ギター バックナンバー

おとぎ話('07年8月号)

おとぎ話

L→R 前越啓輔(Dr):牛尾健太(G): 風間洋隆(Ba):有馬和樹(Vo./G)

有馬に訊く!音楽人生に影響を与えた10枚。

2007年1月に発売したシングル『KIDS/クラッシュ』が各方面から話題を集めているおとぎ話。そんな彼らがこれまでの活動の集大成とも言えるファーストアルバム『SALE!』を完成させた。このお話は9月号で聞かせて頂くとして、今回はヴォーカル&ギター有馬和樹に影響を与えた邦楽アルバム10枚を語ってもらうことで、彼らの目指す音楽「POPの端っこにいながら、ド真ん中」の意味を感じてもらえればと思う。(interview:横山雅明 )


音楽を聴くルールブックが父親だった

──影響を受けた邦楽アルバムを10枚選んでいただきたいのですが、邦楽洋楽問わず自分で意識して音楽を聴き始めたキッカケはなんですか?

有馬:小6ぐらいの頃なんですけど、洋楽に詳しい父親にいろいろ聴かせてもらっていたのが最初ですね。ビートルズとか、レッド・ツェッペリンとかクイーンとか。

──70年代洋楽ロックがBGMになっているような家庭だったんですか?

有馬:そうですね。父親は非常にロック好きで、キング・クリムゾンとかプログレなんかも小学生の時は聴かされてました。

──素晴らしい家庭環境で育ったんですね。

有馬:そうなんです。だから音楽を聴くルールブックが父親だったんで、父親が「良い!」と言った音楽は全部素晴らしいものだと思っていましたね。

──自分で買ってきたCDを父親と一緒に聴いたりはしたんですか?

有馬:よく一緒に聴いていました。例えば僕が買ってきたユニコーンのCDを聴いて、父親は「このギターフレーズがカッコイイね〜」なんて言ってました。

──本当に素晴らしい家庭環境ですね。なんだか悔しいです(笑)。

有馬:ようするに兄貴の代わりが父親であったということですね。

──なるほど。現在でも父親に「おとぎ話」の音源を聴いてもらったりはするんですか?

有馬:聴かせますね。おそらく「おとぎ話」の一番のファンであると思います。父親も若い頃はバンドをやっていたらしいんです。それでそのバンドの歌詞を教えてもらったんですけど…かなり赤面モノでした(笑)。ちなみにギターの腕前は僕よりも父親の方が断然上手だったりします(笑)。


「アナログ感」への執着心は今でもあります

──ではそんな素晴らしい環境で育った有馬さんが影響を受けた邦楽アルバム10枚を、具体的に語ってもらおうと思います。


ユニコーン
スプリングマン

有馬:はい。実は10枚選んでくれって言われた時、ユニコーンと奥田民生だけにしようと思ったんですよ。そのぐらい僕の中ではユニコーンと奥田民生は絶対的な存在なんです。

──自分の中で核になっている音楽なんですかね?

有馬:そうなんです。初期の奥田民生や中期後期のユニコーンを聴くと、未だにいろいろ発見がありますからね。

──ユニコーンのラストアルバム『スプリングマン』は、初期ユニコーンの80's風サウンドからは想像もつかない程のアナログ感が前面に出てますね。


奥田民生
29

有馬:僕は中学生時代に、ユニコーンと奥田民生のソロデビューアルバム『29』を同時期に聴いていたんですね。だから中期後期のユニコーンのサウンドにはすんなりと入っていけたんです。同時期に流行していた打ち込み系の音楽よりは、アナログ感のある音楽の方が好きだったんです。

──その「アナログ感」みたいなものに敏感に反応していたんですね。

有馬:はい。その「アナログ感」への執着心は今でもあります。

──ではその後、高校時代に影響を受けたものはどうでしょうか?


エレファントカシマシ
明日に向かって走れ-月夜の歌-

有馬:高校時代はエレカシ(エレファントカシマシ)ですね。中学生の時にギターを父親に買ってもらったんですけど、全然うまく弾けなくて投げ出してたんです。それでもう一度ギターを弾きたいと思ったキッカケがエレカシで。『明日に向かって走れ』のPVでヴォーカルの宮本さんがすごい不器用なギターの弾き方をしていたんです。それを見たときに「僕も弾けるかもしれない!」って思って、マネをしたら意外とすんなり出来たんです。だから1番最初にコピーをしたバンドはエレカシなんですよ。

──なるほど。こうしてミュージシャン有馬としての第1歩が始まったんですね。

有馬:はい。それと、自分は男らしいところが全然無いので宮本さんには憧れていますね。

──「男らしさ」に憧れているんですか?

有馬:そうなんです。有馬和樹は女々しい男です(笑)。


中村一義
太陽

──そんな自虐的な(笑)。続いて中村一義『太陽』なんですけれども、世間的には中村一義はデビューアルバム『金字塔』の衝撃が大きかったと言われてますよね?

有馬:でも僕の場合は、このセカンドなんですよね。特に『いつも二人で』と『笑顔』が大好きで。

──しかし、このアルバムが発表された時は賛否両論ありましたよね?

有馬:そうですね。でも自分の場合はこのアルバムの『生きるか死ぬか』みたいな歌詞が、圧倒的に愛を感じるんです。自分の根底部分を作ってくれたとも言えます。

──おとぎ話の作品における言葉のセレクトは、『金字塔』よりも『太陽』の影響の方が大きい感じですね。

有馬:100%影響があります。この作品で歌われていることはずっと自分のテーマだし、一生手放せないアルバムですね。でも自分にとってあまりに100%なアルバムなんで全然近づけてないし、まだまだこんな人間にはなれないなぁと思っています。


女の人には敵わないと思っている


サニーデイ・サービス
サニーデイ・サービス

──続いてサニーデイ・サービスについてはどうですか?

有馬:その頃同時に聴いていたのがサニーデイ・サービスです。とりあえず『サニーデイ・サービス』)を挙げましたが、サニーデイ・サービスのアルバムならなんでも良かったんです。

──といいますと?

有馬:バンドとして 「もがいてる感じ」が如実に表れているのがいいんですよ。

──サニーデイ・サービスは、サウンドの変化が劇的に変化していったバンドですよね?


CHARA
Junior Sweet



小沢健二
LIFE

有馬:常に誠実さを感じるんです。ヘタった時にはヘタった歌を歌えばよくて、そういうことができるのが曽我部さんなんだろうなと思いますね。CHARAの『Junior Sweet』にも同じものを感じていて、永遠の伴侶と結婚してという決意のアルバムなんですよね。自分も曽我部さんやCHARAのように自分の状況を伝えられる人間になりたいんです。

──なるほど。小沢健二『LIFE』も同時期ですよね?

有馬:はい。小沢健二もCHARAもなんだかキラキラしてるんですよね。今、自分がやりたい音楽もそのキラキラ感が欲しいんです。

──女性アーチスト全般についてはどう思いますか?

有馬:僕は女の人には敵わないと思っているから、女の人が書く幸せな歌詞はホントに幸せなんだなぁと思うんですよね。幸せじゃないことは百も承知なんだけど、多幸感のあるものが好きなんです。

──岡村靖幸『家庭教師』との出会いはどうだったんですか?

有馬:大学生の時なんですけど、この凄まじいジャケットにまず圧倒されたんですよ。


岡村靖幸
家庭教師

──そうですね。このジャケットはインパクトが大きいですよね。

有馬:実際、岡村靖幸に影響を受けたアーティストって多いじゃないですか?

──実は僕も岡村信者です(笑)。

有馬:そうなんですか!? 岡村靖幸は日本のプリンスと言われていたので、なんとなく聴いてみたらぶっ飛んだんです。日本人ってこんなに可能性があるんだ! って思いました。

──とにかく何もかもが濃いですね。

有馬:濃いというよりも、岡村靖幸は自分にとってはプリティな存在なんです。「ロック」って戦いでもあるんだけど、ポケットに入るくらいの可愛いものだとも思うんですよね。音楽はエロいんだけどポケットに入る可愛さをもっているとでもいうか...。

──人間の崇高な部分と下品な部分を同時に放出してる感じもしますね。

有馬:とにかく「コレはスゴイ!」ってことです。

──では残り2枚を。まず『極東最前線』ですが...。


V.A.
極東最前線

有馬:ひとりのバンドマンとして、こんなコンピレーションが作れたら最高に幸せだろうなって思います。自分でイベントを企画したりするのも、最終的にはこういったコンピレーションを作りたいってことなんです。

──イースタンユースが愛している方々と、愛されている方々の想いが純粋に伝わってくるアルバムですよね?

有馬: はい。だからこんな純度の高いものが作れたら自分のバンドを辞めてもいい!って思います。

──それは困ります(笑)。

有馬:ちょっと言い過ぎました(笑)。でも『極東最前線』は完全に自分の憧れですね。

──そして最後の1枚、荒井由実『ひこうき雲』ですが...。


荒井由実
ひこうき雲

有馬:別に深い意味はなくて、スタンダードなアルバムで締めようかと思って。だから「はっぴいえんど」でもいいんです。たまたま最近聴いていたのが『ひこうき雲』だったんです。

──ということで、急いで10枚を語ってもらいましたが、どうでしたか?

有馬:ん〜、楽しかったです。

──有馬和樹という人間が伝わる10枚だと思いましたよ。で、そんな有馬和樹が率いるおとぎ話の待望ファーストアルバム『SALE!』がついに9月5日に発売されますね。

有馬:内容には自信はありますよ。絶対に聴いた人を後悔させない作品だと思います。将来誰かに「僕が影響を受けた1枚です」と言ってもらえるとうれしいですね。

──Rooftop9月号ではおとぎ話ファーストアルバム『SALE!』についてタップリ語っていただこうかと思いますので宜しくお願いします。

有馬:宜しくお願いします(笑)!


他のメンバーにも1枚ずつ選んで頂きました!

前越啓輔:Drums
THEE MICHELLE GUN ELEPHANT / チキンゾンビーズ
THEE MICHELLE GUN ELEPHANTは今でも大好きです。

風間洋隆:Bass
The Velvet Underground & Nico / The Velvet Underground
新潟から出てきたばかりの田舎者らしい田舎者。ヴェルベッツなんて知る由もない風間が、ふとしたきっかけからベースを始め、大学入学当初からの友達である有馬と「おとぎ話」を組むこととなった時によく聴いてたアルバム。風間洋隆19歳の冬。

牛尾健太:Guitar
WEEZER / ピンカートン
高校生の頃狂ったように聴いていたアルバム。本当に狂ってしまったのか、これは俺のことを歌っていると思い、以前にも増してバンドをやりたいと思った。その後、初めて組んだバンドが「おとぎ話」である。


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8.15(Wed)八王子MATCH VOX
8.24(Fri)下北沢CLUB QUE
8.26(Sun)新宿redcloth
9.02(Sun)大阪ラッシュボール
9.09(Sun)東高円寺UFO CLUB
9.28(Fri)大阪セカンドライン

レコ発ツアー
10.24(Wed)水戸ライトハウス
10.25(Thu)仙台フライングスタジオ
10.26(Fri)さいたま新都心ヘヴンズロック
10.28(Sun)柏アライヴ
10月末 福岡、小倉予定
11.08(Thu)名古屋アポロシアター
11.10(Sat)京都ネガポジ
11.11(Sun)大阪シャングリラ
11.16(Fri)下北沢CLUB Que

おとぎ話 OFFICIAL WEB SITE
http://otgbanashi.at.infoseek.co.jp/

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