紅く燃え滾る“地球から3番目の星”の如く──
轟音ファズと激情のリズムが織り成す怒濤のダンス・モードに突入! detroit7にとっての2007年は、自らの足元をじっくりと見つめ直す重要な1年だったように思う。このインタビュー中でも菜花知美が語っている通り、光の差すところへ向かうべく踵を磨り減らした時期だったのではないか。バンドとしての本懐を遂げる場所であるライヴでは1本1本の精度を上げることに腐心し、前作『GREAT Romantic』の制作過程で見いだしたダンス・チューンの得も言われぬ躍動感に魅せられた彼らは、ガレージ・ディスコとも言うべきバンド独自のダンス・ミュージックを確立するに至った。その湧き上がる創作への熱情は、『Third Star From The Earth』という疾風怒濤の勢いと迸る才気が充満した作品として結実。白いジャズマスターで掻き鳴らされる轟音ファズは鋭利さを増し、凄味と艶気を加速させた菜花の歌声は只事では到底済まされない情感を発露。そして、アルバム・タイトルにもなっている“地球から3番目の星”=“太陽”のように悠然と紅く燃え盛る音像がとにかく素晴らしい。春先には初の海外ツアーも予定されており、彼らの世界基準の音楽が国境を越えて轟く日も近いかもしれない。鈍い暗闇の中で、自らの生を際限まで燃やし尽くす者にこそ輝かしい光は訪れるものだ。(interview:椎名宗之)
ガレージとダンスが融合した唯一無二のサウンド
──去年は皆さんにとってどんな1年でしたか。
菜花知美(vo, g): 私、射手座なんですけど、去年は12年に一度の大幸運期だったらしいんですよ。実際にはそんなに大きな波が来たわけじゃないんですけど、コツコツと努力していったと言うか、地固めをしていた時期でしたね。
古田島伸明(b): そういう話で言えば、僕は遂に30代に突入したんですよ。まだ余り実感はないですけど、この先の10年が楽しみだし、良いスタートを切れた年でしたね。どんな1年だったかは、31歳になった時に思い返してみようかなと。
山口美代子(ds): 私は去年、厄年だったんですよね。まず思い出すのは、知らない間に免許が半年前に切れていて、凄いびっくりして(笑)。まぁ、それはいいとして(笑)、その前の年まではライヴの本数をかなり入れていたんですよね。ライヴ・バンドなんだから当たり前ですけど。去年はそのペースを見つめ直すと言うか、もう少し狙いを定めたライヴをやるようにしたんです。4月にSHELTERでやったBLEACHの企画はとても刺激的だったし、9月にはO-WESTでGO!GO!7188と2マンができたし、SPARKS GO GOが倶知安町(北海道)でやったイヴェントに参加させてもらったりと、1本1本のライヴが凄く充実していましたね。地元のスキー場であれだけ大きなフェスを開けるんだから、SPARKS GO GOはホントに凄いなと思いましたよ。私達もデトロイトでロック・フェスを開催するのが大きな目標のひとつなので。
──なるほど。バンドにとっては、1本のライヴの精度を上げることに特化した1年だったと言えますね。
山口: そうですね。いつ何処でやってもライヴは刺激的なものではあるんですけど、去年はライヴに臨む前に“今日はこういう人達とやるんだ”とか、今まで以上に意識的になっていた気はしますね。そういうライヴの積み重ねが着々といい形になってきたんじゃないかと思います。
──そうした意識の変化は、一昨年の11月にメジャー1stアルバム『GREAT Romantic』をリリースしてから自分達の活動の在り方を改めて見つめ直したゆえなんでしょうか。
山口: どうなんでしょう? 今回のミニ・アルバム『Third Star From The Earth』は、内容としては『GREAT Romantic』と繋がっている部分が凄くあるんですけどね。
菜花: 『GREAT Romantic』に入っている「This Love Sucks」という曲が、この『Third Star From The Earth』の生まれるきっかけになっているんですよ。「This Love Sucks」は『GREAT Romantic』を作っていた時に一番最後にできた曲なんです。
山口: そう、「This Love Sucks」はメンフィスに行く直前にできたんですよ。ガレージとダンスが融合した曲と言うか、録ってみたら自分達でも楽しかったし、周りの評判も良かったんですよね。それ以降、そういうタイプの曲をもっとやりたいと思うようになって。
菜花: 「This Love Sucks」は、確か最初はもっと違う雰囲気にしようとしていたのかな? ダンスはダンスなんだけど、ギターはそんなに轟音じゃなかったんです。でも、「いつものナバちゃんみたいに弾けばいいじゃん」って言われて、ムチャムチャ弾いてできた曲なんですよ(笑)。
──いわゆる4つ打ちのディスコ・ビート曲というのは、バンドにとって新機軸でしたよね。
菜花: 4つ打ちって言うと、ミドルでポップな歌モノみたいな曲
──私達の曲で言えば「Beautiful Song」とかそういう曲が多かったから、「This Love Sucks」ができた時は凄く新鮮でしたね。私達なりの激しいダンス・チューンができたと思ったから。
山口: 自分達が一番得意としているガレージっぽい部分と4つ打ちがギュッと昇華した曲でしたからね。
古田島: 3人ともディスコ・ビートが元々好きな部分としてあって、それが極々自然な形で曲になったんです。
──ここ数年、ディスコ・ビートを全面に押し出すバンドが日本でも増えたと思うんですが、detroit7が同じことを試みても通り一遍のものには決してならないですよね。ミラー・ボールに喩えるなら、ギラギラと鈍い光を放ちながら超高速回転していると言うか(笑)。
古田島: ああ、確かに(笑)。ギラッとした感じはありますよね。
菜花: ザラつき、ギラつきが充満したバンドですからね(笑)。
──『GREAT Romantic』と地続きの作品だからこそ、『Third Star From The Earth』はガレージ・ディスコと言うべきdetroit7流ダンス・チューン「IN THE SUNSHINE」から始まるわけですね。
菜花: そうです。すべては『GREAT Romantic』から派生していて、そこから曲作りをしていったんですよ。ガレージとダンスが融合した曲をたくさん作っていって、徐々に精度を高めていった。
山口: 先にライヴでやっていた曲もあるんですよね。そこで得た手応えや周囲の反応を見て曲を練り直したりもしました。
──横ノリのグルーヴ感を出すのは、単純に難しくないですか?
山口: まだ横ノリまでは行けてないんですけど、私は洋楽の聴き始めが60〜70年代のリズム&ブルースだったので、ダンス・チューンや16ビートのノリの良い音楽をやりたいとずっと思っていたんですよね。それに菜花ちゃんの持っている音楽的要素とどう近付いていくかみたいなところがやっと見つかったから、本望ですよ。
古田島: ベース・プレイに関してはそれほど大きな変化はないんですけど、僕が好きなダンス・ミュージックはケミカル・ブラザーズとか、もうちょっと新しめなんです。ああいう人達は機械を駆使している一方で、何処かバンドっぽい生々しさを求めているんですよね。自分がやる上では本物のバンドでできるわけだから、そのいいとこ取りと言うか、生々しさを追求したいと思っていますね。
──detroit7の場合、古田島さんと山口さんがどれだけ無機質なディスコ・ビートを叩き出そうが人力の温かみは必ず残るし、そこに菜花さんの歪みきったギターとドスの利いた歌声が絡み合えば、自ずとオリジナリティの塊になると思いますけどね。
菜花: そう言ってもらえると嬉しいですね。
山口: そのオリジナリティこそがこのバンドの最大の強みですから。
燦々と照りつける太陽のように
──今回発表される『Third Star From The Earth』ですが、タイトルの意味するところは?
菜花: 地球から3番目の星、つまり太陽のことなんです。普通の数え方とは逆にして。
──ああ、惑星は太陽に近いほうから水星、金星、地球という順番ですからね。地球を軸にすると火星、木星、土星と来るから、“Third Star”とは土星のことかなと僕は思ったんですよね。土星=Saturn、サタン=悪魔だから、新しいアーティスト写真は悪魔のシルエットなのかなと(笑)。
古田島: おお、なるほど!(笑)
菜花: それもありましたね(笑)。ただ、土星だと“Star”じゃなくて“Stone”になるはずなんですよね。歌詞における私のお題ワードというのがありまして、よく使っているのが“太陽”“空”“星”“涙”“愛”といった言葉なんです。これらはすべて日常における希望や光を象徴しているし、ということは、自分は光り輝くものをテーマにして唄っているんだなと思って。それで燦然と輝く太陽をタイトルにしようと考えたんですよ。
──「Cry for the moon」という曲も収録されていますが、“月”もまた光り輝くものですよね。
菜花: “月”もよく使う言葉なんですけど、どちらかと言えばもの悲しくて切ないイメージがあるんですよね。それよりも今回は安らげる感じとか、ギラギラしている太陽のイメージで行きたいと思ったんです。愁いのある夕陽よりも、燦々と照りつける真昼の太陽と言うか。
──ジャケットは、その照りつける太陽の下で菜花さんが拳を突き付けていて、凄くパンチがありますよね。
山口: 最初は“サンデー・パンチ”という言葉もタイトルの候補にあったんですよ。ボクシング用語で“切り札となるパンチ”“渾身の一撃”という意味で、太陽をバックに拳を突き出したイメージが私の中にあって、ジャケット案だけ採用されたんです。さすがにタイトルは却下されたんですけど(笑)。
──そう考えると、サイズがミニとは言え、れっきとしたコンセプチュアルなアルバムと言えるんじゃないですか?
菜花: まぁ、唄うテーマは一貫して変わらないものなんですよね。以前は“光の差すところへ行きたいな”という漠然とした感じだったのが、今は“光の差すところへ行こうよ!”という明確な意識があるから、少しは変わったと思いますけど。なんせ12年に一度の大幸運期だから、何事もポジティヴに行かないと(笑)。
──せっかくの機会なので、1曲ずつ収録曲について伺います。先ほどから話にある通り、「IN THE SUNSHINE」は本作を象徴するダンサブルなナンバーですね。
古田島: 録る前にライヴでも演奏していたし、それが功を奏した感はありますね。
菜花: 今回のアルバムの中では一番初めにできた曲なんです。この曲を土台にして曲をどんどん作っていったんですよ。頭のリフがまずあって、そこからジャムって形にした感じです。録りも一発で。
──普段からジャムを経て曲が完成することが多いんですか。
山口: そうですね。リフやリズムの断片から形作ることが多いです。そういうやり方だとスタジオ代はかさみますけどね(笑)。
菜花: スタジオで煮詰まってどうにも広がらないと、家に持ち帰って宿題にするんです(笑)。
──事前に曲をきっちり固めるよりも、スタジオの偶発性に身を委ねてみるという意図があるんでしょうか。
山口: バンドっぽさをずっと大事にしていますからね。1人1人の中から出たものでひとつの曲にしたいんですよ。
菜花: 自分独りで考えて作ったものには所詮限界があるし、大して面白くないと思うんですよね。この3人が揃ってバンドをやっているわけだから、3人分のアイディアで臨めば思いも寄らないものが生まれるはずだと信じているんです。
──2曲目の「microphone drives」は疾走感に溢れたナンバーですが、凄まじいドラムの乱れ打ちがとりわけ印象に残りますね。
菜花: うん、これはまずドラムがありきの曲でしたからね。美代ちゃんのタイコからジャムって作りました。
山口: 16ビートを意識した曲にしたかったんですよ。なんて言うのかな、このバンドはギターとベースがいつも分厚い壁となって私の目の前に立ちはだかっているんです。ギターはビャーッ!と鳴って、ベースはダーンッ!と行く、みたいな。
菜花: それ、もの凄く関西人っぽい表現だよね(笑)。
山口: 確かに(笑)。自分のパートまで分厚くなる必要はないと私は思っていて、ギターとベースの間を抜けていくようなドラムを叩きたいんですよ。それがこの「microphone drives」ではいいバランスで形にできたんじゃないかなと。
菜花: 本当は、歌詞の中にもある「electric dance」というタイトルにしたかったんですよ。外国人の友達に「“electric dance”って言葉ある?」と訊いたら、「ないよ」と。で、「どんなダンスなの?」と訊かれたから、痙攣したような踊りをしてみせたんですけど、全然伝わらなかったんです(笑)。だから多分、そういう表現はないんですよね。ただ、この間『ブラック・ジャック』を読み直していたら“エレクトロニック・ダンス”という表現が出てきて、これが私の中でずっと残っていたのかな? と思って。
ひとしきり泣いて元気を取り戻す
──続く「FATMAN BLUES」は粘着質なリフが耳に残るブルージーな曲ですが、これもダンサブルな要素がありますね。
菜花: もう二度と会えない人に捧げた歌ですね。リフは仰る通りに粘っこく、溜めて爆発させる感じで。
山口: 「IN THE SUNSHINE」と同じように4つ打ちなんですけど、こっちはかなりベースが効いていますね。さっき言ったダーンッ!とした音の壁からちょっと変わってきたと言うか。
菜花: ダーンッ!と行って、最後はドカーン!だ(笑)。でも、今までにないタイプの曲ですよね。できた時に自分達でも“これいいよね!”って凄く盛り上がったんですよ。
──個人的に本作の中で一番好きなのが4曲目の「Cry for the moon」なんです。日本語で切々と唄われるメロディアスなラヴ・ソングで。
山口: ありがとうございます。最初から“Hey, little baby”という歌詞があった曲なんですよ。
菜花: なぜ“little baby”なのか、自分でもよく判らないんですけど(笑)。パッと頭に浮かんだ言葉を歌詞に残して、そこから膨らませていく書き方が多いんですよね。
──歌詞が日本語なのは、メロディとの相性が良いからですか。
菜花: 英語にするか日本語にするか、自分の中では最初から決まっているんですよ。これまた、自分でもよく判らないんですけど(笑)。「Cry for the moon」はなぜか最初から日本語だなと思っていて、そういうのは感覚的なものですね。インスピレーションがすべてです。
──“Hey, little baby 旅に出よう/Hey, little baby 世界の果てに/Hey, little baby 星を見よう、君とふたりで”と唄われるロマンティックな歌詞で、情感のこもったヴォーカルがとにかく素晴らしい曲だと思います。
菜花: 旅をしたいといつも思っているんですけど、なかなか行けないんですよね。“世界の果て”という言葉も好きなんですよ。果てなんてあるわけないんだけど。昔、九州を車で一周したことがあって、その時のことを色々と思い出して歌詞を書きました。
──“君”に愛情を注ぐ沸点の高さと、タイトルにある“moon”の凍てついたイメージとの対比がユニークですよね。
菜花: “Cry for the moon”は“どうしても手に入らないもの”という意味があって、手に入れたいのにどうしようもできないもどかしさを表現したかったんですよ。君がそばにいてくれさえすればいいのに、っていう。こう見えて私、凄くロマンティストなんですよ(笑)。
──最後の「Watering!」はシンプルかつストレートなロックンロールで、こうした小気味良い締め方は粋に感じますね。
菜花: この曲は、私が憧れる鈴木いづみと阿部薫の関係、ゼルダ・セイヤーとスコット・フィッツジェラルドの関係、『ベティ・ブルー』という大好きな恋愛映画の要素を全部詰め込んで、“Watering”=泣くという行為をテーマにしてみたんです。私、泣くと元気になるんですよ。泣き女体質なんです(笑)。ひとしきり泣くと、“明日も頑張ろう!”ってカラッとなれる。この曲が終わって元気を取り戻して、また1曲目の「IN THE SUNSHINE」に戻って欲しいんですよ。そうやって何回も聴いてくれたら嬉しいですね。
山口: あと、今回は笑って終われるアルバムにしたかったんです。「IN THE SUNSHINE」で始まって「FATMAN BLUES」で終わるような、ダンス・ナンバーで始まって終わるパターンも考えたんですけど、「Watering!」をレコーディングしていたらどんどん面白くなってきて、締めはこの曲で行こうと思ったんです。ギターの音が突然大きくなったり、異常にコーラスに凝ってみたり、何じゃこりゃ!? っていう感じの曲ですから(笑)。
音楽は国境を越えると信じている
──今年の3月には、“SXSW”(サウス・バイ・サウス・ウエスト:アメリカ最大の音楽見本市)への出演とアメリカ・ツアーも決定していますね。“SXSW”は事務局から直々のオファーで、異例の大抜擢だったそうですが。
山口: 有り難いですね。GO!GO!7188が去年“SXSW”のジャパン・ナイトに出演していて、O-WESTで彼女達とやった2マンを観た関係者が打診して下さったみたいですね。もちろん私達もアメリカに行ってみたい気持ちはずっとあったんですけど、まずは日本でやるべきことをやってから行くべきだと考えていたんですよ。そのやるべきことは『GREAT Romantic』を完成させて成し遂げたと思ったので、やっと海外に目を向けられるようになったんです。新しいミニ・アルバムの発表後でもあるし、時期的には良いタイミングだと思いますね。
──海外でのツアーは初めてですか?
菜花: “SXSW”も含めて、初めての経験ですね。
──凄く意外ですよね。ティーンエイジ・ファンクラブやリーフ、マニック・ストリート・プリーチャーズやグレアム・コクソン(ex.ブラー)といった海外のアーティストが来日の際に度々共演している印象が強いので。
菜花: ああ、なるほど。私達としては“今だ!”っていう感じなんですけどね(笑)。
──自分達の音楽が世界基準でどの位置にあるのか、やはり常に意識していますか。
菜花: 音楽は国境を越えると信じていますからね。その音楽が格好良ければ何処の国だろうが関係ないと思うし、何語だっていいんじゃないかと。響くものは響くはずだし。
山口: そう、日本語だろうと英語だろうと、渾身の思いで“アアッ!”って叫ぶだけでも伝わるものがあると信じたいんですよ。
──言葉の壁は越えるものだと?
菜花: うん。超えるものだと信じていますね。そこに揺るぎはないです。
──アメリカ・ツアーはニューヨーク、ボストン、シカゴ、デンヴァー、シアトル、サンフランシスコ、ロサンゼルスと1週間に7公演が予定されている過密スケジュールですが、目に物を見せるという意気込みで?
古田島: もちろん。
山口: 一昨年メンフィスでレコーディングした時に、1回だけ向こうでライヴをやらせてもらったことがあるんですよ。呑み屋みたいな所だったんですけど、ダイレクトさが日本とはまるで違ったんですよね。演奏が始まった途端に呑んでいる人達がこっちに来てくれるし、歓声も凄くて。あの身近な感覚が凄く楽しかった。
古田島: 観るほうも純粋に音楽を楽しんでいる感じで、音楽が生活の一部であることがよく判りましたね。
──こうした海外のツアーはいずれ定着化させたいですか。
山口: 是非そうしたいですね。イギリスやヨーロッパにも行ってみたいですし。
菜花: ツアーの規模が大きくなったら、さっき話したようにデトロイトでフェスをやってみたいですから。日本人がデトロイトでフェスをやるなんて、前代未聞じゃないですか?(笑)
──凄く今さらですけど、なぜに“デトロイト”なんですか。
菜花: 単純に響きだけで決めたんですよ。地名と数字の付いたバンド名にしたかったんです。“デトロイトって格好いいなぁ”っていう。で、デトロイトって言えば“7”かな? って(笑)。ホント直感なんです、これも。
山口: でも、後付けだけど菜花ちゃんの好きなアーティストはデトロイト出身が多かったりするんだよね。
菜花: そうそう。MC5もイギー・ポップ&ザ・ストゥージズもデトロイト出身で、無意識のうちに繋がったなと思って。今のデトロイトって音楽的にはどうなんだろう。エミネムとかホワイト・ストライプスもデトロイトだよね?
古田島: ちょっと前はデトロイト・テクノが流行っていたよね。アナログ・シンセとドラム・マシンを多用した感じの。新しい音楽や文化が比較的多く生まれる土壌なのかなと思いますね。
──detroit7のバンド人脈なら、アメリカ以外の国でもツアーができそうですよね。
菜花: 今まで対バンしたバンドが結構いますからね。オーストラリアのウルフ&カブやイギリスのフィクション・プレイとかとは連絡が取れると思いますよ。
心も躍って身体も踊れる場所を提供したい
──現在はすでに新曲のデモを録り溜めているとスタッフの方から伺いましたけど、バンドの状態がすこぶる順調なことの表れと言えますね。
菜花: もうバリバリ録っていますよ。いつも新曲はそんなペースで、時間のあるうちにできるだけ曲を作る感じなんです。
山口: 最近は菜花ちゃんがエンジニア・デビューも果たしましたからね(笑)。普通のリハスタで自分達でマイクを立てたりしているんです。それがローファイで凄く楽しくて、そんな環境ができたからどんどんデモができているんです。録りたいからデモを作るっていう。
菜花: 自分達自身で曲の音像が掴めたらいいなと思って。この曲にこの要素は要らないから、その代わりギターをジャミジャミに歪ませてみようとか、ヘンなエフェクターを掛けてみたりとか。実際に録る時の音像やイメージが絞られてくるから、そういったアプローチをしているんですよ。ヴォーカルがメチャクチャ割れていたり、タンバリンの音を異様にでかくしてみたりとかね(笑)。
──理想とする音像という点では、今回の『Third Star From The Earth』はかなりのレヴェルにまで達せたんじゃないですか。
菜花: そうですね。私、ちゃんと作品にしたいギターの音像というのがあって、それがずっとできなかったんです。自分が理想とするバンドのCDを聴き直そうと思って、ダイナソーJr.やピクシーズ、ホワイト・ストライプスなんかを聴いてみたら、ギターの音は思っていたほどでかくないんですよね。自分では“もっと欲しい!”と思って、それで自分達の作品では目の前でギターが鳴り響いているくらいのレヴェルで出してもらったんですよ。だから今回のミニ・アルバムは本当に自分の理想の音が録れているし、バンドの音像としても文句なしに格好良くて、凄く満足しているんです。
──菜花さんの理想とするギターの音像を敢えて言葉にするならどういったものですか。
菜花: ザラついていて、あったかい音。でも尖っていて、でかくて太い。そんな感じかな。
──そういった音像はこれまでの諸作品で出せていなかったわけではないと思いますけど…。
菜花: 何と言うか、ちょっと細くて弱かったんですよ。それはもしかしたら私のギター・プレイが変わったのかもしれないですけどね。
──プレイのアプローチが変化してきた意識はありますか。
菜花: 前よりも楽にギターを弾いているような気がします。前は息が止まるくらい肩に力を入れて弾いていましたから。今は…踊ってますね(笑)。
──その力みのなさが良いプレイに直結しているのかもしれませんね。
菜花: そうですね。あとはもう、ソロも特に決めないで好きに弾くっていう(笑)。
──今録り溜めているデモは、本作の延長線上にあるタイプの曲が多いですか。
山口: やっぱりダンスというテーマからまだ離れられなくて、4つ打ちが基本ですね。ただ、そこからいろんなダンスに裾野を広げようとはしています。私がやりたいと考えているのは、誰でも自然に踊れるようなダンス・パーティーみたいな感じの曲。ワルツっぽい曲があってもいいと思うし、ジャズ寄りなテイストがあってもいいと思うし。そういう広げ方をしたいなと。あと、今度は日本語のダンス曲に挑戦したいんですよ。今回作った曲は英語が中心で、歌だけでのれるところがあって凄く良かったんだけれども、次は日本語でそれをやってみたいんです。
──どれだけ異質な音楽的要素を採り入れても、“これがdetroit7です!”と言い切れる潔さが今のバンドにはある気がしますね。
山口: うん、着実にそうなってきている気がします。
菜花: だからきっと、今年はもっと“光り輝く”1年になるんじゃないかと思いますよ。
古田島: アメリカ・ツアーもあるしね。国境も越えて、いろんな人達に届く音楽をやっていきたいですね。
山口: これまでの轟音炸裂なイメージのライヴ・パフォーマンスは維持しつつも、今はオーディエンスを踊らせたいという気持ちが強くあるんです。何も考えずに心も躍って身体も踊れる場所を提供していきたいですね。今までのライヴはギューン!と行く感じ一辺倒だったから。
菜花: 出た! ギューン!でドカーン!だ(笑)。まぁ確かに、これまでは尖ってばかりいましたからね。その尖り具合が徐々に大きな輪になって波及していけばいいなと今は思います。自分達にしかないスタイルを更に突き詰めていきたいですね。バンドの自由度は増しているのかもしれないけど、各々の意識をもっと高めないと次のステップにも行けないと思うし。
──それだけ自由度が増したのは、バンドの揺るぎない核が形成されているからこそとも言えませんか?
古田島: そうですね。それが自分達でもようやく理解してきたということなんでしょうね。
菜花: とにかく2008年はギューン!と行ってドカーン!ですよ。最終的にはドカーン!です(笑)。
new mini album
Third Star From The Earth
01. IN THE SUNSHINE02. microphone drives
03. FATMAN BLUES
04. Cry for the moon
05. Watering!
rudie&records RR-777
1,500yen (tax in)
1.17 IN STORES
★amazonで購入する
★iTunes Storeで購入する(PC ONLY)
Live info.
1月26日(土)渋谷 屋根裏
The Jerry & detroit7 Release Party『AWAKE IN THE SUNSHINE』w/ The Jerry / sleepy.ab / the blondie plastic wagon / and more... OPEN 17:30 / START 18:00 TICKETS:advance-2,300yen (+1DRINK) / door-2,800yen (+1DRINK) info.:渋谷 屋根裏 03-3477-6969
*2月に東京・大阪でレコ発LIVE決定!
[2月25日(月)渋谷CHELSEA HOTEL『detroit7 presents「DETROIT ROCK CITY」〜Third Star From The Earth release party』/大阪は未定] 詳細はwebsiteで!
detroit7 official website
http://www.detroitseven.com/