究極の世界へ──。
ロック・レジェンドに燦然とその名を刻む4人の猛者が放つ新たな咆吼!!
驚異の“新人”バンドの登場である。新人とはいえ、その布陣は日本のロック史を鮮やかに彩った錚々たる顔触れだ。BAKI(vo/ex. GASTUNK)、KASUGA(g/LAUGHIN' NOSE、ex. THE POGO)、穴井仁吉(b/ex. TH eROCKERS)、KYOYA(ds/LAUGHIN' NOSE、ex. WILLARD)という4人の凄腕から成るMOSQUITO SPIRAL。セカンド・アルバムとなる『MARBLES』は各人のキャリアの重みを微塵も感じさせない軽やかなスタンスでプリミティヴなロックが具象化されており、そのサウンドは“新人”の名に相応しく無軌道な疾走感と闇雲なエネルギーに満ち溢れ、とてつもなく瑞々しい。未だ現状に安息することなく、全身全霊でロックの可能性に懸け続けている4人の猛者達にバンドの結成から今日に至るまでの軌跡を訊いた。(interview:椎名宗之)
4人で音を合わせると煌めく瞬間がある
──結成のきっかけは2002年秋、赤坂BLITZで行なわれた中山加奈子さん(VooDoo Hawaiians)主催のカヴァー・イヴェント“BALLROOM BLITZ”だったんですよね。
KASUGA:加奈ちゃんがDAMNEDのカヴァーをやるバンドを探してるというところからすべてが始まったんです。それまでは各々が顔見知りではあったんだけど、4人全員が面識あったわけでもないんですよ。
KYOYA:穴井さんが俺に加奈ちゃんを紹介してくれたんです。で、「ヴォーカルは誰がいいですか?」って加奈ちゃんに訊かれて、その時にどういう訳かBAKIのことがパッと頭に浮かんだ。それですぐに連絡してみて、同じように「ギターは誰がいいですか?」と訊かれたから、KASUGAがいいと思って連絡して。
KASUGA:穴井さんはJoan Jett&the Black Heartsのコピー・バンドでそのイヴェントに参加していて、打ち上げで意気投合しまして。で、僕達のステージを客席で観た穴井さんから「是非バンドに入れて欲しい」という申し出があったんです。
穴井:そのDAMNED組のライヴがホントに格好良かったんですよ。雰囲気も凄く良かったし。最初は少し遠慮もあったんですけど(笑)、KYOYAのことは昔からよく知ってたから、彼を通じてバンドに入りたいことを伝えて。
──そしてこの不動の4人が揃ったわけですね。その年の暮れにリハーサルを開始して、ライヴを始めたのは翌2003年に入ってからということですが。
穴井:俺が入ってすぐにライヴをやらなかったっけ? 春くらいに1回ライヴをやったような気がする。
KYOYA:それは、穴井さんが入ってまたDAMNEDのコピーをやろうっていうライヴだよ。その時はまだ正式なバンド名もなくて、単純にDAMNED COVER BANDっていう名前だったんだよね(笑)。
KASUGA:その時に、またDAMNEDのコピーをやるだけじゃ面白くないし、せっかくもう一度やるならオリジナル曲を作ろうかっていうところから本格的にバンドが始動したんです。DAMNED COVER BANDと言いつつ、オリジナルも少しやったんですよ。
──初歩的な質問なんですが、このバンドのリーダーは誰なんでしょうか。
穴井:特にいないんじゃないかな。何となくうまく役割分担ができてる気がしますね。
KYOYA:まぁ、長老は間違いなく穴井さんですけどね(笑)。
──当初、音楽的にはどんな方向性で行こうと考えたんですか。
KASUGA:きっかけはDAMNEDだったわけだし、そういう部分がボトムにはあるんじゃないですかね。
KYOYA:音楽性云々については改めて話し合ったこともないですね。各々がフレーズを持ち寄ったらこんな形になったというか。「こういうネタがあるんだけど」ってみんなに聴かせてから実際に合わせてみて、BAKIが唄って…。
穴井:…それをKASUGA君が家に持ち帰って、音を整理してくれる(笑)。
──じゃあ、サウンド・コーディネイター的役割を果たしているのはKASUGAさんなんですね。
KASUGA:まぁ、そういう部分もありますけど、基本的にはみんなでセッションしながら曲作りをしていますね。
穴井:ただ、セッションと言ってもダラダラやってるわけじゃなくて、目的が定まってるから作業も早いし、凄く簡潔で合理的なんですよ。
──そこはやはり、各々のキャリアが為せる技という気がしますね。
KASUGA:化学反応って言うと大袈裟だけど、この4人で音を合わせると煌めく瞬間みたいなものがあるんですよ。そこを絶対に逃がさないようにしていますね。そうすると、自ずと曲がまとまるのも早いんです。
穴井:このバンドは、ベースを弾いていても制限がない感じが個人的にはしてるんですよ。みんなそうだと思うけど、それでうまくまとまっているのが面白い。
──BAKIさんのベスト・アルバム『マストバキ』(2004年2月発表)に収録された書き下ろしの2曲「LUCKY JACKY THE JUMP」「BELIEVE IN POWER NOISE」は、BAKI・KASUGA・KYOYA・ANAI名義でしたよね。
BAKI:あの2曲は凄くタイトなスケジュールで、一発録りでやって、ミックスまで全部1日で仕上げたんですよ。
穴井:今思うと、あの2曲からバンドに弾みが付いていった感じなんです。それまでもスタジオにはコンスタントに入っていたけど、作品として形にするまでには至らなかった。あの2曲が完成した時は自分達でも手応えを感じたし、今回出るセカンド・アルバムにも少し曲名を変えて(「L.J.T.J」「POWER NOIZE」)セルフカヴァーしているほどの自信作なんです。
KASUGA:その時もまだMOSQUITO SPIRALっていう名前はなくて、名前をどうしようかって考えてるうちにリリース日になっちゃったんですよ(笑)。その後にDAMNEDのトリビュート・アルバムに参加して(『THE CURSE OF THE DAMNED 〜A TRIBUTE TO THE DAMNED FROM JAPAN 〜』、「TEENAGE DREAM」をカヴァー)、その時から正式にMOSQUITO SPIRALを名乗るようになったんです。DAMNEDがバンドの始まりだったから、デイヴ・ヴァニアン=吸血鬼の白塗りメイク。吸血鬼と言えば蚊(MOSQUITO)かな、と(笑)。
──そして2004年の暮れにようやく、当時通販とライヴ会場販売のみで入手可能だったファースト・アルバム『Isolation Of The Vampire』(『MARBLES』のリリースに合わせて一部全国流通が決定)を発表することになり。
KASUGA:それまでにセッションを重ねて曲の断片は幾つもあったから、レコーディングの日程が決まってからそれを一気にまとめ上げた感じですね。レコーディングもミックスも集中して1日で終えたし、凄く勢いのあるアルバムだと思いますよ。何せ新人バンドなので(笑)、無軌道に突っ走った感じがよく出ていると思います。
自分達でもどうなるか判らないものが作りたい
──そんなファースト・アルバムに比べると、今回発表されるセカンド・アルバム『MARBLES』はエネルギッシュな躍動感に溢れたサウンドながら音の整合性も取れていて、非常にバランスの良い作品に仕上がりましたね。コンセプト的なものは何かあったんでしょうか。
KASUGA:アルバムの一番最後に入っている「SAVING GRACE」という初期の頃からずっとライヴでやっている曲があるんですけど、今度のアルバムはその「SAVING GRACE」が活きるような作品にしたかったんです。単純にパンク一辺倒ではなく、もっと広いレンジのアルバムにしたいと思って。それともう1曲、「EVERLASTING FLOWER」というこれまたパンクの王道ではないダークな曲があって(笑)、その2曲をいい形で具現化しようとしたのがコンセプトと言えばコンセプトだったのかな。
──MOSQUITO SPIRALが体現するパンクとは、今や形骸化したそれではなく、姿勢としての在り方みたいなものですよね。
穴井:よく感じるのは、僕が感じるパンクとこの3人が感じるパンクは違うのかな、と。僕の世代はパンクがまだジャンルとしてはっきりと確立されていなかった頃ですから。
BAKI:でも、どちらかと言えば僕もその頃の音楽が好きなんですよ。広い括りの中のニューウェイヴで好きなバンドはたくさんいるし。
──『MARBLES』は、BAKIさんを始めとするメンバーの特異な風貌からは想像も付かないくらいにポップな作品で、ベクトルとしては歌モノ寄りというのが少々意外だったんですよね。
BAKI:この白塗りメイクとのギャップが面白いんじゃないかと自分では思ってるんですけどね。
KYOYA:やっぱり、メロディをしっかりと聴かせるという部分を一番大事に考えていますからね。BAKIの歌声にバンドの求心力があると思うし。
──あと、これは後ろ向きな意味に捉えて頂きたくないんですが、'80年代の日本のロックの匂いがそこはかとなく感じられるサウンドやメロディが凄く新鮮に響いたんですよ。
KASUGA:その辺は身体に染み付いたものだし、若い連中が出す音とは違う強みがあると思っていますから。
──歌詞はBAKIさんが手掛けているんですよね。
BAKI:うん。曲のテーマやコンセプトっぽいものをみんなから貰って、1曲ごとに焦点を絞って書こうとしたんです。漠然と“こういうのができたらな”っていうイメージは自分の中であったけど、“こういうふうに作らなくちゃいけない”っていう縛りは一切ないんですよ。テーマは何でもいいと思ってるし、トータルで歌や声を格好良く聴かせられればそれでいい。常に表現の可能性にチャレンジしているところがあるし、自分達でもどうなるか判らないものが作りたいんですよ。今までの経験値で作れるものなんて大したものじゃないし、それじゃ自分自身の殻も突き破ることができない。何より、人を感動させるものなんて絶対に生まれないよね。
──この『MARBLES』での伸びやかな歌声を聴くと、BAKIさんがここ数年参加してきたどのバンドよりも自由度が高いのがよく窺えますよ。
BAKI:まぁ、今まで自分がやってきたことが活きてる部分が確実にありますからね。
──それはメンバー全員に言えることですよね。各々のキャリアは伊達じゃないし、それまでの活動で得たエッセンスがすべて作品に注入されている。
BAKI:それも偶然ということではないけれども、こういうバンドでこういう音楽ができたのは良いタイミングだったんじゃないかと思うんですよね。狙ってできるようなものじゃないだろうし。
穴井:今回のアルバムも、各々のキャリアが化学反応を起こして良い方向に作用してると思うんですよ。「SAVING GRACE」という曲は、Aメロは僕とKYOYAが主にアイディアを出して、BメロはKASUGA君とBAKIがほぼ作ったんです。それがうまい具合に混じり合って、しかも凄く広がりのあるサウンドに仕上がったから、自分でも言うのも何だけど凄いなと思いますね。
──各々のテクニックはさることながらアイディアの引き出しも豊富だろうし、それをシンプルにまとめるのが難しい気がしますけど。
KYOYA:確かに、余り考えすぎると「前のテイクのほうが良かったね」ってことになりがちですね。
KASUGA:だからこそ、良いアイディアがひらめいたその瞬間を逃さない。僕は大体そういう時にKYOYAさんの顔色を窺うんですけどね(笑)。KYOYAさんは基本的に泣きのメロディが好きなので、そこが基準になることが多いんですよ。
KYOYA:歌詞も含めて、胸がキュンと来るかどうかが大事なんです。そうじゃないとOKを出さないから(笑)。
──一角のキャリアを積んだバンドマンほど音を出す新鮮さが薄れてくると思うんですけど、MOSQUITO SPIRALはまるで結成したばかりのバンドのように鮮度の高いサウンドだし、何よりもメンバー各自が心からバンドを楽しんでいるのが伝わってくるところが素晴らしいと思うんですよ。
BAKI:基本的にどのバンドでも楽しいんだけど、この3人は皆自分の好きなプレイヤーだから楽しさも格別なんですよね。
KYOYA:何よりまず自分自身が楽しんでいるし、そのエネルギーがアルバムにもライヴにも滲み出ているんじゃないかな。
穴井:この4人と一緒にいると凄く新鮮で、若い頃に初めてバンドを組んだ時みたいなんですよ。曲ができた時の喜びも大きいし、変な言い方になるけど“バンドの一員なんだな”っていう気がする。
KASUGA:自分が参加したアルバムを日常的に聴くことはほとんどないんですけど、この『MARBLES』はよく聴いてるんですよ。レコーディングしてる時から凄く楽しかったし、サウンドの鳴りも気に入っているしね。若い人達にももちろん聴いてもらいたいんだけど、昔よくライヴハウスに通っていて今は足が遠のいているような同世代の人達にも是非聴いて欲しい。この記事を読んで少しでも興味を持ってもらえたら、ライヴにも是非足を運んで欲しいですね。きっと響くものがあると思うから。
MARBLES
FREIHEIT FHMS-001
2,415yen (tax in)
9.28 IN STORES
★amazonで購入する
Live info.
9月7日(金)新宿LOFT
10月7日(日)横浜7th AVENUE
10月13日(土)渋谷CLUB CRAWL(レコ発記念ライヴ/GUEST:VooDoo Hawaiians)
10月21日(日)名古屋 CLUB UPSET
11月22日(木)福岡LIVE HOUSE CB
11月23日(金・祝)小倉FUSE
11月24日(土)長崎 大村BECK
11月30日(金)稲毛 K'S DREAM
MOSQUITO SPIRAL OFFICIAL WEB SITE
http://mosquitospiral.com/
Independent Records FREIHEIT OFFICIAL WEB SITE
http://freiheit.m-chase.com/