審査委員長の布袋さんは「オリジナリティという点で言えば、彼らが断トツなんじゃないか。キャラクターも立っているし、音楽へ向かう真面目な姿勢にも好感が持てる」とエレクトリック・ママを大絶賛したそうですね。

亜里沙:そんな言うてもらえるなんて、ホント有り難いことです。

健司:一次予選を通った時点で、他のバンドと比べると場違いだなと思ってましたからね。僕らはどちらかと言えばキワモノと言うか、アンダーグラウンドな扱いを受ける気がしていたので、まさか一次予選が通るなんて思ってなかったんですよ。だから凄く意外でした。ただ、一次予選の後に近畿地区の決勝みたいなんがあったんですけど、実力はさておき、自分達にインパクトだけはあると思ってたんです。それが吉と出るか、凶と出るかみたいなところやったんですよ。

亜里沙:オーディションって言ってもライヴ審査ですし、いつものライヴと変わらん感覚で臨んだんです。観てる人が誰であろうと関係ないし、とにかく自分達のライヴの良さを出したいと思ってましたね。まぁ、メチャクチャ緊張しましたけど。

健司:全国大会の決勝で、ギターのシールドが抜けて無音になってしまったんですよ(笑)。いつもは慎重にセッティングするんですけど、オーディションっていうこともあって転換が凄く早くて、それでちょっと抜け目があったんですね。

──そんなハプニングを物ともせずに亜里沙さんはドラムを叩きながら堂々と唄い切って、審査員の満場一致でグランプリを獲得されたと。その結果、今回こうしてメジャー・デビューへの道が拓けたわけですが、レコーディングの環境自体がガラッと変わって戸惑いはありませんでしたか。

健司:今回は勝手から何から全然違いましたし、音作りに掛ける時間もまるで違いましたね。ひとつの音を決めるのに使えるのが今までは“1”やったとしたら、今回は“7”か“8”くらいまで使えましたからね。

──レコーディングは東京で?

健司:そうです。エンジニアの方も豪華に3人もいらっしゃって(笑)。

──ROSSOやGO! GO! 7188など先鋭的なロックを手掛けている山口州治さんを「BABY DON'T CRY」と「THE WALL」の布袋さんプロデュース・ヴァージョンで、バンドから女性ヴォーカルまで幅広く手掛ける宇賀神正明さんを「THE WALL」のオリジナル・ヴァージョンと「COOKOO-VI COO-VIDOO」で、Spinna B-ILLやCaravanなどを手掛けてきた内田伸弥さんを「GODDAM」「GLORY DAYS」「DYAN」「JAMJAMJAM」でそれぞれ迎えてレコーディングされたそうですが。

亜里沙:3人とも全然違う強い個性を持っていて、その持ち味によって私達の曲がそれぞれ面白くなりましたね。自分達から“こうしたい”という意見ももちろん出していきましたけど、3人からも“こうじゃないか?”という意見が盛んに出てきて、それを上手くミックスした感じでした。いい意味ですんなりじゃなくて、混ざった感じになってると思います。結果的に凄く良かったですね。

ブルースに根差した新しい音楽

──収録曲は、ライヴでもすでにお馴染みのバンドの代表曲ばかりですよね。

健司:バンドの初期から最近までの曲が万遍なく並んでますね。昔の曲で最近のライヴでは余りやってなかった「GLORY DAYS」や「COOKOO-VI COO-VIDOO」なんかは全然違う感じになって、僕らにとっても新鮮でした。アレンジを変えて、新しい感覚でやれましたから。

亜里沙:「COOKOO-VI COO-VIDOO」がさっき言ったインプロで10分、15分あった曲なんですよ。

──インストの「JAMJAMJAM」はもう少し長く聴きたかった気もしますね。1分ちょっとくらいで終わってしまうから。

健司:インタールード的な感じで入れたんですけど、ホンマは5、6分あったんですよね。その一番いい部分だけを入れてみたんです。アルバムには入れなかったんですけど、実はもう1曲セッションをやったんですよ。B:RIDGE styleというバンドのt.o.Noさんにオルガンで参加してもらって、何も決めずにフリーでセッションしたんですけど、それも凄く面白かったですね。

──t.o.Noさんのオルガンは、「GLORY DAYS」や「DYAN」などの曲で凄く効果的に作用していますよね。

亜里沙:そうですね、音色やフレーズが耳に残りますね。自然に響いてると言うか。

健司:「GLORY DAYS」も昔の曲なんですけど、オルガンが入ることで新鮮に感じたし、凄くいい感じに仕上がったと思います。

──「THE WALL」や「GODDAM」のようなアッパーでノリの良いロック・ナンバーももちろん凄くいいんですけど、「GLORY DAYS」や「DYAN」、「COOKOO-VI COO-VIDOO」といったミディアム・テンポのブルース・ナンバーこそが実はエレクトリック・ママのバンドとしての本懐なのかなとも思ったんですよ。鬼気迫るプレイがとにかく凄まじくて、アルバムの中盤における大きな聴かせ所になっていると思うし。

健司:もともとはもっとドロドロした音楽をやってましたからね。このアルバムに入ってる曲よりも、もっと混沌とした感じのものを(笑)。そこから脱却して、ブルースをベースにしつつも違うアプローチを試みて出来た曲がこのアルバムに入ってるんです。

亜里沙:「THE WALL」は、そうしたアプローチを試みようとしていた分岐点の時期に出来た曲なんですよ。2年くらい前になるんですけどね。

健司:今の編成になる前からツェッペリンとかストーンズみたいな音楽をやっていて、2人になってからはそこから遡るようにロックのルーツとなる初期のブルースっぽい曲をやるようになって、それ以降、70年代、80年代に行くか行かんかくらいのパンク/ニュー・ウェイヴらへんまで来たって言うか(笑)。そんな感じはありますね。

──いわゆる3コードの単調なブルースに飽き足らなくなってきたんじゃないですか。

健司:ええ。ブルースをそのまま模倣してもそこまでだし、ブルースを根本に持ちつつ今まで見聞きしてきたことを採り入れていこうと思って。

亜里沙:巷にはいろんな音楽が溢れてるし、自分達の中にもいろんな引き出しがあるんやったら、ちゃんとそれを出して新しい音楽を作っていこうと思ったんですよね。

布袋寅泰との共同作業から学んだもの

──本作で注目してしまうのはやはり、『LOCK ON ROCK』のグランプリ受賞曲であり、アルバムのタイトルにもなっている「THE WALL」ですよね。バンドのセルフ・プロデュースと布袋さんのプロデュースと2つのヴァージョンが収録されていますが。

健司:トラックは2つとも違って、布袋さんにプロデュースして頂いた時にもう一度録り直したんです。自分達でプロデュースしたほうはクリックも被せもなしで一発録りしたんですけど、布袋さんにお願いしたほうは「こういうふうにやってみたら?」というアイディアをいろいろと頂いて。

──布袋さんによるプロデュースのほうは“SOLID BEAT”ヴァージョンということで。

健司:ええ、かなりソリッドな感じに仕上がったと思います(笑)。

亜里沙:自分達のほうはギターから始まって、布袋さんにお願いしたほうはドラムから始まるんです。リズム・パターンやキメとかもちょっと違うんですよ。

健司:2人でプロデュースしたほうはいつものライヴでやってる感じそのままなので、「いっそのこと全然違うものをやろう」と布袋さんが仰ったんです。

──布袋さんからはどんなアドヴァイスを受けたんですか。

亜里沙:具体的な説明とかいうよりも、まず音を鳴らしてみて…そこで浮かんでくるものがあるんでしょうね、布袋さんの中で。私達の演奏を目の前で聴いて、その場で直感的に思い付いたものをいろいろと言って下さってたと思うんです。

健司:ギターは「もっとトレブリーに、もっとエッジの効いた感じで」って言われましたし、ドラムの音の感じや歌のダブル・トラックは「スージー・クアトロっぽくしてみようか?」とか。僕らに対しては、ちょっと毒のある感じみたいなんが布袋さんのイメージやったと思うんですけどね。

──考えてみれば、第三者によるプロデュースということ自体、全く初めての経験ですよね。

亜里沙:そうです。これまでは自分達でウワーッと言いながら作るのが当たり前でしたから。全くの初体験です(笑)。

──その初体験が他でもない布袋さんなわけですから、物怖じしないほうがおかしいですよね(笑)。

亜里沙:ビックリしすぎて、キョトンとするしかなかったですね。正直、緊張して頭の中が10秒くらい真っ白になりました(笑)。“あれ、今何をやってるんかな?”っていう。でも、布袋さんから学べたことはたくさんあったんですよ。

健司:セルフ・プロデュースに関してはライヴとレコーディングが全然違うことに気付けたんですけど、布袋さんと一緒にやらせて頂いて思ったのは、こんなん言ったらエラそうですけど“冴えてらっしゃる”と言うか、“ああ、そういうことか”って言うか…。何て言うんですかね、レコーディングでの格好いいアプローチみたいなものですね。そこは凄く勉強になりました。音作りから録り方から、何から何まで。

亜里沙:私は、リズムが大事だということに改めて気付きました。ちょっとした違いなんですよね。ちょっとしたアイディアを加えてみることで大きな変化が生まれるって言うか、その面白みがありました。ちょっとしたことで聴く人をウキウキさせるようなものを与えるとか、そういうことを布袋さんから学べたと思います。

健司:聴く人を飽きさせない、マンネリにならない曲にするセンスが布袋さんは凄いんですよ。それもちょっとした工夫なんです。そのさじ加減が絶妙で、飽きるか飽きへんかの境目に敏感な方やなと思いましたね。

──亜里沙さんのブログに、レコーディングを終えて布袋さんと肩を組んだスリー・ショット写真がありましたよね。

亜里沙:私達はごっつい顔してますよね(笑)。真っ白と言うか、“終わったぁ!”っていう。1日で軽く痩せましたよ(笑)。

──他の収録曲については、布袋さんから何か意見を頂いたんですか。

健司:ちゃんと聴いてくれたみたいで、「他の曲も格好いいね」みたいなことを言ってくれはりましたけども…凄く恐縮しましたね。
electric

絶対にこの2人だけでやり続けようと決めた

──「THE WALL」の歌詞にある“壁をぶち壊せ”という言葉は、ちょっと大袈裟ですけど2人の中で生き方の信条みたいなところがありますか。

健司:そうですね。僕ら自身にも当てはまる部分がだいぶありますよ。バンドは調子がいい時もあれば悪い時もあるし、浮き沈みが激しいんで、そういう辛い時に“こんなんに負けてたらアカン!”っていう気持ちが「THE WALL」には籠もってると思います。そう言えば、この曲を自主で録った時も、マスタリングをやり直したりとか結構大変やったんですよ。そういう時の気持ちも入ってると思いますね。

亜里沙:自分達をこうして持ち上げてくれた曲ではあったんですけど、聴いてくれる人達もこの曲に当てはまるところがあると思うんですよ。自分達の曲で誰かの人生を変えられたら凄く嬉しいですからね。

──まぁ、まずこの曲に人生を変えられたのは、他でもない亜里沙さんと健司さんだと思いますけどね(笑)。

亜里沙:はい、実際そうですね(笑)。

──2ピースのサウンドに拘るがゆえに、ベースレスを補うべくギター・アンプとベース・アンプを両方使って、オクターバー(エフェクターのひとつで、通すとオクターブ・ユニゾンの音階をデュアルで出すことができる)を同時に2つ踏み分けているんですよね。

健司:そうなんです。それで1オクターブ下と2オクターブ下の音をベース・アンプから鳴らしてるんですよ。昔はギター・アンプひとつでやってたんですけど、「ベースを入れたらどないや?」と周りから何度も言われて、“そんなんやったらベースの音も出したるわ!”と思って。それでこのスタイルになったんです。“どうや、これでベースの音も出とるやろ!?”って言うか(笑)。

──簡単に仰いますけど、実は大変な技巧派と言えるんじゃないですか?

健司:でも、知り合いにもベースレスのバンドがいて、ギター・アンプとベース・アンプを使って同じようにやってますよ。僕だけが特別なわけではないと思います。ナチュラルにベース・アンプからギターの音が出てるだけやったら聴覚上の低音と言うか、実際のベース音ではないので、音源を聴いた人から「低音のグルーヴがないね」と言われることが多々あったんですよ。それを聞くたびに自分の中では“クソッ!”と思っていて(笑)。判った、それならベースの音域も全部カヴァーしたろと思ったんですよね。

──そこまで頑なになって、この2人だけでやり抜こうとする姿勢が素晴らしいと思いますよ。

健司:亜里沙と2人で決めたんですよ。絶対にこの2人だけで最後までやり続けよう、って。ただ意地になってると言えばその通りかもしれないですけど(笑)、最初に決めたことなので、これだけはやり抜かな、って思ってるんです。

生々しい空気感をステージから放ちたい

──あれだけパワフルで躍動感に溢れた亜里沙さんのドラムを聴けば、ブンブンと唸りまくるベースを欲しがるのが人情だと思うし、その辺は痛し痒しですよね。

健司:バスドラとベース音が被さった時の気持ち良さがないとアカンな、とは思ってましたからね。まぁ、まだまだこれから試してみたいことがあるし、サウンドはもっともっと変化させたいですね。

──ライヴ同様、ドラムの抜けの良さが本作でも際立っているんですが、エンジニアの方達から何かアドヴァイスはあったんですか。

亜里沙:特に細かくはなかったんですけど、私達のいろんな話を聞いて“こういう音色が好きなんだろうな”と考えて形にしてくれたんだと思います。個人的にはとにかく、ドラムの音を大きく録って欲しいと思ってましたね。

──こうして1枚録り終えてみて、率直なところどう感じていますか。

健司:今までやってきた曲が新旧織り混ざっていることもあって、最初のアルバムながら集大成的な感じが僕の中にはありますね。古い曲も一番いい形で残すことができたし、言ってみればちょっとしたベスト・アルバムですね。と同時に、またここから新しく始まるんやろなっていう感じも確かにあると思います。このアルバムに入ってる曲以降に出来た曲もありますし、これからもまだまだ作り続けていくんで。

亜里沙:今までは自主盤って言うくらいで全部自分達でああしようこうしようとやってきて、そういうのももちろんいいんですけど、今回のアルバムにはいろんな人達の手が加わってるから、今まで作ってきたCDとは全然違いますよね。だから凄く大きなアルバムなんです、自分の中では。人間は独りでは生きていかれへんなぁ…って、そんな当たり前のことを今回は凄く思いましたね。やっぱり人間同士が関わり合わんと、そこから新しいもんは生まれないんだなと実感しました。

──バンドの真髄であるライヴに対する向き合い方も変化してきたんじゃないですか。

健司:そうですね。最初の頃のライヴは、ヘンに押し付けるわけではなかったんですけど、自分達がいいと思ってる音楽を“どやッ!?”と見せ付けるようにやってた気はします。自分達がいいと思ってるんやからみんなも判るはずや、と言うか。今はそうじゃなくて、お客さんにはもっと単純に楽しんでもらいたいと思ってますね。

亜里沙:自分らのことだけじゃなくて、そこにいる人達のことも冷静に見られるようになったんですよね。ライヴで一番楽しいのは、客席の知らん人と目が合って、凄く気持ち良さそうにしてるのを感じた時なんですよ。それが一番嬉しい。演奏してる私達に、向こうから“今こんなこと思ってるよ”って表情や行動で返してくれてるわけですよね。そのやり取りが凄く面白いんです。

健司:ハッピーになることだけがすべてじゃないと思いますけど、“ええ曲やな”とか“テンション上がるな”とか、そういう純粋な楽しさを共有したいですね。

亜里沙:伝えたいことが変わってきたんでしょうね。最初は“私達はこんなやねん”みたいのを全面に出したかったんです。今はそういう時期が終わって、その場で生まれた生々しい空気とか生きてる感覚をステージから放ちたいと思ってますね。



debut mini album

THE WALL


01. THE WALL
02. GODDAM
03. GLORY DAYS
04. DYAN
05. COOKOO-VI COO-VIDOO
06. JAMJAMJAM
07. BABY DON'T CRY
08. THE WALL (SOLID BEAT produced by HOTEI)
EMI Music Japan TOCT-26447
2,000yen (tax in)
2008.2.06 IN STORES
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Live info.

ELECTRIC MAMA vs pocket life Wレコ発 CD直売会インストアライブ
2月13日(水)神戸STAR CLUB
with:pocketlife / The DARARS / theft / LEO

SHINJUKU LOFT FREE LIVE
2月20日(水)新宿LOFT(SUB STAGE)
*MAIN STAGEでの“LOFT POWER PUSH!”終演後にSUB STAGEにて開催

BLUE VELVET NIGHT VOL.82
2月23日(土)渋谷 青い部屋
with:ROSE PINK CADY (ex.THE DEVILS) / PEACOCK BABIES / LET'S GOES / GOLDEN (ex.silent tongue)
DJ:鳥井賀句 / 松田尚久

おめでとうELECTRIC MAMA! JAMでのレコ発Party
2月26日(火)新宿JAM
with:THE Jap / ザ・マックスベット / THE RANDLINES / THE EQUUS / THE HOMESICKS / ザリガニ$

ELECTRIC MAMA official website
http://www.electric-mama.jp/

posted by Rooftop at 15:00 | バックナンバー