バンドになってもテーマは“ENJOY PUNK ROCK”!
DJ-namijin率いる前代未聞のカヴァー・パンク・バンドが驚異の“MASH UP”アルバム第2弾をドロップ!!
今や一角のブランドとして認知されているヘッドロックのオーガナイザーであり、パンクロックDJとしても八面六臂の活躍を続けるnamijinがヴォーカル&ベーシストとして参加するカヴァー・パンク・バンド、NUM42。創設メンバーのSHIMO42が正式メンバー脱退〜終身名誉メンバーとして就任、TORNADOのTAKESHIがTAKE42としてサポート参加した形で制作されたセカンド・アルバム『PUNK MASH UP 2』は、一粒で二度美味しいアーモンドグリコの如きパンク版“MASH UP”サウンド。表向きの口当たりの良さの一方で、ロック好きであればあるほど掛け合わせの妙が楽しめるスルメ度の高い作品だ。イベントの顔役だろうとDJだろうとはたまたバンドだろうと、貫かれる通底音は“ENJOY PUNK ROCK”という不変のアティテュード。幾つになっても愛してやまないパンクロックを追い続け、人生を楽しむことにどこまでも貪欲なnamijinに“自分にできること、自分にしかできないこと”を存分に語ってもらった。(interview:椎名宗之)
NUM42はイヴェントとDJの延長線上にあるバンド
──“MASH UP”と呼ばれる、2つないし複数の曲をひとつの曲に合成する音楽制作手法がNUM42のコンセプトなんですよね。
namijin:そうですね。単なるカヴァー・バンドではつまらないので、DJならではの発想をバンドに持ち込んでみたんですよ。海外だと、ME FIRST AND THE GIMME GIMMIES(NOFXのファット・マイクがやっているカヴァー・バンド)がたまに“MASH UP”をやってるんです。イントロにパンクの有名なフレーズを持ってきたり、OFFSPRINGのフレーズをいきなり入れてみたりとかね。でも、それを専門でやってるバンドは世界を見渡しても存在しないなと思って。そこで、カヴァー・バンドでありながらもオリジナリティのあるNUM42というバンドをやってみようと思い立ったんです。
──“MASH UP”という手法を含めて、namijinさんがライフワークとしているパンクロックDJがなければ成立し得なかったバンドだと思ったんですが。
namijin:その通りですね。どんな人が集まるイヴェントでも、有名曲のパンク・カヴァーは誰しもが溶け込めやすいんですよ。“こんなカヴァー曲があったらいいな”っていう発想で、DJが自分でバンドを作ってしまったのは音楽史上初めてのことなんじゃないですかね。僕はその昔、THE PRIVATESのメンバーと一緒にバンドをやっていたことがあって、そういう側面から見ると元バンドマンが20年振りにバンドを再開させたっていうので話が終わっちゃうんですけど、僕としては当時からの流れでバンドをやってるわけじゃないんです。ヘッドロックナイトを始めるようになって、自分でDJをやるようになって、その延長線上で派生したバンドっていう捉え方なんですよ。自分の中ではバンドマンっていう意識が余りないんです。どちらかと言えばパフォーマーっていうか、エンターテイナーだと思っているので。
──その中でも、namijinさんはプロデューサー的な側面が一番大きいような気がしますけどね。
namijin:そうかもしれない。ファーストの時はシモジ君(SHIMO42/現在は終身名誉メンバーとしてレコーディングとライヴにイレギュラー参戦中)というヴォーカルがいたから、僕はメンバーではあるけどプロデューサー的な立場だったんですよ。まぁ、今回は自分でヴォーカルを取る比率が高くなったから、バンドマンとしてさらに前に出ることになったんですけどね。
──今回の『PUNK MASH UP 2』の収録曲は、パンクロックDJ的視点がなければ到底考えもつかない“MASH UP”っぷりが存分に堪能できますね。「ラストダンスは私に」にMXPXの「THE BROKEN BONES」のイントロ・フレーズがうまい形でハマるだなんて、まず思い付かないですよ。
namijin:あと、OFFSPRINGの「PRETTY FLY」がまさかあんなふうに「ドゥ・ユー・ウォナ・ダンス」と組み合わさるなんてね(笑)。簡単そうに見えるかもしれないけど、色々と試行錯誤はしているんですよ。何度も何度もお蔵入りになってようやく日の目を見たフレーズもあるんです。RAMONESの「DO YOU REMEMBER R&R RADIO?」なんてそうですよ。実はNUM42の構想段階であのフレーズをまずやりたいと考えていたんです。今と全然違う形で、三線パンクロック・カヴァー・バンドにしたかったんですよね。“ダダダダダダダダ…”っていう「〜R&R RADIO」のあのフレーズを三線で弾いたらどうだろうと考えていて、それがNUM42結成時の1曲目の構想だった。でも、シモジ君とミーティングした時に「まずは最低限3ピースのバンドから始めて、肉付けは後からにしよう」っていう堅実な意見に落ち着いたんです。
──その三線を導入する発想も、沖縄好きなnamijinさんならではのものですね。
namijin:普通は考えつかないですよね(笑)。でも、「〜R&R RADIO」は一度寝かせたお陰で、今回曲のテーマまで含めて見事に「ラジオ・スターの悲劇」と“MASH UP”できたと思ってるんです。
──THE BUGGLESの「ラジオ・スターの悲劇」は“ヴィデオがラジオ・スターの居場所を奪った”というMTV時代の到来を告げるような曲で、“ゴキゲンなロックンロールが流れるあのラジオを覚えているかい?”と唄うRAMONESの「〜R&R RADIO」との対比が絶妙だと思うんですよ。ジャンルも時空も超えた掛け合わせの面白さがありますよね。
namijin:それはきっと、僕の年齢と感覚ならではでしょうね。昔の音楽だけをノスタルジックに追い求めていたらこんなことはできないと思うし、自分が青春時代に感化された曲から最新の音楽までを全部詰め込んでいるからこそ楽しいものができるんだと思います。さすがにFALL OUT BOYやSUM41とかのフレーズを使おうとは思わないけど、'90年代のパンクまでは採り入れようって気になるんですよね。GREEN DAYやOFFSPRINGの世代のバンドは僕と同じような音楽を聴いて育った気がして親近感があるし、何よりパンクをポップなものとして広めた一番の立役者じゃないですか。その当時下火だったパンクを、現代風にパーティー・ミュージックっぽくアレンジして世界的に広めた彼らの功績は凄く大きいと僕は思うので。
好きなことを追い続けていけば人生は拓ける
──このアルバムにも収まりきらなかったアイディアが他にも多々あったんじゃないかと思いますが。
namijin:これでもファーストよりは視野を広げたんですよ。ファーストの時はカヴァーする曲を民謡か50's、60'sまでの曲にして、基本的に'70年代パンクのフレーズしか使わないようにしたから。1曲だけMXPXのフレーズを入れちゃったんですけどね。そうしないと、単なる企画バンドみたいになってしまうと思ったんです。それに対してセカンドは、カヴァーする曲やフレーズも少しだけ幅を広げようとして'90年代パンクのフレーズを入れてみたりした。あと、今回はパンクのカヴァーはやらないと決めていたんですけど、「電撃BOP」だけはやっちゃいましたね。
──やはりRAMONESだけは別格だった、と?
namijin:RAMONESっていうか、「電撃BOP」の持つあらゆる要素がNUM42というバンドの多大な部分を占めているんですよ。どんな曲にも“HEY! HO!”って掛け声が入ってくるし。
──冒頭の「NUM42のテーマ3」からして“HEY! HO! LET'S GO!”という歌詞ですもんね(笑)。
namijin:あの曲も、言ってみれば「電撃BOP」を変形させたようなものですから。“ここから自分達のすべてが始まったんだよ”と僕達から紹介したかったんです。何がパンクの始まりかは人それぞれ解釈が違うだろうけど、「電撃BOP」がパンクで初めてレコード化された曲だと僕は思うんですよね。僕にとってパンクの始まりは、やっぱりRAMONESのファーストなんですよ。
──セカンド・アルバム収録なのに「テーマ3」になっているのは?
namijin:実は、このアルバムの前に全曲日本語カヴァーのアルバムをすでにレコーディング済みで、そこに「NUM42のテーマ2」と「NUM42のテーマ2.5」が収録されているんですよ(笑)。まぁ、余り生真面目になりすぎずに、そういうバカバカしさもいいかなと思って。あと、「テーマ3」の中の始業ベルはCHEAP TRICKの「今夜は帰さない」が元ネタで、ギターのハーモニックスで始業ベルのフレーズが入った曲だったんです。それがずっと頭に残ってて、今回歪んだベースでやっちまおうと思ったんですよ。
──ちなみに、「テーマ2」はどんな曲なんですか。
namijin:30秒の短い曲で、NUM42初の日本語オリジナル・ソングなんですよ。歌詞は“俺達ENJOY PUNK ROCK、いつでもENJOY PUNK ROCK、今夜もENJOY PUNK ROCK、明日もENJOY PUNK ROCK”っていう4行だけなんですけど(笑)。それを英語に戻したのが「テーマ2.5」なんですよね(笑)。
──ここまで見事な“MASH UP”ができるのなら、NUM42独自のオリジナル曲も行けるんじゃないかと思いますけどね。BEATLESのフレーズから完全なオリジナル曲を作ったRUTLESみたいに。
namijin:まぁ、オリジナル曲をやる可能性もなくはないんですけど、僕の致命的な欠点は作詞の才能がないことなんですよ(笑)。才能というか、そういう感性がないのかな。ヘッドロックレコーズのバンドに対しては補作に近い形で歌詞の助言もできるんですけど、これが自分のことになると唄うべきテーマが何も浮かばない。言いたいことと言えば“ENJOY PUNK ROCK”くらいなものなんです。伝えたいメッセージは、DJやライヴのMCで話せちゃいますからね。要するに、プロデューサーとしての自分がnamijinという人間に対して作詞の面でOKを出せていないんですよね。
──プロデューサーのnamijinは、パフォーマーとしてのnamijinをどう捉えていますか。
namijin:DJ-namijinを見たプロデューサーのnamijinが“バンドマンとしてステージに立ってみてもいいんじゃないか?”と思えたから、NUM42のnamijin(NAMI42)が生まれたという感じなんです。2003年にCITTA'で生まれて初めてDJをやった時は、それまでのDJの在り方に対するアンチテーゼ的なものがあったんですよ。自分がDJブースに入った時はパーティー野郎になろうと思った。お客さんには絶対に寂しい思いをさせないし、お客さんの目をちゃんと見て楽しんでいるかどうかを確認しながらDJをやろうと。「Oi!」と拳を突き上げるところも、いきなりだとお客さんが一緒について来れないから、「行くぞ、行くぞ、行くぞー! ハイッ!」って判りやすく前振りをする。もうビリーズ・ブート・キャンプみたいなもんですよ(笑)。初めてでも大丈夫、僕がやるようにやれば一緒に楽しめるんだよ、っていうね。20代でバンドをやってた時はそんなこと恥ずかしくてできませんでしたよ。レスラーでも、ヒール(悪役)は誰でもできるけど、善玉のベビーフェイスは心が強くないとできないって言いますよね。つまり、僕はDJ-namijinの時に喜んでベビーフェイスをやろうとしてるんだと思います。そう考えると…もし7年前にヘッドロックナイトを始めていなかったら、今の自分の人生はどうなっていたんだろうと思いますね。あのままレコード会社でディレクターを続けていたら、きっと恐ろしくつまらない人生になっていたんじゃないかな。
──そんなDJ-namijinが今度はCLUB CITTA'という大きな会場でワンマン・ライヴを敢行するのだから、つくづく人生は何が起こるか判りませんよね(笑)。
namijin:そもそもロックDJがワンマンをやるなんて、世界レヴェルでも前代未聞ですよね。まだ自分はそこまでビッグネームではないけれど、これも自分にしかできないことのひとつだと思うんですよ。それ相応の引き出しや感性がないと、到底こんなことはできない。DJワンマン自体は去年の10月に恵比寿MILKでやっていて、それを観た大和の(俵積田)等が「あなたは次にCITTA'でワンマンDJをやるべきだ!」っていうメールをくれたんです。等いわく「あなたは今まで不可能を可能にし続けてきた男だから、絶対にやるべきだ!」って。その一言に促された部分が凄く大きかったんですよね。
──そうやって常に自分の好きなことを貪欲に追求し続けるnamijinさんの姿を見ると、アンチ・エイジングなんて言葉が陳腐に思えてきますね。
namijin:来年自分は45歳になるんですけど、イベントのオーガナイザーから始まって、パンクロックDJやバンドまでやれるようになったのはこの7年のことなんです。人間幾つになっても好きなことを追い続けていれば人生が拓けていくし、何よりも楽しく人生が過ごせると思うんですよ。何か自分のやりたいことを始めるのに年齢は関係ないですから。これからも僕がそれを実践してみんなの先頭を走るつもりでいるので、このインタビューを読んでくれてる人達も楽しむことを諦めずにいて欲しいと思いますね。
PUNK MASH UP 2
HEADROCK records / DISCUS DLCN-2010
2,310yen (tax in)
IN STORES NOW
★amazonで購入する
★iTunes Storeで購入する(PC ONLY)
Live info.
MUSIC PEOPLE FESTIVAL
9月1日(土)・2日(日)静岡県朝霧高原ふもとっぱら特設会場
*NUM42は9/1のOPEN AIR STAGEに出演予定
PUNK MASHROOM
9月24日(月・祝)恵比寿みるく
w/ SNAIL RAMP /PET / CHILD SCHOOL TV!! / 泡子paoz
【info.】恵比寿みるく:03-5458-2826
DJ-namijinワンマンライブ
ヘッドロック通算50回+NUM42セカンドアルバムレコ発記念
10月27日(土)CLUB CITTA'
【info.】CLUB CITTA':044-246-8888
HEADROCK OFFICIAL WEB SITE
http://www.head69.com/