万華鏡のように多彩な表情を持った楽曲群『youth of distortion』
京都からやってきた、ミラクル・ロック・バンド“solaris”のデビューアルバムがリリースされる。…と言っても、この作品、実は8月1日から下北沢ハイラインレコーズで先行発売したもの。ハイラインウイークリーチャートでは1位を獲得し、満を持しての全国発売となった。
鋭利なフレーズと轟音ギターのアンサンブルがタイトで、ダンサブルなビートに乗って繰り広げる最新鋭のギターロック・サウンドが炸裂。エモーショナルで唯一無二のポップ・ワールド。曲だけ聴くと神経質そうな人なのでは? というイメージは拭えなかったのだが、実際のメンバーは最初に持っていた印象とは違い、良く喋る、ノリの良い方々だった。楽曲と人柄にギャップがある分、いろんな角度から曲もライブも楽しむことができるハズ!! (interview:やまだともこ)
solaris、謎の結成秘話
──Rooftopには初登場になるので、バンドを結成した話をしていただけますか?
ハノトモ(Vo&G):結成は3年半ぐらい前で、ベースのジンくんとギターのyoukiが一緒にやっていたバンドが解散したときに、僕はちょうどメンバーを探していて、インターネットのメンバー募集で知り合ったんです。そこからドラマーが2回代わって、今のゆっこになりました。ドラムを叩いたことはなかったんですけど、solarisの音源を聴いて、このバンドで叩きたい!って思ったみたいで…。
──え??
ゆっこ(Dr.):そうなんです…。
──それは、どういう状態ですか(笑)?
ハノトモ:今聞くと、なんだそれ!ですね(笑)。
──solarisに入ってからドラムの練習をしたってことですか?
ゆっこ:はい。もともと吹奏楽をやっていたので太鼓は叩いたことがあったんですけど、ドラムはやったことがなかったんです。無謀な話なんですけど(笑)。
──無謀ですね(笑)。バンドに入ったらやるしかないですからね。ところで、solarisの楽曲は結成当初からこういう感じだったんですか?
ハノトモ:solarisを始めた当時は今ほど自分たちの楽曲を深く突き詰めていなかったので、そのころからこうかと言われたらそうでもないです。今はメンバーも気心が知れているので、理想的にはなってきてるかなと思います。
──皆さんはどういう音楽を聴いて育ったんですか?
youki(G):僕はいろいろありますけど、ゆずとか19が流行った時に中学生だったので、友達と2人で路上で弾き語りをやっていたんです。元々はバンドとかライブハウスではなくて、とりあえず路上に出てやりたいっていうところがスタートなので…。それから、あれよあれよという間にここに座ってます。
ハノトモ:僕はフリッパーズ・ギターとか、オザケン、コーネリアス、レニクラ、90年代だったらレディオ・ヘッド、オアシス、スマパン、ニルバーナ。solarisを始めてからも音楽の趣味は変わってないんですけど、グランジが好きで音楽を始めました。
ゆっこ:私は吹奏楽を中学1年生の時からやっていたのでクラシックばっかり聴いていて、ルーツがよくわからないです。
ハノトモ:早すぎた『のだめカンタービレ』(笑)。
ゆっこ:そうやな(笑)。一番よく聴いたのは東京スカパラダイスオーケストラで、今も聴いてます。
──ゆっこさんが、なぜsolarisに入ったのかがますます不思議ですね。
ゆっこ:そうですよね。
──そうですよねって…(笑)。
ゆっこ:吹奏楽では譜面のある曲ばかりをやっていたんですけど、友達とか先輩のバンドを見ていて、譜面がないというのは、なんて自由なんだと思ったんです。それで、私も自由な音楽をやりたいって探している時にsolarisの楽曲に出会い、『ラブミーテンダー』(M-1)を聴いて叩いてみたいって思ったんです。
ケースケ ジンライ(B/以下:ケースケ):僕はハノトモと年が近いので同じような曲を聴いていたんですけど、バンドを始める直接のきっかけはTMネットワーク。そこからMr.BIG。ベースに魅力を感じてバンド活動を始めて、気が付いたらsolarisにいました。
──今言われていたルーツはsolarisの曲に反映されてますか?
ハノトモ:昔から聴いてるのが変わらないので出てるとは思いますけどね。ディレイを使ったりとかはsolarisになってから。ギター2本というバンド形態は初めてなので、そういう意味では新しいのができてるかなと思いますけど。
アルバムタイトル決めの苦労
──今回のミニアルバム『youth of distortion』を聴いて、ギターが前に出ている曲が多いというのが第一印象でした。作詞作曲はハノトモさんですか?
ハノトモ:はい。ギターアレンジはyoukiと2人でやるんですけど、ギターとボーカルはすごく出てるかな。イントロがあって1分ぐらいしないとイメージがわからない曲よりは、スタートして2〜3秒でわかる曲っていうのがやりたかったんです。そういう意味ではギターの主旋律も大事にしていますね。聴いたらすぐにわかる曲になっていると思います。
──イントロを聴いて、その続きを聴くか聴かないか判断しますから、けっこう重要なところですもんね。それはこれからも課題としてありますか?
ハノトモ:そうですね。曲を作る基本でもありますから。
──歌詞カードにコードが書いてあったり、ギターを聴かせたいという気持ちの表れなのかなと思いました。何でコードを載せようと思ったんですか?
ハノトモ:僕らの曲を聴いてくれる人の中に、ギターをやっている人がいたらコピーしてもらいたいなって思ったんです。あと、歌詞カードに文字を置いたときに、歌詞が少ないからちょっと色を付けたかったんです。
──ギターのアレンジはハノトモさんとyoukiさんのどちらのほうがこだわりますか?
ハノトモ:イントロはこういうのがいいなと思って曲を作ることが多いので、そういう意味では僕ですけど、おおまかな部分はyoukiに任せているので、半々ぐらいですね。
──それぞれのパートがちゃんと主張している中で、ボーカルをはっきりと聴かせようというのは意識されてます?
ハノトモ:意識はしてますね。イントロが良くなければダメだし、ボーカルが良くなくてもダメ。ガッツリとしたサビはないですけど、Aメロが素敵だったらその流れで作っていきます。曲作りに関して言うと、Aメロが浮かんだらゴールが見えたなって思っているところもありますね。その代わり、作りかけで終わってる曲もたくさんあります。
──この7曲を選んだのは?
ハノトモ:今回は昔ボツにした曲を再構築したものも入っているので、最初は13曲ぐらいあったんですよ。選曲は1枚目なので田中さん(アンダーフラワーレーベル代表取締役)にお願いしました。
──これまでに自主を2枚リリースしているそうですが、再録した曲はありますか?
ハノトモ:『ラブミーテンダー』は再録です。『youth of distortion』の前に出した『パドゥシャ』(2nd.CD-R)の3曲は、このミニアルバムありきで作ったので、選ばれなかった曲を入れたんです。
──全国でリリースされる1枚目というのは意識的に違います?
ハノトモ:作ってる当時はいろいろ考えていたんですけど、CDができた瞬間に1枚目だからどうこうっていうのは消えてなくなりました。ハイライン限定で販売して1位も取れましたよ。1位を1回取ってみたかったんです。
──おめでとうございます!!
ハノトモ:ありがとうございます(笑)。
──ということは、自信がある1枚になっているということですね。ところで、このタイトルにはどんな意味が込められてますか?
ハノトモ:マスタリングをしてる時に、田中さんから「タイトルどうする?」って言われて考え始めたんですけど、ゆっこは『七色のクレパス』って言ってたな。
ゆっこ:7曲あるし、ちょうどええやん!って。
ハノトモ:って言ったら、田中さんが絶句したんです(笑)。一瞬で却下やった。
ケースケ:『僕らはsolarisに恋をした』っていうタイトルも出たんですけど、それも絶句されて…(笑)。
ハノトモ:『youth of distortion』は言葉の響き的に良かったので決めました。日本語の曲が多いからアルバムタイトルぐらいは英語がいいかなというのと、ちょっと長いタイトルが良かったんです。
リスナーが自分の思い出に置き換えて聴ける曲を
──曲タイトルは『ラブミーテンダー』や『so sad about us』(M-5)など、エルビス・プレスリーやザ・フーを彷彿させますね。
ハノトモ:曲のタイトルはそういうものが多いかもしれませんね。『夢で逢えたら』は昔やっていたテレビ番組、『風がない』は井上陽水さんの『傘がない』みたいですしね。
──プレスリーとかザ・フーが好きなんですか?
ハノトモ:特別に好きというわけではなくて、『ラブミーテンダー』という言葉が使いたかったんです。言葉に魅力を感じていたので。
──言葉を重視するタイプだと?
ハノトモ:そうですね。歌詞も具体的にというよりは抽象的な歌詞が多いので、言葉のイメージをちりばめて作ってますね。
──歌詞全体を読むとラブソングではありますけど、ズバッというものではなく淡い水彩画のような詞が多いですもんね。
ハノトモ:そうなんです。その人によって思い出って違いますよね。抽象的のほうが、聴いている人の思い出に置き換えて聴けるというのがありますね。あまり押しつけがましくしたくないんです。
──例えば、この『傘がない』ですが…。
ハノトモ:傘じゃなくて雨です。陽水さんになってしまいます(笑)。
──そうでした(笑)。『風がない』でしたら、ハノトモさんがこの曲を書くにあたって、具体的にイメージした風景ってどんなものだったんですか?
ハノトモ:風がないって文法的におかしいですよね。これは、外に出たら雨が降ってジメーっとしていて風でも吹いてくれたらいいのにって思った日があって、それを詞にしてみようと思ったんです。風がないっていうのは退廃的なイメージがあって、いいんじゃないかなって。でも、あまり汚らしくしたくなかったので、歌詞は丁寧というか“月の下”とか“旋律”とか“五線譜”とか、そういうのをイメージさせる言葉を使おうかなと思ったんです。
──このアルバムの中で思い入れが一番強い曲は?
ハノトモ:『から回る世界』(M-2)ですね。彼女と別れた時に作ったんですけど、お互いフェイドアウト気味になってきていて、どちらから別れを切り出そうかっていう状態だったんです。それで言ってしまったときに、何もかもが違ってきたなっていうのが『から回る世界』。これは自分の思いを押しつけがましく言ってますね。『風がない』(M-4)と『夢で逢えたら』(M-7)は、自分の中では上手にできたな。『夢で逢えたら』は、レコーディングする日に勢いで録ったんです。この曲が一番新しくて、アルバムで昔のと今のが入っていて、次に繋がる感じになりましたね。
──ゆっこさんがsolarisに入るきっかけとなった『ラブミーテンダー』は、自分で叩いてみてどうでしたか?
ゆっこ:幸せでした。ライブでも絶対にやりたいって思うし、すごく好きな曲です。
──前のドラムと自分を比較したりしないですか?
ゆっこ:すごくしますよ。前は男の人だったのでパワーも違いますから、自分は別のできるところでどうやったらいいように聴かせられるかとか悩みますね。
──ケースケさんが弾いていて一番気持ち良かったのは?
ケースケ:『ラブミーテンダー』とか、『飛べない翼』(M-3)は、すんなり出てきた曲で、ライブで弾いていても楽しいですね。
──『飛べない翼』は良い曲ですよね。
ハノトモ:これまでライブでやっていてお客さんの反応だったりを見ていて、この曲がリード曲になったんです。
──リズム隊が力強く響いてましたが、けっこう作り込まれました?
ケースケ:そうでもなかったんですよ(苦笑)。その時に出せるベストでは作りましたけど。煮詰まるとかはなかったですね。
──全曲3分半ぐらいですけど、情報量が多いから3分半には聴こえない楽曲ですね。
ハノトモ:だから敢えて、短くしているんです。これで5分も6分もある曲だったら、聴いていて疲れちゃいますからね(苦笑)。
──ライブはどんな感じですか?
ハノトモ:CDを聴いて想像したライブとは180度違うと思います。昔は曲が暗い感じだからそれに合わせた方がいいんかなって、暗めの雰囲気でやっていたんですけど、自分の中でしっくり来なかったんです。だから、最近は思うままに楽しくライブをやって、曲はマイナーコードを使ってというギャップを楽しむようになりました。ライブはダイレクトにお客さんが楽しんでいるかを感じられるから、今はうまく伝わって来てるかなって思いますよ。
──普段ライブに出る前ってどんなことを考えてますか?
ケースケ:緊張はもちろんしますけど、いかに楽しくはじけられるかというところですね。
ゆっこ:4つ打ちの曲が多いので、お客さんに踊ってもらえるように。踊ってもらえたら安心してできるんで、なんとか踊ってもらおうと思ってます。
ハノトモ:ライブ前は固くならずにできたらいいかな。あとは元気よくやろうかなって考えてます。ライブを見に来てる人は元気が欲しいんだと思うんです。だから、僕らがそれを伝えられないと意味がないのかなって。僕らのライブを見てくれた人が、私の迷いなんてちっぽけなもんだって思ってくれるぐらいのライブができたら、それでいいんじゃないかな。
──CDだけ聴いたら神経質そうっていうイメージ持ちますからね。
ハノトモ:絶対ありますね。
youki:僕は、若さを前面に出して、どんだけ暴れてやろうかって感じです。
──若さ…って、今おいくつでしたっけ?
youki:21ですけど…。
──!! …み、、、見えないですね(苦笑)。
youki:今、冷たい東京の目を感じたな(笑)。
──(笑)失礼しました…。バンドとしての今後の目標は?
ケースケ:もちろん今みたいにライブをコンスタントに各地で出来ていったら良いですけど、もっと会場が大きくなっていろんな人に聴いてもらえるようにしていきたいと思います。
ゆっこ:楽しくできていけばいいなと思います。やってる方も見てくれてる人も楽しかったなって思えるのが目標ですね。
ハノトモ:この間初めて東京で自主企画をやって、それがすごく楽しかったんです。今後も何かできればいいなって思ってます。スタンス的にはお客さんの立場でお客さんが楽しめることだけを考えてやりたいかな。私だったらこうしたいと思うのを僕ができたらないいな。
──その方が親しみやすかったりしますからね。
youki:みんなも言ってるように、お客さんと一緒に楽しくライブができれば。僕の若さをみんなに分けられたらと思ってます! 楽しく、楽しく、やさしくね!
──…年のわりには言うことが古いですね(苦笑)。
youth of distortion
FLOWER-084 / 1,890yen(tax in)
UNDER FLOWER RECORDS
10.03 IN STORES
★amazonで購入する
Live info.
10.12(Fri)京都MOJO
【あの地球人のように…】〜solaris『youth of distortion』レコ発〜
OPEN 18:30 / START 19:00
ADV.2000(+1drink)/ DOOR 2500(+1drink)
w)モーモールルギャバン / ワゴンズ / Prof.Moriarty&Smiley-Todd
10.19(Fri)渋谷 O-Crest
『Crest Cup Vol.53 ーdancing to the musicー』
OPEN 18:00 / START 18:30
ADV.2000(+1drink)/ DOOR 2500(+1drink)
w)SUGAR PANIC / SPANK PAGE / NON'SHEEP / ano-Hi
10.22(Mon)名古屋 CLUB ROCK'N'ROLL
『solaris youth of distortion release tour』
OPEN 18:30 / START 19:00
ADV. 2000(+1drink)/ DOOR 2300
w)viridian / cinema staff / Dr.Right
10.24(Wed)十三ファンダンゴ
『ハミコン レコ発 ララバイツアー〜ファンダンゴ20周年記念スペシャル〜』
OPEN 18:00 / START 18:30
ADV. 2000(+1drink)/ DOOR 2300(+1drink)
w)ハミリーコンプータ / talk to me / モーモールルギャバン
11.03(Sat)Zher the ZOO YOYOGI
『ハミリーコンプータレコ発「ララバイ・ツアー ファイナル」suppurted by mf247』
OPEN 18:30 / START 19:00
ADV. 2300(+1drink)/ DOOR 2500(+1drink)
w/ハミリーコンプータ/talk to me/
11.11(Sun)京都西院 OOH-LA-LA
『花よりロックvol.1』
OPEN / START 未定
ADV. 1200 / DOOR 1200 (1drink,1food別)
w/mori megane/
11.15(Thu)十三ファンダンゴ
『ガールハントグランプリ地方巡業'07 with ファンタンゴ20周年!!』
OPEN 18:00 / START 18:30
ADV. 2300(+1drink)/ 2800(+1drink)
w)ザ・ガールハント / throwcurve
solaris OFFICIAL WEB SITE
http://slrs.jp/