ギター バックナンバー

C-999('07年7月号)

C-999

明日があると思うな! 120%で今を生きろ!

C-999の3rd.シングル『心、今を歌え』がリリースされる。「今日、世界が終わりを告げたら」というテーマを掲げた今作は、「明日があると考えずに、今をもっと大切に生きろ!!」とメッセージが込められた超大作。明日地球が終わることはないと誰もが思っているからこそ、全てを明日に延ばしてしまう。もし、本当にその日が来たら、人は最後の日を120%でやりきるだろう。そうやって、1日1日を過ごせたら、もっともっと充実した毎日を送ることができるはず。多くのことを考えさせてくれる、とても素敵な作品に出会うことができた。
今回も遠藤さん&小野田さんへのインタビュー。情熱を秘めた彼らの言葉を受け取って下さい。(interview:やまだともこ)


「今を生きる」ということを歌った『心、今を歌え』

──今回リリースされる『心、今を歌え』ですが、メジャー1st.の『4次元方程式』が自分たちに向けて歌った曲と言われていて、2nd.の『六花の結晶』は外に向かった曲だと思ったんです。今回は「世界がもしも今日で終わりを告げるというなら」と壮大な問題を抱えた曲になっていたんですが、こういう詞って何か壁にぶつからないとなかなか出てこない言葉だと思うんです。このテーマで曲を書こうと思ったのはどんな心境だったんですか?

遠藤(Vo.Gu):『心、今を歌え』は、外にも向けているし自分たちにも向けている曲なんですよ。世界が今日で終わるならどう過ごすだろうというのは、自分でも多々思うことがあったんです。曲を書いていても、モヤモヤしてくる時期があったり、今を大事にしようって思いながらも、明日でいいかと思っちゃうこともある。だから、メンバーにも自分にも世間にも「今この瞬間に全てをやらなきゃもったいないよ!」っていう気持ちを伝えたかったんです。それがきっかけですね。サウンドで言えば、undercover(C-999の前身バンド)でやっていたマイナー調のサウンドで、暗さを持つメロディーを取り入れながら、新しい事を探っていく作業をしました。原点を見失って新しいことをやりすぎると、何のバンドだろうってなっちゃいますからね(笑)。

──なぜ原点に戻ろうと思ったんですか?

小野田(Gu):undercoverの原点に戻るっていう経緯は『4次元方程式』の頃から徐々に出てきてはいたんですよ。今回3枚目にしてバンドの中で固まってきたんです。

──バンドを始めた当初の気持ちに戻ってきてるっていう感じですかね。

遠藤:音は進化してるんですけどね。

──今までは美しいメロディーの曲が多かったんですが、今回は荒々しい疾走感が加わってますよね。

遠藤:美しいメロディーも好きなんですが、もともとグランジとかハードロックをやってたから、荒々しい感じもすごく好きなんです。音楽に対しては1個だけやってると息がつまるんですよ。

──いろいろ試してみている状態なんですね。でも、詞を書いているのは遠藤さんであって、言葉を大切にしてる感じとか、それはどんなにサウンドやメロディーが変化してもC-999の音だなっていう気はしました。

遠藤:それがなかったらやってる意味がないなって思っちゃうから。毎回考えるのはその人らしさ。自分じゃなきゃいけないっていうのを考えながらやってるから、そういうことを言われると嬉しいです!

──そこは一本芯が通ってますよね。ところで、『心、今を歌え』の詞の中に「大きな壁があって 何度もぶつかっているうちに〜」ってあるじゃないですか。壁って誰でもぶつかるもので、次に向かわないと進歩できないんですよね。

遠藤:バンドも同じで、その壁にぶち当たってるときは辛いけど、音楽で言うと壁をぶち破るにはみんなのテンションを上げる曲しかないなって思うんです。そういう曲が生まれた時は、啀み合いの感情が一気に吹っ飛ぶ。

──人はどうやって壁を乗り越えるのがいいと思いますか?

遠藤:俺としては乗り越えなくていいとかではないんですが、目的が未来を見てるからぶつかったって思う。ぶつかった瞬間は先を見ない方がいいんじゃないかと思うんです。今を解決していく。ぶつかった瞬間は先のことは考えずに今を生きる。時が経った時に「越えてる」って気づくことなんだと思うんです。いつまでも先を見ていても壁(目標)が同じ幅でずれていくだけだから。

──自分の理想に近づきたいと思って、失敗したことを壁にぶつかったと考えるんですよね。『心、今を歌え』で言えば、今を精一杯に生きるしかないと。

遠藤:壁にぶつかった瞬間に「明日世界が終わります!」ってニュースが出たら、未来の事を考えようもないから、自分がやりたいことや自分がどう思ってるかに対してもっと素直になれると思う。


「生きる」ということはきれい事ばかりではない。

──今日で世界が終わりを告げたらお二方なら何をすると思います?

遠藤:大切な人に会いたいですね。あと誰も聴いてなくても、1曲は歌いたいな。実際は世界は明日では終わらない。今って、生きていく過程が一番大切だととらわれて、本当に大切なものを見失いがちですよね。音楽も大事だけど世界が終わるって言ったら大切な人に会いたいです。

小野田:僕は、お世話になった人みんなに「ありがとう」を言いに行くと思います。それも世界が今日で終わるからであって、明日があるから今は言えてないんですよね。だから、この曲を聴くと言えるかもしれないって思いますね。そういう意味ですごくいい曲だと思いました。

──切羽詰まった状態じゃないから明日に延ばす。それを考え直させてくれる歌でしたね。『はらり はらはらり』(M-2)は切ない恋愛の曲でしたが…。

遠藤:友達の話で、昔、付き合っている彼女がいたのに心変わりをしてしまったことがあったんです。その話を聞いた時は友達に対してサイテーだと思ったけど、僕も長いこと生きてくると1度ぐらいはそういう経験があったりするわけですよ。本当は歌うべきかどうか悩んだんです。でも「生きる」ということはきれい事ばかりじゃないから。曲の中に出てくる彼女は、彼に好きな人が出来たと気づいていんだけど言わないし責めない。恋愛に限らず自分がサイテーなのにやさしくされると心が痛むことってありますよね。女性の優しさは男の良心に訴えかける。自分がすごく惨めな気持ちになるんですよね。

──タイトルの『はらり はらはらり』にはどんな思いが?

遠藤:涙がはらりと。花びらに使ったりする言葉であるんだけど、涙にかけたいなと。ポロポロでもボロボロでもなく綺麗で、はかない感じ。どうしようもなく散っていく状態。

──タイトルだけ読むと花びらが散ってる感じの短音で聴かせる曲かなって思うんですけど、ガッチリ音が詰まった曲でしたね。

遠藤:原案は小野田の弾き語りで、それを聴いたときに俺の中ですごくインスピレーションが湧いて、付けたり変えたり最初はメロが違うところがけっこうあったんですけど、全体の方向がすぐに決まった曲でした。

小野田:曲を作った時にギターソロのイメージがなんとなく見えていて、そこから広がってきたのでアレンジもスムーズに行ったんですよ。

──ということは、わりと早いペースで出来た曲なんですか?

遠藤:そうですね。

──シングル3曲ではどの曲が一番時間がかかりました?

遠藤:『心、今を歌え』じゃないかな。でも、アレンジも歌詞も決まってレコーディングに入ってから一番時間がかかったのは『落花流水』(M-3)。スロウであんまり詰め込んでもいないから単純なんだけど、渋みがないと演奏ができない。早い曲の方が簡単なんですよ。勢いでなんとかなるから。今回も全曲一発録りなんですが、『落花流水』は録ってみて聴き直したらこれはヤバイでしょーっていうレベルで…(笑)。でも、すごく苦労した分、シビアにリズムや音を考えられるようになれたと思います。

──なぜこういうサウンドの曲を入れてみようと?

遠藤:バランスですね。前の2曲がガッツリ来てるので、最後もガッツリ行くと聴いてて疲れるなって。それで、今ある曲の中からスロウめで一番いいのを選んだんです。詞は自分の感情を書いたんだけど、風景のように表現したかったんです。なので日本文学というか、日本語の良さを詰め込みたいと思ったんです。

──言葉の使い回しが文学的ですよね。

遠藤:もともと理系なので、あまり本も読まなかった分、今はいろんな言葉に敏感なんですよ。

──文学的な事を学びすぎてると逆に何かにとらわれすぎて「この表現は違う」っていう詳しすぎるが故のこだわりが出てきそうですよね。

遠藤:中途半端なのめりこみぐあいが一番いいんです(笑)。C-999が始まった頃から日本語にこだわってるのはなぜかというと、日本語は奥が深くて世界で一番美しい言葉だと言われている。日本人て日本人に自信がないみたいですけど、「淡い」っていう感覚は世界にはあんまりないんだよっていろんな人に伝えたいですね。淡いは下手な取り方するとグレーゾーンになりますけど、淡いを表現できる日本人の良さを出した。今回は淡い感じを“夢”と重ねて書いたんです。夢を風景画のように表現してみようかなっていうところですね。

──夢は叶わない方が良いと思いますか?

遠藤:どうでしょうね。叶った方がいい夢もあるんだろうし、叶わなかった方がいい夢もあるんです。さだまさしさんが言っていた言葉で「死ぬときに“夢”という言葉を“夢”と読めるかどうか。」というのがあるんです。夢を追ったために苦しい思いをした人は“夢”を“嘘”と読む。夢を追いかけて素晴らしい体験や出会いがあった人は“夢”と読める。どうせなら、僕も“夢”って読めるようになっていたいなとは思いますけど、現時点では叶った方がいいのか叶わない方がいいのかはわからない。

──バンドでステージに立つっていうのはいつかの夢だったわけで、それは叶ってるじゃないですか。でも、夢が叶っても壁にぶち当たるから淡いだけではない。

遠藤:僕らもあります。人前で歌って全国でCDが売っている状況だけど苦労もある。

──さらに向こうの夢を見ますからね。

遠藤:それでいいんでしょうね。

──じゃなきゃ進めないですからね。だから、「明日じゃなくて今日がんばれ」という『心、今を歌え』に戻るわけですね。

遠藤:(笑)うまいこと戻しましたね。

──うまく戻りました(笑)。


最後の晩餐は白米!?

──今回、ジャケが和風で以前に比べるとイメージがだいぶ変わりましたよね。

遠藤:はい。“今”を表現したんです。花びらを手で表しているんですが、ポイントによって人が違うんです。真ん中は赤ちゃんの手、その周りは俺の手があったり、もっと年上の方の手があったり、それぞれの“今”っていうことを表現しているんです。『心、今を歌え』の習字の文字は小野田の字なんです。

小野田:書道をやったことがあるのは僕だけなので。うまくはないんですけどね。

──でもその方が心に訴えかけることが多いですからね。じゃあ、『心、今を歌え』にかけて世界が今日で終わったら、最後の晩餐は何にしますか?

遠藤:僕だったら、エビとステーキとエンガワですね。

──小野田さんは?

小野田:白い米と、卵、納豆、おみそ汁。

──それって“最後の晩餐”じゃなくて“いつもの朝ご飯”ですよね?

小野田:いやいや違うんです(苦笑)。

遠藤:彼の家は健康にうるさくて、白米に玄米とか麦とか混ぜてあって、僕らにとってはうらやましい食事でも、毎日それだから普通の真っ白いご飯が食べたいんだよね。

小野田:麦が入ってない普通のを食べたい(笑)。あと、キュウリの丸かじり。

──なるほど(笑)。では最後にRooftop読者に一言お願いします。

遠藤:曲を聴いて「今を生きてね」っていうことですね。

小野田:今頑張っていることを後でこうすればよかったってことがないように。うちらも完璧な人間ではないので、瞬間瞬間一緒に頑張っていきましょう。


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posted by Rooftop at 14:00 | TrackBack(0) | バックナンバー

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