ギター バックナンバー

楠部真也(Radio Caroline)×a flood of circle('07年8月号)

楠部真也(Radio Caroline)×a flood of circle

共鳴するロックンロール

7月11日に初のミニアルバムをリリースしたa flood of circle。そして6月20日にアルバム『extremes』をリリースし、9月からはツアー“Roulette Lounge tour”を敢行するRadio Caroline。今回はそんな2バンドによる座談会をお届けしよう。Radio Carolineからはex.THE NEATBEATSの楠部真也が参戦。バンド歴的には先輩・後輩の関係にあたる両者だけあって、a flood of circleはここから様々なことを学べただろう。だがそれ以上に、ロックンロールに魂を売り渡した者同士、深い部分で共鳴した座談会となった。


強い音だった

佐々木:ニューアルバム聴かせていただいたんですが、スゴイ良かったです。「強い」とまず思いました。マッチョというか、たくましいというか。声も力強いし。

真也:ごまかしてるからね、レコーディングで(一同笑)。22日にボロが出ると思うんで(笑)。

佐々木:ライブ楽しみにしてます。

真也:観た事ないんだよね? ミッシェルとかギョガンは?

岡庭:映像でしかないんです。

真也:そっか全くの初めてかー…、ボロが出てるから(笑)。ちょっと前にa flood of circleの資料と音源渡されて、聴かせてもらって。いやギターがねー、それこそさっきの佐々木君じゃないけど、すごく強くて。全体的にもそうやったけど、ボーカルもスゴイ格好いいなと。

──大絶賛じゃないですか

真也:自分が歌うやんか、だから人の声に憧れがあんねん。自分の声ってもう変えられへんから、そう意味ではこういう声がよかったなあって。

佐々木:ホントですか!? ありがとうございます

真也:曲によって声の雰囲気が違って聴こえて、一辺倒じゃない、スゴく表情がある声の人やなあとは思ってはいたんやけど。で、シェルターにライブを観に行ったんやけど、とにかく人がいっぱいで階段降りる所で疲れてもうて(一同笑)。ライブはライブで音源とはまた違う表情やったっていうか、その辺も自然に違いが出てるのか、レコーディングとは違う試みを4人で目指してるのかなあとは思ったんやけど。

佐々木:その辺は意図してではなく自然にですね。

真也:そうなんや。レディキャロに関しても、レコーディングはこうでこうでああでって色々試せる事もいっぱいあるけど。ライブは基本的に3人しかいてないし、楽曲によってはアレンジ加えたりはしてるけど。

渡邊:ドラムはいかがでしたか?

真也:ソリッドな感じがしたね、すごい良かったです。見た目もがっしりしてる訳ではないけど、ライブでも突き抜ける感じというか…、俺あんまりヘビーなドカドカいくタイプよりタイトなソリッドな人の方が好きで、俺は好きなタイプのドラマーやなと思った。

渡邊:ありがとうございます(照笑)。

──大絶賛ですよ(笑)。

真也:全然悪い所というか、「えーっ」とか思わへんかったし、すごく楽しく観させてもらいました。良かったです。資料に書いてあったイチオシっていうのはホンマやなあって(笑)。

──ロフトグループが全勢力をあげて売り出そうとしてますからね(一同笑)。


俺じゃないとダメなんだ!

真也:みんな20歳でしょ? スゴイよなー。

佐々木:真也さん20歳の時、バンドはもうされていたんですか?

真也:僕はTHE NEATBEATSの前身のバンドのインストバンドをやっていて、それが19, 20歳位やったから、自分の20歳の頃を思い浮かべたんやけど…、やっぱりこいつら4人の方が凄いなあと。

メンバー一同:いやいやいや(苦笑)。

真也:どういう経緯で、この4人になったの?

佐々木:ボーカルとギターは大学の同級生で、ベースがギターの幼なじみです。で当時サポートしてくれていた女の子のドラムがいまして、その子の師匠の紹介で最後に渡邉が加入しました。

真也:じゃあ我流じゃなくて、ちゃんと教えてもらえる人がおったんや。

渡邊:そうですね…、あんなんですけど……。

真也:いやいや(笑)。でも羨ましいな。俺はずっと自分でやりくりしてたっていうか、模索してたからね。どっちがいいとか悪いとかじゃなくて、(教えてもらえる人が)おるのとおらんのでは良い意味でも違うやろしね。

渡邊:真也さんのドラムは勢いが凄いなって。

真也:勢いだけやからなー(一同笑)。どんだけ気持ちでもっていけるかっていうのが、結局上手い下手って所の最終的なものやと思うから。特にライブはね、パフォーマンスっていう所は大事にしてる。ドラムやからどうしても後ろにいてるやん? リズムも勿論キープしなければいけないっていう重要な役割もありつつ、目立ちたがりやからその中でどんだけ目立てるかみたいな。どうしても歌の世界を作ってる歌詞だったり、歌い手さんに目がいくのは当たり前やし、勿論重要やと思ってんねんけど。だけど1人でも欠けるとバンドじゃなくなるし。ってなるとドラムに関しても、コイツじゃないと違うやろ、このバンドじゃないなっていう所まで持っていくには、どんだけ自分の立場を確保するかっていうのをいつも考えてたからね。

渡邊:僕も目立ちたがり屋なんです。歌を壊してでも目立とうとするんで。

真也:あいいねー、将来有望やね(一同笑)。でもホント大事やと思うから。俺もビートルズとかストーンズとか昔のリズムアンドブルースやロックンロールが好きで、ずっと音楽やってたんやけど。解り易くいえばリンゴ・スターじゃないとあかんし、チャーリー・ワッツじゃないとあかんし、みたいな所があると思ってて。一時期ビートルズもリンゴが病気になった時に、ツアー飛ばされへんからって代役がちょっとの間おったんやけど、全然格好悪かったしね。リンゴもアルバムの中で歌ってる曲が何曲かあって、自分で歌詞も書いたりしてて、ああいうスタンスにすごい共感を持てて、自分も今までやってきたから。今回のアルバムも2曲歌ってるし。

渡邊:俺も出来るようになりたいです…。

佐々木:作詞もね(笑)。

真也:そうそう。自分で歌う曲は自分で書くといいよね。

渡邊:コーラスからのし上がります(一同笑)。

真也:俺もTHE NEATBEATSの時、コーラス重視のバンドでもあったからコーラスで入って今に至るし。勿論ドラムもホントに好きやけど実際歌う事が一番好きやから、だからそこに対しては何の躊躇もなくて、別に何しながら歌ってもいいんだし。っていう意味では、他のいわゆるボーカル1人っていうバンドとは違うと思ってる。ビートルズもみんな歌うし。

佐々木:みんな曲も書きますもんね。

真也:そうそう。そうじゃなくても別に成り立つねんけど、だけど4人ともそんだけパワーがあるっていうのは面白いと思うし、そういうバンドはもっとあってもいいのになあとは思う。

──floodは佐々木さん以外で歌いたいっていう人はいないんですか?

佐々木:俺は歌わせたがってるんですけど。今の所誰も言い出さないね。でもハモリも今めちゃめちゃ課題なんです。俺が勝手に作って、でハモれって言って一番偉そうなんですけど(一同笑)。

真也:まあハモリは主旋より絶対難しいと思うし。カラオケボックスとか行って、ハモリたがるヤツがおればめっちゃ楽なんだろうけど。

一同:いるー(笑)。

真也:俺もそのタイプやから。ハモリって入れてみないと、いるのかいらないのか分からなかったりする訳やん。だからハモれるメンバーがいると強いよね、すぐにハモれるヤツがいるとかなり便利やと思うし(笑)。でも楽器弾きながら主旋の上に乗っかるって難しいと思うけど。

佐々木:真也さんもドラム叩きながら歌いますもんね。

真也:そう、最初はスゴイ練習したしね。THE NEATBEATSの時カバーよくやっててんけど、絶対(コーラスが)入ってるわけよ。ビートルズもそうやし、昔のモータウンのリズムアンドブルースなんてハモリがスゴイ重要やから。だからドラム叩きながらも、コーラスだけでもとにかく練習したしね。スタジオで合ってても、いざライブとなるとずれてたりするし。

岡庭:心当たりあるよね(笑)。

渡邊:ある(笑)。

真也:あるよね。めっちゃその時自分は合ってる思ってんねんけど(笑)。そういう意味では当時の人達ってモニターとかない訳やから。それであんだけのクオリティが出せるって…。

佐々木:凄いですよね。

真也:耳も良かったんやろし、出音も小さいねんけどね、そんなにうるさくなかったんだろうけど。でも俺ら今バンドでやるっていうたら、ギターアンプでもベースアンプでも、なんぼでも出るやん。勿論ドラムにも全部マイク立てて。音がでかすぎて、歌も返してくれってなるし、イタチごっこみたいになってるから、出来る限りは中音を整えてからやろうかって話はしてたし、レディキャロにもそれは受け継がれてる。

渡邊:本当に良い話聞かせてもらってます。

真也:中音がいいバンドは外音もいいからね、どこでやっても崩れる事はないねん。THE PRIVATESとかすごかった。地方とかでライブやらせてもらって、専属のPAがいる訳ではないんやけど、ほぼどこでやっても同じ出音で。それはスゴイ事だし、多分中音が安定してるからそうなるんだろうね。スゴイ勉強になった。



ライブは生き物だから

佐々木:真也さんはビートルズがお好きなんですよね? うちのメンバーも全員好きなんです。他にはどんな音楽に影響をうけましたか?

真也:そうやね、俺もそうやしPATCHも50年代、60年代の音楽をよく聴いてるし。ウエノさんはパンクが一番ルーツだって本人も言うてたけど。まあビートルズって言っても広いやん、初期から後期まで。メンバー共通して好きな所ってあるの?

佐々木:一致してるか分からないけど、多分初期だよね。

岡庭:初期だね。やっぱりボーカルの勢いっていうか、「ツイスト・アンド・シャウト」とか。

真也:はいはいはい、一発録りやからね。

岡庭:スゴイですよね。

佐々木:2回録った中での1発でしたっけ?

真也:2回歌って、1テイク目だったかな。

岡庭:レコーディングも1日で終わったんでしたっけ?

真也:そうそうそう。そういう所もなんか知らんけど真似てた次期もあるからね(一同笑)。前のバンドで。精神的な所から攻めてたというか。

佐々木:真也さんも初期が一番ですか?

真也:俺も初期が一番好きやね。後期も作り込んでて格好いいんだけど、若々しい勢いで録ってるファーストとかセカンドとかがやっぱり好き。

岡庭:やっぱり勢いには勝てないですよね。

真也:そうそう。そういう意味ではライブってその日の勢いやん。4人とも波長が合えばいいけど、1人でも体調が悪ければ、やっぱりあかんってなるし。生き物みたいな所がライブにはあるけど、それが醍醐味だったりするよね。そういう意味では本人達がどう思ったか分からんけど、こないだのシェルターのライブは良かったよ。あのライブは本人達的にはどうだったの?

佐々木:良かったと思います、周囲の反応も良かったし楽しかったです。でもいつもあんなにお客さんがいる訳じゃないんですけど(一同笑)。とにかく“聴けーっ”て感じでした。

真也:そんな感じしたね(笑)。お前ら聴いて帰れよって感じ。大事だよね。何でもそうやけど自分の中で「俺はいける」と、どっかでそう思ってやるのと不安持ちながらやるのとではエラい違いやからね。“俺はライブ中はめっちゃ格好ええ、普段はボロボロやけど”みたいな(一同笑)。そういうイメージは大事やからね。お客さんって音楽的に深い人もおれば、音楽の知識を余り持ってない人もいると思うねんけど、でもライブ観た時に絶対その辺分かるからね。不安な気持ちって(外に)出るから。精神的な所を4人とも太く持ってれば大丈夫やと思うよ。

──初々しいながらも堂々としてますよね。

真也:あーそうそう。それ良かった。俺本当は気の優しい人が大好きなんやけど、“お願いしまーす”とか腰の低いライブよりは、“聴いて帰ってくれよって”いう位の心意気でやってる人らのが好きかな。ステージ上がった時は気が狂ってるというか、振り切れてる感じのバンドのが好きやから。まだ20歳でしょ、これからどんどん出てくるんじゃないですか気違いっぷりが(一同笑)。

──floodのメンバーはライブで振り切った、というか白目剥きそうになったとかあります?

佐々木:岡庭見てて「コイツいったなー」と思う時はあるんですけど(笑)。自分ではまだないですね。

真也:なかなかね、俺も昔いろんな所まわってる時はぶっ飛ぶ回数は多かったけんやけど、レディキャロになると同じぶっ飛んだとしても種類が違って、同じぶっ飛ぶにしても考え方が変わってきてるけどね。年齢もあるとは思うけど。

佐々木:バンドの性質みたいなものも?

真也:そうやね、THE NEATBEATSのそれとレディキャロのそれとは違うな。

佐々木:俺も極みまで行ってみたいですね。

岡庭:楽しいだろうね。


ここからfloodの歴史が始まる

──せっかっくの機会なんで真也さんに質問ありますか?

真也:女性の口説き方とか(一同笑)。でもそんなないでしょ。

岡庭:分からない事だらけなので、あり過ぎて…。

佐々木:今度初めて東京以外でライブをやるかもしれないんですが、初めてのツアーとかってどうでした?

真也:ツアーは楽しい思い出しかないねー。若い時に行くツアーなんて、それ程面白いもんはないよ。まあ地方だから特別これが大事とか大事じゃないとかはないかな。場所は変わるけど結局ライブハウスが変わるだけっていったらそれだけやから。でも地方にしかない美味しいもんは食べられるかな(笑)。それが醍醐味といえば醍醐味やし。

メンバー一同:楽しみだなー(笑)。

真也:まあライブに関しては本当に一緒だよ。ステージはどこのライブハウスもそこまで変わるもんやないし。だけど大切にしなきゃいけないのは、お金出して観に来てくれるお客さんかな…、ていい事言ったよ今(一同笑)。まあ冗談抜きで、初めて行ったその先で何人来てくれるかどうかは分かれへんけど、その日からこの先ずっと応援してくれる地方のお客さんは絶対おると思うから、その人達の事を大切に思えるか思えないかで先も変わってくるだろうね、綺麗事じゃなくて。俺等もホント昔から応援してくれる人達がいるから、やっぱり嬉しいし。その行く先々でfloodの歴史が始まる訳やからね。

佐々木:分かりました、ありがとうございます。

岡庭:何かすごくいい話を聞かせてもらいました。

渡邊:力を付けていつか対バンとかさせていただけたら嬉しいです。

真也:全然お願いします。俺も今年で32になんねんけど。こういう若いバンドと触れ合う機会もないし、実際触れ合いたいとも毎日思ってる訳ではないねんけど、でも今回自分より10歳以上も離れてるバンドやってる人達と話せて、こっちもパワーもらえたんで良かったです。

佐々木:こちらは刺激受けまくりました。

真也:これからも頑張ってください。

メンバー一同:ありがとうございます!


LIVE REPORT

Radio Caroline extremes tour
7/22(sun) 代官山UNIT

7/22、代官山でのライブは、自分にとってこれからのライブへの臨み方を改めて考えさせてくれた。対談の時に真也さんが自分達に向けて話してくれたことを、そのままステージ上で実演して見せてくれたかのような気がした。「わざわざ働いて稼いだお金を払って観に来てくれてるんだから、どんなライブでも気合いを入れて良いライブをするんだ」という言葉を、ライブを見て何回も考えさせられてしまったのだ。
良いライブというのは人によって変わるかもしれないが、アーティストが物凄い気合いを入れていたら、それがお客さんに伝わらないはずはないと思う。それがお客さんの心を動かし、プレイする側と観る側が一体となったライブが生まれるのだと僕は思っている。今日のライブは、それが始まりから終わりまで途絶えることなく続いていた。

音源では何度も聴いていたのだがライブを初めて観て、やはりライブバンドだなと実感した。PATCHさん、ウエノさん、真也さんの3人のステージでのパフォーマンスもさることながら、バンドとしてのグルーブが物凄かった。頭で考えてノルのではなく自然と体が動いているのにふと気が付いた時、これがロックの本来の意味なのだろうと思った。たくさんのバンドがこれをやろうと挑戦しては出来ないものだけれども、レディオキャロラインはこれをすんなりとやっている。これこそが本当のライブバンドと呼ばれるものの証なのだろう。

今日は全部で2時間弱くらいのライブだったのだが、なぜかあっと言う間に終わってしまったような気がした。なぜなら、僕個人としては本当に色々勉強になったし、何より楽しかったからだ。
自分もリズム隊なので、いつかあのようなグルーブが出せたらなと思った1日でした。

a flood of circle Ba.石井康崇


a flood of circle

a flood of circle 1st.mini album
a flood of circle

RTC-003 / ¥1,500(tax in)
IN STORES NOW
★のれん街で購入する

extremes

Radio Caroline new album
extremes

COCP-51041 / ¥1,890(tax in)
IN STORES NOW
★amazonで購入する
★iTunes Storeで購入する(PC ONLY) icon

Live info.

a flood of ciecle
8/04(sat) "TIGER HOLE presents ROLLING SUMMER RIOT 07"@LIQUIDROOM ebisu
8/07(tue) "HYPER & MICKEY 25th ANNIVERSARY 45CLUB"@新木場スタジオコースト
8/30(thu) "STARCLUB 10周年記念興業「松原祭41連発」31発目"@KOBE STAR CLUB
9/15(sat) "ファイ10周年〜9・15事変 ニッポン ジン東京湾襲来〜"@幕張メッセ国際展示場

Radio Caroline
Roulette Lounge tour

9/27(thu) "Roulette Lounge00"@下北沢SHELTER ※ワンマン
10/2(tue) "Roulette Lounge01"@千葉LOOK w/THE BAWDIES
10/5(fri) "Roulette Lounge02"@水戸LIGHT HOUSE w/怒髪天
10/6(sat) "Roulette Lounge03"@HEAVEN'S ROCK宇都宮 w/怒髪天
11/25(sun) "Roulette Lounge SPECIAL"@LIQUIDROOM ebisu

a flood of circle OFFICIAL WEB SITE
http://afloodofcircle.nobody.jp/home.htm
Radio Caroline OFFICIAL WEB SITE
http://radiocaroline.jp/

posted by Rooftop at 06:00 | TrackBack(0) | バックナンバー

この記事へのトラックバック