ギター バックナンバー

仲野茂×シズヲ('07年8月号)

仲野茂×シズヲ

ニューロティカ ロフト通算ライブ回数200回記念!
カウントダウン対談その1

今年11月のライブで、新宿ロフト出演200回という前人未踏の記録を打ち立てる予定のニューロティカ。それに向けてロフトでは8月からマンスリーでのライブが行われるんですが、ルーフトップでもニューロティカを強力に応援していきますヨ! ……ということで特集第一弾は、かつての新宿ロフト夜の帝王・アナーキーの仲野茂さんと、ニューロティカへは一番最後に加入してきたギターのシズヲさんによる対談です。あまりない組み合わせのふたりですが、対談開始早々ビールを要求され、出してしまったのが運の尽き……とにかく飲むわ飲むわで話も弾んだものの、誌面には載せられそうもない話題が八割。それでも他では読めない面白い対談になったんじゃあないでしょうか!? (interview : 北村ヂン)


メンバーを変えて復活できたっていうのはすごい力だよ

──シズヲさんはニューロティカに入る前、茂さんと面識はあったんですか。

シズヲ:面識はなかったですけど、もちろんアナーキーは知ってましたよ。茂さんと初めて会ったのが……。

:中央高速の谷村サービスエリアでな(笑)。

シズヲ:まだロティカに入ったばっかりで地元から高速でリハに通ってる頃だったんだけど、谷村のラーメンが美味しいんで食っていこうと思ったら食券の販売機の前に茶髪のモヒカンの人がいるんで、「あれ、茂さんかな〜?」って(笑)。「今度ニューロティカに入ったシズヲです」って、おそるおそる声をかけましたね。

──茂さんはずっと昔からニューロティカを観てきたと思いますけど、シズヲさんたちが加わりメンバーが新しくなってからのロティカはどう思いましたか。

:やっぱり大したもんだなとは思ったよね。シズオが入る前に、あっちゃんがメイク落としてやってた時期なんかもあってさ、「お前キャンディーズかよ!」みたいな(笑)。

シズヲ:ああ、普通のおじさんに戻りますって(笑)。

:まあキャンディーズじゃかわいそうだから、KISSくらいにしておいてあげたいけど(笑)。あっちゃんにしても「オレは一生ピエロだけなのか?」っていうのがあったんじゃない? でもメイク落としたら人気なくなっちゃってね。それからメンバーを若手に変えて、メイクも戻して復活出来たっていうのはすごい力だよね。

シズヲ:まあ、年齢はそんなに変わらないんですけどね(笑)。

:でもメンバーが変わってからビート感やサウンドが変わったもんね。ずっと続けてると音からも加齢臭が出ちゃうんだと思うんだ(笑)、それは年齢じゃなくてさ。そういう新装開店の感じがあって、ロティカ再生にあたってはナイス・メンバーチェンジだったと思うよ。アナーキーなんかは、ドラムに名越を入れて新生アナーキーとしてデジロックの先駆けみたいなことをやったんだけど、新しいことをやろうとしてもちょっとオヤ汁が出ちゃっててさ……(笑)。「あー、惜しい!」って。

シズヲ:いや、そんなこともないと思いますけどね。

:でも結局オレに求められるのはアナーキーだし、なおかつオリジナルメンバーでやれってことになっちゃうんだよね。しかもメンバーがみんな生きてるからねぇ……。死んでくれればそうも言われなくなるんだろうけど(笑)。いちいち説明できないじゃん、バンドの内情なんか。

シズヲ:この前アナーキーのドキュメンタリーで、バンドが出来た時の話を観たんですけど、最初にメンバーが集まってて、そこから楽器をジャンケンで決めたらしいですね。

:それはアナーキーの前のバンドだけどね。

シズヲ:でも、僕なんかは最初にギターを初めて、ひとりでやっててもつまんないからバンドやろうかってメンバー集めた感じなんで、最初に五人集まってて、そこでギターやろうかベースやろうかっていうのとは違うんだろうなって思いますね。メンバーチェンジの理由でよく音楽性の違いとかあるけど、アナーキーにはそういうのが当てはまらないのかなって。

:音楽をやる前から友達だったからダチっていう部分が大きかったんだよな。それがアナーキーっていうバンドになってプロになっていくにつれ、同い年で同級生っていったって全員がそういうロックの世界に向いてるわけじゃないからね。特にオレたちはいきなりデビューだから。また、デビューしてすぐにちょっと売れちゃったからね。いきなり来年のスケジュールまで決まってて、ツアー終わればレコーディングして。あの頃は年二枚出してたからな、いつ曲作るんだよって。そういう忙しい中で、「それはそれでしょうがない」って思えるヤツとダメになっちゃうヤツが出てくるんだよ。だから同級生でやるのは難しいよ、みんな同じ歩調で成長していければいいけどさ。

──ロティカも初期のメンバーはそういう友達同士で組んだという感じのバンドでしたよね。

シズヲ:それが、あっちゃんとジャッキーさん以外ほぼ同時に抜けちゃったわけだからね。その時にあっちゃんがどう思ったのかはわからないけど、友達がそのままバンドになった難しさっていうのはあるのかな。

:でもメンバーが抜けちゃうっていうのはバンドの状態もよくない時だからね。ずっとやってきたメンバーが抜けるのはさみしかったり、つらかったりするかもしれないけど、「もしかしたらチャンスかな」みたいな考えもあったかもね。そうやって思えたから今成功してるんだろうと思うよ。


「昔は良かったな〜」とか話するのは20年先でいい

──そういう友達だったメンバーでずっとやってきたバンドに後から入ったシズヲさんとしては、どういう感覚だったんですか。

シズヲ:まあそこまで気負いとかはなかったですね。もともと聴いてて、いい歌を作るバンドだなって思ってたファンの立場だったんだけど、別に誰かの代わりに入ったっていう感じではなかったんで。ただ、インターネットでボロクソに書かれたことはあったけど(笑)。

──どうしてもオリジナルメンバーの方がよかったっていう意見の人はいますからね。

:そりゃそうだよ。でも名越なんかもさっぱりしてるというか、オレたちの方が心配してたくらいだからね。こっちは同級生でずっとやってきたメンバーだから、そこに入ってやってけるのかなって。でも本人は意外とあっけらかんとして、初めてのレコーディングでもいいたいこといってたからね。「新人がうるせーよ!」って(笑)。

シズヲ:これもドキュメンタリーで観ましたけど、オーディションの時、ドラムのスティック三本しか持ってこなかったらしいですね(笑)。一本折れたら残りの一本と取り替えるっていう。

:それが折れたらどうするんだよって。普通、偶数じゃないのか、バチは(笑)。しかもオーディションなのに曲も覚えてこないしよ(笑)。でもそれくらいじゃないとオレたちの中ではやってけないだろうな。オーディションには何人も来てくれたんだけど、ガッチガチのヤツとかもいてさ。ドラムがどうこうっていう以前の問題で、「コイツ、オレたちと一緒にツアー行ったら具合が悪くなっちゃうんじゃないの?」って。まあ、ロティカなんかは総取り替えみたいなもんだったから上手くいったんじゃないかな。

シズヲ:僕が入った時にはオリジナルメンバーもあっちゃんしかいませんでしたからね。もうナボちゃんとカタルがいてリズムパートはまっさらだったし、そこに新たに入ったのでそんなに昔のイメージがどうこうっていうのはなかったですね。

:ほとんど新しいバンドを始めるのと同じ感覚だよな。それがロティカの成功につながったのかはわからないけど、アナーキーはちょこっとだけ変わったっていうのが難しかったのかもしれないな。どうしても一枚目がよかったってことになっちゃうからね。アナーキーのコアなファンっていうのは音楽のファンじゃなくってアナーキーのファンだから、新しいことをやってもあんまり意味がないんだよね。もちろん名越を入れて新しいアナーキーで三枚作れたっていうのは、自分たちにとっては意義があったんだけど。「ずっとそのままでやっていて欲しい」みたいな考えもわからなくはないけど、オレは「お前らじじくさくないか?」って思うんだよな。縁側で番茶すすって「昔は良かったな〜」とか話するのは20年先でいいかなって思うんだよ。

シズヲ:そうですね。たとえオリジナルメンバーでずっとやってるバンドでも、常に新しいことを取り入れて、その年に初めて聴いた人にもファンになって欲しいと思いますからね。

:最近、かぐや姫とか吉田拓郎が集まって嬬恋フォークジャンボリーやったり、おっさんの青春時代の「なつかしの名曲」みたいなコンピアルバムがやたら売れてたりしてさ、世の中が妙にじじくさくなってるような気がして、それがすごくイヤな感じなわけ。

シズヲ:現役でやってる側としてはそうですよね。

:あんまり昔ばっかり振り返ってもなってのがあるじゃん。飲み屋で「オレも昔は悪でさ〜」なんて言ってるヤツなんか絶対にダサイからね。本当に悪いことしてたら恥ずかしくって言えないよ。


周りが変わっても、シズヲさえ変わらなけりゃ問題ないよ

──そういう意味ではこれも昔話になってしまいますが(笑)、ちょっと西新宿のロフト話もしたいんですけど。

:やっぱりロフトっていうのは「これぞライブハウス」っていうイメージだな。ロフトにさえ出れば「オレはロックをやってるぜ!」って大手を振って言えると思ってたから。それで、当時はARBとアナーキーとルースターズで動員記録を競争しててさ、みんなロフトの帝王になりたいわけよ。まあ最後は……オレたちが勝ったんじゃないかな(笑)。

──それで夜もしょっちゅう居着くようになったと。

:ワンマンを出来るようになってからは「ロフトに出ているアナーキー」みたいな称号を与えられたような気になって、自分の家のように使わせてもらってたね。まあ、よくもあれだけロクデナシどもが集まってたなって思うけどね。最近はそういうヤツらは少なくなっちゃったのかな。

シズヲ:確かにライブハウスは変わらないのに、中に集う人はどんどん変わってる気はしますね。

:ロックが商売になってみんな上昇志向になって、ライブハウスも通過点みたいになっちゃったから、それはやっぱり集わなくなるよね。オレらの前の世代にはゴールデン街があって、映画とか舞台のヤツらが毎晩「てめえの作品はクソだ」とかなんとかいってケンカしてるって聞いててさ、そういうのが羨ましかったの。だからオレにとってロフトは痛快だったね。ゴールデン街ともまた違ってインテリ層じゃなかったし、バカ丸出しのロクデナシばっかりでさ。

──その最後の方に入ってきたニューロティカって、やっぱり周りからかわいがられていたっていう感じなんですか。

:まあ、その頃はもう80年代のバンドたちがあまり来なくなってた時期だからな。そこへロティカとかG.D.FLICKERSとかが来るようになって、上手く廻ってるんだなって思ったよ。新宿ロフトのすごいところって、そうやって脈々と残っているっていうことだからね。

シズヲ:なるほど。茂さんってすごい先輩なんだけど、こうやって一緒に話させてもらえるようになって、すごい身近な所で話せる存在だなって思います。勉強になりますよ。

:オレは年功序列って大っ嫌いだからね。オレよりも若いヤツでもジジイでもイケてるヤツはいるからさ。ただイケてるヤツと遊びたいんだよ。

シズヲ:それはちょっとわかりますね。僕もニューロティカっていう23年続いているバンドに入って活動してるので、すごいリスペクトしてくれてる若い子とかもいるんだけど、それが逆に居心地悪い時があるんですよ(笑)。

:ステージ立ったらそんなの関係ないからね。

シズヲ:ただ、周りからそういう扱いをされていると、いつも全部お膳立てされてないとイヤだみたいな雰囲気が出てくるバンドもいたりするんで、そういう風にはなりたくないとは思ってますね。ものすごいひどいギター弾いたライブの後でも「今日良かったですよ〜」とかいわれて、それで調子に乗っちゃダメですよね。

:そういうヤツは信用しなけりゃいいんだよ。周りがどう変わろうと、どういわれようと、シズヲさえ変わらなけりゃ何にも問題ないよ。まあ、オレも酔っ払って調子こいて偉ぶっちゃう時もあるけど、それはそれでオレの中では問題ないからね(笑)。それでもオレは「キング」だ「殿」だ「王子」だなんて呼んでくれとはいわないからさ(笑)。そうなっちゃうと逆にもったいないというか、一緒にしゃべっててもリアリティーが薄れちゃうじゃん。壁が出来ちゃうから。

シズヲ:そうですね。ポンッて上にあげられた時の自分って、自分で感じている本来の姿とは絶対に違うから。そこで持ち上げられて話されてもオレは気持ち悪いんですよね。周りから持ち上げられて「オレってすごいんだ」って勘違いしてる自分を想像すると悲しいなって思いますよ。インターネットのBBSなんかでも「この前のアルバムはあまり良くなかったです」とか書かれると、すごい悲しいけどそれを無視して褒め言葉だけ探すとか、それじゃあBBSの意味がないですよ。色んな意見があるっていうのを受け止めればいいのであって、そこでいい意見しか聞けなくなっちゃうのはマズイと思うんですよね。

:オレなんか、いい意見と悪い意見が7:3くらいだと嬉しいと思うよね。みんながみんなほめてたら気持ち悪いよ。まあアナーキーのBBSなんか、酔っ払って「バーカ」とか書き込んだら管理人にメンバーの書き込みが削除されたからね(笑)。「そんなこと書いたらBBSが荒れますよ」とか言われて。「荒れろ、そんなもん! 誰のホームページだ!」って(笑)。荒れたっていいじゃん、誰でも書き込み出来るっていう自由さがいいんだからさ。確かに何度も何度も同じようなことをループして書いてるくだらないヤツもいるから、それはどうかと思うけど。

シズヲ:打たれ弱い人が多いような気がするんですよね。常に褒められてないと不安っていう。

:逆に(藤沼)伸一なんかは、マゾかよっていうくらい攻撃されてないと落ち着かないんだけどね(笑)。

──まあ、ニューロティカ新宿ロフト出演200回ということでの対談なんで、最後にそれに向けてのコメントをお願いします。

:ニューロティカが200回やったというよりも、200回もやりたくなるようなライブハウスってことなんだろうけどね。ARBとアナーキーとルースターズの動員記録を塗り替えようって競ってた時期があったけど、動員数には限界があるから、その後でニューロティカは日数で勝負してきたから。そういう発想は面白いと思うよね。それで、こういうイベントでニューロティカにオレらも呼ばれて嬉しいよ。こういうことがあると、まだまだやり続けたいなって思うからね。

シズヲ:いやいや、こちらこそよろしくお願いします。200回は200回なんだけど、オレが入る前からの記録だし、個人としてはまだまだって思ってなきゃダメだと思うんですよ。200回もロフトに出てるバンドでギター弾いてるんだぜってあぐらかきたくないと思うし。自分にとって通過点でもあり、ニューロティカとしても通過点だからね。まあ打ち上げでこれからも迷惑かけると思いますけど、よろしくお願いします。


【第2回 岡峰光舟×ナボ対談はこちら!】
【第3回 大槻ケンヂ×カタル対談はこちら!】
【第4回 イノウエアツシ×小林茂明、大塚智昭対談はこちら!】


Live info.

8月26日(日)at 新宿LOFT
<俺達いつでもロックバカ VOL.121
ニューロティカロフト通算ライブ回数200回まであと3回>

OPEN 17:00 / START 18:00
ADV ¥3000 / DOOR ¥3500
ニューロティカ/THE STAR CLUB/M.J.Q/
SDR/TAKEIRI BAND

9月23日(日)at 新宿LOFT
ニューロティカ/175R/G.D.FLICKERS/
RYOJI&THE LAST CHORDS/GELUGUGU

10月28日(日)at 新宿LOFT
ニューロティカ/大槻ケンヂス/水戸華之介/MJ/他

11月17日(土)at 新宿LOFT
<俺達いつでもロックバカ VOL.129
ニューロティカロフト通算ライブ回数200回記念スペシャルワンマンライブ>

ニューロティカ


※各公演入場者全員へ、ニューロティカとロフトから200回記念コースター型プレートプレゼント! そして、200回ワンマンには他にもプレゼントがあるかも!?
※各公演毎に200回記念別冊Rooftopをプレゼント!最終回ワンマンには他にもプレゼントがあるかも!?
※今年11月ワンマンへ向けて、ニューロティカ初のカバー・アルバムがリリースされます! ターゲットはロフトに縁深きアーティスト。やっぱりロティカはロックバカ!
※新宿ロフト内Bar The LOFTにて初回8月26日から、新メニュー「ニューロティカレー」販売開始!

NEW ROTE'KA OFFICIAL WEB SITE
http://www8.big.or.jp/~roteka/
NEW ROTE'KA × LOFT200 Site
http://nrl200.seesaa.net/

posted by Rooftop at 13:00 | TrackBack(0) | バックナンバー

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