ギター バックナンバー

オーノキヨフミ('07年5月号)

オーノキヨフミ

『ラディカル』発売記念スペシャル対談

兼ねてから交流のある両者が「ラディカル」を通して、ミュージシャン/オーノキヨフミ、漫画家/よしもとよしとも氏とのコラボレートが実現した。異色の様で異色じゃない、まさに出会うべくして出会った二人が作品に対して熱く語っています。(text:樋口寛子)


1曲目の『おはようマイライフ』が非常に良い曲で感動したんです。(よしもとよしとも氏)

──まずはお互いの出会いのきっかけから聞かせてください。 よしもとよしとも( 以下 よしもと) 当時「sakusaku」を見ていまして、「なんか面白い奴がいるなぁ〜」と。しかも、なかなか曲もいいぜとなり…。 オーノキヨフミ(以下オーノ) よしともさんが「sakusaku」を見てくれていた時期と、CM監督である奥さんが、CMに出演してくれる人を探している時期が偶然重なって。今からちょうど2年位前になるのかな? 当時、サポートギターをしてくれていた木暮さんと共に出演したんですよ。CM出演したのをきっかけに、よしともさんもライブに来てくれて、お会いしたんですよね。ご飯を食べたりしているうちに、よしともさんの漫画『青い車』を読むようになり、その時によしともさんのイラストが良い絵だなぁ〜と思って、『TVガール』のデモバージョンをmF247サイトの配信するタイミングに合わせてTシャツを作る時に、初めてコラボレートしたんですよ。

よしもと:あの時は少年の絵だよね。

オーノ:遊び心のある面白い絵だなぁと思いました。初めて見た時グッときたんですよ。自分の為に描いてくれているという感動と、作品自体への感動。いい感じに抜けた所がある所とか。よしともさんの絵でいいのは、捻りだけで終わらすのではなく、絵がポップなんですよね。パッと見は爽やかなんだけど、ディティールが捻っていたりだとか。

よしもと:曲を聴いて、勝手に自分で話を作ってしまうんですよ。そこから入っていったイラストなんです。ところで、僕は『TVガール』の時に少年の絵を描いたけど、曲の主人公は女の子なんですよね?

オーノ:あれはね、女の子としていないんですよ。サビに印象的なフレーズを探している時に女子が出てきたので、TVを見ているアイコンとしてだけなんですよ。ただ響きとして『TVボーイ』よりもポップ感があるのかなぁと。女の人としてとってくれたんですね。

よしもと:クラスメイトや、近所に住んでいる子みたいに考えていました。

オーノ:『TVガール』のTシャツの仕上がりを見た時に、アルバムをリリースする時も是非よしともさんにジャケットのデザインをお願いしよう!っていうのがありまして。めでたく『ラディカル』で叶ったんですよ。


「日常」は僕のデビュー当時からのテーマでもあるんです。日常の中にいながら非日常を味わうという。(オーノキヨフミ氏)

よしもと:1曲目の『おはようマイライフ』が非常に良い曲で感動しましたよ。音源を聴く前はしゃがみ込んでいる様な感じでいこうかなぁと思っていたんですけど、作品を聴いてみたら、走っているかジャンプしている感じのほうが良いかなと思ったんです。最初は駅の改札を飛び越えていく若いサラリーマンが思い浮かんだんですけど、改札を書くのが面倒だなぁと思って、もっと純粋なジャンプにしようと(笑)。

オーノ:日常の中にいるサラリーマンなんですね。

よしもと:でも、ジャンプをイメージしたものの、どこに着地するの? というがあって、次の絵が出来て連鎖的に出来上がりました。

オーノ:日常の中で、ダラダラと繋がっていくのが僕は苦手で、朝起きる度に新しい気分になったり、今日からチャレンジしたいものを見つけたり、そうゆう人生の方がいいと思うんです。決して、日常からドロップアウトしようとした訳じゃないから、よしともさんが受けてくれた改札を飛び出す感じだとか、日常のままの飛び出しという所は結構言わずとも合致した所はあったんですね。

よしもと:日常というのが絶対にあるなぁと思ったんですよ。

オーノ:「日常」は僕のデビュー当時からのテーマでもあるんです。日常の中にいながら非日常を味わうという。僕自身、昨年インドへ旅に行ったりしたのも、インドに住みたい訳ではなくて、毎日の繰り返しの中に1回非日常を取り入れたかったんです。それを曲から感じて頂けたなら、書きがいありますね。

よしもと:言葉使いとか凄い好きですよ。


僕の小学生時代に近いイラストだった。(オーノキヨフミ氏)

オーノ:ジャンプしたサラリーマンがジャケットの表1になる予定だったんだけど、実際になったのは違いますよね。その辺りを話していきましょうか?

よしもと:小学生の男の子とたぬきの様な生き物が並んでいる絵になったんだよね。

オーノ:サラリーマンと女子高生ときて、どう繋がって小学生になったんですか?

よしもと:特に何も考えずにダラダラと描いていたんですよ。他にも感情的に描いた絵が色々とあったんですけど、オーノ君が選んだイラストは一番無意識に描いた小学生の絵だったんです。

オーノ:小学生の子が今流行っている、携帯ゲーム機をしながらたたずんでいる絵が生きている様に感じたんです。小学生が持っているアイテムだったり、横にいるたぬきみたいな生き物というのも身近に感じられて…。僕の小学生時代に近いイラストだったんですよ(笑)。僕は携帯ゲーム機が好きだったから、TVの前でゲームをするという習慣がなくてね。北海道の北見市という町で自然と共に生きてきたんですよ。木登りが一番の遊びだったし、生き物が大好きだったり、常に横に居る生き物が本当は友達だったら良かったのにって…。言葉は分からないけど、パートナーを常に求めていた気がするんだよね。 よしとも 僕には小学4年生の息子がいるんだけど、ゲームが大好きでね。彼も、やっぱり生き物と同居して生きてきていると思うところがあるんですよ。

オーノ:東京の真ん中にいながら?

よしもと:やっぱりいますね。彼の傍らには(笑)。

オーノ:それはちょっと嬉しいな。そんなこともあって、よしともさんが描いた絵に僕のアンテナがピーンと来たのかもしれませんね。

よしもと:こっちは息子を見ているから無意識に出てしまったのかもしれませんね。でも、最初にスピードのある若手サラリーマンのジャンプの絵でいきたいなぁというのがあったので、あの小学生の絵だとちょっと地味かなぁと思ったんだけど。

オーノ:本当はほぼサラリーマンの絵でいこうと決まっていたんだけどね。でも、なんとなくこれ違うんだよなぁ〜というのがあったんです。

よしもと:試しにオーノ君の気に入った少年のイラストをジャケットにしてみたら、自分が一番ハマってしまって「これだ!」って(笑)。面白いことに、その瞬間にバババっと全部出来てくるんですよ。

オーノ:よしともさんがその場でジャケットを組み立てて夜中に「今出来たから見て欲しいんだけど」って電話をしてくれて(笑)。実際見たらとてもハマっていてね。よしともさんがビビっときたのと、僕がビビッときたのが上手い具合にコラボレートして。実際のその後の作業は早かったですよね。よしともさんとのやりとりはスリリングだったけどね(笑)。携帯を持っていなかったから。

よしもと:(苦笑)

オーノ:なぜこの時代に携帯を持たないんですか? よしとも 持ったら持ったで凄くハマっちゃいそうでね(笑)。さすがにこのご時世に携帯を持っていないのはあれかなぁ〜? とは思うんだけどね。

オーノ:持たないですむならそれはそれでいいですけどね。

よしもと:確かに遅れはとりますけどね(苦笑)。

オーノ:逆に僕がよしともさんの立場だったら持たなくていいのかもしれなけど(笑)。『TVガール』の曲には、TVを付けっぱなしにしていることの怖さというか、生まれた時からTVがあって、学校から帰ったらTVをつけて…と育ってきたので、未だに家に帰ってすぐにTVを付けちゃうんですよね。でも、それによって、欲しくない情報までが入ってきてしまうので、どこかで脳が疲れたり、潜在意識の中で疲れたりしてね。同時に自分じゃない価値感が自分を支配しているなぁという感じがして、怖さを感じたんですよね。だからと言ってTVを捨てて、携帯のみで情報を得るだけじゃ寂しいんですよね。支配されているんだけど、TVから抜け出せないという複雑な感情を今回歌にしたんですよ。そういう危機感ってありますか?

よしもと:どうなんだろうなぁ…。携帯を使っていたらきっと危機感を感じてしまうのかもしれないね。でも、今は携帯を持っていないから多少は冷静でいられるのかな。不便だなぁというのはありますけどね(苦笑)。

オーノ:僕なんかは危機感でいっぱいですよ。常に縛られている感じがして。

よしもと:僕も子供の頃から家に着いたらTVを付けて、夕方頃にやっている番組をダラダラと見ていたんですけど、当時のあの時間の番組って夢がありましたよね。今はワイドショーが多いんですけど。

オーノ:僕の時は、『西遊記』が放送されていました。確かにあの時間は夢を見させてもらいましたね。

よしもと:昔は、だいたい6時から子供番組が放送されていて。6時30分からニュースが放送されていたんですけど、今は5時くらいにTVを付けると必ずワイドショーっぽいのが流れていますよね。だから今の子供が学校から帰って来てTVを付けてもワイドショーしかやってなくて、それをボーッと見ているという…。しかも、実際に起きた事件に対して番組が煽るじゃないですか? 色々と入ってきているんだろうなぁと思います。

オーノ:それで影響ってありますか?

よしもと:まだ直接的な影響は感じられないですけどね。


曲を聞いてくれたから絵がシンクロしているのかなぁと思うと、本当にコラボレートしたんだなぁという気がしました。(オーノキヨフミ氏)

オーノ:今は一人っ子とか多いんですか?

よしもと:結構バラバラですよ。一人っ子もいるし、兄弟が多い子もいるし。

オーノ:そういうのもある種、『ラディカル』のジャケットの少年の表情にも表れているのかなぁと思って。あのジャケットのイラストの少年は一人っ子っぽいんだよね。

よしもと:そうですね。

オーノ:一人っ子っぽい子供がさ、ランドセルといった昔ながらのアイテムとゲーム機を持って、友達と遊んでいるんじゃなくって、唯一の友達が隣にいるたぬきみたいな生き物という所に寂しさを感じるんだよね。今回のアルバムは寂しさで出来ている曲が多いので、曲を聴いてくれたから絵がシンクロしているのかなぁと思うと、本当にコラボレートしたんだなぁという気がしました。中のブックレットからCDの盤面までよしともさんと全て一緒にやっているんでね、興味を持った人は是非手に取ってみてもらいたいです。

よしもと:中にも物語があってね。表紙を見て、裏を見て、中身を見て、盤面を見て、そこで何か感じるものが絶対にあると思う。

オーノ:そうですね。今回はジャケも含めて作品になったと思います。聴くだけじゃなくて、聴きながらジャケットも見てもらいたいですね。

よしもと:歌詞を一通り読み終えた後に、オチを付けるような感じをね。そこで何かを感じてもらえたら。あえて絵を絵として見てもらって、歌詞には被らないようにしてね。

オーノ:歌詞とイラストの配置は相当ストーリーを持って作っていますからね。


ラディカル

mini album
ラディカル

CDエキストラ
RTSC-015 / 2,300yen(tax in)
IN STORES NOW
★amazonで購入する
★iTunes Storeで購入する(PC ONLY) icon

Live info.

2007.5.2(wed)
会場:下北沢 Club Que
(問) 下北沢 Club Que 03-3412-9979

2007.5.4(fri)“MUSIC DAY 2007”
会場:下北沢HIGH LINE RCORDS ※インストアライヴ(フリーライブ)
出演:the court/ゴンダタケシ/和田大樹&マスザワヒロユキ
(問)下北沢HIGH LINE RCORDS 03-5432-7411

2007.5.6(sun)※インストアライヴ/観覧無料
会場:HMV 横浜VIVRE
開演 18:00〜
2007.5.12(sat)※インストアライヴ/観覧無料
会場:HMV 札幌ステラプレイス
開演 14:00〜
問:HMV 札幌ステラプレイス 011-219-5005

2007.5.18(fri)※インストアライヴ/観覧無料
会場:タワーレコード新宿店
開演 19:30〜

2007.5.19(sat)「ラチッタデッラ・フリーライヴ」
会場:川崎 ラチッタデッラ噴水広場 ※観覧無料
公演時間:15:00〜16:00(予定)

2007.6.17(sun)※フリーライヴ/観覧無料
会場:聖蹟桜ヶ丘OPA前 さくら広場
開演 14:00〜

2007.5.27(sun)「オーノキヨフミ・スペシャルディナーショー」
会場:新宿 NAKED LOFT
開場:18:00 開演:19:00
チケット:¥3,500 ※60名限定/整理番号あり
(問)NAKED LOFT 03-3205-1556

2007.6.23(sat)「オーノキヨフミ・ワンマンライヴ」
会場:渋谷 BOXX ※バンドライヴ
開場:18:00 開演:19:00
前売:¥3,500 当日:¥4,000(各D別)
(問)りぼんインフォメーション 03-3406-5541

オーノキヨフミ OFFICIAL WEB SITE
http://www.ribb-on.com/kiyo/

posted by Rooftop at 19:00 | TrackBack(0) | バックナンバー

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