ギター バックナンバー

BEEF('07年8月号)

BEEF

3P3B期待の大型新人、遂に初のフル・アルバムを完成!
ジューシィで肉汁の溢れまくった極上のメロディを喰らえ!

岡田洋介(SLIME BALL, ex.THUMB)を中心に、川田達也(ex.GREEN GIANT)、奥脇雄一郎(puli, ex.CAPTAIN HEDGE HOG)、神長貴博(ex.DAMAGE)という編成で本格的に始動した3P3B期待の新星、BEEFが待望のファースト・アルバム『A NEW HOPE』を完成させた。アコギをパーカッシヴに用いた独自の味付けを施し、各々の経歴を見て想像し得る(もしくは期待する)メロディック・パンクとはひと味もふた味も違う、濃厚な肉汁の旨味が染み込んだ芳醇なメロディをとくとご堪能あれ!(interview:椎名宗之)


アコギを使ってそれっぽい音楽をやるつもりは更々ない

──まず最初にお伺いしたいのですが、アルバムのタイトルである『A NEW HOPE』…これはミートホープの食肉偽装事件とは関係ないですよね?(笑)

岡田洋介(VO, AG):ええ、まぁ時代のアンテナには敏感なので、それに乗った感じですね(笑)。それは冗談として、やっぱりウソはイカンですよね。

川田達也(B, CHO):あと最近、『牛に願いを Love&Farm』っていうドラマが始まってビックリしたんですけど(笑)。この時期にタイミング良すぎるだろうって。

奥脇雄一郎(DS):来てるね! だいぶ来てるね!(笑)

──岡田さんが重い腰を上げて遂に完成しましたね、初のフル・アルバムが。

岡田:「夏までにはアルバムを出します」とうっかり約束をしてしまったもので(笑)。

──4曲入りマキシ『TOO FAST TO SLOW DOWN』('06年11月発表)が出た頃には、このアルバムに収められた曲はストックとしてすでにあったんですか?

岡田:なかったですけど、ネタ的には半分くらいはありましたよ。当時は数あるネタの中からあの4曲をピックアップした感じですね。

──改めて結成の経緯を押さえておきたいんですが、そもそもは岡田さんがアコースティック・ギターを購入したところから始まったバンドなんですよね。

岡田:そうです。もう30にもなるし、大人の嗜みとして、酒を呑みつつアコギでも爪弾いてみようかなと…。

奥脇:オマエ、酒は呑めないだろ?(笑)

岡田:まぁね(笑)。で、爪弾こうと思って買ったものの、実際には爪弾けなかったんですよ。ギターは弦楽器というよりもリズム楽器として捉えてますね。ちょっとベース的なアプローチで弾いてます。

──そして、幾多の紆余曲折を経てこの豪華布陣が集まるに至り。

岡田:最初に声を掛けたのが川田君で、それは単純にヒマそうだったから。当時は音楽をやってるかどうかも謎だった。なんで達也だったんだろう? …まぁ、たまたま携帯に登録してあったんでしょうね(笑)。その頃は今と違うエレキ・ギターとドラムがいたんですけど、色々ありまして。その後に奥脇君に連絡して。奥脇君は僕の実家の近所に住んでるんですよ。ここ数年、正月に実家へ帰るとそのまま奥脇君の家に寄ったりして、その流れがあって一緒にやろうと。あと、奥脇君は頼めば断らない人なんで。

奥脇:そのお陰で、“インディーズ界のイエスマン”という有り難くない称号を…勝手に名乗ってるだけですけど(笑)。

岡田:そこで一度落ち着いたんですけど、また色々ありまして。で、デス君(神長)が入ったのかな。デス君なんて、DAMAGEが解散した日から僕は見てなかったですからね。SHERBET時代にちょくちょく対バンはやってましたけど、全然話したことがなくて。でも、これはたまたまなんだけどデス君は僕の友達のいとこで何となくのイメージはあったし、ギターも上手だし、太ってるしメガネもかけてるし…イメージにピッタリだと思って。

──メガネをかけた太ったギタリストというのは、かなり大事なポイントだったんですか?(笑)

岡田:凄く大事でした(笑)。それか、中島美嘉さんみたいな女子のギタリストを本気で探してたんですけど、いなかったですねぇ(笑)。

──当初からBEEFというバンド名で行こうと?

岡田:いや、二転三転しました。二転くらいかな? Laughing Out Loud…略して“LOL”って名乗ってた時期もあったし。それは、向こうの女学生達が携帯メールでやり取りする時に使う絵文字みたいなもので。

──それがどう転んだらBEEFに辿り着くんですかね?(笑)

岡田:実際、LOLって名乗った1年間は大してバンドは動いてなかったんですよ。で、年が明けて気分を変えて、バンド名も変えようと。ちょうどデス君も入った時だったので。BEEFって名前はホントに軽いノリで決めました。その年もバンドがちゃんと機能しなかったら変えようと思ってたんですけどね。BEEFっていうのは“揉める”とか“不平”の意味で、よくヒップホップの人達が使ってるんですよね。決して“お肉大好き!”っていう意味じゃないんですよ。まぁ、肉は普通に大好きですけどね。

──音楽的な方向性みたいなところは?

岡田:アコギを使うからそれっぽいものをやるつもりは更々なくて。みんなはそう来ると思ってたみたいだけど。

──岡田さんがアコギで作ってきた曲をみんなで肉付けしていく感じですか。

川田:曲の方向性はだいたい洋介の頭の中にあるみたいで、彼の言うことに対して摺り合わせていく感じですね。

岡田:曲を作ってる段階で、フレーズとか結構決め打ちしてますからね。それを基準にして、特に決めてない部分は各自好きなようにやってもらう感じですね。余りにもおかしかったらそこは訂正させてもらって。僕はドラムが叩けないから、「バスはこんな感じで、スネアはこの位置で…」って、鳴ってる音の一個一個を説明していくしかないんですよ。それに対して奥脇君が叩いて、出来たものに対してダメ出しをしたりとか(笑)。「左手がこうしてるうちに右手はこう!」とか、ドラムに関しては凄く具体的に言いますね。

奥脇:しまいには「顔はこう!」まで言うからね(笑)。

岡田:ドラムは僕の中で凄く重要だし、大好きだから細かく言うんですよ。リズムに対しては結構シビアですね。ただ、達也に対しては特に何も言わなかったよね。“自分で良ければいんじゃない?”っていう感じ。

──『A NEW HOPE』にはパンクからオーガニック風までヴァラエティに富んだ曲が収められていて、凄く引き出しの多いバンドだなと思ったんです。インストの「E.T.H.B」にはジプシー・キングスっぽいテイストもあったり。

岡田:極々ナチュラルに作っていった12曲なんですよね。13曲目の「THE MAGIC WORD」はシングルのヴァージョン違いで。このボサノヴァ・ヴァージョンはベタと言えばベタだけど、こういうのを僕らがやるっていうのが面白い。


結局のところ醤油をかけて食べるのが一番美味い

──アコギを軸に据えた音楽の面白さとはどんなところですか。

川田:アコギどうこうよりも、洋介の持ってくるフレーズなり何なりが新鮮ですよね。洋介自身、コード進行とかコードの名前を全く知らないので、それが逆に突拍子もなく良かったりする。そういう部分の面白さはありますよね。

岡田:1弦1弦押さえてみて、弾いた感じの耳障りが良ければ僕の中ではコードとして成り立ってるんです。それがナントカっていうコード名なのかもしれないけど。“こうやって押さえたらこんな響きになるんだな…”って、最初はそんな感じでしたよ。弦を6本も押さえたりすると指が痛かった。そこから極力押さえる弦を減らす作戦に出ましたね(笑)。

奥脇:僕の中でも“アコギだからこう叩かなきゃ…”とか、そういう意識はないんですよ。最初は僕もジャック・ジョンソンみたいな音楽をやるアコースティックなバンドだと思ってたし、アコギを活かすようにしてましたけどね。でも、実際にみんなで音を合わせてみて、特にシングルを出して以降は“そういうバンドじゃないよな”と思って。各々やってきたバンドがあって、その持ち味が自ずと出るんだなと。

──アルバムの曲を聴いても、奥脇さんのドラムは容赦なくドカドカ鳴ってますもんね。

奥脇:そうですね。音量の強弱というか、タッチの部分には気を遣ってますけど。

──そういう音の出し引きはミックスの段階で細かくバランスを取ったんですか。

岡田:しましたね。ミックスは結構やりましたよ。今回は音数が多いから大変でしたね。なんせ4人中2人がB型なので、色々とめんどくさかったですよ(笑)。

奥脇:僕はB型なんですけど…(川田に)エッ、何型?

川田:O型です。

奥脇:じゃあ、BとOが半々じゃん。

──岡田さんと川田さんがO型で、奥脇さんと神長さんがB型だと。

神長貴博(EG, CHO):いや、僕は意外にA型なんですよ。

岡田・川田・奥脇:エエーッ!!!!!!

奥脇:B型じゃなかったの!? 洋介が「デス君はB型だから」って言ってたから、てっきり…。 神長:でも、繊細なところとか…自分で繊細って言っちゃったけど(笑)、細かい作業が好きなところはA型っぽくない?

岡田:細かい作業をしてるところなんて見たことないよ! まぁ、血液型に関係なく、奥脇君とデス君は自分勝手ですけどね(笑)。

奥脇:違う違う! 俺が言いたいことを言うのは、みんなのことを信頼してるからなんだよ! このバンドは、わがままを言っていいバンドだと俺は思ってる!

岡田・川田・神長:……………。

奥脇:…まぁ、違うみたいだけどね(笑)。

──残念でしたね(笑)。でも、神長さんが気遣いのできるA型だからこそ、アコギが引き立つサウンドになっているとも言えませんか?

神長:バンド・サウンドにアコギを乗せるのは凄く難しいと思いましたよ。自分のギターが8割方ディストーションだし、アコギって実はもの凄くサスティンのない楽器で、“ジャッ!”って鳴ったら“ジャ”の一瞬しか乗らないんです。その一瞬鳴る“ジャ”が結構美味しかったりするので、パーカッシヴなサウンドをアコギで出してみたり、ディストーションのギターに埋もれないようにアルペジオを多用したりとかして、エレキとアコギのアンサンブル感は何とか出たんじゃないかと思いますけど。

岡田:いや、デス君はそこまで考えてないですよ。考えてたらもうちょっと普通に収まりが良かったでしょう、逆に。考えてなかったからこそ、いい意味でしっちゃかめっちゃかになったんだと思う。 神長:収まり良くしちゃダメだろうとは思ってましたね。バランスは確かに大事だけど、BEEFというバンドは音を詰め込むだけ詰め込んでナンボだと思うし。

岡田:だからこそミックスの時のバランスが大変だったんですよ。みんなこぞって音を出したがりますからね。それに、歌もちゃんと出てなきゃいけないし。

──でも、岡田さんの塩っ辛い歌声は埋もれようにもなかなか埋もれない存在感がありますよね。ある意味、BEEFはヴォーカルこそが最強の楽器だと思いますよ。

岡田:まぁ、1曲に対して何テイクも何テイクも唄って、そのいい部分を繋げるやり方をしたんですけどね。エンジニアさんの判断で、1小節につき8テイクは録ったんですよ。だから1テイクに対して何十回も唄って…バカみたいにムチャクチャ唄いましたよ。

奥脇:僕らリズム隊の録りは早かったんですけどね。 神長:ギターは結構重ねて…小節ごとにギターを替えたりとかして。フレーズにそのギターの音が合うかどうかを見極めるために。そういう手間の掛かる作業は嫌いじゃないんですよ。

──そんな話を聞いていると、BEEFの音楽は一見、肉に塩胡椒をまぶして焼いただけのシンプルな料理かと思いきや、意外と手の込んだ下味が付いているんだなと感じますね。

川田:結局色々試してみたけど、最終的には醤油をかけて食べるのが一番美味いなぁ…っていう感じですよね。

岡田:ああ、そういうことだね。

奥脇:最初は手探りであるがゆえにいろんな味付けをしちゃったけど、実はもっとシンプルで良かったのかもね…っていう部分もこのアルバムを作り終えてありますけどね。

──このアルバムが最初のメインディッシュですからね。今後の課題は次作でクリアして頂いて。

奥脇:納得のいく音源なんて、なかなかないと思いますよ。それが作れたら“もういいや”って解散するんじゃないかな(笑)。

川田:何でもありのバンドだから、まだまだやれることは一杯あるし。

──これだけヴァラエティに富んだ楽曲の数々が、ライヴでどう披露されるか楽しみですね。

岡田:どうなのかなぁ…僕らの過去の経歴しか知らない人でも、経歴に興味を持ってCDを聴いてくれた人でも、もしくは初めて観る人でも、ライヴを観るとそれぞれの印象が全然違うでしょうからね。僕自身、その時々のモチベーションに結構左右もされるし。まぁ、自分達の冠ツアーだし、自分達の世界観でライヴをできるから楽しいんじゃないかなとは思いますけど。とりあえず観て感じてもらえればいいんじゃないでしょうか。

奥脇:あと、BEEFだけにツアー先で肉を食いまくって、一番太った人にはツアー終了後にご褒美として叙々苑で焼肉を奢るっていう計画も進行中なので、それも楽しみですね(笑)。


A NEW HOPE

A NEW HOPE

3P3B XQDA-1001 (3P3B-52)
2,300yen (tax in)
8.08 IN STORES
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Live info.

BEEF A NEW HOPE TOUR
9月1日(土)仙台 PARK SQUARE
9月2日(日)水戸 club SONIC
9月8日(土)安城 YUMEKIBOW RADIO CLUB
9月15日(土)名古屋 HUCK FINN
9月17日(祝・月)十三 FANDANGO
9月21日(金)福岡 DRUM SON
9月22日(土)広島 Cave-Be
9月23日(日)岐阜 GOICHI
10月7日(日)下北沢 SHELTER

BEEF OFFICIAL WEB SITE
http://www.beeforchicken.net/

3P3B OFFICIAL WEB SITE
http://www.3p3b.co.jp/

posted by Rooftop at 19:00 | TrackBack(0) | バックナンバー

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