ギター バックナンバー

カオマイルド ('07年12月号)

カオマイルド

失敗だらけの人生だけど、その涙いつか光輝く時まで
泣き笑いのポップソング、ここに集結!

ロック、ポップス、エモ、パンク、ヒップホップ…全てを飲み込んだカオマイルドのファーストアルバム『オードブル』が遂にリリース! 2007年夏にリリースした“夏”をコンセプトにしたシングル『九十九里浜』から、良い波に乗った状態のまま今回の作品に至る。『燃えよ! カロリー』を始めとした泣き笑いの恋愛ソングや、『井戸に落ちたような出来事』のコミカルなヒップホップナンバーなど、変幻自在のカオマイルドが炸裂。

今作は、次に出てくる作品にも今から期待してしまうぐらいの予感をさせ、“前菜”としての役割をちゃんと果たしている作品と言える。まず試しにこちらからお召し上がりください。そして次の作品も大いにご期待ください。(interview:やまだともこ)


解散するのかなって思いました(笑)

──初めに自己紹介をお願いします。

内田太郎(Vocal & Guitar):カオマイルドのボーカル内田です。

原田征知(Drum & Chorus):ドラムの原田です。

三井学(Guitar & Chorus):ビジュアル担当三井です。

一同:………。

──… こんなに静まりかえることってあるんですね(苦笑)。 1月16日にファーストアルバム『オードブル』がリリースされますが、“初”のアルバムをリリースする気持ちはどうですか?

内田:それがあんまり実感がないんです。やっと来たなーっていう感じはありますけど、何とも言えない感じですね。

原田:漠然とした達成感はあるんですけどね。僕らはこの先も音楽を続けていくので、そういう意味で“次”のことを考えていたりします。

──レコーディングはいつからやられていたんですか?

原田:2年前から始めて、新しく作ったものもありつつ。

内田:途中で脱落していったものもありつつ。

──たくさん作った曲の中から厳選された曲がアルバムに入っているということですね。

内田:生存競争の中で残れなかった曲もあり…。

原田:なんだろう、その表現(苦笑)。前回のシングル『九十九里浜』は“夏”というテーマで今までにやったことがない音作りをしましたけど、『オードブル』は僕らの音楽性に近い、素の僕らに近い作品になりましたね。と言っても、それぞれ音楽の趣味がバラバラなので、できたメロディーに対して一番合うアレンジをしていくという方法だけで作って、いろんな曲ができました。

──カオマイルドはもっとダークな曲をやっていると思っていたんですが、『九十九里浜』から『オードブル』の流れは違和感を感じませんでしたよ。

原田:メロディーの強さがあるので、そういう印象を持たれたのかもしれないですね。僕らだけで曲を作っていったら、どっちかと言うと暗い方向に行っちゃうことが多いんですけど、できた曲をアンダーフラワーの事務所のみなさんにアドバイスをいただきながら直していく中でどんどん変わっていったんですよ。

──アルバムタイトルの『オードブル』にはどんな意味が込められてます?

原田:今回、曲のジャンルもバラバラなので、アルバムを一言でまとめるのは無理だなと思ったんです。で、視点を変えて僕ら自身のことについて言葉を作っていこうというところから、これから始まって行きますよっていう意味を込めて『オードブル』。僕らにとってこれがスタートなので、そういう意味でこれからどんどん行きまっせって。

内田:オードブルは、食欲を促すために食事の最初に出す軽い料理という意味だから、それがいいんじゃないかと。

──他にどんな案があったんですか?

内田:僕はカタカナで幅広い年代の人に意味をわかってもらいたかったんですけど、それぞれポリシーがあってモメましたね。原田君は漢字一文字がいいって。曲を作るときは全然モメないのに、ここが一番モメましたね。あまりにもモメるから、解散するのかなって思いました(笑)。


カロリーはなかなか燃えません

──原田さんのブログを読んでいたら1曲目の『into the tide』(インスト曲)は、すごく思い入れがあるそうですが、具体的にどんな思い入れがあるんですか?

原田:家のベッドの上からギターを抱えて部屋を見ていたら自然と手が動いたんです。使ってるコードとか普段使わないようなコードを勝手に手がおさえていて、こんなことあるんだ!って思いました。生まれて初めてアーティスティックに曲を作りましたね(笑)。

──ということは、一気に曲が出来上がったんですか?

原田:始まりから終わりまでツルッとできた曲です。

三井:出来上がってきたのが良かったので、その後に多少のディスカッションはありましたけど、ほぼできてきたので完成でしたね。

内田:普段から作ってきた曲にどうこう言わないんです。僕が作ったやつを聴かせてもたいてい「いいんじゃない?」って。

原田:だから僕の曲もミックスの面でアイディアはもらいましたけど、そこまでは大きく変わらなかったですね。

──普段曲を作っているのは内田さんですよね。

内田:はい。ただ、個性が違うので幅も広がりますし、2人の詞を見てみたいんです。原田君は僕の言葉遊び的なものよりアーティスティックな歌詞を書くだろうし。

原田:0から1にするのが得意な人もいれば、1から10にするのを得意な人もいますからね。その役割分担かな。僕の場合は0から1を作るのは本当に苦手なタイプなので完全に乗っかるタイプです。

──『into the tide』から『燃えよ!カロリー』(M-2)の流れも良かったですね。

内田:『燃えよ!カロリー』は三井くんがキーボードを弾いたんですけど、曲ができたときに、何かひらめいたんでしょうね。「俺ピアノ弾く!」って聞かなかったんですよ(笑)。

三井:本来スタジオにギターを持って行くところに、キーボードを持って行ってましたね。

──この曲はタイトルを聴いた瞬間、内田さんが思い浮かんだんですけど…。

内田:(笑)そうだろうなと思いました。

──内田さんはカロリーを燃やしてますか?

内田:僕は蓄えちゃうほうなので、なかなか燃えないですね(苦笑)。体もそうですけど、心にもカロリーってたまっていくような気がするんです。脂肪とかじゃなくて漠然としたもの。燃え切らないような、その心のカロリーを燃やそうぜ! 体は太っててもいいけど心だけは健康でいようぜ! って。アルバムの中でメイン曲になるっていうことで、一番聴いてもらいたいし、音だけ良ければというよりもタイトルのインパクトがあったほうがより聴いてもらえるんじゃないかってけっこう悩んだんです。歌詞に“カロリー”が出ているので入れて、カロリーは燃やすものだと思うので、『燃えよ!カロリー』にしました。

──この詞でいうと、恋愛で傷ついた心をエネルギーにして乗り越えようぜ!ってことですか?

内田:そうですね。傷ついた過去は、燃やせばエネルギーが出るんじゃないかって思ったんです。ただ、この曲はテーマが2つあって、恋愛もそうですけど、受験生の子とか頑張ろうとしてる人たちのために作った曲なので、1番と2番でサビの歌詞も変えたし、最後はうまくまとめる形にしたかったので“ダイヤモンドの原石”という単語を入れたんです。まだ発掘されてない原石もあるかもしれないけれど、そういう人たちも頑張れば輝けるし、僕らもまだ輝けてはいないから、ここから磨いていこう。

原田:人に対する応援ソングなのと同時に自分に対しても言い聞かせてる感じはありますね。

──ポップな曲になりましたよね。カオマイルドの場合は、1曲を作り上げるにはどうやって進めてます?

内田:曲が先で歌詞は音にあったものをストーリーづけていく感じなので、ポエムではないですね。文字で読むよりは音で聴いてもらいたいと思ってます。

──そうなんですよね。詞の意味をじっくり考えるというよりは、曲全体の雰囲気を重視してるのかなと思ったんですよ。

原田:言葉遊びが上手いんです。そういう要素は全体的に歌詞に表れていると思います。


ボーカルは楽器の一部

──内田さんの詞は日記のような、自分が今まで体験したことを詞にされてることが多いですよね。

内田:そうですね。だから親に見られるのが一番恥ずかしい(笑)。こんなことあったの?って聞かれますからね(苦笑)。

──今回もさよなら系が多かったですが…。

内田:失恋が多いので…。

原田:声のトーンが下がっちゃったね(笑)。

内田:振られた時にどうしたら元気になれるかって書いた詞が多い。世の中の失恋で悲しんでいる人にはよくわかってもらえる詞だと思います。逆に『オーガスト』(M-3)は付き合う直前ぐらいの2人が海に行った時の詞なんですけど、これから恋が始まる予感をさせる。微妙な期間を描くのが好きなんです。『さよならフィーリング』(M-4)は、もうすぐ別れそう、もしかしたら別れてるのかなっていう。『井戸に落ちたような出来事』(M-8)もそうですね。

──『井戸に落ちたような出来事』はコミカルな歌ですよね。

内田:悲しい時も悲しんでるような歌は好きじゃないので、そういう感じになりました。ただ、それを作っている時は本当に悲しいんですよ(苦笑)。

──三井さんは『井戸に落ちたような出来事』のような恋愛をしたことありますか?

三井:僕は恋愛に対して執着がないから、こういう経験はあんまりないんですよ。振られてもこれだけたくさんの人間がいるんだから、次に誰か出会えたら良いじゃないですか。

──ということは、こういう恋愛の曲を聴いても理解できない?

三井:正直なところ…あまり活字で読んでないんです。詩の世界は太郎に任せているので、メロディーに良い感じで乗ってるか乗ってないか、うまいことはまっていればいいんです。

内田:スタジオで「コーラスやって」って言うと、まず「歌詞を教えて」って言われる。だから、この人たち読んでないんだなって思いますね。

三井:僕の場合、歌詞を読み込むという聴き方をしてこなかったので声自体が楽器っていう感覚なんです。聴きやすいか聴きやすくないか。だから自分たちで作る時もそういう基準です。洋楽を聴いていたっていうこともありますけど、歌詞カードを広げたことがない。もし、太郎の書く詞がはっちゃかめっちゃかだったら口を出すと思いますけど、信頼してますから。

原田:僕も同じですね。ちっちゃい頃から洋楽を聴いていたので、歌も含めて楽器的な聴き方をしていたんです。邦楽を聴き始めたのはここ2、3年なんですけどメロディーを追っているだけ。最近はようやく詞を読むことに慣れてきましたけど…。

──ということは、詞に意味がなくても良いって事ですか?

原田:メロディーの流れとの兼ね合いがおかしくなければ違和感は感じないです。

内田:そういう理由だとは知らなかったから、今日2人の話を聞いて良かったですよ。無関心なだけかと思ってました(笑)。

──私は詞を読んで自分に置き換えたいタイプなんですけど、アルバムの詞を読んで今までとは違ったんです。こういう表現の仕方もあるんだなって思いました。

内田:と言っても、いくら音を重視したとはいえ詞に意味は持たせたいので、ある程度はわかりやすい詞を書こうとは思っていますよ。

カオマイルド

カオマイルドのレコーディング方法

──全体的に音作りは相当凝っているように聴こえましたが…。

内田:曲のアイディアを伝えて、具現化してくれるのは原田くんと三井くんですね。それで、できあがったのをデータで送ってもらって、もっとキラキラした感じにっていうとイメージどおりに作り直してくれるんです。

──それをスタジオで合わせて?

内田:昔からやってる曲はスタジオで練ったりしましたけど、『燃えよ!カロリー』に関して初めて合わせたのがレコーディングの日。それまでは完全にデータのやりとりだけです。

原田:曲を作るときはスタジオに入る人って多いと思いますけど、僕等はそこにこだわる理由もなくて結果として良い曲ができれば良いんです。そういう意味で、『燃えよ!カロリー』はデータのやりとりで作っていくっていうのが効率的だったんです。

──他の曲は?

内田:アレンジの作業はデータのやりとりが多かったですね。

原田:アウトラインができたらスタジオで実際に演奏してみて、また練り直す。

──データのやりとりをして音源を作り上げるって、最近のバンドっぽいですね。

原田:今はそういう技術があるので、それを活用しない手はないなと思いますよ。結果的にいいものができればいいんじゃないかな。スタジオだと時間が限られているけど、家なら自分の時間を削ればいくらでも時間を作れるので。

内田:アイディアの出る量も違ってくる。スタジオをとっている2時間でやらなきゃっていうよりも全然違うよね。

三井:ある程度曲を理解してきてスタジオで合わせるほうが効率的だから。

──それによって、レコーディングの時間は短縮されるんですか?

原田:各々がバラバラに時間を費やしているので、実はそんなに変わっていないと思いますよ。でも、スタジオに入る時は(サポートベースを含めて)4人が時間を合わせないとダメだし、それなら全員が揃わないとできないことをやりたいですよね。アレンジは楽器の練習と同じで1人でできることなので、それを突き詰めたら今の形になったんです。根底にお互いに対する信頼感があるので、常に顔つきあわさなくてもやってくれるよねって。

三井:定期的にスタジオには入っているから家でできることは家でやっていくし、これで不定期に1ヶ月に1度しか会わないなら変わるけど。昨日作って来たあの曲は…って話ができてるから、メールは文章とか全くない添付ファイルだけの状態ですね。

──じゃあ一番いい形でやれてるってことですね。

内田:でも最近ですよ、添付ファイルの送り方を覚えたのは。必要に迫られて(笑)。

──ところで、『井戸に落ちたような出来事』はプロデューサーにALI-KICKさん(RomancrewのMC兼トラックメイカー)を迎えたそうですが、アレンジは全部お任せしたんですか?

原田:アウトラインは僕らが作ったんですけど、実際の楽器の配置とかは任せました。クラブで流せるような感じにしたいって明確に伝えていたので期待通りに作ってもらえましたよ。

内田:専門家の方にお願いしたほうがいいアレンジになると思いましたし、ノウハウを吸収したかったんです。勉強になりましたよ。

──もともとラップの曲はやられてましたよね。

内田:韻を踏むのが好きなので。

原田:それもうまいことできていて、音の流れとしてすごく綺麗に聴こえるので良かったなって思いますよ。

──こういうアレンジが今後は自分たちでもできるように。

原田:少しずつスキルを磨きつつという感じですね。

──『「All」for All』(M-6)はギターを聴かせてしっとりと。

三井:録音自体がアナログで、バイオリンもナマなんですよ。他の曲は基本的にバラで録ったのが多いんですけど、これは歌とアコギ以外「せーの!」で録りました。

原田:曲に一番あったやり方でやるのがいいかなって。そういう意味ではこだわりはないし、何かに執着することもないので、そういう自由さは僕らの強みかなと思いますよ。

内田:『「All」for All』は王道な感じの泣かせる曲を作りたかったんです。ストリングスを入れるのも初めてだったので、どこまでうまくできるんだろうかっていうのもあったし試験的にやったんですけど、うまいことガッチリはまって、またひとつ勉強になったな。


僕らのいろんな料理を楽しんでください

──『九十九里浜』からかなり成長していますよね。

原田:いろんな機会を与えてもらっているので嬉しい限りですよ。いろんなことをやっていきたいんです。そういう意味でそれぞれの音楽性をうまく取り入れていろんなことできたと思ってます。僕がギターを弾いて、みっちゃんがピアノを弾いたり、バンドっていう形やドラムっていう楽器にとらわれるのはもったいない気がするんです。そういう意味で可能性を広げていきたいですね。

──まだ『オードブル』もリリースされてませんが、次の作品の展望ってあります?

内田:曲の感じはやっぱりバラバラになると思いますけど、新しいことにどんどん挑戦するようにしていきたいですね。

原田:どんなに曲がバラバラでも太郎の歌が真ん中にあれば僕らの曲になるから。そういう意味で『オードブル』でまず僕らのいろんな料理を楽しんでくださいと。

内田:うまいなー。

──ここで終わった方がいいですかね…。

一同:(笑)

──2008年がそこまでやってきてますけど、どんな年にしていきたいですか?

内田:曲をいっぱい作って新しいことに挑戦して、突っ走るだけですね。

原田:シングルとアルバムをリリースしてようやくスタートを切れたので、あとはひたすら走るだけかな。来年に限ったことじゃないですけど、前を見て進めたらな。遅くても着実に前を進められたら。

──そういえばライブ中の涙目は直りました?

内田:それがまだ…(苦笑)。笑顔で歌わなきゃいけない曲とか、たぶんすごく不自然な顔になってると思う。心から笑えるような度胸をつけたいですね(笑)。ライブは楽しいんですけど、お客さんの視線に慣れないんです。見られることを好きになるとか、もっとナルシストになりたいなって思いますね。まずは痩せることから始めるしかないですかね。ギターを持ったら大黒様みたいですから(笑)。

原田:具体的な目標を決めるより、目の前の現実に向かっていきたいですね。僕らは根底に音楽を作るということがあるので、それはライフワーク的に続けていきたい。その先の何かというのは続けていけばチャンスが見えてくるから、積極的にチャレンジしていきたいですね。

三井:今の活動だとライブハウスに来てくれた人だけがカオマイルドの曲を知っているという感じですけど、どこかのラジオで流れていたとか、ライブハウスを知らない人にも聴いてもらいたいですね。

原田:僕が音楽をやれてるのはいろんな人の助けがあってできているので、そういうことに対しては感謝してます。

内田:今まで応援してもらった分、応援して良かったと思ってもらえるバンドになりたい。

原田:僕ら自身がでっかくなりたいっていうよりは、僕等に目をかけてくれた人たちに何倍も恩を返していきたいというのが強いんです。まわりにいてくれてる人たちのためですね。今回の作品が僕等のスタート第一歩なので、やっと芽吹き始めた僕等を聴いてもらいたいです。もちろんここで止まるわけではなく、もっと先に成長していくので、そういうのを含めて温かく見守って欲しいですね。オードブルなので。そういう意味で本当にオードブルだ思いますよ。これから前菜が出てきたり、魚料理や肉料理がどんどん出てくる予定なので。

内田:レストラン“カオマイルド ”へようこそ。という感じです。


now printing

オードブル

FLOWER-094 / 2,100yen(tax in)
UNDER FLOWER LABEL
2008.1.16 IN STORES

Live info.

12/10(土)柏ALIVE
12/13(木)西荻窪 Turning
12/16(土)柏ALIVE

2008
1/19(土)タワーレコード柏店インストアイベント
1/19(土)柏 ZAX
3/15(土)柏ALIVE カオマイルド初☆自主企画イベント
「オードブル発売記念!!リリースパーティー☆」

随時、イベント等が決まっていくので、webをチェックしてみてください!

カオマイルド official website
http://www.kaomild.com/

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