ギター バックナンバー

皆川純子('07年5月号)

皆川純子

自分が本気で取り組めるもの、夢中になれるもの、それが声優だった

アニメ『テニスの王子様』や『ネギま!?』、『コードギアス 反逆のルルーシュ』等の声優として活躍している皆川純子さん。私はアニメは見ないし、漫画もほとんど読まないので、今流行っているアニメは何だとか、漫画は何だとか人気のある声優が誰だとか全く知らない。だからアニメや漫画というのは自分の知らない世界であり、今流行りの“アキバ”をイメージさせるもので、自分もある種“オタク”に属する人間でありながら“アキバ”文化を否定してきた。
しかし、今回ひょんなことから“声優”という職業の方に触れる機会をいただいた。実際お会いした皆川さんはとても気さくで、声優にイメージしていた髪の毛を頭の上で2つに結い、甲高い声を出す人とはまるっきり違っていた。それどころか、お話を聞いているうちに、ただアニメが好きだけではやっていくことができない難しい、でも多くの人に夢を与える素晴らしい職業なんだということを痛感した。声だけで表現できるって、よく考えたらすごいことだと思う。
5月10日には3rd.アルバム『ビタミンJ』のリリースも決定しており、横浜BLITZでライブを行う。いろいろな声を出せる分、アーティストのライブやCDとは違った楽しみ方で聴くことができる。まさに「あなたの知らない世界」を体験させてもらった。(interview:やまだともこ)


一生続けられる職業。声優だからこそできるもの

──声優の仕事ってアニメの声以外にもいろいろとあると思うんですが、アニメの他にどんな仕事があるんですか?

皆川:声優は幅広く仕事をする場がありまして、アニメや洋画の吹き替え、番組やCMのナレーション、ラジオ番組や司会。あとアニメのイベントとか、作品のキャラクターソング(キャラソン)を歌ったりしてます。キャラソンを歌うと言ってもお面をかぶるわけじゃないですよ。見た目は私で、アニメのキャラクターとして歌う。キャラクターの声で歌うことが大事なんです。

──声って何種類ぐらい出せるんですか?

皆川:基本的には同じ声帯なので一種類なんですが、役によって男の子をやったり女の子をやったりするので、 役になりきろうと思うと自然にそれっぽい声になる。声色を変えようという意識はないんですよ。

──声優さんになられてどれぐらいですか?

皆川:7、8年ですかね。

──なぜこの仕事に就こうと思ったんですか?

皆川:学校卒業してすぐはOLで、それなりに楽しかったんですけど、人生1回きりだし自分が本気で取り組めるもの、夢中になれるものを見つけようと思ったんです。昔からお芝居に興味があったので劇団に入ろうと思ったんですけど、劇団に入ると月から金までお稽古になるからOLを辞めるしかなかったんです。それは暮らしていけないから困る。土日でできる何かだと思ったところに、たまたま声優学校で良いところがあったんです。声優も芝居だと。やってみたらおもしろくてですね。やるうちにさらに本気になって楽しくて、これを一生の職業にできたらいいなと。それで今に至るっていう感じですね。

──最初に目指されていたお芝居は全身で表現しますけど、声優さんは声だけじゃないですか。そのギャップに悩んだりしなかったですか?

皆川:そこがおもしろいと思ったんです。例えば私が今この姿で少年役をやれるかと言ったらNOですよね。でも声だけだったら少年にもなれるし動物にもなれる。声だからこそできることって多々あるんです。年をとっても可憐な少女の声を持っていたら少女役ができるだろうから一生続けられるなと。

──今までこの役はすごく楽しかったってあります?

皆川:たくさん経験させてくれたのは『ネギま!? 』と『テニスの王子様』。色々と歌を歌わせてもらったし、イベントにも出せてもらったし。経験をさせてもらったというところでは大事な作品ですね。特に『テニスの王子様』は私を世に出してくれた作品。とても大切です。演じていて楽しいのは感情表現が豊かな役。『ファンタジックチルドレン』の男の子は、元気で明るいアニメの主人公という感じ。泣いたり笑ったり怒ったり落ち込んだりが激しい子だったので演じていて楽しかったです。

──もともとアニメが好きだったんですか?

皆川:好きでしたよ。漫画も良く読んでました。でも、ちっちゃい頃から声優に憧れていたかって言うとよくわからない。自分がなれるわけがないと思っていたし、職業であると認識したのはかなり後でしたから。

──声だけで表現するって難しいですよね。私は滑舌が悪いので…なれないかなぁ。

皆川:ははは(笑)。滑舌も大事ですけど、もっと大事なことがありますよ。

──声優さんを目指している人にアドバイスってあります?

皆川:偉そうにアドバイスできる立場じゃないんですけどもねぇ…。明確なものはないですけど、いろんな人とふれあって話す。人とのコミュニケーションは大事。あと本が好きでした。文字からの読解力・想像力・イマジネーションは大事だと思う。台本を読みながら演技する職業なので、文字に慣れるっていうのはとても大事ですね。


かわいい声でかわいい歌を歌うだけが声優ではない

──5月10日に3rd.アルバムがリリースされますが、昔から歌いたい願望はあったんですか?

皆川:歌は好きでしたけどプロとして通用するとは全く思ってなかったです。ただ音楽っていいじゃないですか。その時々を彩ってくれるし、その時代の歌を聴いて過去を思い出したり…。だから「皆川純子で歌ってみない?」ってお話をもらったときは「歌う!歌う!歌う!」って何も考えずに決めました。でも歌えば歌うほど難しいって壁にぶつかる。欲が出てきますからね。改めて、歌で表現をしようとか、曲で表現をしようっていう方たちの才能に驚くし尊敬します。でも声優業界のことはあまり知らなかったんで、まさか自分が歌うとは思ってなかったです(笑)。だからこの世界に入って、歌う機会が多くてびっくりしました。キャラソン含めて100曲以上歌っているわけで。キャラソンなのでアーティストのようにナマで歌う機会はほとんどないですけど、レコーディング回数はハンパないので、この職業と歌とは切っても切り離せないところはありましてね、歌が嫌いじゃなくて良かったって思いました(笑)。

──今回のアルバムでは詞も書かれてますね。

皆川:皆川純子で歌う以上、私から出た言葉の方がいいだろうって書くんですけどしんどいですよ(笑)。日々感じることはあれど、ボキャブラリーもないし、このフレーズは前に使ったしっていうのが出てくる。ゼロからの作業は苦しいですね。歌詞はいつもギリギリです。

──『Afternoon Tea』(M-8)は“大人の恋愛をテーマに”だそうですが、こちらは実体験?それとも空想ですか?

皆川:どっちも混ざってますねー。こうだったらいいなっていうのもあるし、どっかで見た漫画やドラマのストーリーが入っているかもしれないし。でも、全部自分が感じたことに変わりないですから。

──2年ぶりのアルバムなので、その間にたまっていた詞はあったんですか?

皆川:いやいや全くありません(笑)。シングル出しているし、キャラソンでも詞を書いているので…。

──キャラソンの詞というのは原作者が書くわけじゃないんですね。

皆川:違うんですよ。作詞家さんだったり、演じている私たちが感じたことを書くんです。

──へえ。それは皆川さんの気持ちではなく、キャラクターになりきって書くということですか?

皆川:はい。キャラクターの気持ちになってですね。

──初歩的な質問ですけど、キャラクターが幼い場合、そういう子の気持ちってどう表現されるんですか?

皆川:アニメや漫画の中の子供たちって、精神年齢が大人びているので違和感なく…。あとはキャラクターにテーマがあるので、そこをフィーチャーした歌詞になります。『テニスの王子様』の主人公リョーマは天才テニスプレーヤーなので、「俺は負けない!」とか「乗り越えてやるぜ!」みたいな。年齢が幼いとか関係ないんですよ。

──それは自分の言葉より難しいですよね。

皆川:テーマが決まっているから、キャラソンのほうが書きやすいです。

──曲のほうは作られたりしないんですか?

皆川:曲は書けないですねー。書いてみたいんですけどねー。

──詞を書いて作曲家の方に渡して…。

皆川:いや、曲からなんです。曲を頂いて世界観をイメージして、ひとつのワードを思い浮かべたら肉付けする。曲が先だと音が足りないとか字が余っちゃうとかあるので難しいんですけどね(笑)。

──今回のアルバムはかなりロック色を押し出されていましたが…。

皆川:軸に歌っていきたいのはそこなんですよ。

──勝手な想像ですけど、声優さんが歌うってもっとアイドルっぽい歌なのかと思っていたんです。

皆川:そう思うでしょ〜? 声優でCD出している人はかわいらしい曲を歌う方が多いと思うんですけど、そういった方だけではないんです。私の声でかわいらしい曲を歌っても似合わないですからね。歌いたいと思うのもロックだし、気持ちいいのもそう。「声優といえばアイドルっぽいかわいい曲でしょ? っていうのはなくしてください!」って訴えたいですね(笑)。

──(笑)ミニスカートをはいて歌っているイメージが…。

皆川:違う人もいっぱいいます。ただ、世の中で取り上げられるのがそういった方かなぁと。特徴がありますからね。そこがフィーチャーされる。私はかわいらしい曲をメインに歌っているわけではないですが、声色を生かしてそういった曲を歌っていきたいとは思っています。

──『優しい気持ち』(M-5)はその前までの曲と声がガラリと変わったので、別人が歌ってるかと思ったぐらいでしたよ。役になりきってるのかなと。

皆川:その通りです。歌うときって、皆川純子は皆川純子なんですが、プラス歌の世界観の主人公になって歌っているので表情が違ってくる。登場人物になっているつもりなので。

──そういう歌い方って声優さんや俳優さんならではですよね。

皆川:そうかもしれないですね。とてもバラエティーに富んだ作品になりました。

──楽曲の軸がロックだとライブでのお客さんのノリはどんな感じですか?

皆川:バラエティーに富みすぎて、お客さんもノリづらいと思いますけどね(笑)。私のライブに来てくれるお客さんは9割方女性で…。

──え?

皆川:少年役を演じる皆川純子のファンになってくれた方が多いようで、応援して下さる方は圧倒的に女性なんですよ。

── それは宝塚を見に来る女性と一緒ですかね。男役の女性にときめくという。

皆川:宝塚の方はきれいなのであの姿形にときめくんだと思いますけど、私はキャラクターの声でしょうね。

──男の人のファンが大半だと思ってましたよ。でも、同性に愛される人はいいなって思います。

皆川:それはキャラクターのおかげでもありますけど、キャラクターを通して皆川純子を知ってくれて、応援してくださってる方がいるっていうのはうれしいことです。

──皆川さんみたいになりたいって。憧れなんでしょうね。

皆川:確かに私のファンの方は声優になりたい方がすごく多い。憧れられるようにがんばりたいって思うんですけどねえ。どうもヌケ作なんです…。

──…ヌケ作って久々に聞いた(笑)。ステージが男性でファンが女の人だと、隣の人より目立ちたい隣の人より私に気づいてほしいっていうのが女子の心理としてあるんです。でも、ステージが女の人でファンが男の人だと、客席は隣の人とも一緒に楽しみたいっていう人が多いんですよね。そうなるとステージも客席も女の人だとどういう雰囲気なのかなって思うんですが…。

皆川:楽しそうにしてくれてるのは伝わりますね。あったかい感じ。純子ウチワをキラキラさせて持って下さる方もいます。男性アーティストに対する女性と一緒かもしれないですよ。

──5月27日には横浜BLITZでライブがありますが、この日は発売するアルバム『ビタミンJ』を中心とした構成で…。

皆川:『ビタミンJ』からもちろん歌いますけど、今までアルバムを2枚出しているし、シングルも5枚出ているのでその中から。「え?そんな昔の曲を?」っていうのもやる予定ですし、キャラソンを歌ったりもします。

──どういうステージを予定してます?

皆川:シックになると思いますよ。ゴンドラ乗ったりするわけではなく(笑)普通に歌う感じです。

──踊ったりとかは?

皆川:ないです。そんなことしたら息が切れます(笑)。5月だし、私も『ビタミンJ』でビタミン補給しながら、聴いていただくみなさんも元気になっていただければと思います。


ビタミンJ

ビタミンJ

YAMA0001 3,059yen(tax in)
5.10 IN STORES

Live info.

皆川純子セカンドライブ〜Listen to Vitamin
5.27(Sun) 横浜BLITZ
http://www.tbs.co.jp/blitz/
OPEN 16:00 / START 17:00
チケット:5,000yen(tax in) 全席指定
ローソンチケット (Lコード36393)
info.ムービックプロモートサービス03-3530-1461(平日10時〜17時)

皆川純子 OFFICIAL WEB SITE
http://www.junko-minagawa.com/

皆川純子さんから素敵なプレゼントがあります!

posted by Rooftop at 16:00 | TrackBack(0) | バックナンバー

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