今秋発表の新作レコーディング、(ほぼ)終了!
PEACE MUSICスタジオに籠もりミックス作業中のメンバーを直撃!
というわけで、前号に引き続き六畳人間への密着インタビュー第2弾であります。8月の彼らはほぼ1ヶ月を費やしてレコーディングの作業に没頭。ゆらゆら帝国やギターウルフ、穴奴隷などの作品で定評のある中村宗一郎氏(PEACE MUSIC)をエンジニアに迎え、これまでになく時間を掛けてじっくりと作品作りに取り組んでおりました。リズム録り〜ダビング作業をほぼ終え、幾分ゆとりの感じられる時期に本誌はメンバー3人の肉声を奪取。クールを装いながらも、その和やかな表情とブレのない発言からは新作の確かな手応えが感じられます。気になるその新作のよりくっきりとした輪郭については待てよ次号!(interview:椎名宗之)
要らないものをどんどん減らしていく方向で
──8月9日からレコーディングが始まって今日で2週間ちょっと、進行具合は如何ですか。
伊藤良貴(ds):凄く順調ですね。
高尾 諭(g, vo):滞りなく進んでますよ。
伊藤:僕達リズム隊は2日か3日で録り終わってしまって、今のところ何もやってないんですよね(笑)。
杉原考祐(b):僕は家でずっとベースを練習してますし(笑)。
──ははは。当初はリズム録りに4日ほど押さえていたそうだし、本当に順調なんですね。先月号のインタビューで高尾さんが言っていた、エンジニアの中村宗一郎さんに指摘された課題点はクリアできましたか。
高尾:えーと…何でしたっけ?(笑)
──中村さん曰く、「構成が練られていない、ドラムが全部一緒、ベースが弾かなくてもいいものを弾いている、声を張り上げているところが聴いていてしんどい」っていう。
高尾:ああ、それは結構解消された感じがしますね。
──レコーディング前に中村さんと話をちゃんと詰めたんですか。
高尾:まず、デモを聴いてもらった7月の半ばくらいにそういうアドバイスを戴いてたんで、一旦持ち帰って練り直したんです。ベースのフレーズを抜いたり、ドラムはちょっと違うことをしてみたり、声を張らないと唄えなかったところはキーを下げたり、メロディもちょっと変えたりして。で、レコーディングに入ってからリズム録りの段階でまた中村さんに「それはちょっとないでしょ」って言われたりして(笑)。
伊藤:「まだドラムが多い」って言われましたね。
杉原:フレーズとかの部品部品で捉えちゃって、全体が見えてないところがあったんですよね。
高尾:そう、上モノがやればいいところをドラムが全部やろうとしてたんですよ。そういうのを録りながら修正していった感じですね。でも、そこを理解すれば作業は早かったんで。
──となると、ドラムはかなりの路線変更を余儀なくされたんですね。
伊藤:そうですね。でも、凄く楽しかったんですよ。自分でいつも通りやってたら絶対にできなかったことができたので。
──スタジオで突如フレーズを変えたりすることに戸惑いはありませんでしたか。
伊藤:でも、難しいのを叩けって言われるわけじゃなくて、むしろ叩きすぎてるから簡単にするっていう感じだったんで。整理すると言うか、要らないものを減らした感じで。
高尾:7月の時点でそういう話があったから自分達なりに考えたんですけど、まだ全然足りてなかったんですよね。もっと削れてるほうが良かったっていう。“まだ上があるのか…”っていう驚きがありましたね。
──ドラムがシンプルになると、自ずとベースも削られていくわけですよね。
杉原:そうですね、必然的に。まぁ、何と言うか…今回は自分の腕のなさを実感しましたね(苦笑)。合わせることしかできませんでしたから。「ドラムがこう叩くからこう弾いてみて」って言われたらできるんですけど、アイディアをその場で形にするとか、そこから自分で派生させるっていうのができなくて。もうリズム録りも終わったことだし、家で練習してたほうがバンドの今後のためになるんじゃないかと思って(笑)。
──次のライヴも近いですしね(笑)。そうやって全体のバランスを俯瞰することは、中村さんから指摘を受けて初めて判る感じなんですか。
高尾:僕の場合は、判ってても主張が通らないと言うか、思っていることを言葉で伝え切れないんですよね。それが原因でメンバー間でケンカになってしまったりもするし。あと、僕はぼんやりとしか判ってなかったりするんですよ(笑)。何となく“おかしいな…”と思いつつ、「後は考えてよ」って2人に振ってしまうんですけど、中村さんの場合は「ここがこうだからこういうふうに変えてみたら?」って具体的に言ってくれるから僕も対応できるんです。
──高尾さんが感覚派で、中村さんが理論派みたいな感じ?
高尾:そうですね。おかしいと思うポイントは一緒なので、中村さんとは話が合うんですよ。僕の思ってることを「それはこういうふうに言いたいんでしょ?」って代弁してもらう感じです。
──なるほどね。今は作業段階としてはどの辺りなんですか。
高尾:もうダビングが大体終わって、昨日からミックスに入ってますね。
──レコーディング工程を知らない読者のために説明しておくと、まずベースとなるリズム・トラックを録るわけですよね。
高尾:そうですね。僕達の場合は3人一緒にドラムとベースとギターを録って。
──で、そこに歌やギター・ソロ、パーカッションなんかを重ねて録るのがダビングと。
伊藤:あと、スタジオの隣のカラオケ・スナックの音も聴こえてきますけど(笑)。
──今も聴こえますしね(笑)。それにしても、随分と早いペースで作業が終わりつつありますね。
高尾:でも、中村さんには「もうちょっと早く終わったんじゃないの?」って言われましたけどね(笑)。リズムに3日、ダビングに5、6日とかですかね。ダビングはギターとかキーボードのフレーズ自体がもう決まってたから、後はどんな音にするかってところだけだったんで。まぁ、僕は腕ありますからね(笑)。
↑ミックス・ルームでくつろぐ3人。 |
一同:(笑)
──あと、レコーディング開始から約1週間後に渋谷屋根裏でライヴがありましたけど、途中にライヴがあると気持ちの切り替えが大変じゃないですか?
伊藤:いや、むしろ息抜きって感じで楽しかったですよ。
高尾:リズム隊の2人はもう録りも終わっていたから、解放されて“イェーイ!”って感じだったんじゃないの?
伊藤:でも、絶対に録り直すと思ってたからそうでもなかったよ(笑)。
気兼ねせずやらせてくれる中村さんの人柄に感謝
──今回、サウンドの方向性としてはどんな感じにしようと考えているんですか。
高尾:別に“こういう音にしようぜ”っていうのはなかったんですけどね。録ってみないと判らないし、狙っても仕方ないですからね。
伊藤:狙って作れる人は天才だと思いますよ。こっちは奇跡待ちと言うか(笑)、やりながら“あ、これイイんじゃないですか?”みたいな感じですね。
──偶発性に委ねる部分が大きい、と。
高尾:今回はそれしかなかったですね(笑)。自分達なりに追求して2時間かけて音作りした曲もありましたけど、結局“最初にやったやつが一番いいんじゃない?”って2時間無駄になったり(笑)。あと、僕はオクターブ・チューニングっていうものを知らなくて。ギターで開放弦を弾くのと、12フレット目を押さえて弾くのとで1オクターブ違う同じ音が鳴るんですけど、そこを合わせておくかどうかで音程の張りが違うんですよ。それを教えてもらうのに1時間掛かりましたから(笑)。
──ちなみに、このPEACE MUSICスタジオでの作業環境は如何ですか。
伊藤:録りに使うのは1枚目(『嘘の国』)の時に続いて2度目なんですけど、1枚目は耳が圧迫されるくらいの爆音で録ってたんですよ。もう精神的にもツラくなる感じだったんですけど(笑)、今回は全然そういうことがなくて、疲れがなかったです。
高尾:単純に出してる音が小さかっただけなんですけどね。小さい音で録ったほうが、実際音源になった時にダイナミックに聴こえるらしいんです。特にドラムがそうみたいなんですけど。だから今回はリズムが特に深い、いい音で録れてると思いますね。
伊藤:やっぱり、叩いてる音と録った音は違うんですよね。だから、最終的に出来上がったものが曲に合った音になってたらそれが一番いいんじゃないかなと思います。音はホントに格好いいですよ。
──それは凄く楽しみですね。スタジオの空気感を大事にするバンドマンも多いですけど、ここはどうですか。
高尾:空気感っていうよりは人じゃないですかね。僕なんかもう、中村さんに対してタメ口に近いですから(笑)。
伊藤:日に日に酷くなってるよね(笑)。
高尾:気兼ねせず喋れる感じになってきてるんで。そういうのが大事なんじゃないですかね。そこはラクにやらせてくれる中村さんの人柄の大きさと言うか。
杉原:極端な話、場所はどこでもいいのかもしれないですよね。いい機材が揃ってるに越したことはないですけど。
──今回の作業で使った中で“これは凄い!”という機材はありましたか。
高尾:レスリー・スピーカーっていうのを使わせてもらったんですけど、それは凄く面白かったですね。あと、中村さんのスタジオは、今の時代のレコーディングには不可欠と言われているプロトゥールスっていうのを使ってなくて、デジタルのテープで録ってるんですよ。そういうのも面白いですね。
←これがレコーディングに使用されたレスリー・スピーカー。
ドップラー効果を利用して、トレモロ、ビブラートなどの音色を出すために作られたアンプ内蔵のスピーカー・ユニットである。プロコルハルムの「青い影」で使用されているのが有名。
──ミックス中の空き時間は何をしているんですか。
高尾:僕はひたすらやってますから、現場にずっといます。リズム隊の2人は家に帰りますね。
伊藤:僕は1回、秋葉原に行きましたね。
高尾:パソコンが壊れてしまって、「ちょっと電気屋に行って直してきてくれない?」って夜に電話して、「じゃあ、明日朝イチで行くよ」みたいな(笑)。そういう雑用をやってもらったりしてます(笑)。
──そんな中、杉原さんは自宅で独りベースの練習をしている、と。
杉原:ひたすら練習ですね。たまに差し入れしに来たり。
高尾:それで、15分くらいで帰るんだよね(笑)。
──ミックスはいつ頃終わりそうですか。
高尾:多分、明日にはもう終わりますね。後はマスタリングに入って。
──前作『夢の万祝』の時よりもすこぶる順調なんじゃないですか。
高尾:そうですね。時間もいっぱいあったから、精神的な余裕もあったし。1枚目の時なんかは1日でリズム録りを6曲やって、ギターをちょっと入れたら歌も入れとかなくちゃ、みたいな感じだったんで。歌なんて、その日に声が出なかったら終わりですからね。
──環境的には1枚目と同じだけど、気持ちの部分ではだいぶ違うんですね。
高尾:今回は中村さんとのコミュニケーションもちゃんと取れてるし、全然違いますね。
──歌も順調に録れました?
高尾:そうですね。1曲だけ、ちょっと録り直そうかなぁと思ってるやつがあるんですけど。今朝やろうと思ったら調子が悪くて、ボロボロで無理でした(笑)。
──でも、皆さん随分と元気そうだし、煮詰まっている印象は全然ないですね。
伊藤:まぁ、リズム隊2人はただの連休みたいなもんですからね(笑)。
高尾:好きなことしてるんでしょ? 音楽聴いて、ドラム練習してベース弾いて…最高じゃん(笑)。
伊藤:今はレコーディング中ってことで、自分に対してバイトに行かなくてもいい理由までありますからね(笑)。いつでも自宅待機って感じで。
──では最後に、読者に向けて“こんな作品になりそうだ”っていうヒントらしきものを出して煙に巻きましょうか(笑)。
高尾:最初に出た2枚よりは手の込んだものと言うか、考えた作品にはなってると思います。構成とか音とか、いい意味で練ってあるので。あと、SFがテーマになっているので、最終的にはそういう感じになりそうですね。かと言って、壮大な感じは全くと言っていいほどないですけど(笑)。
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9月6日(木)大阪 十三ファンダンゴ
9月16日(日)渋谷屋根裏
9月22日(土)・23日(日)長野県木曽町キャンピングフィールド木曽古道[六畳人間の出演は22日]
9月28日(金)大坂・福島2ndLINE
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