今秋発表の新作へのカウントダウンに乗じて新企画始動!
Rooftopは六畳人間を応援します!
今年初頭に『夢の万祝』という近年稀に見る高いポテンシャルに満ちたアルバムを発表した六畳人間〈ろくじょうひとま〉。2月、3月と2ヶ月連続で渋谷屋根裏で行なった自主企画『If 6 Was 9』は、らぞくとネクラポップ、PANICSMILEとmooolsというアクの強い先輩バンド達をそれぞれゲストに迎えながら、ロックのダイナミズムと幻想的な世界観が同居した自身の音楽を堂々とオーディエンスに見せ付けた。そんな彼らが11月に発表するニュー・アルバムのレコーディングに入るとの情報を本誌はキャッチ、今号からリリースまで毎月彼らの足取りを追うことにした。今月は本誌2月号以来の登場となるので、『夢の万祝』発表後の周囲のリアクションから近況までをゆるりと訊いてみた。(interview:椎名宗之)
六畳人間的トピックス「家が燃えました」
──今年1月に2ndミニ・アルバム『夢の万祝』をリリースして以降、ライヴに臨む意識も変わってきたんじゃないですか。
高尾 諭(g, vo):アルバムが出た直後よりも、4月くらいに普段対バンできないような方達と一緒にやらせて頂いた時から変わりましたね。とにかくお客さんを楽しませるためにちゃんとお客さんと向き合わなきゃと思って。それまでは自分達が楽しけりゃいいやっていうところがあって、演奏が終わったら後ろを向いたりしてたんですけど、ちゃんとお客さんのほうを向くようになったりして。
──それは大きな進歩じゃないですか!
高尾:そしたら、多少前よりはウケが良くなった気がしますね。やっぱり前を向いてると反応がちゃんと判るし、お客さんもちゃんと見てくれると思うんですよ。地方に行った時は手拍子なんかも起こったりして。
杉原考祐(b):あれは嬉しかったですねぇ…。
高尾:ちょっとしたアイドル気分で(笑)。この間の東京のライヴでも、新曲で手拍子が起こって。
──あ、もう新曲も披露してるんですね。手拍子したくなるような曲なんですか?
高尾:いや、全然(笑)。まぁ、リズムが一定の曲なんで、手を叩きやすいのかもしれないですね。
──新曲はすでに何曲くらい披露しているんですか。
高尾:ライヴでは5、6曲ですね。
──曲作りはコンスタントに?
高尾:僕はバイトを休んででも曲を作ってますね。曲が出来そうだなって思った時はバイトを休んで。
──バイトに行く直前にフレーズが浮かんできた時とか?
高尾:いや、僕は浮かんできたりとかはないんで、“今日バイト行きたくないなぁ…曲でも作るか”みたいな(笑)。“雨降ってるしなぁ…”とか。それでいい曲が出来たら、休んだ口実になるし(笑)。
──完全に現実逃避じゃないですか(笑)。でも、実際いい曲が出来ているんですね。
高尾:そうですね、着々と。
──11月にリリース予定という新作は、『夢の万祝』の延長線上にある感じですか?
高尾:アレンジとかはまだどうなるか判らないんですけど、でも自分達っぽいとは思いますね。まだ余り考えてないんですけど。レコーディングの時にもうちょっと詰めて考えようかなぁ…と。
──ライヴで演奏して反応を見ている部分もありますか。
高尾:最近はそうですね。ここ2ヶ月くらいはレコーディング仕様で演奏してる曲もあります。
──『夢の万祝』を発表してから、ライヴのオファーもかなり増えたんじゃないですか?
高尾:いや、全然ないですね(笑)。
──(笑)じゃあ、周囲の状況はさほど変わらず?
伊藤良貴(ds):変わらないですねぇ。ライヴして、スタジオ入って、ライヴして…みたいな。「お客さんもっと来ないかなぁ」っていつも言ってますよ。
──…何か読者が関心を持てるような出来事とかありませんでしたか?(笑)
杉原:関心が持てることですか? …あ。僕、家が燃えたんですよ。
──エッ!? ホントですか?
杉原:アパートの上の階の人がボヤを起こして…この続きはまた来月!
一同:(笑)
杉原:そんな引っ張れる話じゃないですけど(笑)。バイト先に「家が火事だよ!」って電話が掛かって来て。結局ボヤで済んで燃え広がりはしなかったんですけど、消火活動で浸水してしまって。家の中に滝が出来たんですよ(笑)。
──それは大変でしたねぇ…って、音楽とは一切関係のない話ですけどね(笑)。高尾さんと伊藤さんは最近何かありました?
高尾:僕は、雨が続くんで家から出ない率が高くなったかな。
伊藤:特にないですね。普通ですよ。年齢との戦いになってきたな、っていうくらいで(笑)。
高尾:そろそろ解散かな、みたいなね(笑)。
──それは困りますよ!(笑) 個人練習をしたりとかは?
高尾:それぞれやってますよ。
──じゃあ、それがライヴで活かされたりとか。
高尾:でもそれはやっぱり自分達じゃ判らないし、人が判断するところですからね。だから毎回観に来てくれる人がたくさんいたらいいのになぁって(笑)。
新曲に対する中村宗一郎のアドバイス
──新作はフル・アルバムになる予定ですか?
高尾:そうですね。今のところ9曲で考えてます。
──『嘘の国』『夢の万祝』とミニ・アルバムが2枚続いて、初のフルになると。
高尾:はい。頑張ります。レーベルの人には「東京湾に浮かぶか、3LDKに住めるかどっちか」って言われてますから(笑)。
──(笑)じゃあ、そのぶんプレッシャーも…余り感じてないですね?
高尾:今日も取材なのに、ラフに短パンで来ちゃってますからね(笑)。
──でも、新曲作りで手応えはそれなりに感じていますか?
高尾:この間、アルバム用のデモを作ってエンジニアの中村宗一郎さんに聴いてもらったら、凄く色々言ってくれて。今までは余り言ってくれなかったんですけど、「ここがダメ、あれがダメ…」って。
──具体的にはどんなことを?
高尾:端的に言うと構成が練られてない、ドラムが全部一緒、ベースが弾かなくていいものを弾いている、歌は声を張り上げてるところが聴いててしんどい。そういうのが続くと音量を下げられてちゃんと聴いてもらえないと。それは確かに全部当たってて、そこを今修正しようとしてるんですけど、うまく行けばいいものができるだろうし、うまく行かなければ方向性の見えない音源になるだろうって(笑)。でも方向性はハッキリしてて、それはさっき椎名さんが仰ったように前作から続いてるものなんですけど、その感じが9曲続くとしんどいっていうのがあって。そこを気付かせてもらったんで、ちゃんと修正できれば面白いものになると思います。
──メリハリは確かに必要ですからね。中村さんは以前はそこまで細かく言ってはくれなかったんですか?
高尾:そうですね。それは面倒くさいっていうよりも、僕らに言っても判らないだろうって感じで。実際その時は判らなかっただろうし。あと、前はレコーディング期間が2、3日しかなかったから時間が限られてたっていうのもあったんですけど、今回は2週間くらい取れるので、中村さんもそこまで付き合うとなるとちゃんと言わないととんでもないことになるって思ったのかもしれないですね(笑)。
──ははは。だけど、そこまで厳しく助言してくれるのは有り難いことですよね。
高尾:でも、中村さんって怖いイメージみたいになってますけど、凄く優しくていい人なんですよ。話も面白いし。ハッキリものを言うんですけど、全然腹が立たないんですよね。「こうだからこうしたほうがいいよ」って理論立てて言ってくれるんで。
──サウンドのアプローチとして新たな試みとかは考えていますか。
高尾:とりあえずは前作のガーッと行き続けてたところとか、さっき言った4つの改善点を解消していこうっていう感じですね。曲自体は面白いものが揃ってると思うので、そこは自分を信頼しているというか。それをどう上手く見せられるかっていうのは自分達次第ですね。
──例えば、アコギを全面的にフィーチュアしてみるとか?
高尾:曲に合っていればそういうのもいいですね。その曲の持っている個性みたいなものを最大限に引き出せればなと。
──この3人の編成になってから随分経つし、バンドとしての一体感は自ずと出る感じですよね?
高尾:でも、長くやってきた人達に比べると全然短いですからね。僕らはホントにまだまだですから。多分、僕らは得意なことを見せるのが上手いんですよ。ダメなところは極力見せないようにする。それだと6曲くらいならバレないで済む場合もあるんだけど、9曲くらいになると判る人には判ってしまうんです。
──レコーディングはいつから始まるんですか?
高尾:8月9日からです。曲はもう出来てるんで、あとはアレンジを詰めていく感じで。
──じゃあ、8月はいつにも増して忙しいですね。バイトにも行けずに(笑)。
高尾:休む口実が出来るんで、僕としては嬉しいですね(笑)。もう餓死するまでやりますよ。
──録りは3人一緒に“せーの!”でやるんですか?
高尾:それもまだ決めてないんですけどね。リズム隊だけ先に録るかもしれないし。今までは3人一緒でやってたんですけど。
──3人一緒でやるほうが自分達っぽいからとか?
高尾:でも、自分達っぽいとか勝手に考えちゃうと何にもできなくなっちゃうんで、そういうのは余り考えないようにしてますね。自分達っぽさっていう発想が結局、中村さんに言われたようなダメなところも作ってると思うんですよ。ワン・パターンになってしまったり。今はそういう先入観みたいなものを排除しようっていう感じですね。
共演希望のバンドに誌面を通じてラヴ・コール!
──今のライヴの客層はどんな感じですか?
高尾:3:1くらいで女の人が多いです。
──もうちょっと男性客が増えてくれると嬉しいですね。
高尾:まぁ、一人でも多ければどっちでもいいですね。もう猫とかでもいいです(笑)。
──以前、「ライヴは月2回くらいやれればいい」なんて仰ってましたけど。
高尾:もっとお客さんがいればやりたいんですけどね(笑)。そんなに毎回来てくれる人もいないし。イヴェントになると大抵僕らは出順が一番最初なんで、後のバンドを観に来た人が最前でつまんなそうにしてたりして。それはそれで燃えるんですけど、変なテンションになっちゃったり。こないだクアトロのイヴェントの時は何故か僕らがトリだったんですけど、それはそれでお客さんがみんな帰っちゃって、前のほうに十数人いて後ろがガラガラで。
──それはキツいなぁ…(苦笑)。でも、その前のほうにいる十数人は頼もしい味方じゃないですか。
高尾:だけど、いつも来てくれるお客さんはアンケートに結構厳しいことを書いてくれたりするんですよ。「今日はイマイチだった」とか「あの曲だけ良かった」とか「セットリストが微妙」とか(笑)。
──そういう意見を言ってくれたほうが絶対実になりますから。自主企画『If 6 Was 9』は3月以降やっていませんよね。
高尾:やってないですね。体力もないし、人気もないですからね(笑)。
──またそんな後ろ向きなことを(笑)。対バンを通じていろんな人脈も広がるじゃないですか。
高尾:でも、他のバンドの人となかなか仲良くなれないですから(笑)。Unlimited Broadcastとか宙ブラリとか、キャリアの長い方達とやらせて頂いた時は、話をしていて面白いので極力話すようにはしてましたけど。
──キャリアの長いバンドマンから好かれそうな音楽だと思うんですけどね。逆にそういう人達からライヴに誘われたりとかは?
高尾:全くないですね(笑)。バンドの評判も僕ら自身には全然聞こえてこないです。でも、9月に渋谷屋根裏のブッキング・イヴェントで割礼と対バンできるので、それは凄く楽しみにしてますね。
──今後対バンしてみたいバンドはいますか?
杉原:僕はTHE PRIVATESとやってみたいです。この間Queでライヴを観て、凄く恰好良かったので。
伊藤:僕はズボンズが好きで、いつか一緒にやりたいですね。やっぱり長くやってる方は音も恰好いいし、演奏も凄く上手いし、こっちが凄く勉強になるんですよね。
高尾:やっぱりキャリアがあってちゃんと音楽をやってきた人達は人間的な魅力が凄くあるんですよね。そういう人達とこれからいっぱいライヴをやりたいなって思いますね。それはもう自分達でお金を払ってでもやりたい。
──キャリアのあるバンドとの出音の違いを感じたりとか。
伊藤:そこはもう全然違いますよね。
──こういうインタビューで言ったことが意外と実現したりするから、対バンしたいバンド名を挙げたほうがいいですよ。
高尾:じゃあ、ビョーク! ビョーク!
一同:(笑)
杉原:ビョーク、レッチリ、アンダーワールド!
高尾:渋谷屋根裏で、チケット1枚50万円で!(笑)
──それは無理でしょう(笑)。もっと現実的なところで。
高尾:じゃあ、ビョーク…。
一同:(笑)
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Live info.
8月15日(水)渋谷屋根裏
8月31日(金)吉祥寺PLANET K
六畳人間 OFFICIAL WEB SITE
http://www.rokujouhitoma.jp/