ギター バックナンバー

CD REVIEW part-1('07年5月号)

LOFT PROJECTのスタッフがイチオシのCD・DVDを紹介!!
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★以下のジャケットをクリックすると、各レビューが読めます。

bloodthirsty butchers / ギタリストを殺さないで
enot-39101 2,940yen (tax in) / 5.16 IN STORES

2007年11月、bloodthirsty butchersは晴れて成人となる。1987年11月に札幌でバンドが結成されてから、今年で目出度く20周年の節目を迎えるのだ。
吉村秀樹(vo, g)、射守矢雄(b)、小松正宏(ds)から成る3ピース・バンドとして活動して16年。そして、元NUMBER GIRLの田渕ひさ子(g)が加入して不動のサンカクから無敵のシカクとなって早4年以上の歳月が経つ。
成人とは、一人前という意味である。成人となったブッチャーズがまず成し遂げたことは、プライヴェート・レーベル“391tone”〈サン・キュー・イチ・トーン〉を立ち上げ、通算11作目となるオリジナル・アルバム『ギタリストを殺さないで』を完成させたことだった。これは、20年掛けてようやく一人前になった彼らが踏み出した大きな“イッポ”である。
本作には、これまで彼ら発表してきたアルバムのエッセンスがすべて詰まっている。『i'm standing nowhere』や『LUKEWARM WIND』の荒削りな激情も、『kocorono』の叙情性も、『yamane』の大胆ながら緻密な部分も、『荒野ニオケルbloodthirsty butchers』の巨木のようなブッとさもすべて。基本的には『birdy』や『banging the drum』といった4人編成以降のアルバムの延長線上にある音像だが、収録曲全10曲の完成度の高さは言うに及ばず、まず何よりもその尋常ならざる瑞々しさに舌を巻く。
耳をつんざく凄まじい音圧や迸る轟音の洪水というブッチャーズのトレードマークは不変ながらも、いつになく音の輪郭がくっきりと際立っているのは特筆すべき点である。植木清志という若きエンジニアの才と、植木の能力を見抜き引き伸ばしたプロデューサー・吉村秀樹の慧眼が功を奏したと言えるだろう。
聴きどころはすべてだが、特に『story』『理由』『イッポ』と続く最後の3曲の流れは圧巻。特に吉村の地声に近い形で唄われる『story』は、間違いなくブッチャーズ史上五指に入る涙腺直撃の大名曲である。『理由』のアンサンブルでは、アルバム・タイトルに違わず吉村と田渕のギターは奔放で躍動感に溢れ、その轟音を支える射守矢のベースは第三のギターとばかりにコードとメロディを弾き倒し、重低音を咆哮する小松のベードラは骨の髄にまで鼓響。そして21年目に突入するバンドの決意表明とも受け止められる「イッポ」はシンプルでとてつもなく力強く、ブッチャーズの新たな代表曲と呼ぶに相応しいナンバーだ。
bloodthirsty butchersという不世出のバンドのこうした豊饒かつ高濃度な音楽を享受するたびに、僕は彼らと同時代に生まれた幸福をひしひしと感じるのである。


Rooftop編集長:椎名宗之


アンダーグラフ / また帰るから/ピース・アンテナ
FLCF-7134 1,050yen(tax in) / 5.02 IN STORES

すごくひさびさのリリースが気がします、アンダーグラフのニューシングル『また帰るから/ピース・アンテナ』。この曲は、昨年11月(しかも私の誕生日でした)にC.C.Lemonホールで行われたライブ時に初披露された曲。故郷を離れた人の気持ち、大切な人を送り出す気持ちを歌ったということで、アンダーグラフのやさしさがいっぱい詰まっていて、あたたかくて、心にスッと入ってくる曲でした。私も上京し、最初の数年は不安と疑問が入り交じり、ひとりぼっちの寂しさ故に「地元に戻ろうかな」と口癖のように言ってました。でも、今はたまに地元に帰って友達と近況報告し合ったり、家族と団欒の時間を過ごし、「またすぐに帰ってくるよ」と言って、こちらにいる自分を待っていてくれる人たちの元へ戻る。そんな日をもう何年も過ごしています。この曲では、違う土地へ出てきたばかりの孤独感をアンダーグラフの曲がフワッと包んでくれ、地元で心配をしている家族や友達に向ける“大丈夫”というメッセージが織り込まれ、一番キツかった当時の記憶がよみがえるとともに、あの時の自分に聴かせたらまた違った気持ちで毎日過ごせていたのかも…なんて思ったりします。また彼らから名曲が誕生しました。
そして、今回は両A面なのでもう1曲『ピース・アンテナ』。こちらは、初めに再生ボタンを押したときに、これはアンダーグラフ? と思ったほど、『また帰るから』とは雰囲気が全く違う曲。勢いがあって、サウンド的には『アナログcpu』を初めて聴いた時に感じた「こういう音も出すんだ! 」ていう衝撃に似ていました。今回はホーンが加わり、詞の内容も今までの真戸原さんにはなかった表現方法になっているような気がします。以前よりも変化したアンダーグラフに触れることができる1枚。私は早くこの作品をライブで聴きたいです。


Rooftop:やまだともこ


DANIEL JOHNSTON / 悪魔とダニエル・ジョンストン
KIBF-458 4,935yen(tax in) / IN STORES NOW

ダニエル・ジョンストンと言われても実際分からない人のほうが多いと思う。自分も実は数年前までちゃんと知らなかった。その昔、デート中に渋谷の露店で例のカエルジャケTが売られていた。「スゴーイ! ホシーイ! なんで売ってんの、こんなの?」とはしゃぐダニー好きな彼女に合わせるように「凄いね。なんで売ってるんだろうね。」と知らないながら話を合わせていた記憶がある(結局買わなかった)。その後カート(ニルヴァーナ)が着ているのを見かけ「あ、あの変なカエルだ」と気になっていたが、絵描きさんだと思っていて歌を聴いたのはもっと後だった。とにかく「深い」し、やたらと「広がる」あの歌の秘密がこのDVDには記録されていた。もちろんダニエルを知ってる人も、最近いいバンド(音楽)がないな、なんて言ってる人も、これから音楽を始める人も、それこそ絵描きでもカメラマンでも見れるタイミングでいいから絶対見たほうがいい。
芸術は自由。好きな人の歌を20数年間歌えばいいし、ヒーローになりたかったら絵で書けばいい。うまいへたは二の次だ。ダニエル・ジョンストンは苦悩の中、自由をエンジョイしている素晴らしいアーティストだとDVDで確認出来るだろう。
PS:特典映像でダニエルが20年以上ぶりに会ったローリーとのハグとキスは他人ながら凄く嬉しかった。


下北沢シェルター店長:西村等


ECD / PRIVATE LESSON1
1,050yen(tax in) / IN STORES NOW

ECD自主制作盤、残念ながら大手CDショップでは見たことはありません(オススメしといて申し訳ないです)。買ったのは某円盤という店に足を運んだからです。特に新譜というわけでもないのですが 、学校では教えてくれない事が満載で、ぜーったい若い人、特に酒好きな人にオススメです。渋すぎミックス! このCDはタイトル通りで、二十歳前後の私が交わることのない世界がそこにはありました。かなり語り率が高いのですが、蝉の鳴き声〜語り入ってサマータイム(三上寛ver)に入るとこなんて、しびれちゃいますね、うむ。これ以上話すとネタバレしますので是非買ってください 安いんで。


新宿LOFT:kissは目にして


植木遊人 / ハート無防備
1,500yen(tax in) / ライブ会場限定販売

2006年のダブルオー・テレサ解散から約1年。精力的なライブツアーに勤しんでいた“歌う学園ドラマ”植木遊人がついにアルバムを完成させた。ダブルオー時代から定評の甘くも苦い青春賛歌を、ほぼ全ての楽器を自身で演奏したというアグレッシヴなサウンドに乗せて運ぶ全7曲。XTCのようなコード感をGS風ガレージサウンドに乗せた『I LOVE YOUがきこえない』(M-1)、ヒップホップとは別次元の韻を踏む青春ビートロック『アーチ』(M-2)、ダブルオー・テレサ解散から現在までの彼の心情を垣間見れる『ハート無防備』(M-5)など植木遊人が歩んできたこの1年間を全て封じこめた大傑作である。  常に人間は「日常」というネガティブなものに囲まれて生活している分、ネガティビティを発信したり共有することはさほど難しいことではない。だから自分自身が理解ができないポジティビティを持つものに嫉妬をし、攻撃することでしか自分のアイデンティティを保つことが出来ないでいる。植木遊人が発信し共有しようとするポジティビティは、その認識の上に成り立つものであるからこそ信じてみようと思う。もう僕らは安易な共感を必要とはしない…それは「今」を生き抜く強さ(ポジティビティ)を植木遊人から受け取ったからだ。


横山マサアキ


ウエンツ瑛士 / 小池徹平 / Awaking Emotion 8/5 / my brand new way
UMCK-5168 1,000yen(tax in) / IN STORES NOW

ウエンツくんと徹平くんのソロシングル第2弾。第1弾では徹平くんをフィーチャーしたので、第2弾はウエンツくんをフィーチャーします。
今回のウエンツくんの曲『Awaking Emotion 8/5』は、ウエンツくんが主役の映画『ゲゲゲの鬼太郎』の主題歌ということもあってか、今まで持っていた彼へのイメージがガラリと変わった感じ。WaTで熱唱しながら見せた天使のようなあのホンワカした笑顔、ソロシングル第1弾でガチャピン・ムックと歌っていた『ラッキーでハッピー』のようなかわいらしいイメージは一切なく、ドラムが鳴り響き、エレキギターが美しいメロディーを奏で、何かがキュインキュイン鳴り、ロックを基本とした男臭〜いサウンドに仕上がっています。
最近は、下着のCMに出演し、美しいボディーラインを披露したり(腹筋がちゃんとあってビックリした)“男の魅力”を感じさせてますが、私は年下の男の子に“男”を感じたい気持ちは全くなくて(完全に私感ですね…)、ジャケの様に男前のウエンツくんも良いけど、かわいい“エンジェル・ウエンツ”がいいなぁとこの曲を聴きながら考えてました。カップリングには徹平くんの『my brand new way』が挿入されていて、徹平くんらしいハニーでスウィートキュートな歌と詩を聴かせてくれます。たぶん女の子にモテるのは徹平くんの曲ですが(これも完全に私感です)、やっぱり私はウエンツくんのほうが好きなのです。ちなみに映画『ゲゲゲの鬼太郎』は現在、全国で上映中です。


ジュリエットやまだ


8-eit / Immorality
rbr-002 1,000yen(tax in / IN STORES NOW

4月8日に8-eitの2st Maxi『Immorality』が発売されました! 今回は、Vo.tsubakiさんよりコメントを頂きましたぁ〜!「今回も1stに続きセルフプロデュース、ミックスまで自分達でやりましたよ。タイトルの『Immorality』は…屈折した感じの愛の歌が多いのでそうしました。後付けです。だいぶ偏った歌詞です(笑)かなりエロく渋く仕上がってると思うので…是非聴いてみてください! エロ渋です(笑)』もう聴いた方もいると思いますが、8-eitのライブの雰囲気を感じさせる曲達だな、と思いました。まさに“エロ渋”です! 大人な雰囲気を醸し出す曲調に音色にメロディー、やっぱり格好良いです!!! そして、他にもお楽しみが隠されてました! 1st Maxi『In the other side』と2nd Maxi『Immorality』のCDをジャケットを上にして並べてみて下さい。こんな工夫を凝らしていたとは…「ヤラレタ〜」って感じです☆


新宿LOFT副店長:河西香織


オトナモード / 空への近道
VICB-60024 1,800yen(tax in) / 5.23 IN STORES

先日、Shibuya DUOで彼らのライブを初めて拝見した。以前から見たい! 見たい! と思っていながら、中々拝見する機会がなく、念願叶いようやくと。
初見の私に衝撃が走り、もうちょっと長く見たいとさえ思った。ライブはライブとしての良さがちゃんあって、いい歌があって、ただそれだけの事なのに、ステージ上で放つ彼らの存在感、オーラがとても眩しく感じた。
若い世代が放つポップスが同世代の指示だけではなく、世代を超えた所で届けばいいのにって本当思う。ライブではけして拳を挙げたり、モッシュがあったりはしないけど、そんな行為に匹敵する位の熱いものが胸にこみ上げてくる。それは彼らが紡ぎだす言葉やメロディには、人肌に負けない位の温度があるからなんだろうなぁと思う。早朝や夜中に一人ひっそりと聞いていたい、私にとってそんな1枚。


SONG-CRUX:樋口寛子


吉川晃司 / TARZAN
初回限定盤:TKCA-73160 3,600yen (tax in) / IN STORES NOW
通常盤:TKCA-73165 3,000yen (tax in) / IN STORES NOW

昨年7月に発表したシングル『サバンナの夜』に端を発した、プリミティヴなダンス・ビートを強く前面に押し出したサウンドの方向性がひとつの結実を見た感のある吉川晃司渾身の作。武器も持たず素手だけで敵と戦うターザンの在り方にかねてから強い魅力を感じていた彼が、ターザンという架空のヒーローを人間が本来在るべき姿の象徴的存在と捉え、「金や権力は人間の価値を計る物差しでは決してない」と力強く訴えかけるタイトル曲のメッセージ性に僕はまず感銘を受けた。どれだけ時代と逆行しようとも、どれだけ滑稽だと嘲笑われようとも、愛や義理人情といった人間が絶対に欠いてはならぬものを守り続けたいと唄う彼の歌声はどこまでも丸腰の無防備で、どこまでも頑なに一本気で、だからこそどこまでも気高く美しい。そうした不撓不屈の反骨精神が通底してはいるが、このアルバムはあくまで純然たるエンタテインメント作品として理屈抜きに楽しめるものだ。先行シングル曲『ベイビージェーン』が温かい春の麗らかさを醸し出していたように、全体を通じてその表情は明るく柔和な笑みを湛えており、聴く者を無条件に鼓舞させる楽曲が彩り豊かに数多く収録されている。いわゆるJ-POPなるものにアンチを貫く本誌の読者にこそ聴いて欲しい作品だ。仲の良い寄り合い所帯で馴れ合いのライヴを繰り返す自称パンク・バンド達よりも、芸能の世界とストリートに根差したロックの狭間を激しく行き来しながらこれだけの娯楽作品を世に問うている吉川晃司のほうが、僕には余程パンクの精神性を感じるのである。


Rooftop編集長:椎名宗之


COALTAR OF THE DEEPERS / TORTOISE e.p
IDCA-1031 1,575(tax in) / 5.23 IN STORES

日本が誇る轟音ロックバンド「COALTAR OF THE DEEPERS」の約5年ぶりのアルバムが7月にリリースされるが、その先行EPとなるのが今回紹介する『TORTOISE EP』(亀EP?)だ。前作『PENGUIN EP』から数えても3年ぶりで、まさに待ちに待った作品。いやが上にも期待が高まる。いざ中身は……って、これがすごい傑作でした! 1曲目は叩きつけるギターリフに重たいリズムが重なったかと思ったら、気がつくとドローンな空間に天使の囁きが聞こえ、そして再び喧噪の世界へ。これぞDEEPERSの黄金律とも言える作品。2曲目はエスニックパーカッションが最後まで疾走するヘヴィテクノナンバー。21世紀の移民の歌。3曲目は80's 産業ロックを換骨奪胎したDEEPERS風MTVロック? レトロなシンセ音が耳に残ります。そして4曲目は本作の白眉とも言える壮大なシューゲイザーサウンド。静寂と轟音の彼方に鳴るピアノの音色があまりにも美しく、歌詞の内容とも相まって、聞いているだけでなぜか悲しくなってくる。この世界にはまるとしばらくは抜け出せないだろう。これはもうアルバムが待ち遠しい! 待ちきれない人は5/30のワンマンライブ(渋谷QUATTRO)へ行くしかない。


加藤梅造


DJ 急行 / MONSTER OF CEREMONY
GABDLTD002 1,890yen(tax in)

「オールザッツバカ映像」「ジャンクの花園」「プラスワン大合コン」etcの司会としてお馴染みのミスタープラスワンことDJ 急行。DJを名乗っているのに、そのプレイを見たことないよという貴兄に朗報です。  ハードコアシーンでは異例のセールスを記録した前作からなんと4年間の沈黙を破り、新作のリミックスCDが遂に登場です! BPM180をぶっちぎるガバのアゲハゲの世界!! パーティーアンセム盛り沢山の全19トラックノンストップ!! 高円寺のオシャレキッズのマストアイテムが誕生しました。深夜のベルギービールのおともにも最適! まずは貴兄の耳でお確かめください。


ロフトプラスワン店長:宇空


TOTALFAT / Hello & Goodnight
CKCS-2001 1,365yen(tax in) / IN STORES NOW

今年1月にGUNS Nユ ROSESやらMOTLEY CRUE、VAN HALENといった“ド”ハードロックなヤツらの曲をカバー収録したアルバム『Hard Rock Reviver』が発売されたばかりですが、これはオリジナル作品。このバンド、ここ2年くらいスクリーモだとかメタル、ハードロックっぽいニュアンスを取り入れたアプローチが多く見られましたが、今回は“原点回帰”の超ド真ん中メディックパンク満載な仕上がり。ただ、これまでチャレンジしてきた上記のアプローチをしっかり昇華した上での“原点回帰”ってのがポイント。しかも、近作からツインボーカルになったらしく、今まではコーラスがメインだったJoseがほぼメインボーカル並みに歌ってるところも見逃せない。ただのメロコアにさせないアレンジ力、そのアレンジを具現化する高い演奏能力、普遍的でちょっぴり哀愁漂うグッドメロ+ハモ…メロコアキッズには“参考書”とも言える仕上がりだ。7月にはレコ発ツアーのファイナルがLOFTで開催される予定。


LOFT PROJECT:東Johnny健太郎


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posted by Rooftop at 07:30 | TrackBack(0) | バックナンバー

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