第1期SPORTS活動休止。
RooftopがSPORTSに初めてインタビューをしたのが2005年6月。何て不思議な方なんだろう!(伊藤さんが…) というのが第一印象。それから何度もインタビューをさせていただき、お話をする度に彼らの魅力にはまっていった。だから、その2年後にまさか活動休止になるとは思ってもいないことだった。休止になるという話を聞いたとき、もう一度SPORTSと話がしたいと思った。これまでのSPORTS、残念ながら活動休止を選んだSPORTS、そして彼らの今後。何度もベースのメンバーチェンジを繰り返し、伊藤寛之(Vocal&Guiar)と大石貴義(Drums)の2人となった彼らの激動の5年間を振り返る。
今回は伊藤さんのみのインタビューとなったが、彼らがどれだけSPORTSを愛していたのかを知ることができた。SPORTSは終わるのではなく一時的なお休みに入る。音楽を作っていく者としての活動は終わることはない。これからも、長い旅は続いていくのだろう。(interview:やまだともこ)
1人で続けるならリセットしたかった
──いきなりお聞きしてしまいますけど、なぜ活動休止になってしまったのでしょうか。
伊藤:今年の2月に東京と大阪でワンマンをやって、その後スケジュールが決まっていなかったので、ちょっとライブまで一休みして、これからどうしようか考えようかなっていうところだったんです。そのときに大石君から呼び出されて「地元に帰らなければならなくて、ドラムを続けることができなくなった」と。本人はすごく悩んだみたいです。続けたいけど続けられない状態になったから、「伊藤君がSPORTSを続けたいなら脱退っていう形にする」って言われて。でも、SPORTSを結成して何度かメンバーチェンジを繰り返してきて残ってるのは僕と大石君だけなので、大石君が辞めるって言ったら僕も辞めようと思っていたんです。その日はそのまま家に帰って考えた結果、休止するのが良いんじゃないかと。
──SPORTSは大石さんと2人で作り上げてきたものという意識があったんでしょうか。伊藤さん1人でもSPORTSを続けようとは思わなかったですか?
伊藤:1人でやるんだったらリセットして別でやりたいと思ったので、1人で今あるバンドを続けるというのはどうなのかなって思ったんです。
──活動休止は解散とは違うんですよね?
伊藤:違います。解散したら、またやりたくなったときに再結成しなければならないから。第1期SPORTSが活動休止という感じですね。
──SPORTSとして歩んで来た道はどうでしたか
伊藤:いい経験になったというのが一番です。
──どんなことが勉強になりました?
伊藤:最初は自己満足で音楽活動を始めて、誰に発信するわけでもなく曲を作っていたものが、だんだん環境が出来てきて気づいたらメジャーデビューして、人と人との関係を考えて音楽に接するようになりましたね。
──いろんな人が関わって築き上げるものですからね。では、SPORTSとして幸せだったことは?
伊藤:自分らのことを好きだと言ってくれる人がいたというのが一番じゃないですかね。でも、やっぱり100%自分がやりたいことをやれたかというとそうでもないんです。自分の中で考えすぎた時期もあるし、続けることは難しいと思いながらやっていたときもあるので、活動全部が楽しかったかと言ったらそうでもなかったですね。でも、苦しいこともいろいろあったんですけど、そういうものを全部含んだ上で自分たちが作った曲を好きになってくれて聴いてもらえてるって思えた瞬間が何度もあったんです。新曲を聴いたときの感想だったり、ライブの感想だったり、お客さんや周りの方との何気ない会話だったりするんですけど、そういうのが続ける原動力になってましたね。
──やりたいところが全部できてなかったところもあるというのは?
伊藤:SPORTSというバンドを自分で作っておきながら、結果的にSPORTSという枠の中でもがくことになってしまったんです。それが自分の中でうまいこといかなかったりしたんです。例えば、もっとアバンギャルドなことをしたいとかめちゃめちゃなことをやりたいと思っても、SPORTSっていう枠で考えるとブレーキがかかっちゃうことがあるんです。
──これはSPORTSじゃないかもということ?
伊藤:そうです。聴いてる人からしたら関係ないのかもしれないですけどね。でも宅録してネットにアップするだけだったらそれでいいのかもしれないけど、SPORTSという括りがあって、何かしらのイメージがついていた中で、これがやりたいことなのかって思ったこともありましたよ。そういうもんなんですよね。
──具体的に、どういうことをもっとやっていきたかったんですか?
伊藤:感覚の話になりますけど、自分がやりたかったことってポップスとそうでないものの境界線があるとしたら、そのギリギリのところをいかに曲で表現しているかというのがあったんです。僕はポップスすぎるのもあまり好きではないし、かと言って聴く人にとってわかりづらいものも面白くないと思うんです。それって、自分の中で閉じてる感じがするんです。言葉にできないところなんですけど、その中間のところでいかにギリギリでやるかということを考えていたんですが、結論としてはギリギリでやりすぎたな(笑)。ちょっと糊がはみ出てるぐらいが聴いてる人はわかりやすかったのかな。糊が見えないぐらいギリギリすぎたという気がします。
まだ夢を見続けていたい
──伊藤さんにとってSPORTSとはどんな存在でした? 2002年にバンドが結成され、2004年にメジャーデビュー。20代の半分をバンドに捧げてきたわけじゃないですか。SPORTSというバンドが続けたいと思えるだけのエネルギーを持っていないと、簡単には続けられるものではないと思うんです。
伊藤:夢を見ていたような感じです。今もですけど…。夢を見させてくれるような存在だったし、解散にしなかったというのは、まだ目覚めたくないって言うこと。ずっと夢を見させて欲しいっていうのがあるんです。自分がやってるバンドに冷めちゃったりして解散や脱退になるんですけど、僕らの場合はそうじゃないですからね。まだ熱が持続しているし、本当は続けたいって思うぐらいだから、SPORTSを続けてきたことは間違ってなかったと思いますよ。そうじゃなかったら、とっくに飽きちゃってると思う。
──SPORTSは純粋にできたと。
伊藤:ここからいい話になりますけど(笑)、いい意味でも悪い意味でも大石君と喧嘩をしたことは1回もないんですよ。音楽以外でもそうですね。仲間だったし、気まずい雰囲気もなかったな。
──一緒にいることは多かった?
伊藤:それが売れてるお笑い芸人並に一緒にいなかった(笑)。でも仲が悪いわけじゃない。
──前にインタビューをさせていただいたときに、伊藤さんが曲を作って一番最初のリスナーだと大石さんのことを言われてましたよね。大石さんがダメだと言ったらダメだしって。
伊藤:それにつきますね。
──一番の良き理解者みたいな?
伊藤:そうです。自分の作品を試す実験台みたいな感じでもあるし、それを一緒に作っていける仕事仲間…というと言葉は悪いですけど、一番のファンでいてくれたのはデカイですね。僕もなるべく期待を裏切らないようにしたし、バンドを続けるだけの何かが大石君との間にあったという感じですね。
──実際、『PUZZLE』(2006.11.22)をリリース後にもSPORTSとしての曲を作られていたんですか?
伊藤:作ってますよ。
──その曲が世に出てくる予定は今後ありますか?
伊藤:活動休止が決まった直後に考えたんですけど、自分の曲を出していく場は続けていきたいと思っているので、そのうちまたバンドやろうって思います。
──ソロじゃなくてバンドで?
伊藤:そうですね。
──伊藤さんの曲を聴きたい人っていっぱいいますからね。その人達に対してもいきなり聴けなくなっちゃうのは、大事なものを突然失ったような気持ちになりますからね。
伊藤:自分が一番嫌なんです。自分が作った曲を聴けなくなるのが嫌です。
──自分だけで録って聴きたいわけじゃないですもんね。だったらバンドを作ってステージには立ってないですよね。誰かに聴いてほしいっていうのがありますからね。
伊藤:お弁当みたいなもんですよ。
──それはどういう例えですか?
伊藤:旦那に毎朝お弁当を作っていたんだけど、旦那が定年退職しちゃって作らなくても良くなったのに作り続けちゃうみたいな。…これちょっと違うな(笑)。でも、そういう心境に近い。
──…なんとなく言われていることはわかります。ずっとお聞きしたかったんですが、ベースのメンバーチェンジが何度かあって、実際そのタイミングでバンドを辞めちゃおうかなとは思ったりしました?
伊藤:ありましたね。1人目のベースは今の大石君と僕みたいな関係だったので、辞めるとなったときは僕のほうがダメージが大きかったんです。そのときに励ましてくれて、親密になったのが大石君だったんです。そこで得たパートナーというか、大石君がいるからバンドを続けようって思った。2人目の脱退のときは、大石君の方がすごくショックを受けていたけど、逆に僕が励まして…って、弱いバンドだな(笑)。
──支え合ってね(笑)。
伊藤:お互いで補いながら(笑)。そういう感じで来たんですよ。最後は、「僕たちは2人だから2人のままでいよう」って(笑)。傷つかないように。
──仲の良いカップルのような(笑)。
伊藤:最近再結成したスマッシング・パンプキンズはギターとベースがいないじゃないですか。新しいアルバムも出したんですけど、ビリー・コーガンのコメントとしては「僕らと同じぐらい音楽が好きじゃないと一緒にはやれない」って。まさにそういうことなんですよね。好き加減に温度差があると続かないです。17歳ぐらいから実質バンドを始めてここまでやってきましたが、本当にそう思いますね。そういう意味では大石君とはすごくやりやすかった。
──SPORTSはいい状態だっと。
伊藤:いい状態でやれてましたね。
──その状態で休止になるなんて、もったいないですね。
伊藤:あと自分の曲を演奏できなくなるのは寂しい。
──新しいバンドとして活動する予定とかはもうあるんですか?
伊藤:ありますよ。年内にバンドやろうって思ってます。
──もうメンバーも決定して?
伊藤:いや。何も考えてないけど目標として。
──次にバンドを作るとしたら、今までのSPORTSを引き継いだものをやるんですか? それとも全然違うバンドになるんですか?
伊藤:結果として、SPORTSではない自分が作る曲でしかないと思いますよ。
──SPORTSとは違う感じになると。
伊藤:そうなると思います。自分の中では延長線上でダラダラとやってもな…っていう気持ちがあるので、1回リセットしようかと思うんです。でも別に意図して違うことをやろういうわけではなくて、急にピコピコしたやつとか、おしゃれなやつになると不自然だと思うから気楽にやろう。それで5曲ぐらい作ったので、年内にライブをやれればなって思ってます。
──バンドが嫌いでSPORTSを辞めるわけではないですからね。
伊藤:そうなんですよ。だから気持ちの切り替え方が難しいんですよ。
SPORTSが終わるとは思って欲しくない
──SPORTSとして作られていた未発表曲は、9月9日の渋谷eggmanで行なわれるラストライブでやられたりするんですか?
伊藤:ここでやってもいいかなとは思ってます。
──休止を決めてから決まったライブなんですか?
伊藤:そうです。
──一旦区切りをつけるという意味で?
伊藤:このまま活動休止でライブもやらずに終わるっていうのは、応援してくれたファンの方に失礼というか良くないなと思ったんです。ここは無理してでもやろうって。絶対やったほうがいいっていうことで意見がまとまったんです。
──9月のライブはどんな感じになりそうですか?
伊藤:思い出大会でしょうね(笑)。最終的には楽しくやれればいいかな。でも、今までは過去もあり未来もある感じでやってきたけど、ここで一旦ストップ! 未来を見ない! 過去を振り返るのみ! っていう。どういうライブになるんですかね。見に来る人からしたら、今までライブで演奏してなかった曲もやると思うので、それはそれで喜んでもらえたらいいなって思ってます。なるべく自分たち寄りの選曲にならないようにしようと思ってますよ。
──ところで、これまでのインタビューでずっと言い続けてきた“believe ”の話ですが、今後believe旋風は起こらないんですかね。
伊藤:巻き起こってないですもんね(苦笑)。うーん。それはさっきの話じゃないですけど、20歳ぐらいからSPORTSで夢を見てきたっていう話になるんですけど、自分の体で実現してきたというか、自分の体に染みついているものだと思いますよ。だから敢えて出すことはないかもしれないけど、僕の中から滲み出てきていればいいんじゃないですかね。それと、これは僕の願いですけど、SPORTSは休止になるけど、終わっちゃったとは思わないで欲しいです。9月9日のライブも含め、長い目で見守っていただけたらと思います。
──これまで活動してきた中でたくさんの人と知り合い、今後もいい環境でできていくんじゃないですかね。
伊藤:常に音楽をやっていられる環境というのは助かりましたよ。
──これで終わりっていうことではなくて、今後のバンド活動があるから変わらずにいられるのかもしれないですね。いきなり1人になったらどしようって思いますもんね。
伊藤:就職しようとしてましたもん(笑)。
──8月13日には下北沢シェルターで、伊藤さんが参加しているmayonnaiseのライブもありますし、音楽活動は続きますからね。
伊藤:僕自身は何も変わってないんです。環境は変わるけど、自分は曲を作り続けることは変わらないから、そういう活動も見守っていて欲しいですね。
Live info.
第1期SPORTSラストライブ
9.09(Sun)渋谷eggman
OPEN 18:30 / START 19:00
ADV. 2,000yen / DOOR 2,500yen
問:渋谷eggman 03-3496-1561
チケット販売:eggman店頭、ローソンチケット(Lコード 38559)、CNプレイガイドにて発売中
★ メンバーからファンの皆様へ感謝の気持ちを込めてライブ入場者全員に新録音源を収録したCD-Rをプレゼント致します!
SPORTS OFFICIAL WEB SITE
http://www.marbleweb.net/sports/