
繊細で透明感のある歌声
優しさを与える温かな歌
「下北沢シェルターでスタッフをしていた高森ゆうきが大手レコード会社からCDを出すらしい」そんな噂を聞いて一瞬耳を疑った。スタッフをする傍ら、歌を聴かせるイベントには引っ張りだこだったし、実際私も一度アコースティックイベントに出演をしてもらったことがある。普段は見せない表情で心地良い歌声を聴かせ、多くの人の心を魅了した彼だったが、デビューまでするとは!というのが本音だったりする。 そんなアーティストとして芽生えた高森ゆうきの1st.ミニアルバム『Leaflet』がリリースされる。何事にも動じない飄々としたイメージのある彼が、ちょっぴり焦ったり困ったりたくさん笑ったりしながら一生懸命作った作品だということがうかがえる1枚。聴く者の心にスッと入って、とても聴きやすく温かく、悔しいけど「良いアルバムができましたね」と言わずにはいられない作品となっている。でも、まさかインタビューをする時がくるとは思ってなかった…。(interview:やまだともこ)
無理だと思うことをやってみたかった
──ようやくというか、本当にリリースされるんですね(笑)。
高森:そうなんですよ。今までは3曲入りの『陽当良好』を出して、その前に出した『雨のあと/夢とスキマ』(現在廃盤)はCD-Rで焼いて、コンビニでコピーしてってやってましたからね。
──高森さんはもともとメタル少年だと思っていたので、こういう楽曲を出して最初は驚いたんですけど。
高森:近かった人は、「あいつメタルだべ?」って人が多いんですけど、そんなことないんです。メタルというよりはアイアン・メイデンが好きでカバーナイト(年末恒例のKOGAカバーナイト)に出たときにカバーしてから誤解が生まれて…(苦笑)。
──その前から自分ではこういう曲をやっていたと?
高森:そうです。
──人前ではいつぐらいから歌ってたんですか?
高森:2002年ぐらいにU.F.O. CLUBでやったのが初めてです。
──その前にバンドを組んでいたんですか?
高森:ちゃんとしたバンドはやってないです。それこそ家で曲書いたりしてましたね。
──シェルターで働いていたから、音楽をやるならバンドでという発想はなかったんですか?
高森:バンドって大変じゃないですか。あ! 昔“エモーンズ”っていうエモを知りたきゃこれを聴けっていうバンドをやってました(笑)。石川に住んでいた時にもやっていたんですけど、人間関係で解散しちゃったんです。それでバンドはもういいやって思って。
──人間関係がもつれて解散するぐらいなら、1人の方がいいっていう結論ですか?
高森:解散して動けなくなるぐらいなら、人数関係なく動ける方がいいですからね。
──ライブハウスのスタッフをやりながら、人前で1人で歌ってみようと思ったきっかけは何だったんですか?
高森:スタッフもバンドをやってる人が多いんですよ。ステージを仕事で見ている人がステージに立つって、ちょっとした勇気がいて、さらにいつもはいろんなバンドを見て意見を言っている仲間が、僕のライブを見て同じように評価するというのは緊張しましたね。でも、それを乗り越えられれば何でもできるんじゃないかっていうのがあったんですよ。立ってみたら変わるんじゃないかっていうのが大きくて、ガラッと変えてみたかったんです。とりあえず目の前のものを壊してもう1回作り直そうって。無理だと思うことをやってみたかったんです。
──ステージに立つためには曲がいると思うんですけど。
高森:そうなんです。それで最初に出来たのが『雨のあと』(M-5)。これが一番古いですね。
──『雨のあと』はビギナーズラックでは済まされないぐらい曲がいいですね。
高森:あっ!ありがとうございます(笑)。
──今回はバンドサウンドになって、アレンジもだいぶ変わりましたね。
高森:ピアノを入れたいっていうのが頭にあったんです。それで溝田(志穂 / ex.Hermann H. & The Pacemakers)さんが弾くピアノが好きで、何回かイベントに一緒に出る機会に恵まれたので、お願いしてレコーディングを手伝ってもらえることになったんです。サポートはフットワーク軽く手伝ってくれた人がいっぱいいてくれたんです。
──それはシェルターで働いていた7年間で培った人脈が大きいんじゃないですか?
高森:それに尽きますよ。三原(重夫)さんもつよしくん(太陽族)も。伊賀(航 / Caraban、つじあやの、湯川潮音、etc)さんはレコード会社の方に紹介してもらって。
改めて気付いた音作りの大変さ

──高森さんは内なる感情を歌い上げるタイプではないじゃないですか。情景描写的な歌は最初からやりたいと思っていたことなんですか?
高森:感情的なものがあまり好きじゃなくて…感情的な人間がまず嫌いなんです(笑)。だから、それとは全く別のところで動いている大きなものを歌にしたいと思ったんです。
──自分でオリジナルを作るにあたって、インスパイアを受けたアーティストっているんですか?
高森:ロンセクスミスとかは、曲の組み立て方を盗んでやろうと聴いていたのでお手本にさせてもらいました。俺、シェルターで夜中に仕事終わった後に、その日に出たバンドがかっこよかったらそのままの熱で曲を作っていたことがあるんです。
──それって一番感情的ですよね(笑)。ということは、シェルターで見てたバンドは全て影響を受けていると。
高森:良いとこ、悪いとこ、全部影響を受けてますね。情報は多くて毎日が濃かったんですよ(笑)。酔っぱらいの動きひとつに情報があったんです。その中で揉まれて(笑)。だからシェルターで働いてたときになんとかしてやろうと思ってました。
──個人的に『陽当良好』が好きなんですけど、これはあえて入れなかったんですか?
高森:ベーシックと歌録りまではいったんですけど、できあがってみて前にリリースしたものとそんなにかわらないんじゃないかと思ったんです。それなら今出さずにもっと練って出そうって。バンドサウンドに慣れてない状態でレコーディングを始めたから、5曲のうちの後半3曲(『忘れるうた』、『変化』、『雨のあと』)はバンドアレンジになってるんですけどここで躓いたんです。生の音をうまく消化しきれてない状況で録ったので、次はもっとこうしたいというのはありますね。前の2曲(『晴れた日の昼下がり』、『長い道草』)は打ち込みなんですけど、前回は家とリハスタで録っていたので場所をスタジオに移してグレードを上げたという感じですね。
──全曲打ち込みでやろうということではなかったんですね。
高森:バンドサウンドでのビジョンがあったんですよ。でもいざやってみるとできないことがいっぱいあったんです。俺が鳴ってる音にちゃんと合わせる技術がなかったり、手間取ったところがあったんです。だからこれを録った前と後では音楽に対する感覚が変わりましたよ。
──活動のスタイルとしてはバンドと弾き語りの両方でいくのは変わらず?
高森:今は固めないですね。
──歌がちゃんと表現していればフォーマットは問題としてないということですか?
高森:中心にそれがあればなんとでもなりますから。
──実際ちゃんとしたレコーディングは初だと思いますけど。
高森:完全に初ですね。さっき後半3曲に手間取ったって言いましたけど、やりたいことと何が良いのか悪いのかがよくわからなかったんです。音を決めからアレンジしてコーラスして。これだけ考えなきゃダメなんだって。今演奏し直してみたら全然違うものが出来そうな気もしますね(笑)。
初めてアーティスティックに芽生えた作品
──『Leaflet』はいつ頃から制作にとりかかっていたんですか?
高森:レコーディングを始めたのが昨年の2月で、10月いっぱいぐらいまでかかりました。レコーディングと録ったものが良いのか悪いのかを判断するには、これだけ時間が必要だったんです。本当は夏ぐらいにリリースする予定だったんですが…(笑)。
──初めてのレコーディングは自分の歴史の基準がないだけにジャッジが難しいですからね。
高森:次回からはこれを基準に、これからどうしていこうっていう判断はつくようになりましたけど、こんな大変だったとは思いませんでしたよ。エンジニアさんもすごく大変そうだったし。でも一緒にできて良かったです。
──携わっていた人たちが同じ方向に向かえていたんですね。
高森:最初はどこに行こうかってわかってなかったんです。録ってるときに話し合いをしていたら、初めて行くところが決まってないことが発覚したんですよ(笑)。はっきりしたビジョンを持ってないと周りの人にも伝わらないし迷惑をかけてしまうので、気を引き締めて具体的に何をするかというのを決めて。
──1枚作って変化が表れたわけですね。
高森:終わってから変化に気付いたんですけど、意識としても変わってますよ。勉強にはなりました。だから、けっこうすんなり出たっていうイメージはないんですよ。いろいろ考えこんじゃってコミュニケーションとって、ぶつかったりして、やるしかないって奮い立たせて。やっとできた!って。
──1枚目ができるとライブの向き合い方も変わりますよね。
高森:はい。今は毎回楽しいです。
──第三者の目を意識するようになったんじゃないですか?
高森:なりましたよ。この間は宮田和弥さん(ジェット機)のツアーにオープニングアクトで出させてもらったんですけど、その時に宮田和弥さんの立ち振る舞いを見習いたいって思うようになりました。
──そういうアーティストってシェルターで毎日見ていたと思いますけど、自分がステージに立つ人間になってみないとわからないんですよね。
高森:そうなんです。カウンターの中にいてもわからないんです。実際自分がステージに立って、打ち上げの席に座らないとわからないんです。見えてるところが全然違うんですもん。
──『Leaflet』って、シェルターのスタッフだった人が初めてアーティスティックに芽生えた瞬間という表現ができますね。
高森:視点が変わったというか、変えられたというのはありますね。
──作品を出してようやくスタートラインに立てたと。
高森:そうですね。やっと始まった感じがしますね。楽しみですよ、これから。
──次はどうしたいとかあります?
高森:ものすごく変えてみようかな(笑)。今回録ってみて、けっこう詰め込みすぎたかなって思ったら意外とそうでもなかったみたいで、すごく聴きやすいって言われるんです。気分選ばず聴けるって。
──どこでも差し込めるっていう意味での『Leaflet』でもありますね。
高森:はい。実用的に使って欲しいと思ったんです。財布と携帯と『Leaflet』みたいな。でも次はもっとドロッと…ドロッとした気持ちを出すってわけではなくて、今回は聴いた触感がスルッとして聴きやすいんです。それはいいことでも悪いところでもある。
──高森さんの声ってさわやかだけど耳に残るから、本質的にはギトッとしてると思いますよ。
高森:でもサウンドがさわやかになってるから、もっと濃いところを出したいんです。
──バンドサウンドは生かしつつ?
高森:バンドも含めてバンドもやるし、1人でもやるし。トータルで聴いてどうか。固めて試して録るという作業をやりたいですね。
──今回この作品にコメントされている方が高森さんの歌は温かいって言われてますけど、ご自身で思う温かみってどんなところだと思います?
高森:ひなたぼっこみたいな感じですね。そうありたいっていうのを詰め込んだ感はありますね。
──自分の声質はどう思っています?
高森:温度感はわからないですけど、聴いていて気持ちよかったりっていう意識はしてますね。歌っていて一番気持ちいい声質を出せたら、自分も聴きたいと思いますから。
──実はいろいろ考えているんですね(笑)。
高森:考えていますよ(笑)。
──次の作品はいろんなサウンドで作っていきたいと。
高森:シンプルにしてもっと濃いものを。
──今回の反省点ってどんなところがあったんですか?
高森:リズムです。ドラムとかベースが悪いんじゃなくて俺のリズム感。あと歌の甘さ。今回録ってみて、できることとできないこと、見えてないところが見えたので、次はもっといいものが出来そうですよ。いいものを作れないと思ったら作ろうと思わないですからね。
──2008年からついに本格始動ですね。不思議な感覚なんです、この間までシェルターで働いていた人がこんな立派なCD出すなんて。私たちの希望の星なんですよ。
高森:希望の星になれるように日々精進していきたいと思ってます(笑)。
──でもガツガツしなくても、高森さんは自然に誰かに何かを残していますからね。
高森:でも、最近は意外とガツガツしているんですよ(笑)。
【高森ゆうきさんから素敵なプレゼントがあります!】

Leaflet
PDCT-1011
1,000yen(tax in)
1.09 IN STORES
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晴れた日の昼下がり
長い道草
忘れるうた
変化
雨のあと
Live info.
1.24(Thu)高円寺 HIGH
タシロック presents“晴れ地下vol.15”
1.30(Wed)渋谷 Lush
“I LOVE YOUR SMILE!VOL.6”
高森ゆうき official website
http://www.geocities.jp/takamorinomori/