ギター バックナンバー

MICRON' STUFF('07年8月号)

MICRON' STUFF

きっとどこかの誰かにとっての いつまでもかけがえのないもの

ハイペースでリリースをしているMICRON' STUFFから、メジャー2nd.シングル『Precious』が届けられた。前作の『STROBO』で聴かせてくれたハイテンションの楽曲とは変わり、今作はスロウでじんわりと胸に響く作品になっている。「他人が見たらどうでもよいものやどうでもよいことでも、本人にはとても大切でかけがえのないものを歌いたかった」とBINGOさんが言うように、今作ではそれぞれの人が持っている大切な思い出が叙情的に描かれている作品。
MICRON' STUFFと言えばライブのステージがとても魅力的で、あちこちに動き回るボーカルの2人の高音と低音が混じり合い、それを支えるギター、ベース、ドラムのサウンドが力強く鳴り響く。それは、花火大会のファイナルを飾るスターマインのように華やかでスピード感に溢れている。この夏は、多くの野外フェスにも出演し、各地で MICRON' STUFFの名を轟かせていくことだろう。(interview:やまだともこ)


誰もが持っているそれぞれの宝物

──1st.の『STROBO』から考えると、今回の『Precious』はかなりしっとりした感じになってますね。

BINGO(mc&vocal):もともと『Precious』はストックの中のひとつだったんですが、「こういう感じもいいんじゃないか」っていう話になって、これを機に煮詰めていった作品ですね。

KENGO(guitar&backing vocal):3曲ぐらいデモとして出した曲がどれもしっとりした曲調になっていて、その中で一番気になるという曲を選んだんです。

──1st.と2nd.ではだいぶイメージが変わりましたよね。

KENGO:僕ら的にはイメージを変えたっていうのはなくて…。

BINGO:まぁ、そう取られるで(笑)。僕らの場合、ほっといとらみんな暗い曲を作るんですよ。切ないコードが好きやし、今までにもそういう曲もあったんです。でも、MICRON' STUFFでやるのは違うかなと思い続けていて、明るい曲を努力して作っていたところがあったんですけど、こういう感じの曲をやってもいいかなって思ったんです。

──詞を書くのに苦労したそうですが、どんなところに苦労されたんですか?

BINGO:この曲は、僕からしたら何て事ないものでも、他の人からしたらすごく大切なものを客観的に書きたかったんです。だから1番に関しては客観的に書いたんですけど、それを主観的にリアルにわかりやすく書き直してすごく時間がかかったんです。自分が最初にイメージしたことと、周りがイメージしたことに食い違いがあって…。書き直すのは大変でしたけど、終わってみてこっちのほうが伝わるんじゃないかなって思えたので結果的には良かったですけどね。でも、もうちょっと具体性を出したかったので、俺にしかわからんかもしれないけどすごく大切なものを表したくて2番を書いたんです。

──1番は幼い時の思い出なのかなって思いながら詞を読みましたけど。

BINGO:そうですね。たわいもない生活や習慣でも、今になって考えたら居心地が良かったんやろうなっていうもの。それも宝物の一つやろって。

──2番の詞は温かくて良いですね。

BINGO:何気にね。そういう女々しいところもあって(笑)。

──この詞にあるように、今でも昔の思い出は取っておいてます?

BINGO:バッチリありますね(笑)。10年ぐらい前に付き合ってた子と、どんぐりとか落ち葉があるところを歩いてたら、「これ持っといて」って何気なく言われたものが捨てられなかったりします。だから10年前のドングリと葉っぱがまだある(笑)。

──でも過去の思い出を捨てないBINGOさんからこういう曲が生まれて、大事なことだと思いますよ。

BINGO:それ!!! 過去のしか書くネタがないねんけどな(笑)。でも、特別なものとか宝物って実物はなくても、記憶として大事にしているものって誰にもあるんじゃないかと思いますよ。

──今までは曲調的に夏っぽい感じが多かったですが、今回は夏から秋にかけた感じのサウンドでしたね。

BINGO:哀愁の「哀」という感じになりました。ちょっとした切なさもありという感じです。

──ゲストボーカルにスガシカオさんも迎え、より雰囲気のある楽曲になりましたね。

BINGO:そうなんですよ。スガさんに歌って頂いているパートは、最初は女性コーラスのイメージだったんです。「コーラスどうしようか」っていう話になった時に、スガさんのような高い感じの声が欲いなぁって、無理だとはわかりながらお願いしてみたらOKを頂いて…。僕らが一番ビックリですよ。しかも、コーラスという役割をスガさんにお願いしても良いのかなーって(笑)。

──コーラスにスガさんは豪華すぎますね。

BINGO:そうそう。ありえない(笑)。

──実際聴いてみると、スガさんのファンクさと、ヒップホップって合うんだなって思いました。

BINGO:僕らの曲でもファンキーなものもあって、やってることは違うけど好みは近いのかなって、うまく合わさったと思いますね。でも、スガさんの声が入ることによって、スガさんの曲になってしまったらどうしようって思いましたけど(笑)。

KENGO:コーラスで、こんなに持ってかれてるでーってね(笑)。

──(笑)全体的にはアコギが響いて聴かせる曲でしたが、アコギのサウンドはKENGOさんが作られたんですか?

KENGO:そうですね。元々アコースティックのイメージで作ったので、構成とか僕が弾いてるものは最初からほとんど変わってないです。

──この曲では日野賢二さんをプロデューサーに迎えられてますが、KENGOさんがすごくファンだそうで…。

KENGO:日野さんが日本にいらしたのは4年ぐらい前で、知り合いのバックバンドをやられていたんです。その頃からすごく尊敬していて、プロデューサーに日野さんが決まったときは「いいんですか?」って思いましたよ。正直めちゃめちゃ緊張していたので、されるがままだったらどうしようって思いましたけど、スタジオに入ったら、みんなでいいものを作ろうっていう感覚は一緒なんですよね。

BINGO:完全にノリがアメリカ人やったな(笑)。ずっとテンション高いしな。あのパワーはすごいなと思いましたよ。逆に気使ってくれて、僕らのテンションを上げようとしてくれてるみたいな。

──楽曲としては、日野さんと一緒に作り上げた感じになるんですか?

BINGO:そうでもないんですよ。ストリングスのアレンジとかは一緒に作りましたけど、大まかには僕らが作っていった。そういうところも日野賢二サウンドにしようっていうわけではなかったです。

──日野さんのアドバイスによって変わったところは?

BINGO:ラップのハモりのラインとか、「もっといいハモリがあるんじゃない?」ってその場で何パターンも録りましたね。ハモリの作り方や英語ののせ方もそうですけど、アメリカで育ってはる人だから向こうの音楽がしみついていて、その部分ではすごくアドバイスしてもらいました。

KENGO:メロディーのラインとか提案はしてくれるけど、ちゃんと俺らにやらせようしてくれるんです。そうしたいと思ってるなら、そうした方がいいよって 。あとは、空き時間にセッションさせてもらったり…。ありえなかったですよ(苦笑)。田舎から出てきた俺が、世界でやってるあの人と!みたいな(笑)。だから、レコーディング以外にもいろいろ勉強させていただきました。音楽的なこともそうですけど、人間的なこととか、バンドとして生きていくにはどういうことが大事かとか。俺自身の考え方もちょっと変わりました。


フリーター=ドリーマー!?

──2曲目の『デイ・ドリーム・フリーター』は、ミニアルバム『25』に収録されている曲のリマスタリングとなってますが。

BINGO:『Precious』で僕らを知ってくれる人たちに、過去の作品でこういうのもやってるよっていうのを出したかったので、これをきっかけに過去の作品にも興味持ってくれたらなって思いますね。

KENGO:例えば『Precious』みたいな曲だけやったら、こういう人やって思ってまうと思う。でも、カップリングに『デイ・ドリーム・フリーター』が入っていたら、こういうのもやるんやってもっと知りたくなると思う。ライブでも楽しいし、知ってもらうきっかけにはいいと思いますね。 ーーー『デイ・ドリーム・フリーター』はギターのファンキーなフレーズが心地良かったです。

KENGO:何回も作り直している曲なんですよ。一個一個全然違うパターンを作って、考えに考え抜いた中の一番にいいものを入れたので、フレーズ一個一個に対してものすごい思い入れがある。構成的に無駄がないし…って褒めすぎやな(笑)。それぐらい自信がある。ファンクでありたいけど、ポップな部分も入れつつ。この曲ができた時は、アメリカのモータウン(Motown Records)を意識しすぎたために似すぎたところがあったので、基本は変えずに作り直したという感じですね。 ーーー“フリーター”って、時代を象徴しているかのような言葉を使われてますが。

BINGO:今、フリーターって多いじゃないですか。やりたいことはあるけども、達成できないまま終わっていっちゃう人っていっぱいいると思うんです。夢を諦めんといてっていうことを臭くならないようにしつつ、真剣なメッセージを伝えたいっていうのがあったんです。世間はフリーターをバカにするけども、頑張っているんだぞ!って(笑)。

KENGO:夢があってフリーターをやってる人も軽く見られるのは納得いかないですね。

──フリーター自身には夢はありますけど、周りからは夢があると見えてるんですかね。

BINGO:いや、見えてないと思います。

KENGO:じゃないと、フリーターっていう言葉がつかないと思う。

BINGO:フリーターを否定する人は、夢があったけど何らかの理由で諦めた人だったりすると思うんです。ちゃんと働いている人はフリーターを見て、ナニ呑気にしてんねんって思うし、夢を叶えた人からすれば、もっと自分の目標に向かって頑張れよって言うと思う。フリーターを悪く言う人は世代もあるけど、俺らからしたらフリーターのどこが悪いねんって思う。

KENGO:フリーターではなく、ドリーマーと呼べ(笑)。

BINGO:ジョーダンが言っていた言葉で、「夢を語った時に、頑張れと言ってくれる人を集めろ」って。「夢を応援してくれる人を周りに集めたら夢は叶うから」って言ってはった。フリーターも熱い結束で結ばれたら夢が叶うんじゃないかなって思います。


ステージに立てばヒーローになれる

──最近では大きなイベントにもたくさん出られてますね。

KENGO:嬉しい限りです。ライブは楽しいですからね。

──フェスとかになると、普段のライブハウスとモチベーションが変わったりします?

KENGO:ライブハウスだと、音響とかお客さんが近いとか、いろんなことが気になって、ごっつ緊張しますけど、でっかいとこは考えてもしょうがないって。いい意味でやりやすい。

BINGO:僕はMCが一番緊張するんですよ。大きいイベントだと僕らのことを知らん人もいっぱいいるから、その人たちをどう惹きつけるか。フロントアクトの状態で、僕らの後にはすごいアーティストがたくさん出てくるから記憶が薄れていくと思うんです。それをどう覚えてもらうかっていうのを考える。だから大きいイベントになればなるほど、考えることが増えるといえば増えますけど。

KENGO:よう考えてんねんな(笑)。

BINGO:そこは俺の仕事だからしゃあないけど、KENGOが言う緊張しなくなる気持ちもわかりますね。歌い出したら自分がヒーローでなくてもヒーローだと勘違いできるんです。

──MICRON' STUFFのライブのあり方とか、どういうライブにしたいっていうのはあります?

KENGO:お客さんを絶対に楽しませたいっていうのあります。そのための曲であり、そのためのライブでもある。曲を聴いて一喜一憂して、帰るときには「楽しかった!」って言われたい。

BINGO:その大事な要素としてMCもあるな(笑)。

──では最後に、『Precious』の聴き所を含めて、読者の皆様に一言ずつお願いします。

BINGO:他の人から見たら何でもないものかもしれないけれど、自分なりの“かけがえのないもの”を探してみたらおもしろいんじゃないかと思います。

KENGO:今までの僕らだけでは為し得なかった曲でもあるので、一聴の価値ありです。


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Live info.

PIA 35th ANNIVERSARY 『Music Complex 2007』<POINT GREEN! TOKYO ECO PARK 〜FEEL THE WIND〜>
9.16(Sun)若洲公園(東京都江東区)
OPEN 15:00
ADV. 7,500yen(Pコード 261-061)
出演:東京スカパラダイスオーケストラ / 絢香 / ORANGE RANGE / チャットモンチー / TRICERATOPS / GRAPEVINE / All Japan Goith / MICRON’STUFF / ASIA SunRise / 他
※未就学児童は、保護者同伴に限り無料。ただし、エリア制限あり。雨天決行。荒天中止。

MICRONSTUFF OFFICIAL WEB SITE
http://micronstuff.com/

posted by Rooftop at 09:00 | TrackBack(0) | バックナンバー

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