ギター バックナンバー

susquatch('07年5月号)

susquatch

メロディ重視の不思議な空気感を漂わせるエモーショナル・ロックの新星

不思議なバンドが現れた。susquatch〈サスカッチ〉。北米、ロッキー山脈で目撃される未確認生物を名乗ったこの4人はどこか惹きつけるモノを持つ。情緒的ながら優美と冷気が隣り合った変幻自在なメロディ・ライン、全員で取り組み聴かせるコーラス・ワーク、重厚で時にシャープな2本のギターのアンサンブル、複雑に入り組み絡み合ったリズムなど、観る者全てに何らかの印象を残すバンドだ。今回はthe band apartやWRONG SCALEなどと共演した“STUDIO VANQUISH TOUR”を終えたばかりのメンバー全員に話を訊いた。(interview:植村孝幸)


未確認生物の発見、バンドとしての融合

──何をともあれ“STUDIO VANQUISH TOUR”お疲れ様でした。

一同:どうもお疲れ様でした。

──どうでしたか、事務所の先輩方との初めてのツアーは?

押切健太(g, vo):楽しかったの一言に尽きますね。

中野真季(ds, cho):凄い勉強になりました。

──やっぱり学ぶことが多かったですか?

押切:いやぁ、学ぶことって言うより衝撃を受けっぱなしで。リハで衝撃を受けて、本番で衝撃を受けて、打ち上げでさらに衝撃を受けて(笑)。

──衝撃って言うより笑劇ですか?

一同:(笑)

──さて、2002年結成ということなんですが、出身地など皆さんバラバラですよね。どういった経緯でバンド結成に至ったんですか?

押切:僕と中野が専門学校が一緒で。

中野:でも、一言くらいしか喋ったことがなかったんですよ。その頃、お互いに気持ち悪いって思ってて(笑)。

押切:お前のほうが気持ち悪かったよ! だって中野は当時、坊主頭でしかも今みたいにメガネもかけてなかったんですよ。そんな恰好でドラムのスティックを両手に持って、アンテナみたいにして校内を歩いてたんですよ。

一同:(爆笑)

押切:できれば関わらずに生きていきたいなと思ってたんですが…。

中野:そんな気持ち悪くはなかったよ〜。

──いや、それは明らかに気持ち悪いですよ。それが何故関わっちゃったんですか?

押切:友達が、バンドもやってないのに勝手にライヴにブッキングしたんですよ。「あと2ヶ月でライヴだからバンド組んで出ろ」みたいな感じで。それでメンバー選ぶほど贅沢言ってる場合もないし、妥協して中野を誘いました。それで、そのライヴが終わって“音楽で食べていきたい”なんて夢だけは持ってたんで、この機会だから真剣にやっていこうかと思いまして…。

中野:そうしたら、今度は私が勝手にどんどんライヴの予定入れて。

押切:ホントだよ! 月に7〜8本とか入れて。

中野:ライヴに誘ってもらうことが嬉しかったんですよ。

押切:お金もなくなって、メンバー間がギスギスして(苦笑)。それでベースが“就職”というポピュラーな理由で脱退して。その頃知り合ったheのシゲ(重信貴俊:b, vo)に「誰か唄って弾けるベーシスト紹介して」って言ったら、「俺の舎弟で一人いる」って能重を紹介してくれまして。

能重裕介(b, vo):舎弟? ちょっとハメようとしてるでしょ?

押切:舎弟は言い過ぎた。後輩ね。

押切:それから今度はギターが「結婚資金を貯めたい」という、彼女もいないのに結婚かよ! って理由で脱退してしまい、インターネットで「こういったバンドでギターを弾きたいんです」って募集をかけてた稲葉に声を掛けて…。

稲葉 洸(g, cho):押切さんからメール貰ってホームページで試聴して、「決めた!」って感じで。


友情、そしてリリースに至るまで

──ところで、サスカッチって元々こういう音楽性で進んできたんですか?

押切:いえ、全然変わってきてます。最初はもっとストレートなロックで、だけども何かとっちらかってましたね、ベクトルが定まってない感じで。でも、heなんかと対バンして知り合ってから益々ギター・ロックした音の面白さに気づきましたね。

中野:heを初めて観た時はホント凄いなって思いました。

押切:僕も一発でガツンってきて。とりあえず僕は人見知りなんで、「仲良くなって来い」って中野を派遣して(笑)、そうしてシゲとは「なんかコイツとは波長が合うな」って意気投合して。今では週一で飲んだりしてます。下手したらメンバーより会ってるかも(笑)。

──では、今回のミニ・アルバムを出すに至った経緯ってのはheが絡んで?

押切:まぁ、結局うだつが上がらないバンドだったんで、事務所からの声も掛からずで。その中でheがファースト・アルバムのリリース・ツアーのファイナルという場所('06/07/09代官山UNIT)に「出ない?」って声を掛けてくれて。シゲとかウニ(he芝田大樹:g, vo)が今の事務所の社長に「サスカッチは聴いたほうがいいですよ」ってゴリ押ししてくれたらしくて。ホントに有り難いことで、CDをリリースできる運びとなりました。

──今回のミニ・アルバムなんですが、3曲が新曲、3曲がデモからの再録ってことで、普段どなたが曲を書かれてるんですか?

押切:ガイドラインだけは僕ですけど、あとは展開の配置とか細かい部分はみんなで。スタジオに入って大体の流れを通して煮詰めるみたいな感じですね。

──中でも「3chords」は一番シンプルでポップだなって感じたのですが、このタイトルはまさかコード進行?

押切:A、B、Eでどこまで自分達がアガれるメロディが作れるかって課題を作って。元来ややこしい展開とかコードを一杯詰め込みたがる僕特有の癖があって、それに頼らずに、3つのコードだけでどこまで感極まれるかっていうのを気晴らしにチャレンジしたら意外とアガりまして、“あ〜、これでいいな”って。

──曲のタイトルがシンプルというか、情景を思い浮かばせるようなところもありますね。

押切:でも、タイトルはホント感覚的ですね。「ceto」っていうのはローマ神話のキャラで、まぁペット的な、例えば犬にポチって名付けるような感覚ですね。あと「the summer solstice」はそのまんま“夏至”なんですけど、逆さに読むと“シゲ”ってなるっていう。

──え、まさか?

押切:僕らなりのシゲに対する愛情をこっそりスパイス効かせて伝えちゃったみたいな。

──本人には伝わりました?

押切:もしRooftopを読むことがあれば、気づくかもしれないんですけど、やっぱり押し付けがましいじゃないですか? 「付けておいたから」「頼んでねぇよ」みたいな。だから向こうが気づいて言ってくることを望んでたんですけどね、「良い曲だね」とか…。でも、意外と普通の反応で、常識人みたいですね。

能重:気づかないだろうね、普通(笑)。


メロディ重視から生まれた楽曲

──ところで、過去の楽曲を再録したってことはやっぱり代表曲を入れたかったって意図が強かったとか?

押切:いや、どの曲を入れたいっていう前に曲がなくて、出せるものを迷うことなく出したって感じですかね。

──惜しげもなく?

押切:惜しむ余地もなかったですね、一杯一杯で。

──結果的には今のサスカッチが詰まってるって感じになりました?

押切:結果オーライってことで。

──コーラスを全員で取り組むなど、あんまり普通のバンドにはないと思うのですが、コーラスのパートは声質で決めたりしてるんですか?

押切:声質っていうより出しやすい音域なのかってところで決めたりしてますけど、とにかく綺麗に聴こえればいいのかなって。

──ギター2人のアンサンブル感というか、音の厚みも非常に印象的なのですが、これはやはり歌に集中する訳でなくギターも疎かにしたくないって感じなのですか?

押切:単純にギターのリフとかも好きなので。

──では、音在りきでそこに歌が乗るっていう感じなのですか?

押切:いや、どっちもですね。欲張りなもので。

──リズムの作り方が特徴的なところも垣間見られますが、気をつけてた点とかありました?

能重:基本リズムは(中野)真季さんが自然と叩くのに合わせるんですけど、それにギターが2本あってうねったりしてるんで、ベースの立ち位置が不安定というか定めづらかったですね。メロディ重視のベース・ラインにすればいいのか、リズム重視のベース・ラインにすればいいのかって。でも、曲ごとにどちらかに比重を置いて弾いてたりしたら、ゆらめいて独特なものになったりしましたね。

──曲を作ることに関して、気をつけてる点とかありますか?

押切:純粋に感動できる、感動させられる曲を作りたいだけですね。

──そういうことを踏まえると、英詞より日本語詞のほうが判りやすいと思うんですけど?

押切:あんまり僕、言いたいこと、伝えたいことがないんですよ。それに、日本語詞にすると恥ずかしいんですよ。気持ちが直接伝わってしまうっていうのが。

中野:実は…歌詞がないんですよ。

──やっぱり! それはまさか適当英語ってやつですか?

押切:僕らは“パニャ語”って呼んでるんですけど(笑)。単純に英語の発音って綺麗だなっていうところがあって。だからよく聴くと“パニャ語”なんて言いつつもいろんなところに英単語が散りばめられてますけどね。ただ意味が通じない英文で、とにかく気持ち良ければいいんですよ。

中野:言葉の単語とかでメロディが変わるのが嫌なんですよね。だったらメロディ・ラインを大事にしていきたいので、歌詞は要らないかなって。

押切:英語の歌って、しっかり歌詞を噛み締めて聴いてるかっていうとそうでもないと思うんですよね。その時々の情景によって歌詞の内容も判らず、勝手に切なくなったりしたりとか。少なからず自分がそうやって音楽を聴いたりしてるので、自分の生活のシーンに合わせて聴いてくれる人が汲み取ってくれれば良いのかなって。

中野:好きなように聴いてくれればいいんだよね。


初の全国武者修行、そしてSHELTERへ

──これだけ長いツアー、全国回るのは初めてですか?

押切:初めてですね。

中野:また私が無茶振りしたんだよね。なるべく多く回りたいと思って。

押切:30本くらい回りたいって中野が言って。僕はそんな得体の知れない旅に長々と行きたくないから「10本くらいで良い」って言ったら、「加味した上で追って連絡します」って。いざ連絡来たら「21本です!」って、全然加味されてないじゃん! みたいな。もう修行ですよ。

能重:でも、heとか先輩方とやったことで開きを感じたんですよ。だから僕は30本賛成派で、場数を増やして成長したいって感じで。ね、稲葉さん。

稲葉:まぁ、そうですよね。

中野:「同意しろ」みたいな振り方やめなよ(笑)。

稲葉:各ライヴハウスに電話とかしても、「サスカップですか?」とか必ず間違えられるんですよね。地方の認知度がなさすぎて、今、痛いほど現実を見てて、本当に行く前から打ちのめさせられ気味なんですけど、いいライヴをして少しでも知って貰えたらなって思ってます。

──でも、今回の“STUDIO VANQUISH TOUR”で少なからず名古屋、大阪での知名度は上がったと思うんですけどね。

押切:いや、まだまだですよ。この場を借りて一緒に回ってくれた大先輩方、並びに事務所の方々、関わってくれたスタッフの皆さん、来てくれたお客さん、どうもありがとうございました。

稲葉:結婚式の挨拶並みだ。

能重:WRONG SCALEの野田さんのパクリじゃね?

──ツアー・ファイナルはSHELTERってことですが。

押切:そこまでに修行で大きくなって帰って来たいですね、無事に(笑)。


Water plant

first mini album
Water plant

K-PLAN HKP-010
1,680yen (tax-in)
5.02 IN STORES
★amazonで購入する

Live info.

1st mini album release live "Water plant" TOUR
5月19日(土)渋谷サイクロン
5月23日(水)甲府KAZOO HALL
5月24日(木)HEAVEN'S ROCK 熊谷VJ-1
5月25日(金)福島club SONIC iwaki
5月27日(日)八王子RIPS
5月29日(火)HEAVEN'S ROCK 宇都宮VJ-2
5月30日(水)仙台MA.CA.NA
6月4日(月)福岡 DRUM Be-1
6月5日(火)熊本 DRUM Be-9
6月7日(木)高松DIME
6月8日(金)松山SALON KITTY
6月11日(月)神戸STAR CLUB
6月12日(火)大阪 LIVE SQUARE 2nd LINE
6月14日(木)名古屋HUCK FINN
6月15日(金)静岡SUNASH
6月19日(火)高崎club FLEEZ
6月20日(水)郡山CLUB#9
6月21日(木)新潟 CLUB JUNK BOX mini
6月25日(月)水戸LIGHT HOUSE
6月26日(火)千葉LOOK
6月29日(金)下北沢SHELTER〈tour final〉

susquatch OFFICIAL WEB SITE
http://www.susquatch.net/

K-PLAN WEB SITE
http://www.k-plan.cc/

susquatchの皆さんから素敵なプレゼントがあります!

posted by Rooftop at 20:00 | TrackBack(0) | バックナンバー

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