死んでいるみたいに生きていたくはないから──
最新作『地球の裏から風が吹く』に込められた飽くなき生への渇望
「生きている実感を歌として形にすることによって、社会と関わっていきたいんですよ」
インタビュー中、吉野 寿(エレキギター、ボイス)が何度か繰り返し呟いた言葉である。イースタンユースのバップ移籍第1弾となるアルバム『地球の裏から風が吹く』はその言葉通り、身体が引き千切れんばかりの深い悲しみや孤独すらも酒の肴にして呑み干す潔さ、常に傍らにある死を見据えながら精一杯生を謳歌せんとする強い意志が充ち満ちた作品だ。小手先の技巧に走ることのない素っ裸の詩はよりシンプルに研ぎ澄まされ、一層強固になった感のある三位一体の有機的な演奏は、その表面上のしなやかさとは裏腹に後を引く深みと濃さをしっかりと湛えている。そして五臓六腑に染み渡るのは、愚直なまでに己の本質と対峙した末にこだまする真心の歌声。やむにやまれぬ衝動に駆り立てられ、唄わざるを得ない覚悟を孕んだ余りに無垢な歌声だ。だからこそ激しく魂を揺さぶられる。だからこそ我々の感受性は問答無用に応答せざるを得ない。イースタンはまた新たに、末永く寄り添える豊かで瑞々しい音楽を僕達に届けてくれたのである。
七転八倒しながら“声にならない歌”を紡ぎ出した本作の制作過程からソロ・プロジェクト“outside yoshino”を小休止させた理由、来年結成20周年を迎えることに至るまで、余すところなく吉野に語り倒してもらった。(interview:椎名宗之)
自分の核を磨き出すことに全部を懸ける
──自主レーベル“裸足の音楽社”を立ち上げてから早2年が経過して、メンバー3人だけでシンプルに活動していくことが軌道に乗ってきた感がありますね。
吉野:うん、ニノ(二宮友和、ベースギター)がもの凄く頑張ってる。ヤツが代表みたいな感じで中心になって動いてるから、今はいい感じだと思うよ。凄くマメだし、やれる男だったんだね(笑)。ライヴのブッキングはイワイマン(岩井慶太、SMASH)がやってるけど、それ以外は全部ニノがやってるから。細かい契約まで含めて全部。スタジオの予約だけは、なんでか知らないけど今も俺の役目なんだけどね(笑)。
──今回、バップに移籍した件もニノさんが主に交渉に当たったんですか。
吉野:そう。ヤツが走り回って話をまとめてくれた。だから、やればできるんだなっちゅう感じ。俺には多分できないけど。俺も田森(田森篤哉、ドラムス)もざっくりな人間だし、粗が多いから。人と会ったりする時間もないしマメさもないし、やっぱりニノじゃなきゃできないだろうね。ヤツは人の話もちゃんと聞けるし、周囲へのケアもできてしっかりしてるしね。
──バップに移籍したのは、先にバップに在籍していたタテタカコさんと吉野さんの強いミュージシャン・シップで結ばれた関係性も大いに作用しているのでは?
吉野:そういう方向性も多分あったんじゃないですかね。詳しいことはよく判らないけど。
──今回発表となるシングル『沸点36℃』もアルバム『地球の裏から風が吹く』も、移籍第1弾を飾るに相応しい作品に仕上がりましたね。収録曲はどれも、飽くことなく末永く聴き継がれる歌ばかりだと思うし。
吉野:それは良かった。「沸点36℃」の歌詞は、5回くらい書き直したんですよ。部分的にじゃなくて、全部書き直したのを5回くらいやったんです。レコーディングの時も、全然違う歌詞を2パターン録ってみたりして。すっごい苦しかったね、作るのが。
──シングルのカップリングでコクシネルの「一分間」をカヴァーされていますけど、カヴァー自体久しぶりですよね。シングル『風ノ中』(1999年4月発表)に収録されていたジャックスの「時計をとめて」以来じゃないですか?
吉野:そうだね。「一分間」は構成を少し変えてあるけど、ほぼ原曲に近い形なんですよ。俺が独りで唄ったりする時にやってた曲で、バンドでもやりたいと思って。
──シングルとアルバムの収録曲は、締切に間に合わせてガーッと書き上げた感じですか。
吉野:うん、ガーッと作った。なんて言うんだろう、余計なことは考えないっちゅうことを今回は意図的に頑張ったわけですよ。ここ何年間はずっとそういう感じでやってきてるんだけど。新しい種類の音楽に影響されたとしても、それが自然に自分の中に入ってきて、自然な形で自分の中で消化されるならいいんだけど、それを仕掛けとして使うと自分の本質とは離れてきちゃうんです。やろうと思えばそれもできるし、如何にそっちのほうがウケたとしても、自分の本質から離れると輝きみたいなものがくすんでくるんですよね。自分の能力の限界とか一番の根源を見据えて、引き算、引き算の方向で作っていったから、ギターのフレーズも素直に作ったんです。それをバンドに投げ掛けて、みんなで少しずつ作っていく作業を進めていったんだけど、それは苦しいっちゅうよりも凄く充実してたんですよ。でも、問題は歌詞、歌だったんですよね。言葉を歌詞として組み上げて、それを唄うことによって歌にするわけじゃないですか? その作業が滅茶苦茶苦しかった。ちょっと半端じゃなかったですね、今回は。
──私見になりますけれども、『其処カラ何ガ見エルカ』(2003年3月発表)以降、歌詞もサウンドも際限までシンプルに削ぎ落としていく方向が顕著になって、今回の『地球の裏から風が吹く』はその極みと言うべき作品じゃないかと思うんです。
吉野:そうですね。引き算が大事なんですよ、やっぱり。要するに、自分が元々持ってないものをどれだけ取り繕っても、それはメッキに過ぎないんです。メッキの輝きなんてものに興味はないし、そういうものでは心は動かんと思ってるんですよね。自分の核たるものを凝縮して、それを如何に磨き出していくか。それに全部を懸けてるわけですよ。それはすべて真実なわけだから、派手さがなくても輝きはあると思うわけ。それだけの本当の価値が。それが凄くつまらない、ちっぽけなものだとしたら、そこまでの自分がつまらん生き方をしていた結果なんだと思う。でも、つまらん生き方をしてきた結果としてのちっぽけな歌だとしたら、つまらんちっぽけな価値があるし、それだけの輝きもある。自分は自分以外のものになれないからね。
──イースタンに“円熟”なんて言葉は似合わないですが、前作『365歩のブルース』に比べてサウンドにコクとまろみがグッと増した印象を受けたんですよね。
吉野:まぁ、いい歳こいてきたからねぇ(笑)。今はそういう状態なんでしょうね。そうとしか説明のしようがないんだけど、サウンド・プロダクトも含めてそういう感じなんだと思う。でも、俺と田森は特に巧いわけでもないからね。ニノは巧いと思うけど。音楽に対する洞察もヤツが一番深いし、肝なんだと思いますよ。
──今回、エンジニアは南石聡巳さん(毒組)ではなく新しい人を起用されたそうですね。
吉野:うん。速水(直樹)さんっていうバンド・アパートとかを録ってる人で、その人に色々相談してやってもらったんですよ。
──ということは、今度の作品はスタジオ・バンキッシュで録ったんですか。
吉野:そう。湾岸音響っていうでっかいスタジオでベーシック・トラックを録って、それをバンキッシュに持っていって、地下の練習スタジオみたいな所で録った。エンジニアが変わって音の方向性もちょっと違った感じになったけど、結果的には良かったと思う。ただ、今回は録音も苦しかった、凄く。
如何に実感を持って生きていくかが大事
──ニノさんのブログによると、2日で7曲のリズム・トラックを録り終えるなど、ベーシックの作業のほうは順調だったようですね。
吉野:うん、そこはバーッと録ったけど。なんせどうしていいんだか…折れそうになったですね、気持ちが。“これでいいや、オッケー、オッケー! もうこれが限界!”ってところを、“いや、待て! もう1回! 諦めんな!”って思い直した。“それじゃ駄目だ! オマエの限界なんて聴いてる人には関係ない! やれる! やれる! 本当の限界までやれ!”と思って、グイッと1杯呑んで「もう1回!」と(笑)。で、次の日の朝に「もう1回、全部録り直します!」って言って。
──吉野さんの中で納得できない部分とは、具体的にどんなところだったんでしょう。
吉野:要するに、納得行くまでやらないと駄目だっちゅうことですよね。それが出てくるまでなかなか満足行かなくて、苦しかったんでしょうね。“それじゃまだ取り繕ってる! ちょっといい格好したいんだろう?”とか、“オマエの本質はそれか? 駅前で呑んでる時のあの感じを本当に表現できてるか?”とか、そういうことを考えていくと“まだまだ足りん!”と思ったんですよ。俺はそんなにしつこく録音するほうじゃないんだけど、まぁそこは直感ですよね。“なんかちょっと違う、駄目だ! もう1回!”っていう。やりすぎちゃうとおかしくなるのは判ってるんだけど、納得行くまでは絶対に諦めちゃイカンっちゅうのがあって。
──前作では、録ったものを家で聴き直したらキレイすぎて気に入らず、思い切って全部録り直したなんてこともありましたよね。
吉野:そうそう、歌はね。今回も家に帰って聴いて全部やり直したこともあったし、一発しか唄わなかったこともあった。あと、声がだんだん死んできて、“これじゃ駄目だ!”ってミックスの時にギリギリで唄い直してみたり。締切に間に合わなくて、録音しながら作った歌詞が何曲もあったし。それは怠けてたわけじゃないんだけど、はめてもはめてもはまらないっちゅうか、何を言っても青くせぇし、しゃらくせぇっていうか。そこを“もう1回素直になれ! 諦めるな!”って自分に言い聞かせた。“自分の人生をくっきり形取って、またひとつはっきりさせるんじゃなかったのかよ!”って。そのアウトプットを諦めたらただの石ころみたいになっちゃうし、何のために生きてんだか判んなくなっちゃうから。ただやっぱり、何作もやっていくと自ずとハードルが上がっていっちゃうからね。“これ、前も言ったな”とかもあるし。でも、言いたいことなんて実はそんなにたくさんはなくて、自分が生きてるっちゅう実感をどうにか表現したいだけなんです。それを歌詞でどう言い表したらいいのか、いつも凄く悩むんですよ。
──生きることへの渇望を唄うイースタンの世界観は一貫しているし、歌詞の表現にはいつも平易な言葉が選ばれているし、過去の作品を凌駕するものを生み出す苦悩は年々増す一方ですよね。
吉野:難しい語彙を使ったり、言葉の仕掛けを使って韻を踏んだりするのは簡単なことなんだよね。でも、そういうのには気取りを感じてしまうし、メッキだと思ってるわけ。それじゃ聴いてる人にも申し訳ないわけさ。俺の真心が通じないんだから。気持ちが追い詰められると、どんどん暗くて悲観的な歌詞になってくるんです。それだと伝わらないんだよね。もっと何でもない言葉でないと。そこに真実がないと駄目なわけ。
──そういう太くて簡潔な言葉を生み落とすための、必要悪なもがきや苦しみだったんでしょうね。
吉野:そうですね。締切もあって良かったし。ねぇと“明日でいいや”ってずっと思うから。本質的に怠け者だしね。いやぁ…呑んだよ、このアルバムのお陰で(笑)。肝臓がどうにかなるんじゃねぇかってくらい大量の酒を呑んだからね。
──ははは。焼酎ですか?
吉野:いや、ウイスキー。酒で飛び越えてやろうと思って。それじゃ全然飛び越えられなかったけど(笑)。それだけ挫折したってことですよ。
──“だから今日もここに立って/嘘と真実の風の中で悪あがきを続ける”(「沸点36℃」)、“この淋しさが生きてる証さ/震える足元が生きてる証さ”(「滑走路と人力飛行機」)、“孤独がどうして珍しい/そうして此所まで生きてきた”(「ばかやろう節」)といった歌詞に象徴されるように、それでもどっこい生きていくんだという強い意志がどの曲にも通底しているのは前作から地続きですよね。
吉野:生きるつもりで生きようと思ったら、ただ生きてるだけじゃそうはならない気がするよ。ちゃんと意識しないと。そこには常に“死”が中心にないと、生きてることにはならないと思う。生き生きと“死”が“死”になっていないと“生”が“生”にならないっていうか、“死”をグッと掴み出すことによって“生”が色付いてくる。その実感を得るためには、何となく過ごしてるようじゃ駄目なんだよ。誰しもが終着点は“死”だし、死なねぇヤツはいねぇし、そう考えると死ぬまでの時間は限られてるんですよね。その中でどういうふうに自分の人生を自分のものにしていくか、実感を持って生きていくかが大事なことでさ。それが“生きる”っちゅうことだし、それを音楽としてアウトプットしたいんですよね。それをアウトプットすることでしか社会と関わっていけないんだよ、俺は。ポンコツだからさ(笑)。そこには大袈裟な言葉で言えば命懸けでやらないと、まともなものが出来ないんだよね。まぁ、このアルバムがまともなもんだっていう水準まで行ってるかどうかはちょっと心許ない部分もあるけど、少なくとも俺達のやれることは全部やりきってるから、これで許してくれって感じ。
描かざるを得ない覚悟を感じた石田徹也の絵
──そういう命懸けの在り方が“死んでいるみたいに生きていたくはないから”(「滑走路と人力飛行機」)という言葉に直結するんでしょうね。
吉野:なるべく大袈裟にはしたくないんですけどね。もっと地味であさっりした言葉の中にこそ真実があると思ってるんだけど、おっちょこちょいだからつい大袈裟になりがちなんです。
──アルバム・タイトルにもなった1曲目の「地球の裏から風が吹く」はずっしりと腰の据わったヘヴィなナンバーですが、イースタンのアルバムは疾走感のある曲で始まることが多いから意外だったんですよね。
吉野:今までは1曲目にウェイトを置いてきたから、今回は意外と意味合いが軽いんですよ。2曲目の「沸点36℃」に重心がある感じで、そういう流れが必要だったんですよね。そこから物語が始まって、「夜がまた来る」で終わるっていう。タイトルはいつも最後に決めるんだけど、今回もアルバムを全部録り終えてからどうするか考えた時に“これかな?”と。この1曲目はプロローグ的な意味合いの曲で、1日の始まりみたいな位置付けだったんです。朝陽が昇って、表に出て風がびゅうっと吹いてるようなね。独りなんだけど世の中と関わってるっちゅうか、世の中に踏み出していくようなイントロダクション的なイメージ。それをアルバムのタイトルにするのもどうかな? って最初はちょっと思ったんだけど、色々と候補を出してみて、このタイトルとこの曲がアルバムを象徴してるんじゃないかなって思ったので、これにしたんです。他の案でこれよりいい思い付きはなかった。1曲目のあの前奏の感じっちゅうか、あれが全体を象徴してるかなと思って。
──「サンセットマン」という曲は、怒髪天の同名異曲と何か関連があるんでしょうか。
吉野:ん、なんかあったっけ?
──『マン・イズ・ヘヴィ』(2001年9月発表)の最後を飾る同じタイトルの曲がありましたよ。
吉野:そうだっけ? 忘れてた(笑)。関連性は全くないね。言われてみると“なんかあったなぁ…”って気もするけど。
──“満身創痍で、ばかやろう”と唄われる「ばかやろう節」を聴くと、バンドがどれだけ成熟の方向に向かおうが吉野さんの怒りの根源は不変なんだなとつくづく感じますよ。
吉野:自分の変化は、歳と共に変わるものは変わりますよね。失うものも少なくないし。ただ、それは俺、取り繕う必要はないと思うんですよね。取り繕うと大事なものが濁ってしまう気がする。駄目なら駄目で、それまでですから。
──『DON QUIJOTE』(2004年8月発表)以降、国内でのレコーディングが徐々に定着してきましたよね。
吉野:俺達はエディ(エディ・アッシュワース、『旅路ニ季節ガ燃エ落チル』から『其処カラ何ガ見エルカ』までのプロデューサー兼エンジニア)に録って欲しかったんだけど、彼の環境が変わっちゃったからね。エディがまだロスにいてエンジニア業をやってるなら選択肢はあったけど、大学の先生になっちゃったから。客員教授だったのが教授になったって言ってた。あとはまぁ、日本で録ると家に帰れるのも大きい。一旦家に帰って、冷静になって聴き直すことができるしね。海外で録るとずっとオンな状態で、なかなかオフになれないんですよ。だから今は、日本で録るほうがより自分達の真実に近づけることができる気がしてますね。
──今回のシングルとアルバムのジャケットは、どちらも石田徹也さんという画家の絵が象徴的に使われていますが。
吉野:俺も今年に入ってからNHK教育でやってる『新日曜美術館』の特集を観て知ったんです。最近の画家でこんな凄い絵を描く人がいたんだなって思って。31歳の若さで亡くなった人なんだけど、ずっと気になってたんですよ。今年の夏にその人の美術展が静岡でやってると聞いて、新幹線に乗って行ってきた。そこで生の絵を観てぶったまげて、強い印象を感じたわけさ。魂みたいなものを感じたし、やっぱり命懸けな何かを感じたよ。損得とか処世術とかとは無縁のところで、描かないとどうしようもないから描いてるだけっていうのを感じた。表面的には抑制されてるんだけど、その内側には凄く人間的なギラギラ感がある。強く主張するっていうよりは、その佇まいこそが主張っていうか。上手く言えないけどね。
──『沸点36℃』のジャケットを見ると、平たく言えば現代風刺というか、行間に毒が充満している印象を受けますね。
吉野:そうだね。ああいう風刺的な作風は最初の頃なんだと思う。最後のほうはもっと奥深くて悲しい感じになってくる。きっと、風刺なんてどうでもよくなってきたんじゃないかな。
──そうした抑え難い悲しみの深さがそこはかとなく伝わってくるのは、今回のシングルとアルバムの内容にリンクしていると思いますよ。
吉野:リンクしてくれりゃいいなと思って、ジャケットに使わせてもらったんだけどね。今も生きてりゃ歳を重ねて、もっともっと面白い絵を描いたんだろうなと思うと凄く残念だよね。でも少なくとも、生きた時間のギリギリまではギンギンにボーボーだったはずだよ。だからああいう絵なんだと思う。
音楽を奏でることでしか社会と関われない
──ところで、吉野さんのソロ・プロジェクト“outside yoshino”を一旦休止しようと思ったのはどんな理由からなんですか。
吉野:あれに関しては、自分の理想だけを追求するプロジェクトなんです。それは言い換えると自分の核なわけ。たとえば「バンドを組みたいけど友達がいないからできない」って言うヤツがいるけど、独りでやりゃあいいじゃねぇかってことですよね。何でも自分独りでやれやっていう。独りでできないことはみんなで集まったってできねぇんだよって俺は思うんだよね。“outside yoshino”はそれを実践するプロジェクトなわけです。全部自分の思った通りにやって、自分で責任を取れと。ライヴは自分の理想に向かっていろんな形を試しながらやってきたんだけど、ちょっとギャップが出てきたというか、ミイラ取りがミイラになりそうになったというか、とにかく1回休もうと思ったんですよ。なんて言うか…凄く“減る”んですよね。『恐怖新聞』みたいに寿命が何日か縮まる(笑)。俺は半狂乱みたいになって唄ってるけど、それを観てる人達はなんか嬉しいのかな? っていうか、そこに偽りはないんだけど、偽りなさすぎなんじゃねぇか? と思った。自分の中身を全部ぶちまけることに一体どんな意味があるんだろう? と思って、そういう考えを整理する必要があったわけですよ。いろんな共演者がいるライヴに俺が出ると、必ずヘンな雰囲気になるわけ。多分、やりすぎなんでしょうね(笑)。
──ただ、気力・体力全開で唄って表現しきる姿勢はバンドも同じじゃないですか?
吉野:でも、バンドはバンドっていう統制された決まりがあるから。独りで唄う時は決まりがないからね。曲の途中で演奏を止めちゃったりもできるわけ。感情を爆発しすぎちゃって取り返しが付かなくなったこともあるし、それはそれでドキュメントとして意味があると俺は思うんだけど、なんかやってて悲しくなってきたんですよね。あと、最初は会場探しから何から何まで全部自分でやろうと思ったわけさ。でもそれじゃなかなか大変で、いろんな店を借りてやってみたんですよ。で、俺は観る人、あんた唄う人、金を払ったんだからそのぶんやってくれ、ハイどうぞ、ああ面白かった、ハイサヨナラ…っていうのとはちょっと違うことをやろうと思ったんです。
──通常のライヴハウスではなく、民家やアンティーク・ショップ、酒場や美容室といったユニークな場所にこだわってライヴを展開していましたよね。
吉野:そう。だけど結局、呑み屋でやってもライヴハウスとおんなじだなって感じ。場所自体に力がある所じゃないと駄目なんだなって思った。
──でも、奈良美智さんのアトリエで行なったライヴは手応えがあったんじゃないですか。
吉野:うん、あれは場に力があったからね。そこでやることに意味があるからさ。そういうところも気を抜かないでやんなきゃ駄目なんだなって思って、反省したわけ。だから今は一度深呼吸し直して、じっくり組み直そうと思ってる。独りでやるのは締切があるわけじゃないし、ゆっくりやってもいいことだから。
──ソロ・プロジェクトはあらゆるものを消耗するから、それがバンド活動の妨げになるという意味もあったんですか。
吉野:いや、それはないよ。むしろどっちもやってたほうがお互いが影響し合っていい。ソロで得ることは凄くたくさんあるし、それが今度のアルバムにもちゃんと反映されてると思うんだよね。
──気が付けば、来年は結成20周年を迎えることになりますね。
吉野:でも、そんなにめでてぇことかな? と思うよ。むしろ伏せておきたいくらい。20年やってきたから何? って感じだよ。やめたくないからやめなかっただけだから。節目みたいなものに執着はないし、趣味じゃない。
──“極東最前線”のタイトルにもいつからか回数が付かなくなりましたよね。あれは意図的なんですか?
吉野:単純にめんどくさくなってきちゃったから。あと、積み重なっていく感じが重いなと思って。何回目かっていうのは、サブタイトルを付けとけばそれで判断できるし。権威みたいになっていくのがイヤなんだよね。20年やってきたからって、俺達なりのいろんな思いはあるけど、それで偉いわけじゃないし。俺はただ、いい歌を作りたいなって思う。それで世の中と関わることができればなって思う。俺が社会と関われる接点は、歌を作って唄ってプレイすることしかないんだよね。それは今叶ってるじゃん? もうそれ以上望んだら罰が当たるわ。そんな贅沢な望みが叶ってるんだから、それ以上の野望はない。だから、俺を生かしておいてくれ! っちゅう感じ。そしたらまた曲を作るし、いいプレイができるように頑張るからさ。
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01. 地球の裏から風が吹く
02. 沸点36℃
03. 滑走路と人力飛行機
04. 野良犬、走る
05. 五月の空の下で
06. 白昼の行方不明者
07. 旅行者たちの憂鬱
08. サンセットマン
09. ばかやろう節
10. 夜がまた来る
Live info.
official bootleg vol.014 〜20th Anniversary/僕達の疾走〜
11月14日(水)札幌ベッシーホール
w/ bloodthirsty butchers / 怒髪天
official bootleg vol.015 〜20th Anniversary〜
11月20日(火)福岡 Drum LOGOS
w/ bloodthirsty butchers / and more...
極東最前線 〜歳末大パニック〜
12月17日(月)渋谷クラブクアトロ w/ PANICSMILE
COUNTDOWN JAPAN 07/08
12月28日(金)幕張メッセ
極東最前線/巡業 〜地球の裏から風が吹く〜
1月10日(木)千葉 LOOK
1月11日(金)さいたま新都心 HEAVEN'S ROCK
1月13日(日)横浜 F.A.D
1月14日(祝・月)柏 ZaX
1月18日(金)新潟 CLUB JUNK BOX mini
1月20日(日)金沢 vanvan V4
1月22日(火)京都 磔磔
1月24日(木)鹿児島 SRホール
1月26日(土)福岡 DRUM Be-1
1月27日(日)広島ナミキジャンクション
1月29日(火)米子ベリエ
1月30日(水)岡山ペパーランド
2月1日(金)心斎橋クラブクアトロ
2月2日(土)名古屋クラブクアトロ
2月3日(日)浜松メスカリンドライブ
2月8日(金)宇都宮 HEAVEN'S ROCK
2月9日(土)郡山 Club #9
2月11日(祝・月)仙台 CLUB JUNK BOX
2月13日(水)弘前 Mag Net
2月15日(金)札幌ペニーレーン24
2月22日(金)渋谷 O-EAST
【info.】SMASH:03-3444-6751
裸足の音楽社 official website
http://www.hadashino-ongakusha.jp/