ギター バックナンバー

FAR FRANCE ('08年2月号)

FAR FRANCE

衝動に充ち満ちたパフォーマンス! 規格外のスケール!
メンバー全員が弱冠20歳の新世代パンク・バンド、遂にデビュー!

昨年、下北沢シェルターで自主企画ライヴ『Waiting For My Men』を3ヶ月連続で敢行し、シェルターの店長からも「若くて粋が良く、今後ひとつのシーンを築けそうなバンドのひとつ」と太鼓判を押されたFAR FRANCE。デビュー・アルバムとなる『LOVE』は、その自主企画ライヴから厳選に厳選を重ねたベスト・トラック7曲(+エンハンスド映像1曲)が収められている。デビュー・アルバムがいきなりのライヴ・アルバムというのも規格外だが、実際のライヴ・アクトも同様に規格外そのもの。原始の叫びと呼ぶに相応しい鬼気迫るヴォーカルと無軌道な衝動そのままのハイ・テンションなプレイ、それらが生み出す得体の知れない闇雲なエナジーは観る者をただただ圧倒させる。そんなライヴでの熱気と焦燥感をパッケージした本作は、FAR FRANCEというバンドの本質を余すところなく伝える格好のアイテムだと言える。特筆すべきはそのユニークな楽曲の数々だ。猛々しい爆音と複雑極まりない展開の中に見え隠れするポップ・センスには普遍的な魅力が確かにある。この早熟にして濃厚なバンド、この先ひょっとしたらひょっとするかもしれない。(interview:椎名宗之)

ノイズ・ミュージックを宅録する早熟さ

──もともとはバンドではなく、畠山さんと英さんが宅録を繰り返していたことからすべてが始まったそうですね。

畠山健嗣(g):そうなんです。音楽を聴くのは好きだったんですけど、まずは自分達で録音してみたかったんですよ。それが中学2年の頃で。中学の初めにSONIC YOUTHにハマって、それからノイズの方向に行きまして。ノイズを入れたものをラジカセで録音してました。

──13歳でSONIC YOUTHとは早熟ですねぇ…。

畠山:中1の時に来日公演に行ったんですよ。

──同時代のJ-POPには興味がなかった?

>英 真也(vo, g):僕は普通に、L'Arc〜en〜Cielとかを聴いてたんですけどね(笑)。

畠山:僕はBLANKEY JET CITYの『ガソリンの揺れかた』がきっかけでロック方面に行きました。

──『ガソリンの揺れかた』ということは、1997年だから…。

:小4、小5くらいですね。

──末恐ろしい時代になったもんだ(笑)。

畠山:BLANKEY JET CITYはすでにマキシ・シングルで出していて、シングルは8センチのものだと思っていたので、8センチを探して無かった記憶があります。

──宅録時代から随分と時間が経ってからバンドを組んだんですよね。

畠山:2年くらい経って、高校に入ってからですね。部屋で楽器をデカい音で鳴らし始めて、隣の部屋のお婆ちゃんから「うるさいから止めてくれ」って言われたので(笑)、仕方なく練習スタジオに行くようになったんですよ。ドラムの高橋(高橋豚汁)が吹奏楽部に入っていて、ロックを聴くヤツじゃなかったんだけど、ひとまずドラムを叩けるから連れてこようと。それでスタジオに入って、そこで初めてカヴァーをやり始めたんです。クラムボンや赤痢なんかをやってましたね。聴くのもやるのも雑食なんですよ。

──オリジナル曲を作ろうとは?

:最初は曲を作ろうとしてやってたわけじゃないんですよ。ただみんなで音を出したくて。

畠山:アンプをフルテンにして叫んでみたりとかね。

──ベースの松島さん(松島 昴)はメンバー募集で加入されたんですよね。

:ウチのHPで募集をかけて、誰も来ないだろうと思っていたのに1人だけ来たんです。それが松島君だったんですよ。

──松島さんが加入された頃は、もうFAR FRANCEと名乗っていたんですか。

畠山:はい。彼が入ったのが2006年の夏だから、19の頃ですね。僕らが16くらいの時に、最初の3人ともう1人違うベースでFAR FRANCEという名前でやり出したんです。

:学生が主催するようなイヴェントに先輩から誘われた時はカヴァーばかりで、オリジナルを作ろうと思ったのはその1年後くらいでしたね。国分寺のライヴハウスとかにも出たりしてましたけど、活動が本格化したのは松島君が入ってからなんです。

──現在、活動のベースとも言えるシェルターには、最初にデモ・テープを持って行ったんですか。

畠山:そうです。オーディション・ライヴを受けさせてもらって、夜の部に上がったんです。シェルターは54-71やfOULをよく観に行っていたし、凄く好きなライヴハウスだから出たかったんですよ。

──他にデモ・テープを送ったライヴハウスは?

畠山:251とアースダムですね。アースダムはまだオープンして半年くらいで、店長がKIRIHITOの早川さん(早川俊介)だったから送ってみようと。もともとKIRIHITOが好きだったんですよね。

──周囲のライヴの反応はどうだったんですか。

畠山:早川さんは比較的面白がってくれましたね。西村さん(西村仁志、シェルター店長)は企画をやった時に「前に比べたら音楽が固まって良くなってきたね、今後も頑張って」と。
farfrance

ライヴの熱気を封じ込めたデビュー・アルバム

──今回発表されるデビュー・アルバムはシェルターでのライヴから選りすぐりの音源を集めたものですが、スタジオ・アルバムではなく敢えてライヴ・アルバムで行きたい意向が強かったんですか。

畠山:レーベルの方からはスタジオ盤にしようと言われたんですけど、何か面白いことがしたかったんですよね。せっかくシェルターで3ヶ月連続で企画をやれるんだから、いっそのことそれを録ってストレートに出してしまおうと思ったんです。

──『LOVE』というアルバム・タイトルもかなりストレートですよね。

畠山:直感で僕が思い付いた言葉なんです。ストレートな言葉がいいと思ったし、音楽をやる時はいつもストレートでありたいと思ってますから。

──収録曲はFAR FRANCEの代表曲と呼んで差し支えないものばかりですよね。

:ずっとライヴではやってきた曲ですね。松島君が入ってからの曲もあれば、前のベースがいた頃からの曲もあるので、割とベストな選曲にはなってますね。名刺代わりの1枚になったと思うし、FAR FRANCEはこういうバンドだよっていうのが詰め込まれている。

──選曲の基準はどういうところですか。

畠山:緊張感と勢いがあるかどうか、ノリ切れているかどうかですね。

:3回の企画だったから3回やった曲もあって、その中で聴いて一番格好いいと感じるテイクを入れることがまず最低限。

畠山:でも、それで必ずしも演奏が上手くいってるかと言えばそうじゃない(笑)。「全身タイツ」はミスってたりもするし、演奏も粗いんですけど、これはこれで面白いからまぁいいかなと。ライヴ盤だからこその、予定調和では行かない面白さを詰め込みたかったんですよ。

──マスタリングに立ち会った時は、実際の出音と比べてどう感じましたか。

畠山:ミックスの作業が難航して、最初は思い通りの音にならなかったんですよ。ウチのバンドはベースが若干歪んでいる音で、そのベースの出す歪みの要素が自分の中でバンドの骨格部分になっているので、初めにラフ・ミックスしてもらったものを聴いた時に汚さが感じられなかったんです。

:そう、ちょっとクリア過ぎて、空間に広がっちゃう感じだったんですよ。シェルターの中音は聴こえやすくて、凄くやりやすいんです。自然と気持ちも昂ぶるし、それをそのまま聴いてる人の出音に伝わるかと思ったら、聴いてる限りではそうじゃなかったんですよね。なので、最終的に僕らが携わって固めた感じにミックスをして、今回のCDになっているんですよ。

──オーヴァー・ダビングは?

:ないですね。

畠山:そういうのは初めから“なしでしょ”って感じだったので。

──ライヴの熱気を封じ込めるのは、ある意味ではオリジナル・アルバムを作るよりも難しい気がしますけど…。

:実際、なかなか難しかったですね。単純にライヴをやってミックスしてもらって完成だと思っていたら、意外と考えていたものと違う部分があったので。

畠山:自分が聴いていて思ったのは、ライヴでもCDでもテンションが上がるのはベースの汚い部分だったんだな、って(笑)。それは改めて気付いたところですね。

──基本的に曲は畠山さんと英さんの2人で書くんですか。

:デモを持ち寄って、あとはセッションで。Aメロを弾き語りで録ってみんなに聴かせて、それをバンドで発展させるような感じです。

畠山:曲の構成が複雑なところは、スタジオでセッションしながら“こうやったら面白くなるんじゃない?”っていう感じでやってます。その結果、曲が7分くらいになっちゃったりするんですけど(笑)。

:そう、詰めてるのに長くなっちゃうんですよ。

──FAR FRANCEの曲には、畠山さんが影響を受けたと思しき54-71やfOUL、KIRIHITOにも通じる一筋縄では行かない何とも言えぬ変態性がありますね。構成もまるで通り一遍ではないし。

:自分としては客観的に見られないから、そこは判らないんですよね。

畠山:僕はヘンだと思いますよ(笑)。相当ヘンだと思う。

:いや、僕は真っ当なことをやってるつもりですけど(笑)。自分達が面白いと感じることをそのままやれればいいと思ってるんですよ。やってる僕らが楽しいんだったら、聴いてる人も楽しいんじゃないかなって。

──「addict」の構成とか、凄く展開が複雑じゃないですか。

:「addict」のメイン・リフは、中学生の時に宅録したものが元になっているんですよ。

畠山:英がギターを始めて半年くらいの時に録音していて、それをバンドでアレンジし直したんです。

──そういうケースは他にもあるんですか。

畠山:エンハンスドで入ってる「ピンクグレープフルーツ」は、高2くらいの時に出来た曲です。

:それ以外は今のメンバーになってからの曲ばかりですね。

時代ごと吸収してバンドを続けていきたい

──「ジャンボリー」は前半が切なさのにじみ出たメロディアスな曲ですけど、後半は案の定、予期せぬ方向に行きますよね(笑)。最後まで予断を許さないと言うか。

畠山:緊張感が欲しかったんですよ。一時期はそれがライヴのテーマになってましたね。激しさや勢い、あるいは静寂だけを伝えたいわけじゃなくて、楽曲の持つ空気感や緊張感を如何に出せるかが大事だと思ってるんです。「ジャンボリー」は特にそういう曲かもしれないですね。

──意識してひねくれたメロディや構成にしているわけではないんですよね。

畠山:決してひねくれさせようとして作っているわけではないんですよ。

:ただ、根本的にどこかズレてるところがあるみたいで(笑)。自分では思わないんですけど、歌詞のほうはよく「ネガティヴだね」って周りから言われるんですよね。日々の生活の中で感じるやるせないこととか、いつも思ってるわけではないのに自然とマイナスの歌詞になるみたいなんです(笑)。

畠山:それを凄まじいスクリーミングで吐き出す、っていう(笑)。

:ストレスを発散してるんですかね? 自分ではよく判らないですけど。

──ライヴではその破天荒なステージがすでに各方面で注目を集めていますけど…。

:シェルターでマイクを2本壊したり、アンプを1台おシャカにしたり、PAの方に凄く怒られてますね(笑)。ギターもブン投げたりしますけど、投げるのはかろうじてステージ内に留めてます(笑)。

──気が付いたらうっかり投げてしまっているんですか。

:そうですね。テンションが上がりきっちゃうと、自分でも訳が判らなくなるんですよ。

──そのテンションが上がりきったキワキワ感は、このライヴ盤にもよく出ていますよね。

:そう、それをCDに詰め込みたかったんです。

畠山:一度デモをスタジオで録ったことがあって、ライヴでの勢いをスタジオでそのまま出そうと思ってもなかなか難しかったんですよ。要するにまだ経験が足りてないという話なんですけど、ライヴ特有の激しさやテンションを詰め込むなら、やっぱりライヴ盤を出すしかないと思ったんですよね。

──ライヴでいつも心懸けていることは?

畠山:肩の力を抜いて、赴くままに楽しむことですね。以前はいいライヴがしたいという気持ちから必要以上に力んでしまうところがあったんですけど、今は少しずつバランスが取れてきたと思います。

──今度のシェルターでのレコ発はa flood of circleとnot great menという比較的世代の近いバンドをゲストに迎えて開催されますが、たとえば同世代、もしくはジャンルの近いバンドとタッグを組んでシーンの底上げを図るという発想はありませんか。

:よく「何系なの?」ってジャンルを訊かれますけど、自分達でも何と言っていいかよく判らないんですよね。

畠山:家で音楽を聴く時は無意識にジャンルで聴くところがありますけど、ライヴは全然関係ないですよね。このバンドのジャンルは…とか考えることは基本的にないですから。一緒になってドカンと面白いことができればそれでいい。自分達がどういうジャンルで括られているのかは判らないですけどね。

:僕らはまだ若いので、時代ごと吸収してバンドを続けていきたいですね。

──メンバー全員、弱冠20歳ですもんね。成人式、ついこの間でしょ?

:一昨日です(笑)。

畠山:まぁ、音楽をやる上で年齢は余り関係ないと思ってますけどね。ただ、ずっと音楽を続けている人達は純粋に格好いいし、僕らもずっとバンドをやっていきたいです。それ以外にやりたいことが見つからない。もっともっと面白い音楽をやりたいですね。


LOVE


01. はじまった絶望
02. 全身タイツ
03. 呼吸
04. ジャンボリー
05. home sweet home
06. addict
07. 難航
*enhanced video:ピンクグレープフルーツ
Wowee Records / PICTUS NEO DLWR-2002
1,890yen (tax in)
2008.2.13 IN STORES
★iTunes Storeで購入する(PC ONLY) icon

Live info.

Far France 1st mini album“LOVE”発売記念イベント
2月13日(水)下北沢SHELTER
with:not great men / a flood of circle
OPEN 19:00 / START 19:30
TICKET:advance-2,000yen / door-2,500yen
【info.】SHELTER:03-3466-7430 / ticket@bananamusic.jp

2月5日(火)新大久保Earthdom
with:グーミ / Kulu Kulu Garden / andmore...

2月24日(日)新高円寺Club Liner
with:Anchor-edge. / ときめき☆ジャンボジャンボ / nayuta

“LOVE”リリース・ツアー
3月22日(土)福井CHOP
3月23日(日)梅田ハードレイン
3月24日(月)難波ベアーズ
3月25日(火)京都アバンギルド
3月26日(水)四日市CLUB CHAOS

Far France official website
http://www.farfrance.com/

posted by Rooftop at 17:00 | バックナンバー