ギター レギュラーコラム

ZOOMYの眼('07年6月号)

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憧れの小遊三師匠と落語をめぐる大放談!
〜祝・にゅうおいらんず『10周年記念ライブ』DVD発売!の巻〜



巻頭インタビューに続いて三遊亭小遊三師匠との対談をお届け!
落語とロックの境界線を繋ぐのは粋でいなせな心意気! それ即ちR&Eの真髄なり!
この対談をきっかけに、にゅうおいらんずと怒髪天の夢の共演も遂に実現か──!?


噺は八分目のところで終わらせるのが粋

巻頭インタビューからの続き

増子:俺は一時期バンドをやめて、3年間働いてたことがあるんですよ。穴あき包丁の実演販売をやったりしていたんですけど、一度本気で落語家になろうと思ったことがあるんです。でも、弟子入りするのも大変だろうなぁ…なんて考えてるうちに、またバンドを再開しちゃったんですけどね(笑)。

小遊三:いやぁ、バンドは一人でやってるんじゃないからねぇ。こりゃあ大変なことだと思いますよ、ましてや増子さんはリーダーとしてまとめ役をやらなきゃいけないわけだから。

増子:でも、メンバーがいると楽なんですよ。ちょっとテンションが下がることがあっても、他のメンバーとフォローし合える相互作用がバンドにはありますから。それに比べると噺家さんはたった一人なわけだし、もし体調が悪くなったりしたら替えが利かないし、大変ですよね。

小遊三:まぁ、自分と気が合わなくなったら病院へ行くしかしょうがないよねぇ(笑)。やっぱりそりゃあ、何人かでやるほうがパワーが出るのは何事も間違いないことでね。でも、それはそのぶん苦労も多いと思うんだよね。

増子:確かに、個々人が引かなきゃいけない部分もありますからね。

小遊三:その点、噺家は一人一人のパワーは小さいかもしれないけど、気楽だよね。でも、噺家なんて誰にでもなれますよ。そんな向き、不向きもヘチマもないですよ。言ってみりゃあ、職工さんみたいなものだからね。同じ所にスパーン、スパーンとグラインダーを掛けられるようになればイイのと同じですよ。毎日、毎日高座に上がって、偉大な先人達がその時代、その時代にやり続けてきた古典落語を「こうやったらウケるよ」って教わって、それを自分でやってみてスパーンと笑わせられなきゃしょうがないでしょう?

増子:平たく聞いたら確かに仰る通りなんですけど、実際にやってみると難しいものですよね。真打の噺家さんは枕の部分を聞いただけでも“上手いなぁ…”と感服するし、看板になってる人はもう噺の始めから違いますからね。時事ネタを採り入れるのも凄く自然ですし。

小遊三:いやぁ、時事ネタを採り入れるのは逆に増子さんのほうがお上手でしょう。昇太みたいに新作落語をやる人は毎朝新聞を読んだりなんかして色々と考えてるんでしょうけど、僕らよりもライヴをやってる人のほうが上手いんじゃないですかねぇ。

増子:でも、シリアスな曲の前のMCで笑わせるわけにもいかないですからね(笑)。ただ、俺は基本的に人を笑わせることが凄く好きなんですよ。

小遊三:お客さんがドカーンと笑うと気持ちイイですよね。あれは何とも言えない快感ですからねぇ…。

増子:そんな性分なので、「MCが長すぎる!」ってスタッフに怒られたこともあるんです。ワンマンのライヴで2時間半超えちゃって、その内の1時間は俺が喋り倒してたみたいで(笑)。だけどホント、落語はちゃんと勉強したいと思ってるんですよ。特に古典落語は凄く好きなんですよね、とにかく面白いから。同じネタでも噺家さんによって終わり方が全然違うじゃないですか。志ん生師匠の噺を聞いてると、“ここで終わっちゃうの!?”って唐突に終わるのもありますよね(笑)。

小遊三:あるある。そういうのは単純に時間がなかったり、“お客さんがドカーンと笑ったからもうこの辺でイイや”ってんで終わらせたりもするんですよ。例えばね、噺の終わりのほうでドカーンとウケて、サゲ(オチのこと)があとこれっぱかり残ってると。しかも、そのサゲが余り面白くないと。それをわざわざ最後までやっちゃう人がいるんです。そういう時は、ドカーンとウケた時点でサーッと下りてくりゃあ粋なもんなんですよ。ドカーンと来たらもうちょっと話したくなって、ちょいとオツなところを聞かせようなんて思っちゃダメなんです。“もうちょっと聞きたいな…”って思う八分目のところでサッと終わらせることができりゃあ、お客さんに“ああ、面白かったなぁ…”って思わせることができるんです。

増子:なるほど、その引き際が肝心なんですね。ラジオ演芸とかの音源を聴くと、まさにそんな感じですよね。突然サクッと終わっちゃいますから。

小遊三:昔のラジオは生でしたからねぇ。「生で13分半でお願いします」なんてお願いされてやってるので、サゲまで行かずに途中で終わっちゃってるのもあるでしょうね。あとは、間の部分をスッポリ抜いてサゲに繋げることもありますね。短くするのは長くするよりも楽ですよ。長くするにはゆっくり喋んなきゃいけない(笑)。

増子:俺がやってた穴あき包丁の実演販売も、口上を師匠から聞いて教わるんです。でも、教わったそのままをやると師匠に怒られるんですよ。そこで自分なりにアレンジしなくちゃいけないんですけど、ヘンにアレンジしすぎるとまた怒られるんです。じゃあどうすりゃイイの!? っていう(笑)。古典落語もそれに近いのかなと思うんですよね。

小遊三:うん、そうですよ。「そっくりそのままやったら影法師でダメだから、自分で工夫しなさいよ」って弟子に言うんだけど、これが面白いもんでね、たいてい師匠の悪いところを真似ちゃうもんなんですよ。だから稽古してあげるのは、稽古するほうも勉強になるんです。“そこ、おかしいぜ”なんて思っても、よくよく考えると自分がそういう話し方をしてるんですね。だから、師匠の良くないところをスーッと避けていくようなヤツは伸びてくね。


師匠はかなりの“ロック顔”ですよ!

増子:古典落語をやる噺家さんというのは、例えるならば腕のイイ料理人だと思うんですよね。人参とか大根とか、大昔からある素材を同じように与えられても、旨い料理を作る人もいれば、不味い料理を作る人もいる。その先人が作った旨い料理をさらにアレンジして美味しく食べさせてくれるのが、この現代に古典落語をやる噺家さんじゃないかな、と。俺達にしてみれば、カヴァー曲をやるなり、トリビュート・アルバムに参加するのと一緒ですよね。与えられたお題を頂いて、参加するバンドでそれぞれカヴァーをした時にどれだけ自分達の色を出せるかというね。それは“大喜利”にも近いかな。あと、落語とロックの共通点を敢えて挙げるならば、どちらも堪能するならやっぱり生=ライヴが一番ってところですよね。

小遊三:それはもう絶対そうですよ。間違いないでしょう。落語をやってる空間なんてバカバカしいもんだけど、ロックのライヴだってお客さんみんなで手を挙げて踊ったりして、バカバカしいもんでしょう?(笑)

増子:仰る通りです(笑)。それを伝えるべく頑張ってるんですけどね。ライヴでお客さんに自分の感情を投げかける時の大きなポイントは“顔”じゃないかと思うんです。“顔面ロック”っていうか、俺も毎回凄まじい形相をしてますからねぇ…。今思えば、自分が好きだった昔の芸人や俳優は、普段会ったら怖そうな顔をしてましたもんね。その意味で、師匠も相当イイお顔をされてると思うんですよ(笑)。昔、『笑点』の“大喜利”で師匠が悪人面イジリされてたのは最高でしたからね。だから、師匠のお顔もかなりの“ロック顔”だと俺は思うんですけどね(笑)。

小遊三:ははは。“大喜利”のキャラクター作りっていうのは、なかなか難しいもんなんですよ。楽ちゃん(三遊亭楽太郎)の“腹黒”なんて、いいの見っけたなぁと思ってね(笑)。あいつは普段から人の粗探しが実に上手いんだけど(笑)、それは世話焼きで細かいところまでよく気が付くからなんですよ。

増子:“大喜利”は是非一度経験してみたいんですよねぇ…って、なんでバンドマンがそんなこと考えなくちゃいけないんだって話ですけど(笑)。最近は、正式に司会になった(桂)歌丸師匠の間合いが絶妙ですよね。

小遊三:うん、あの人は天才ですよ。やっぱり腹ン中に“大喜利”が入って身体に染み込んでるんでしょうね。41年間やってんだからね。(三遊亭)圓楽師匠から司会が変わっても何の違和感もなかったから、そりゃあ見事なもんですよ。

増子:ここ最近は落語がブームだから、“大喜利”をきっかけに落語に興味を持つ若い人がもっと増えたらイイなと思いますよね。二度は笑えない行き当たりばったりの一発芸がテレビで流行ってますけど、落語は完成度の高い芸ですから。

小遊三:そうですねぇ。『エンタの神様』なんかに出てくる3人組やコンビの掛け合いを見ると、ありゃ凄い稽古量だね。あれはよっぽど稽古しなけりゃ、2、3分の短い時間であれだけの動きはとてもできないですよ。

増子:演劇に近いですよね。

小遊三:そうそう。噺家みたいなイイ加減さがまったくないよね(笑)。だから、噺家がテレビに出てもインパクトが弱くなっちゃう。芸の完成度は高いかもしれないけど、2、3分で勝負しろって言われても噺家はダメだねぇ。まぁ、テレビの世界は一発芸じゃないと見てくれない昨今だから、しょうがないよねぇ。

増子:いや、落語もロックもライヴにこそ真髄アリですよ! 今回、こうして師匠と対談をさせて頂く機会も得たことですし、今後にゅうおいらんずと怒髪天が同じステージに立てればイイなと思うんですけど…。

小遊三:いやぁ…イイんですかねぇ?(笑) 何しろ、僕らも要領がわかんないしねぇ…。

増子:いやいや、ツルッと来てサラッとやって頂ければ(笑)。俺達のお客さんは落語好きも多いし、凄く喜びますよ! キッズ達に目にものを見せてやって下さい! …ってまぁ、俺達のお客さんも実はそんなにキッズじゃないんですけどね(笑)。今日はお話を伺えてホントに嬉しかったです。これからもずっとずっと俺達を笑わせて下さい! ありがとうございました!



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怒髪天 information

◇ニュー・シングル『酒燃料爆進曲』(TECI-119/1,200円・税込)、7月4日発売!

『酒爆』の再録を筆頭に、ライヴ定番化間違いナシの新曲「ヘベレ・ケレレ・ヨー」、萩原健一のカヴァー「ぐでんぐでん」、そして「ビール・オア・ダイ」の別ヴァージョンを収録したアルコール血中濃度120%の“酒”EP!(発売はテイチクエンタテインメント/インペリアルレコードより)
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◇増子直純:番組MC
音楽情報番組『音流〜On Ryu〜』(テレビ東京のみ・毎週金曜27:15〜27:45)のMCを担当!

Live info.

◇トーキョーブラッサム Vol.21
7月13日(金)渋谷CLUB QUATTRO vs/ ガガガSP

◇“デリバリーブラッサム”関東アタック
7月31日(火)HEAVEN'S ROCK宇都宮VJ-2 vs/ フラワーカンパニーズ
8月1日(水)HEAVEN'S ROCK熊谷VJ-1 vs/ フラワーカンパニーズ
8月8日(水)横浜FAD vs/ ギターウルフ
8月10日(金)千葉LOOK vs/ Natural Punch Drunker
8月11日(土)高崎CLUB FLEEZ vs/ Oi SKALL MATES
8月12日(日)HEAVEN'S ROCKさいたま新都心VJ-3 vs/Oi SKALL MATES

◇『BEAT CRUSADERS tour“EPop MAKING SENSE 2007”』tour GUEST
6月14日(木)広島CLUB QUATTRO
7月18日(水)青森QUARTER
7月19日(木)郡山Hip Shot Japan

◇CUE MUSIC JAM-BOREE in ゆうばり
6月30日(土)北海道夕張市・マウントレースイスキー場
出演:GLAY / STARDUST REVUE / カーネーション / 樋口了一 / 太陽族 / and more...

◇ROCKIN' ON PRESENTS“ROCK IN JAPAN FESTIVAL.2007”
8月3日(金)国営ひたち海浜公園

◇熊本城築城400年祭 DoCoMo DCMX presents FMK LIVE CASTLE 2007
8月5日(日)熊本城 奉行丸特設ステージ ※雨天決行
出演:Buzz72+ / STANCE PUNKS / FUZZY CONTROL / キャプテンストライダム / and more...

怒髪天 OFFICIAL WEB SITE

http://www.dohatsuten.jp/

posted by Rooftop at 07:00 | TrackBack(0) | レギュラーコラム

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