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大槻ケンヂ(筋肉少女帯) × カタル(ニューロティカ) | ('07年10月号)

<ニューロティカ ロフト通算ライブ回数200会記念! カウントダウン対談その3> 大槻ケンヂ(筋肉少女帯)×カタル(ニューロティカ)

ニューロティカ ロフト通算ライブ回数200回記念!
カウントダウン対談その3

今年11月のライブで、新宿ロフト出演200回という前人未踏の記録を打ち立てる予定のニューロティカ。ということでルーフトップでは毎月各メンバーの対談を掲載していますが、第三弾は待望の復活を果たした筋肉少女帯で8年ぶりとなるニューアルバム『新人』を発表したばかりの大槻ケンヂさんと、現ニューロティカでのサウンドプロデュースも務めているベースのカタルさんの対談! 年齢は1つ違いで、同時期にバンドをやっていたにも関わらず、バンドブームに思いっきり乗れていたり、乗れていなかったりした2人による、バンドブーム再検証対談です!? (interview : 北村ヂン)


えーっ、そんなに楽しかったの? バンドブームって!?

カタル:僕はすごい大槻さんの本が好きで読ませていただいてるんですけど、『リンダリンダラバーソール』っていう小説があるじゃないですか。あれにはバンドブームについてすごいリアルに書いてありますけど、僕は大槻さんと同じ年代でその頃もバンドをやってたのにバンドブームに乗り遅れてるんですよね。

大槻:でも、もとはThe Loodsなんでしょ? 先輩じゃないですかー。

カタル:イヤイヤ、そんなことないでしょう。

大槻:いつ頃までいたんですか。

カタル:LOUD MACHINEを経て、解散までいましたよ。

大槻:わーお、そうなんだ! じゃあ、有頂天とかとも一緒にライブやってたでしょ。

カタル:筋少ともやってますよ。

大槻:えーっ!?

カタル:法政大オールナイトとかでやりましたよ。でも、バンドブームの頃にはLOUD MACHINEはもう解散しちゃってたんですよね。

大槻:ちょうどブームが来たときにバンドがなくちゃったと。

カタル:そうなんですよね。それで、『リンダリンダラバーソール』にはその頃の面白い話が書いてあるじゃないですか。もう想像も出来ない世界なんですよ。最初読んだとき「えーっ、そんなに楽しかったの? バンドブームって!?」みたいな。

大槻:その頃の話だったらあっちゃんからも聞くでしょ。

カタル:聞くんですけど、あっちゃんやジャッキーが話すと全然真実味がないんですよ。だから「嘘でしょー!」みたいな感じで聞いてたんですけど、あの本を読んで「本当にそうだったんだー」って。

大槻:なんかねぇ、あの頃はバブルの恩恵もあったし、打ち上げとかいつも何十人も来てて。……ロティカは今でもそんな感じかもしれないけど、でも割り勘でしょ。

カタル:そりゃあそうですね。みんな払ってますよね。

大槻:あの頃は誰がお金を払ってるのか全然わからなかったからね。しかもお姉ちゃんはわんさか来てたし、楽屋にはアイドルがいたりとか……。きらびやかっていうか、バブリーな世界が繰り広げられてましたな。

カタル:結局、当事者じゃないとそういう裏までわからないじゃないですか。僕もずっとバンドやってたにも関わらず、そういうこともよく知らないでいたから。

大槻:くやしいでしょ(笑)。

カタル:くやしいですよ!

大槻:あの頃はあっちゃんもそういう目にあってたんだよ。

カタル:それがなによりくやしいですね(笑)。ツアー中に読んでたんですけど、車の中で読みながら「ちょっと、あっちゃん! どういうことだコレは!?」とか言って「こんなことあったんかいっ!?」って(笑)。……いや、すごい衝撃でしたよ。

大槻:なんか毎日お祭りのような日々という感じだったなあ。そういうのが普通みたいな。逆にブームが終わっちゃった時には「えーっ!?」っていう感じだったけどね。

カタル:それも書いてありましたよね。予期せずに、急に動員が減っちゃったりしたんでしょ。

大槻:予期しなかったな。某女の子バンドが武道館をやった次のツアーで、ファンのイベントをやろうと西口にあった頃の新宿ロフトでやったら満員になんなかったんだよ。前のツアーじゃ武道館満員だったのにだよ。「えっ!?」っていう話になって。その時もホールツアーを組んでたんだけど、それが全部100人以下とかで。あわててメンバーが急病だってことにして全部キャンセルしたのね。

カタル:へー。考えられないですよね。

大槻:そのバンドがかわいそうだったのが、航空会社と組んで「これから私たちが一年間コマーシャルをやります!」とか言ってたんだけど、そのバンド、筋少と一緒の事務所だったんだけど、その事務所が何かでお金使い込んじゃって、そのコマーシャルもなくなっちゃって……。解散するっていう最後の中野サンプラザの時も全然お客さんがいなくって、メンバーもライブ中に心が折れちゃったらしくって、ボーカルの子が自分を励ますようなMCを始めちゃってもう……。「でもあれだよね、こういう時ってあるわよね!」とか。「あああああーっ」て思ったよね。ロティカの昔の事務所なんかも、お金の持ち逃げとかあったらしいしね。ブームが終わるっていう時の感じって、もう笑っちゃうくらいみんなが慌て出して、全部空回りを始めちゃってたからね。

カタル:そうだったんですねぇ。

大槻:あの頃は小さな事務所に何千万円っていうお金がいきなり入っちゃって、みんなそれが永遠に続くんだと思ってたから税金対策すら考えてなかったんだ。儲かった分、税金を払うっていうことをわかってなくって、結構それでみんなポシャッちゃって。人間って一回大きいお金が入ると、またそれを大きなお金で補填しようとするの。その補填しようとする大きなお金っていうのがまたインチキなんだよ。例えば、「宗教団体の信者の家に有線放送を引いて、そこに念仏とかお題目は流れたら絶対に当たる!」みたいな。そういう妄想にとりつかれちゃって、みんなに融資してもらって、でも当然そんなの上手くいくはずもなく、結局借金まみれになって……。最後にバカを見るのはバンドマンですよ!

カタル:はあ〜。

大槻:でも、これはルーフトップだから言うわけじゃないけど、そういう時にロフトとかのライブハウスが、そういう人たちをちゃんと受け入れてくれたっていうのがすごくありがたかったんですよ。ブームの時、ロフトなんて一番裏切られていたはずなのに。みんなロフトを踏み台にしてメジャーにいってたからね。ボクも筋少がなくなってどうしようっていう時に、ロフトとかが「もう一回うちでやりなよ」って言ってくれたんだよね。あのブームの時にはみんなライブハウスを見限ってたんだけど、ライブハウス側はもう一回受け入れてくれてくれたんだよね。

カタル:なるほどねー。


あっちゃんが偉いのはもう一回ロティカを立て直したっていうことだよね

──ブームに乗れていなかった側からすると、バンドブームの終焉をどういう風に見ていたんですか。

カタル:どうせ乗れてなかったよ! ブームが終わったっていうことすらわからないような、全然関係ない世界でやってたからね。ニューロティカの前メンバーがみんな抜けちゃうっていうことであっちゃんから電話がかかってきて、それであっちゃんに話を聞いて初めて「そんなことになってたのか!」って知ったくらいだからね。

大槻:あっちゃんが偉いのは、バブル真っ盛りの頃にメジャーでやってたのに、それがなくなってからもう一回ロティカを立て直したっていうことだよね。すごいなーって。やっぱり商店の息子は違うな(笑)、経営学があるよ! あの頃はみんなアワアワしちゃって、実家に帰ったりとかしちゃってたのに。

カタル:ニューロティカも僕が入ってから二年くらいアワアワしてたんですけどね。前のメンバーが一気に三人抜けて、僕とドラムのナボちゃんが入ったのはいいけど、あっちゃんももうどうしたらいいかわからなかったんじゃないかな。

大槻:あ、やっぱりアワアワしてたんだ。

カタル:あっちゃんもメイク取ってやったりしてイロイロ試してましたからね。それで、あっちゃんの地元の友達が不動産屋とか会社をやってて、そこが音楽事務所作るという話になって。

大槻:ウワー、危ないね!

カタル:そこはあっちゃんの同級生だったんで大丈夫だったんですけどね。で、そこに所属という形でスタジオ代とか活動費出してもらってやってたんですよ。でもその時は、新曲作ったはいいけど発表の場がないし、ライブも少なくて年に四回しかない年とかもあって。

大槻:やっぱりバンドブームでバンドの規模が大きくなっちゃって、ポンッと気軽にライブが出来ない状況になっちゃってたんですよ。それでみんなバンドのランニングコストがなくなっちゃって辞めていっちゃったんだ。あっちゃんも二年間そんな感じだったんじゃないかな。そこで、POTSHOTとかのスカコアの若い人たちが、自分たちで全部やれるんだっていうシステムを作ったっていうのは革命的だったんだよね。「ああ、自分らでやればいいんだ」って。

カタル:あれはビックリしましたね。僕らが入ってちょうど二年経ったときにリーダーのジャッキーが辞めるっていうことになって、「じゃあもう解散しようか」っていう空気になったんですよ。でも僕とナボちゃんからしたらちょっと待ってよと、二年間頑張ったの返してくれよみたいな話じゃないですか。そんな時にちょうどPOTSHOTのRYOJIくんとかがライブを観に来てたんで話を聞いて、そういうやり方に変えていってもいいんじゃないかって。それで、事務所も辞めて自分らで全部やって、一からやり直そうよっていう話になって、「よしやろう!」って、あっちゃんが急に動き出したんですよね。

大槻:そこがニューロティカのすごいとこですよ。他のバンドがみんなそう出来なくって、なくなっちゃってた中で。

──若手がそういう風にやってたシステムを、バンドブームの頃にやってたバンドで取り入れたっていうのはニューロティカが最初だったんじゃないですかね。

大槻:そうそう。で、それを見てみんな「そうやればいいんだー」って思ったんじゃないかな。バンドブームの頃っていきなりレコード会社がついて、お金がボーンと入ってきてたから、そういうのが終わったらバンドも終わりだって思ってたのに。

カタル:そうなった時の行動力がすごかったんでしょうね、あっちゃんは。色んなところに顔を出してたらしいですからね。打ち上げにいってあの調子で引っかき回して電話番号交換して、ドンドンつなげていったらしいですよ。

大槻:昔、じゃがたらでOTOさんもそうやってたらしいですよ。……でもそれだよなー。今でも筋少なんかは中々すぐに動けない体勢にあって、ポッとライブをやれるっていうのがやりたいんだけどね。


ブームを経験してよかったのかどうかわからないけどね

大槻:『リンダリンダラバーソール』の中でも引用したんだけど、AURAのれっずっていう人が「ブームの時はこのままサーフィンに乗ってアメリカまで行けると思っていた」って言ってて、笑っちゃったんだけどいい言葉だよね。

カタル:何でもできるっていう感じだったんでしょうね。でも、バンドブームを経験して、まだやってる人っていうのはすごいですよね。

大槻:経験してよかったのかどうかわからないけどね。でも今の方が、大きいホールでやっていてもロフトでもライブをやるっていうのがあるでしょ。そっちの方が正しい状況だと思うよね。当時はどんどんステップアップしていくもんだと思ってたから、渋谷公会堂にいったらロフトに戻っちゃいけないみたいな暗黙の了解があって、それでみんな動員が下がったらもうやる所がなくなっちゃってたんだよ。

カタル:なるほどね、帰るところがないみたいな。しかも、すっごい楽しい所からズドーンと下がってったわけですからね。だんだんに衰退していったんじゃなくて、それがすごい短い期間でやってくるわけでしょ。

大槻:当事者は意外となかなか気が付かなかったんだけどね。ツアーごとに気付いたんじゃないかな。でも、筋肉少女帯の場合は活動停止寸前まで結構人気が継続していたの。それは、バンドブームが終わる頃にボクはタレント活動をはじめてテレビに出倒してて、その知名度で地方はやっぱり強かったし、学園祭とかも絶対お客さんが入ってたんで、それで人気を継続してたから、そういうのをあんまり味あわなくて済んだんだけど、他のバンドを見てたら、やっぱり前のツアーはいっぱい入ってたのに、次のツアーは「あれっ!?」ていう感じでね。武道館や横浜アリーナまで満員にしてたのに、いきなりライブハウスも埋まらなくなるってどういうことだよって。

カタル:それ、逆に考えるとお客さんサイドに何があったんでしょうね。

大槻:やっぱり一見さんなんだろうな。つまり、そういう人達は小梅太夫でも、はなわでも、次長課長でもなんでもよかったんだよ。

カタル:ああ、流行ってる物であれば。

大槻:今でいえば東国原県知事を見たいなっていう人たちですよ。音楽なんてどうでもいいっていう人たちだからね。そういう人たちをグッとつかめなかったっていうのはバンドの責任もあるのかもしれないけど、でも武道館までいっぱいにして盛り上がってたのに、次のロフトが入らないっていうのは考えられないでしょ。それは単純に全てバンドの罪だとは言えないと思うんだよね。

カタル:そうですよね。

大槻:だからそれ以来怖くて怖くて……。今でも、ライブにどんだけ入ってても次はないかもしれないっていう恐怖感はあるよね。バンドブームの時にやってた人ってそういうの抜けないんじゃないかな。

カタル:あっちゃんもそういう所ありますよ。常に動員にビビってるというか。

大槻:あっちゃんとこの間対談したら、「ジュンスカとか、筋少とか俺の目の上のタンコブがどんどん復活してて許せない!」って言ってたけどね(笑)。「やっとみんないなくなって俺たちの時代がやって来たと思ったら!」って怒ってたよ(笑)。

カタル:あっちゃんは、ずっとやり続けてるっていうのが唯一の誇りですからねー。

大槻:いや、それは素晴らしいと思いますよ。やっぱりバンドブームに限らず、一度ブームの渦中にいた人って人間不信にはなりますよ。人気とか信用できないもん。

カタル:何か冠つけたり、おまけつけたりしないとツアーも組みづらいってくらいの慎重さが出てくるんですね。

大槻:そういうのはありますよ! 被害者意識もあるんだと思うけど、ブームが終わるとみんな忘れていくのか、街を歩いていても「あっ!」て言われる率が少なくなったりとか。インタビューなんか受けてても「リスペクトされてない!」って思うようになったりとか(笑)。被害者意識に入っちゃって、世をすねた性格になっちゃった人もいるんじゃないかな。音楽よりも虚像を作ることに一生懸命な人生になっちゃう人とか……、ロサンゼルスに住んでる人ですけど。それか、卑屈になっちゃうか開き直るか……。やっぱり未だにみんな何かしら引きずってますよ。


帰ってきたバンドブームですね!

カタル:話は変わりますけど、以前ニューロティカのトリビュート盤を作った時、大槻さんに「風の中のロックンロール」をやってもらいまして。あれはどうしてあの曲を選んだんですか。

大槻:あれは、みんな多分バンド形式のロックンロールでやるだろうと思ったから、アンプラグドでやったら目立つかなって思って。それで、一番メロディがハッキリしている曲はどれだろうって聴いた時に「風の中のロックンロール」だったんですよね。

カタル:あれ、僕が歌ってるんですよー。

大槻:うん、知ってますよ、もちろん。あれが一番メロディアスな感じがしたんですよね。

カタル:僕は「風の中のロックンロール」を選んでくれたのが意外で嬉しくってですね。あの曲って、ロティカの曲としては合わないかなっていう感じがあって、あっちゃんは歌えないって言うんで、俺とシズヲで歌うことで無理矢理アルバムに入れた曲だったんですよ。それを選んでもらって、あれだけ歌いあげていただけたんで、もう最高に嬉しかったですね。

大槻:クイーンでいうと、フレディじゃなくってロジャー・テイラーの曲をやるみたいな感じで、ひねったらうけるかなという。今度、一緒にやる時にはライブでやらせて頂くつもりなんで。

カタル:あー、それは嬉しいですね!

大槻:10月のライブには水戸(華之介)さんやジェット機も出るんでしょ?

カタル:バンドブームですね。

大槻:帰ってきたバンドブームですね! 楽しみにしてますよ、よろしくお願いします。

カタル:こちらこそです!


今夜はトゥナイト('07年10月号) に続く→



【第1回 仲野茂×シズヲ対談はこちら!】
【第2回 岡峰光舟×ナボ対談はこちら!】
【第4回 イノウエアツシ × 小林茂明、大塚智昭対談はこちら!】

Live info.

10月28日(日)at 新宿LOFT
<俺達いつでもロックバカ VOL.126 ニューロティカロフト通算ライブ回数200回まであと1回>

OPEN 17:00 / START 18:00
ADV ¥3000 / DOOR ¥3500
ニューロティカ / 大槻ケンヂ・アンプラグドセッション / 水戸華之介 / MJ / ジェット機

11月17日(土)at 新宿LOFT
<俺達いつでもロックバカ VOL.129 ニューロティカロフト通算ライブ回数200回記念 スペシャルワンマンライブ>

OPEN 17:00 / START 18:00
ADV ¥3000 / DOOR ¥3500
ニューロティカ


※各公演入場者全員へ、ニューロティカとロフトから200回記念コースター型プレートプレゼント!
※各公演毎に200回記念別冊Rooftopをプレゼント! 最終回ワンマンには他にもプレゼントがあるかも!?
※この日、ニューロティカ初のカバー・アルバム『GONG! GONG! ROCK'NROLL SHOW』が先行発売!
※新宿ロフト内Bar The LOFTにて、新メニュー「ニューロティカレー」販売開始!


NEW ROTE'KA OFFICIAL WEB SITE
http://www8.big.or.jp/~roteka/
NEW ROTE'KA × LOFT200 Site
http://nrl200.seesaa.net/

大槻ケンヂ OFFICIAL WEB SITE
http://www.okenkikaku.jp/

posted by Rooftop at 15:00 | TrackBack(0) | バックナンバー

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