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toddle / Dawn Praise the World
www-002 2,100yen (tax in) / 6.08 IN STORES
希望と絶望が交錯する日々のなか、すべてを讃えるように世界を照らす朝の光のような音楽
何よりもまず、1曲目の『Colonnade』のイントロにおける爪弾かれるギターとたゆやかなドラムの一音を聴いただけで、本作が紛うことなき会心の作であることを確信する。パサパサに渇ききった心の深淵にジワジワと水が染み込んでくるかの如きそんな導入部の後に各パートが有機的に絡み合い、瑞々しく透明感に溢れた田渕ひさ子のイノセントな歌声が聴こえてきた瞬間、とてつもない叙情性とロマンチシズムが発色する。そして、聴く者の脳内風景をただちに夕暮れのオレンジに染めるのだ。その息を呑むほど美しくも憂いを湛えた旋律は、抑えようにもどうにも溢れ出してしまう衝動の刹那に駆られているかのようだ。
そう、このtoddleのセカンド・アルバム『Dawn Praise the World』に収録された全10曲はどれも涙腺を緩ませること必至の哀切メロディで彩られており、際限まで余分なものを削ぎ落としたシンプルで力強く情感に訴えかけるプレイと相俟って、徹頭徹尾“泣ける”作品に仕上がっている。前作『I dedicate D chord』(2005年9月発表)同様、プロデューサーの吉村秀樹(bloodthirsty butchers)とエンジニアの植木清志が第5、第6のメンバーさながらに曲の持つ雰囲気や個々のフレーズの重要性を汲み取り具現化したことも大きなポイントだろう。その結果、田渕と小林愛のギターとヴォーカルは浮遊感を漂わせながら水彩画のように淡く柔らかく、ボトムを支える江崎典利のベースと安岡秀樹(本作完成と同時に惜しくも脱退)のドラムはよりタイトに、奔放なまでの躍動感を漲らせている。
とにかく必要以上に旋律で泣かせる本作、感受性を激しく揺さぶる大傑作であると僕は手放しで断言したい。エモーショナルなどという安直な言葉では到底言い表すことのできない、この得も言われぬ切なさと儚さと黄昏感──これはもう実際に聴いて頂くほかない。2002年12月の結成以来、その名の通り赤子の如く“よちよち歩き”で前進してきたtoddleが、足下をおぼつかせながらも辿り着いた自我の確立と成長の轍を確かに感じ取れるはずである。絶え間ない日々の絶望という泥濘に足を取られながらも、「憎しみとか後悔は土に返して」、「悲しみとか寂しさは川に流して」(「Gulp It Down」)、漆黒の長い夜を煌びやかな曙光に変える勇気と明日への希望を彼らは遂に見いだした。
希望を信じるチカラがあれば、このとりとめのない不条理な世界を僕たちは乗り越えることができる。そんな足を一歩前へ踏み出す瞬間、窓を開けてしぼりたての朝の光を全身に浴びる時の音楽として、この『Dawn Praise the World』はいつまでもそっと寄り添ってくれる妙なるアルバムなのだ。
Rooftop編集長:椎名宗之
asphalt frustration / UNDO,PRAY
POSCD-007 2,100yen / IN STORES NOW
美しいものは美しい。しかしそんな単純な事でも明確に「これが美しいものだ」と表現すると言うことはそう簡単な事ではない。それが美しいと感じてるのは僕だけかもしれないし、もっと言えば他の人はそれを不細工だと思っているかもしれない。だけど今回ばかりはそうでは無いと確信出来た。このCDを手にしした時、何よりも先に“美しい”と言う言葉が浮かんだ。しかも聴けば聴くほどにその味がどんどんと体内へ染み込んでく。「なんだろうこの感じ」なんだか不思議な気持ちになる。さっきも言ったように、それが一般大衆にとって美しいとは限らない。だけども、それがみんなにとって美しいものになるとはっきりと言える自信があった。だから不思議だ。事実、僕はこのCD1枚に心を揺さぶられている訳ですし…。
新宿LOFT:HxGxK
音速ライン / 恋うた
初回盤UPCH-89006/通常盤UPCH-80024 1,000yen(tax in) / 6.06 IN STORES
今年の音速ラインは、まるでデビュー時の様な勢いで、私達に素敵な名曲達をコンスタントに聴かせてくれる。そんな勢いで届けられたシングル『恋うた』は、音速ラインの武器とも言える“泣き”の轟音ギターに、うねりまくるベースラインが印象的な切ないラブソング。この夏盛り上がり必至のライブナンバー間違いなし。だって、この曲を聴いて思いとどまっていた名古屋公演に足を運ぶ事に決めましたから! しかも仕事を休んで(苦笑)。C/Wは小泉今日子の『木枯らしに吹かれて』がアンプラグド・ヴァージョンで収録されている。これがカバーされる事によって更に胸にキュンとくる仕上がりとなっているんです。また3曲目『雨待ち』は初回盤のみの収録楽曲。音速ライン結成当初にメンバーが手焼きし、ファンの子に配っていたというレアトラック。「どうせアルバムに入るだろう!」という安易な考えはお止めくださいね(笑)。
それにしても、このシングルでもう7枚目になるんだね…。時間が過ぎるのは早いなぁ。私は彼らの曲全てに思い入れがあるから、余計に感慨深いものがあります。
SONG-CRUX:樋口寛子
かげぼうし / アンダンテ
TEKU-006 1,800yen(tax in) / 6.06 IN STORES
「アジカン+くるり+イースタンユース」のエモーショナルロックバンドとありがちな情報と共に“かげぼうし”の自主音源が僕の元へとやって来たのはかなり前のこと。あぁ、またこの手のバンドね…と思った僕、そしてこれを読んでるアナタ!全く間違えています。何々っぽいなんてそんな陳腐な表現なんか強く蹴り飛ばし、僕の心をドキッとさせた「かげぼうし」! 本当に美味しいものを食べたとき「ウマイ!」としか口にできないそんな感じ。本当に美味しいとき「このソースとマヨネーズが絶妙にからみ合い、そしてこの新鮮な〜が…」なんて説明を人はするのだろうか?多分答えはノー。それをまだ食べていないアナタにどうやって伝えるのか? かげぼうしのかげぼうしたるカッコ良さを伝えるにはただただ音を聴いてもらうほか無いのです。もうひとまわり成長したかげぼうしの1stアルバム『アンダンテ』は必ずアナタの胸を熱く切ない気持ちでいっぱいにするはず。たくさんの人たちがかげぼうしの歌に触れてくれることを祈るばかりです! きっとお腹がすいてるアナタを満足させますよ!
高島正明
kuh / KY!
CHRS-017 2,500yen (tax in) / 6.20 IN STORES
Popcatcher解散から約5年。メロディ・メイカー、クボタマサヒコ(現BEAT CRUSADERSのBASS)が遂に動き始めた。僕はこの作品を待っていたんだ。クボタマサヒコを中心にPopcatcher解散後に結成。数年の間は水面下で活動し続け、V.A.に参加したりLIVEをしたり。そして遂にこの度念願の初単独作品『KY!』がリリースされる。クボタ氏独特の脱力感満載のメロディ・ライン。昔誰もが味わったことがあるんじゃないか? と思わせるようなどこか懐かしい世界観、聴けば聴く程味がでてくるハイクオリティ&ハイセンスな楽曲。あらゆるジャンルを飲み込んだkuhの音楽こそが、究極のPOP MUSICなんだ。エンジニアにはMINO氏(現toe / ex.Popcatcher)を起用しているあたりもファンには涙ものだ。
UcavaRecs / www.motherbicycle.com:kenny
小池徹平 / pieces
初回盤UMCK-9184 3,000yen(tax in)/通常盤UMCK-1231 2,800yen(tax in) / 6.27 IN STORES
小池徹平くんが、初のソロのアルバムをリリースするんですって! タイトルは『pieces』。
今回、徹平くんしか歌っていないこのアルバムを聴いて、徹平くんの声ってこんなにきれいでかわいかったんだと改めて気付きました。高音で歌っているところでは、テレビで歌うときに見せる、少しはにかみながらも一生懸命に歌うあの顔が盤の向こうに見えてきます。
世間一般的にはやっぱりタレント的な要素の強い彼ですが、ほとんどの作詞・作曲を手掛けていて、恋愛だったり、未来だったり、夢だったりを歌う等身大の21歳という詞が多数。さすがに自分と重ね合わせてみても無理があるし、♪わかーる わかるよ 君の気持ち〜♪(『君に贈る歌』より)なんて言われても、いや、わからないでしょ! って思う。30歳を目前にした女子の気持ちなんか、20歳そこそこのイケメン男子にわかってたまるか(笑)。…ホントはわかってほしいけど…。もし20歳前後の時に、こんなにも甘くやさしいこと言われていたら確実に恋に落ちていたなって思う。
かわいいし、甘いし、満点だな、満点! 全曲、徹平くんが溢れんばかりに入ってます。キュンキュンします。どんな癒しCDよりも癒されます。聴きやすいし、タレントCDだと思って甘くみたら損します。
ジュリエットやまだ
golf / ROMANCE
CRYN-008 1,260yen(tax in)/ 6.06 IN STORES
2006年11月に発売された『YELLOW』から約6ヶ月。早くも届けられた新作『ROMANCE』はそのタイトルが表すように、日常の中の一瞬のキラメキや青春の叙情性を感じるポップな1枚です。前作同様にギターポップの枠に収まらないほどのロック、フォーク、打ち込み、まさかのラップとあらゆるジャンルをまるっと器用に繊細に使いこなし、関根くんの語りかけるような純真な歌声と右田さんのガーリッシュでキューティなウィスパーヴォイスがふわっと心地よいのです。2曲目の「恋人たちのシーン」は以前よりライブで披露されてた曲で、いまのgolfのすべてが詰まっていると言っても過言じゃない、今後の代表曲になるであろう珠玉のナンバー。曽我部恵一さんや□□□(クチロロ)やHARCOさんなどが好きな方にはさらっとハマる一枚だと思います。僕らの夏はもうすぐだ。新しい恋の準備をしなくちゃ。『ROMANCE』を聴いてるとそんな気分になります。
ロフトプラスワン:白井絢介
ZWEISTEIN(ツヴァイシュタイン)/ TRIP-FLIP OUT-MEDITATION
CTCD-583-585 9,000yen(tax in) / NOW IN STORES
ロック史の地層には、まだまだ驚くべき財宝が眠っているのだということを証明するような盤がキャプテントリップレコーズの手により発掘された。1970年に発売された、ジャーマンロック史上最もカルトと呼ばれた幻の3枚組『TRIP-FLIP OUT-MEDITATION』だ。ZWEISTEIN(二人のアインシュタイン)と名乗る謎の美人姉妹によるこの作品は、当時のアヴァンギャルド、サイケデリックの洗礼を全身に受けたミュージック・コンクレートで、現代から見れば音響派の元祖ともいうべき存在といえる。その正体は、なんとドイツのアイドル歌手(スザンヌ・ドゥーシェ)とその妹だというからジャーマンロックの奥深さ恐るべし! というほかない。さらに驚くのが、その懲りに凝ったジャケット。シルバーとゴールドの鏡面印刷に彩られた豪華8面ジャケットは、サンタナの『ロータス』をも思わせるアートワークで、今回の再発ではもちろんそれが忠実に再現されている。ちなみに付属の両面鏡を使って中央ページを覗くと不思議な特殊効果が……。1970年当時のサイケデリックな空気を吸いたい人は是非とも手にとってもらいたい特殊CDだ。
加藤梅造
NAHT / In The Beta City
STD-01 2,835yen(tax in) / 6.22 IN STORES
なんと6年ぶりのアルバム。その間のNAHTは活動休止やメンバー脱退があり、活動を再開してからは以前の曲をあまり演奏しなくなり、ほとんど違うバンドの様になったのですが、今は音楽の方向性とサウンドも凄く合致してきたカンジで、停止以前よりも良くなったように思えます。そして今回のアルバムですが、6年前の2ndアルバムと比べてみると(って言うのもヘンな感じなくらい)アツさはそのままに、良い意味で「軽くなった」と思います。音数が多く、いろいろなアイデアがこれでもかと詰め込まれていた以前のアルバムはそれはそれで良かったし、何度も何度も聴きましたが、聴く為にステレオの前で正座して聴くような…聴く側も意気込みの要るアルバムでした、今回は、リズム楽器に重点を置いたカンジでシンプルであり、少し隙間を感じさせる作りで、そこに妙が感じられ、何度も連続でリピートして聴ける作品だと思います。実際もうかなり聴いてます。ホントはもっと書きたい所ですが、来月は表紙と巻頭特集を予定しているとの事なので、それをお楽しみに。
LOFT RECORDS/TIGER HOLE:オオサワシンタロウ
papas milk / 三月
FECD-0078 1,200yen(tax in) / 6.13 IN STORES
※タワーレコード&ハイラインレコーズ限定販売
バンドを結成してから今に至るまでの活動期間は、1・2年の話ではないんですが、今年に入りようやく戦闘モードに入ったpapas milk(パパミルクと読みます)。3月に『あさのひかり』、6月には2nd.シングル『三月』とコンスタントにリリース。前作が『あさのひかり』という長い道程を経てスタート地点に到着した彼らだとしたら、今作はちゃんと地に足を付けて歩きだした感じのする楽曲。もともと、ボーカル・杉田さんの歌声に魅了されて聴くようになったんですが、今回も力強く、時に浮遊感を醸し出すあのボーカルは健在。のびがあって、フワッとしていて、三月に吹く春風のように心地よい。そして何より、詞がちゃんと聴こえるのがいい。サウンドだけ聴くと、たくさんの音が重なり合い、4人で出してるとは思えないほど音に厚みがあって、難しいことをやっているようにも思えますが、ここにはっきりと聴こえる日本語が重なることによって、聴き手を選ばない(良い意味で)大衆音楽として成り立っているのではないかと思います。 こんなに長い間、地上に出てこないで活動をしていたなんてもったいないと思ってましたが、ここから反撃をしてくるのではと思っています。素敵なウタをたくさん届けてくれるはず。今年からの活動が楽しみでなりません。
Rooftop:やまだともこ
HALF LIFE / “SITH”…EARLY TIMES COMPLETE!!
KOCCD-007 2600yen(tax in) / IN STORES NOW
国内パンク&ハードコア・バンドには、大御所も含め、仙台出身者が意外と多い。それは仙台という地が、先鋭的かつ精力的なバンドを数多く生み出してきたことの証明である。そしてHALF LIFEは、層の厚い仙台シーンの中でも、人気&実力においてシーンを代表するバンドの1つであった。メタリックかつドラマティックなメロディーを持つ重厚な爆音は、歯切れよいリズムと相まって非常に痛快。また、骨太かつパワフル極まるヴォーカリスト、INAZUMAの声も比類なき魅力を放つ。90年結成。数回のメンバーチェンジを経て、2000年にRISE AND FALLに改名し、現在も活動中。そのHALF LIFEの、90年から95年近辺までの初期音源を、一挙まとめた大容量2枚組のアルバムが本作。シングルやスプリット、VA参加曲はもとより、デモや未発表曲などのお蔵出しも惜しみ無く投入した、全24曲/95分の完全コンプリート作品である。今聴いても全く色褪せない楽曲の異様に高いクオリティーにのけぞり、かつまた全体を通じて驚くほどよい音質に気骨を感じる。通して聴けばひたすら圧巻。95分がアッという間に駆け抜ける傑作。
中込智子
the pillows / Wake up! Wake up! Wake up!
AVCD-23282 3,000yen(tax in) / IN STORES NOW
待ってた! 待ってた! 待ってた! 昨年の「MY FOOT」ツアーから、ライブの場では少しずつ披露されてきた新曲たち、いったいリリースはいつ? と待っていたファンの前に、ついに届けられたザ・ピロウズのニューアルバム。「僕の事 引き受けてくれよ ずっと」(『プロポーズ』)だとか、「神様よりキミを信じる」(『スケアクロウ』)だとか、今のピロウズは本当に頼もしくて、心強い。10年前、彼らの歌と自分の疎外感を重ね合わせて聴いていた女の子は、それでも自分らしくしかいられなかった彼らが、「ロック・ミュージック」という宝物を−他の誰でもなく自分自身にとってなによりも大切な宝物を−手にする姿を、今、目の当たりにしている。だから、いつまでも、なによりも、ザ・ピロウズは特別なんだな。
レコード会社の移籍を経て、1年以上ぶりにリリースされたニューアルバム、タイトルにちなんでやっぱり三唱しましょう。 待ってた!待ってた!待ってた!
Naked LOFT:こだま