ギター バックナンバー

BAREBONES('07年6月号)

BAREBONES

轟音の中にある優しいメロディと歌。
今、感じるべき新しい日本語ロック/R&Rシーンの夜明け──

6年振りとなる新作『BACK IN YOUR BLACK』をリリースしたBAREBONES。長きに渡ってヘヴィ・ロック/R&Rシーンの中心に立ってきた彼らが放つ音は変わらぬ爆音の中にも進化が見え隠れする、言うなれば快作という言葉が似合う1枚だ。このアルバムをきっかけに益々日本のロック・シーンを掻き回し、世界へ飛び立つ存在となり得るべき彼らを代表して、中心人物でもあるヴォーカル/ベースの後藤達也に話を訊いた。(interview:植村孝幸)


英語から日本語への転換は、従来のスタイルからの脱却

──今回6年振りの新作となるんですが、この間新作を出さなかった理由は何かあったんですか?

後藤:特にこれという理由はないんだけど、自分達の生活の中で曲を作るっていう意識が薄かったのと、今回から日本語で唄うことにして、その着地点がなかなか見つけきれなかった。実は試行錯誤して2年前にプリプロまで行ったんだけど、ドラムの怪我があったり、作品的には詰めが甘いと感じたのもあって、無理には完成にまで至らせなかったんだ。それで、そこからもう1回練り直して出来上がったのが今作って感じだね。

──その2年前に出来上がってたプリプロと今回の作品では、内容は異なるんですか?

後藤:何曲かは被ってるけど、そこからノリとかアレンジとかも変えて。今回のは今、現在のBAREBONESっていうパッケージだね。

──今回の新作を聴かせて貰って、詞が日本語になったのもあるかもしれないんですが、前作より更に歌とメロディを大事にしてるなと感じたんですよね。

後藤:多分、歌詞の内容とかは変わってないんで、日本語にしたことによってそれだけ英語より入ってくるんじゃないかな。そういう単純な理由と、割とはっきりと唄ってるからそれだけ耳には残るんじゃないかな。

──今回、英詞から日本詞に変えた大きな理由は?

後藤:最初にBAREBONESを始める時にベース/ヴォーカルとなったので意識がベースとヴォーカルの2つに集中していて、その時は日本語の詞に対してそんなに強調したくないなと思ったのと、英語のリズムを優先したかったので英語にしたんだよね。

──でも、元々作詞自体は日本語で書かれていて、その後英訳していたとお聞きしたんですが。

後藤:そうだね。それで英語で唄ってて、やっぱり意味があまり伝わってないだろうなって感じて。なんか表面上しか伝わってない、そういう部分ばかり出てるなと感じたので、日本語にしたのかな。

──タイトルの『BACK IN YOUR BLACK』、具体的にどういったイメージで付けたんですか?

後藤:簡単に言っちゃうと“原点に戻れ”って意味で、今回の1曲目に入ってる「BACK IN YOUR BLACK」って曲を作ったんだよね。だけどアルバム・タイトルだけで見たら“黒に戻れ”って意味がわかんない。そういうのもいいなと思って。そこで何? って思ってもらえたらいい。人それぞれの解釈があっていいし、人それぞれの『BACK IN YOUR BLACK』があればいいなって。

──前作のタイトル『GROUND』の時も、“何とでも取れていろんな含みのある、それでいてシンプルなもの”ということで付けられたとお聞きしましたが。

後藤:そうだね。タイトルっていうのはそんなに深い意味もなく、抽象的な言葉がいいなって思ってるんだ。

──では今回も、先に1曲目の「BACK IN YOUR BLACK」という曲を作って、タイトルを決める時にたまたまいいかなと思って付けた感じですか?

後藤:そうだね、リード曲でもあるしね。

──今回、11曲収録のうち2曲インスト曲が含まれています。今作もアナログが同時発売されるということで、それにもインスト曲が真ん中と最後に入っていますが、これはA面、B面の意味合いも含む感じなんでしょうか?

後藤:まずインストを入れたのは、今回アルバムを作るに当たって1枚通して聴けるものを作ろうっていうのが念頭にあって。その中の構成で、ここで箸休め的にインストを入れて一度リセットして次に行くという感じで考えたかな。まぁ、A面、B面って要素も少なからずあるけどね。

──では、今回は曲順にはかなりこだわったわけですね。

後藤:そうだね。まず最初に曲順を決めて、そこから録音の仕方や音の肌触りとかを変えて飽きないようにしていった感じだね。

──今回、音的に従来の轟音とか爆音とかBAREBONESのイメージも残しつつ、絞るところは絞ってシンプルになった…言うなれば進化したロックだと感じたのですが。

後藤:3曲目の「バベルの塔」なんかは、元々レーベルのコンピレーション盤『TRIP IN HARDCORE』に入れてる曲だから、ちょっと違うタッチでアコギをフィーチャーしてやろう、飽きさせないようにいろんなアレンジの仕方でやっていこうっていうのもあって作った。

──8曲目の「BLOOM」なんかも、この流れの中で異色ですよね。

後藤:「BLOOM」はわざと、敢えて狙った。今回のヴォーカルは、シャウトばかりだと一本調子になるからそれを解消するためにメロディを付けてみたり、アルバムを飽きさせないように聴かすということを考えていたので、「BLOOM」はその極端な例。ちょっとここいらで変化球を投げてみようかなって。実は、この曲は最後に録ったんだよね。全曲作って、最後に並べた上で何かが物足りない…そう感じたから付け足した。


第4、第5のメンバーと言うべきサウンド・メイキングの職人達

──今作は、プロデューサーにBorisのAtsuoさんを迎えていますね。レコーディングでどういったアドバイスを貰ったりしたんですか?

後藤:トータル的なプロデュースで客観的に俺達のことを捉えていて、レコーディングの仕方とかもよく知っているから、いじくって遊んで貰ったという感じで。

──では、作った音を聴かせてアドバイスを貰ったという感じなんですね。

後藤:そうだね。主に録音に関して。アイデアはAtsuoのほうからも持ってきてくれたりして。例えば細かい点で言えばギターの種類やヘッドを変えたり、ドラムセットを変更したりとかして、“こんなに音が変わるんだ”ってところまで助言してくれたね。

──その辺りは事細かくアドバイスを?

後藤:今回エンジニアを担当してくれたピースミュージックの中村(宗一郎)さんとAtsuoとみんなで、音色にはこだわりながら相談しつつ…。

──1曲につき何テイクも録った感じですか?

後藤:うん。録ったし、ミックス自体も1曲に対して何パターンもやったし。それで最後に曲を並べた時に、その中で一番しっくりくるものを選んだ。

──この流れに対してはこのミックスとか?

後藤:そう。そこはもの凄くこだわった。

──では例えば、『BACK IN YOUR BLACK』も実はミックス違いで何パターンもの音が出来ているんですね。

後藤:うん、細かく言うとね。音色とかミックス違いでね。

──同時リリースされるLPは収録曲に違いがありますよね。先程、曲順にはこだわったとお話しされていましたが、この収録曲を変えた点で曲順の流れに何か変化はなかったんですか?

後藤:CDに入ってる「BLOOM」とLPに収録されてる「SILENT」という曲は、どちらも俺達にしては珍しく6〜7分くらいある長尺の曲なんだ。今回の曲順の流れで長尺は2曲も要らないからどっちかをボツろうってことになってたんだけど、録るだけ録っていたんだよ。それで、アナログも出すことが決まって“じゃ、差し替えよう”ってなったのかな。

──曲順を意識した上でこの2曲を差し替えたことで、流れの中で何か違和感があったりはしなかったんですか?

後藤:それはそんなにないかな。曲のテンポとかも似てるし。「SILENT」って曲は『SPACE TRIBE』(ASSFORTが毎年8月に行っているイヴェント)のために作った曲なんだよ。あのイヴェントを意識して作ったんだ。

──そういえば、後藤さんはもともとギターも弾かれていましたよね?

後藤:うん、ちょこっと弾けるくらい(笑)。

──普段、曲はギターで作っているんですか?

後藤:ギターで作ったり、ベースで作ったり…リフから作ってるから曲によって違うかな。

──それをスタジオに持って行って、みんなでやりながら重ねる感じ?

後藤:そうだね。回してって良ければ採用、って感じで。

──パートは各々メンバーに任せるという感じなんですか?

後藤:うん、お任せで。それで好きにやって貰ってうまくハマれば採用って感じで、あまり深追いしない程度に。

──今回はネタ的にはかなり持って行ったんですか?

後藤:忘れちゃったけど、多分ね。

──ボツになったものでも、新しく違う曲の展開を考える時に採用したりとかは?

後藤:ああ、そういうのもある。ごくたまにだけど。合体させてみたりとかね。

──レコーディングにはどれくらい費やしたんですか?

後藤:オケだけは集中して録って、被せものは時間があったらちょこちょこやる感じで。

──じゃあ、メンバー個別に入ったりとかも?

後藤:基本的には3人でやったけど、被せるのは別々にやった。今回はプロデューサーという人間がいたし、軸がぶれずにしっかりしてるから、個別にやっても何の違和感もなかったね。そういった意味で、Atsuoだったり中村さんがいることで安心できたね。

──実際、それだけのミックス作業もやられたということは、相当時間が掛かったんじゃないですか?

後藤:う〜ん、他がどうだかわかんないけど、前作よりは時間を掛けたかな。特にミックスには時間を掛けたね、いろいろ試しながらやったからさ。録りもそうなんだけど、音色を遊んでみたりとか実験してみたりとか、いっぱいあるからね。だから、比率的には時間を掛けたんじゃないかな?

──それだけのものをライヴで再現するのは大変なんじゃないですか?

後藤:いや、そんなに大幅には変わってないと思う。

──やれる限りの最低限のことしかやっていないと?

後藤:うん。やれることしかやっていないし、そう違和感もないんじゃないかな? やっぱりライヴはレコーディングと違うし、視覚もあるし、空間もあるからね。




ライヴ感を保ちつつ、あくまで音色と遊び心にこだわったレコーディング

──前作から今作までの間に多数のコンピレーション盤に参加されましたけど、それによって何か得たことや学んだことはありますか?

後藤:変わったと言えばホント、今回のレコーディングからかな。前はただライヴをパッケージするという感じのレコーディング・スタイルだったんだけど、今回のはアルバムにするためにちゃんとレコーディングした感じだったから。そこは大きな違いだよね。

──では、今回はどちらかと言うと“アルバムを作ろう”って意識が強かったんですね。

後藤:そう。前作まではあくまでライヴの延長線上的なアルバムの作り方で、曲を作って録って曲順を決めたりしたっていうパッケージだった。でも今回は、先に曲順を決めて、その後に録って全体の流れを気にした上で固めていくというやり方を採った。その結果、ライヴではすでにやったりしてる曲もあるけど、ライヴで再現できなくてもいいや、くらいの感覚で曲を作ったりまとめたりしたのもあるし。

──その上、音に対するこだわりもかなりあって。

後藤:こだわりもあるし、遊びの感覚みたいなものもある。レコーディングでヘッドを変えたら音の肌触りが変わるとか、遊びの要素を入れたのが大きな違いだね。

──何よりもまず自分達自身がレコーディングを楽しむ、大きく言えば音を作る、音楽を楽しむという感覚が大きかったんですね。

後藤:うん。でもそれはレコーディングの途中から判ってきたかな。

──最初はそんなに意識していなかった?

後藤:うん。いろいろやるうちに面白さが判ってきた。それはAtsuoが頭の中で最初に組み立てて、それに沿って進行していって…最初はわかんなかったんだけど、段々と途中から形になってきた時点で“レコーディングって面白いな”って思った。

──今回は本当にAtsuoさんと中村さんの存在が大きかったわけですね。

後藤:うん、そうだね。

──この2人がいなければ、今まで通りと言うと語弊を生むかもしれないけど、一辺倒な音作りしかできなかった、もしくはまた違ったアルバムになっていたかもしれないですね。

後藤:かもしれないし、それはやってみないと判らないけどね。

──そうなると、またプリプロの段階で詰まってしまったのかもしれないですね。

後藤:かもしれない。それはそれでまた違う発見もあるかもしれないし。

──そうですよね、最終的に結果論でしかないですしね。

後藤:うん。

──2年前のプリプロの段階では、Atsuoさんにプロデュースを頼むことはなかったんですか?

後藤:前作『GROUND』をリリースした後に「次、アルバム作る時はやらせて」ってずっと言われてたんだけど、まぁAtsuoもいろいろと忙しいだろうし、俺達があまり乗り気じゃなかったんだよね。そんな人にいじくってもらう程の音作りもしていなかったし、プロデューサーの重要性もそんなに感じられなかったから。

──でも、お話をお伺いする限り結果として良かったのでは?

後藤:うん、良かったと思う。第三者の客観的な意見を聞くところでね。俺達は最小の人数でこれだけ長くやってるから意外と意見がぶつからなくていいんだけど、逆に言ったら意見の頭数も少ない。だから、外部の人間が入ったほうが新しい血が入るって感じで程良い刺激になったんだよ。

──言うなれば第4、第5のメンバー的な存在だったと?

後藤:うん、そうだね。昔っから俺達をよく知ってるし、お互いに言うことも判ってるし、的確なアドバイスもくれるからね。

──今後また作品を出す時には頼みたいと?

後藤:その時にならなきゃわかんないけど、またやりたいとは思った。それはAtsuoかもしれないし、また違った人にやって貰うのがいいのかもしれないし。それでまたどう変わるかなってところではね。

──相当レコーディングが楽しかったんだなと窺える話が見え隠れしますね。

後藤:うん、レコーディングという作業が面白く感じた。どう構築されていくのかっていうのがよく判ったよ。


ライヴ・バンドとしてのこだわりとジャンルの壁を突き崩す轟音ロック

──ただ、BAREBONESは生粋のライヴ・バンドだと思うので、レコーディング作業の構築に没頭すると何か違和感が生じるようなことは感じられませんでしたか?

後藤:いや、口で言うとちょっと頭でっかちな感じに聞こえるかもしれないけど、レコーディング自体はロックな感じで進行していったからこじんまり感は全然なかったよ。もちろんライヴとは違うけど、全く違和感はなかった。

──レコーディングとライヴの違いはあれど、ライヴ・バンドとしてのアルバムの要素は少なからず残せたと?

後藤:うん。間違いなく今の俺達のベストではあると思う。

──日本詞にしたことによって判りやすくなった部分が多々あると思うんですが、後藤さんとしてはどういった人達にこのアルバムを聴いて欲しいですか?

後藤:やっぱり、基本的には人前でやってるんだから誰にでも聴いて欲しいって気持ちはあるし、ただこういうスタイルだから聴く人は限られてるかもしれないしね。

──そういった意味では、もっといろんなバンドと対バンしたら面白いのかもしれないですね。

後藤:先日のロフト('07/05/11)は面白かったね。DMBQや54-71は昔から知っていたけど、なかなか一緒にやる機会がなかったし。今年の頭にも『independent-D』に出たけど、面白かったですよ。言うなれば音楽をやってる以上、同じ土俵にいるので、そこでやる以上は絶対に負けられないしね。

──本作のリリース・パーティが新宿ロフトでBorisとMAD3という盟友を迎えてありますが。

後藤:最近はずっとBorisやMAD3とは一緒にやってなかったからね。今やると面白いかなって。

──今回のアルバムは敢えてそういうふうにしたのかもしれないけど、とてもカラフルで、メンバー自身が楽しんでいるのがよく伝わって来る作品だと思うので、今からリリース・パーティがとても楽しみですね。

後藤:元々音楽にジャンルなんてあってないようなものだと思うんだけど、どんな人でも聴ける、楽しめる曲を揃えたつもりだよ。全部引っ括めた感じでロックの美味しいところをまとめたつもりだし、俺達としては偏って作ったつもりもないので、間違いなく楽しんで貰えるはずだと思ってる。


BACK IN YOUR BLACK BACK IN YOUR BLACK

BACK IN YOUR BLACK

TRIPPIN' ELEPHANT RECORDS
CD(左):TERNG-076 2,625yen (tax in)
LP(右):TERNG-077 3,150yen (tax in) *初回限定プレス・シリアルナンバー入り
IN STORES NOW
★amazonで購入する

Live info.

“BACK IN YOUR BLACK”RELEASE PARTY
7月18日(水)新宿LOFT
w/ Boris / MAD3
OPEN 18:00 / START 19:00
TICKETS: advance-2,800yen (+1DRINK) / door-3,000yen (+1DRINK)
【info.】LOFT:03-5272-0382

MACHINE ANIMAL Presents“HIGHEST ANIMAL STONED MACHINE”
6月16日(土)初台WALL
w/ MACHINE ANIMAL / TERROR SQUAD / MACRO CHORD / ANODE
OPEN 18:00 / START 18:30
TICKETS: advance-1,300yen (+1DRINK) / door-1,500yen (+1DRINK)
【info.】WALL:03-5351-6241

BAREBONES OFFICIAL WEB SITE
http://www.barebones.jp/

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