ギター バックナンバー

BEAT CRUSADERS('07年5月号)

BEAT CRUSADERS

掟破りのお面軍団が紡ぎ出すPOPという名の第三種接近遭遇!
『EPopMAKING 〜Popとの遭遇〜』

メジャー第1弾アルバム『P.O.A. 〜POP ON ARRIVAL〜』から2年、ビート・クルセイダースが待望のフル・アルバム『EPopMAKING 〜Popとの遭遇〜』を完成させた。YOUR SONG IS GOOD、TROPICAL GORILLA、ASPARAGUSとのスプリット・シリーズ、木村カエラへの楽曲提供など、果敢に新しいトライアルを行ってきた彼らは、本作において、より自由で斬新なPOPミュージックの在り方を提示してみせた。PUNKもEMOもギターPOPも80年代も00年代もぜーんぶひっくるめた彼らのPOP。それは多くの音楽ファン(そして、奥様達)に未知なる興奮を与えることになるはずだ。(interview:森 朋之)


イジケながらヒネくれたことをやってきた2年間の集大成

──オリジナル・フル・アルバムとしては、『P.O.A. 〜POP ON ARRIVAL〜』以来、約2年ぶりになりますね。

クボタマサヒコ(b):そうですね。ただ、フル・アルバムは久しぶりなんですけど、リリースはコンスタントに続けてきて。この2年の間にやってきたことがひとつにまとまった、っていう感じですね。もう思い残すことはないです!

カトウタロウ(g):(笑)これで終わり?

ヒダカトオル(vo, g):人生ごと終わったりとかね(笑)。

──前作以降は、“新しいことにトライしていこう”っていう時期だった?

クボタ:まぁ、そうですね。スプリット・ミニ・アルバム(YOUR SONG IS GOOD、TROPICAL GORILLA、ASPARAGUSとのスプリット3部作)はまさしく、そうだし。あと、カヴァー・アルバムもあったり……余計なことばっかりやってたら、いつの間にか2年経ってました。

──余計なことって(笑)。

クボタ:普通のことをするのはつまらない、っていうのがあるんですよね。シングルを何枚か切って、アルバムに繋げるっていうメジャーのルーティーンみたいなものに乗っかるのは、どうも予定調和的だな、と。だったら、誰もやらないことをやってみようっていうところですよね。メジャーになってから3年以上経ってるし、自分達なりにやれることはやっていきたいなって。

──メジャー生活もすっかり板について。

カトウ:気が付けばオレも30代になってましたからね。

クボタ:30代でその格好って、どうなの?

──この2、3年の間にビークルを巡る状況って、めちゃくちゃ変わりましたよね。

ケイタイモ(key):そうですね。このアルバムにも、2年くらい前に録った音源が入ってたり。

クボタ:そこは前作と大きく違うところかもしれないですね。前のアルバムは短期間でガッと録ったから。

マシータ(ds):そうだね、アレはかなりその時のモードで作ったというか。

クボタ:だから今回は、この2年の変化の軌跡が出てると思うんですよね。

ケイタイモ:いろんなモードが詰め込まれてるっていう。

カトウ:まさに“アルバム”ですよね。2年間の軌跡を集めたっていう…。

全員:…………。

カトウ:あ、あれ?

ケイタイモ:…上手い!

カトウ:うわ、ビックリしたぁ…。

クボタ:(苦笑)あと、2年間の気持ちの移り変わりも感じられますね。

──気持ちの移り変わり、大きいですか?

ヒダカ:うん、特にスプリットをやってからは、凄く変わりましたね…この前ね、スペースシャワーのイヴェントに出させてもらったんですよ、武道館で。その時一緒に出たのが、平井堅、レミオロメン、木村カエラ…あと、シークレット・ゲストでMr.Childrenと吉川晃司っていうね…こんなもん、絶対にアウェイだべ、って思って、半ばヤケクソでYOUR SONG IS GOODも呼んだんですけど(笑)、これがもの凄く盛り上がって。その時思ったんですよね。俺らって意外とオーヴァー・グラウンドなんだなって(笑)。

──なるほど。

ヒダカ:自分達が思ってる以上だったんですよ、それが。そういうことで言うと、イジケた感じっていうのが少しずつなくなってきたんですよね、この2年で。今まではイジケながらヒネくれたことをやってたんだけど、今は堂々と“ヒネくれてますけど、どうですか?”みたいになってきて。その軌跡っていうのも入ってると思いますね、今回の19曲には。

──でも、完全にオーヴァー・グラウンドでしょう、今のビート・クルセイダースは。大学生くらいの人と話してても、レミオロメンとかスキマスイッチなんかと同じように聴いてるみたいだし。

ヒダカ:嬉しいですね、それは。何て言うか、その時々のポジショニングが面白いなって思うんですよね。マキシマム ザ ホルモンと一緒に番組やって、YOUR SONG IS GOODとスプリット・ミニ・アルバムを出す、とか。そういうポジションのなかで、それまで接点のなかったホルモンとYOUR SONG IS GOODの間に繋がりができるっていうこともあるし。そういう異種交配を見てるっていうのも面白いんですよ。木村カエラに楽曲提供したっていうのも、ASPARAGUSのシノッピが彼女のバック・バンドでギターを弾いていたからこそだし。


転がり続けるのがパンクじゃん

──じゃあ、逆に言うと2年前はしっかりイジケていた、と。

ヒダカ:かなりヒネくれてましたね。売れるわけねぇんだっていう。メジャーっていうのもね、言ってみれば思い出づくりのつもりでしたから(笑)。

──思い出づくり(笑)。

クボタ:そういう不安な気持ちもありつつ、っていうことですよね。それに最初は“判りやすいもの、POPなものにしなくちゃ”ってことばかり言ってたんですよ。でも今は、さっき言ってたみたいにオーヴァー・グラウンドで認められてきたっていうこともあるし、“判りやすさ”みたいなものはあんまり気にならなくなってきて。まぁ、とは言っても、ヒネくれた感は消えてないと思いますけどね。

ヒダカ:スプリット・ミニ・アルバムを一緒にやったバンドも、結局は好きなことをやってるんですよね。YOUR SONG IS GOODもTROPICAL GORILLAもASPARAGUSも、一見、もの凄くマニアックに見えるかもしれないけど、本人達にとっての“王道”をやってるだけなんですよ。ヒネくれようとしてるわけではなくて、衝動を吐き出してるっていうか。今回のアルバムにも、衝動が集まってるっていう感覚はあると思うし。

カトウ:そういう衝動は1曲目(「〜TOXIC GORILLA〜」/高速の2ビートが疾走していく轟音パンク・チューン)のド頭に込めまくってますから。ギターのカトウタロウ的には、この曲における“叫び声”が…。

マシータ:ギターの話じゃないんだ?(笑)

──いや、燃えますよね。

カトウ:お、ホントですか?

マシータ:叫ばれてるほうはイライラしますけどね(笑)。

カトウ:喜怒哀楽っていう人間が持ってる4つの感情があるじゃないですか。そのなかの“怒”の部分を最初に提示するところからアルバムが始まり、そのエネルギーによってマシータのドラムが炸裂する、そういう曲です(笑)。

マシータ:タロウの叫びのおかげで、パンクが怒りの音楽だってことを、久しぶりに思い出しました(笑)。

ケイタイモ:この曲を録ってからしばらく経ちますけど、いまだに怒ってますからね(笑)。

カトウ:感情を忘れかけた世の中に向かって、お面をつけたオレ達がそれを提示していくっていう…。

ヒダカ:そんなこと言ってると、自閉症の治療院に入れるぞ!

──(笑)でも、「〜TOXIC GORILLA〜」はちゃんとパンクに聴こえるんですよ。僕は個人的に80年代が10代だったりするんですけど、ある時期からパンクがパンクに聴こえなくなってきて。

ヒダカ:判ります。メロコア以降がダメってことでしょ?

──そうそう。

ヒダカ:俺達も似たようなところがありますよ。でも、“AIR JAM”以降のパンクに対する価値観の変化もあるし、何よりも“転がり続けるのがパンクじゃん”っていう気持ちがあるんですよね。だって俺、PILも好きだもん、っていう。ピストルズも好きだけど、ジョニー・ロットンがやってたパブリック・イメージ・リミテッドも大好きですから。

クボタ:そういえば、バッド・レリジョンが出てきた時に『DOLL』とか見てて、“泣きコア”って呼ばれてるって書いてあって。まだ“メロコア”っていう呼び方がなかったんですよね、その頃。

──初めて“エモい”って言い方を聞いた時も、ちょっと笑いましたけどね。

クボタ:そういう皮肉を込めて「E.M.O」(イー・エム・オー)〈本作に収められている、“エモ”のビート・クルセイダース的解釈ともいえるパンク・チューン〉っていうタイトルにしたんですよね。エモじゃなくて“イー、エム、オー”って読めっていう。エモは産業ロックですからね、今や。

──産業ロックって言葉、渋谷陽一先生がよく使ってましたよね、80年代に。

ヒダカ:あ、何か恨みでも?(笑)

ケイタイモ:『ロッキング・オン』を落とされたとか?(笑)

──違います。『DOLL』を落とされたことはありますが。

クボタ:『DOLL』って落ちなそうだけどなぁ…(笑)。


BECRはドリフの“もしもシリーズ”のパンク版!?

──そうなんですけどね…。ま、それはいいとして“イー、エム、オー”ですが。

ヒダカ:笑いながらアンチテーゼをやってるっていう感じですよね。“違うよ!”って怒るんじゃなくて、それを笑いながらやってるっていう。

──それはけっこう、ビークルの一貫したスタンスですよね。

ヒダカ:うん、ビート・クルセイダースが最初から狙ってるポジショニングではあります。“チンポジ”みたいなね。

全員:(失笑)

──取材の時も下ネタを入れてるんですねぇ。

ヒダカ:そう、そこは忘れないように(笑)。あのね、怒ることは難しくないですよ、たぶん。トイ・ドールズやアディクツが原体験としてある、っていうのも大きいと思うし。

──楽しいし、笑えるバンドですよね。しかも、演奏はめちゃめちゃ上手いっていう。

ヒダカ:そう、この前、トイ・ドールズが“PUNKSPRING”に来たじゃないですか。あの時のドラムって、スナッフのダンカンだったんです。それってカンペキじゃん、っていうね。ただ、俺達がオールド・スクールのパンクをそのままやっても、それが今のキッズに通じるかっていったら、そうじゃないと思うんですよ。

──どうやって自分達のスタイルに変化させていくか。

ヒダカ:自分達なりに翻訳するというか。それがね、“お面”だったりするんですよ。白塗りの代わりにお面をかぶる、っていう。

──あ、なるほど。

ヒダカ:トイ・ドールズやアディクツが持っていたユーモア感はありつつ、それを現代的なBPMでやる、とかね。だから、ドリフの“もしもシリーズ”みたいなもんじゃないですか。もしもシリーズのパンク版ですね、ビート・クルセイダースは(笑)。

──ハハハハハ! それが2007年のキッズたちに受け入れられている、と。

ヒダカ:そう、ありがたいことですよね。

──「こんなに受け入れられるとは思ってなかった」って、よく言ってますよね。

ヒダカ:うん、予想外でしたね。翻訳したものが、それほど読まれるとも思ってなかったし…。たとえば『ライ麦畑でつかまえて』っていう小説があるってことは、みんなよく知ってると思うんですよ。だけど、「どんなストーリー?」って言われても、あんまりピンと来ないというか…特にあれって、ストーリーとかってないし。そんなふうにね、雲をつかむような話だろうと思ってたら、今のキッズ達はちゃんと判ってくれてるっていう。一番象徴的なのはね、マキシマム ザ ホルモンくらいの情報量があっても、みんな聴くってことだと思うんですよ。

──オリコン・チャートにフツーに入ってますからね。

ヒダカ:凄い濃厚じゃないですか。歌詞も多いし、メンバー全員が唄ってるし。ルックスの情報量だって……ねぇ?(笑)

クボタ:例えれば“殺害塩化ビニール”みたいに、一部の熱狂的なファンがいるっていうタイプのバンドだと思うんですよ、ホルモンって。それがオーヴァー・グラウンドにいるってことはあり得ないですよね。

──異形ですよね。

ヒダカ:ホルモンとかビート・クルセイダースって、間違いなく異形ですよ。でも、(キッズは)ちゃんとついてくる、というか、むしろリスナーのほうが先に行ってるのかもしれないですね、良くも悪くも。情報能力ってことで言えば、俺達が若い時よりも全然早いし、まさにPC世代ですよ(笑)。

クボタ:活字離れが進んでる、って言われてるけど、ブログだなんだって、文章もちゃんと読んでるわけだし。

ヒダカ:そう、ただアナログ的な手書き感が損なわれてるだけで、根本的な原理はそれほど変わってない気がしますね。クラブ・サウンドの揺り戻しでバンド・サウンドが戻ってきたり、クラブ・サウンドのほうからバンドに接近してきたり…。

──試行錯誤を繰り返しているうちに、どんどん面白い状況が生まれてくる。

ヒダカ:それが音楽の良さだと思うんですよ。ジョン・ライドンとアフリカ・バンバータの『タイムゾーン』みたいに。

──うわー、懐かしいっすね…。今回のアルバムも、まずは自分達のやりたいこと、面白いと思うことをやり抜く、っていうところで一貫してますよね。

ヒダカ:そうですね。遠慮はまったくないです。

クボタ:その時に思いついたアイデアはすべてぶち込むっていう。

ヒダカ:だから今回、ちょっと多めに曲を作ったんですよ。まぁ、リンキン・パークみたいに100曲も作ったわけではないですけど…それだけ作ったら、似るだろうっていう(笑)。

カトウ:捨て曲がいっぱいあった、っていうことじゃないの?

ヒダカ:断片的なアイデアだけでいったら、100くらいはあるかもしれないけど。それを全部カタチにしているヒマはないですからね…それはミリオンを売ってからやることかな、と(笑)。


ユー、POPミュージックと遭遇しちゃいなよ!

──「MIGHTY BLOW」なんかも面白いですよね。ちょっと変わったコード感が印象的で。

ケイタイモ:インディーズ時代のビート・クルセイダースに近い感じかもしれないっすね。

クボタ:もともと、5年くらい前からあった曲なんですよ。なんとなくはカタチにしてたんだけど、今回のアルバムに収録することになってから、もう1回作り直して。インディーズの時とはメンバーも違うし、今だったら上手くできるだろう、っていう。

ヒダカ:インディーズの時は思った通りに出来なかったんですよ、メンバーが下手すぎて(笑)。メンバー・チェンジによる技術の向上抜きには語れませんね、今回のアルバムは。

──当たり前のことだけど、テクニックも大事ですよね。いくらアイデアがあっても、具現化できないとイミないから。

ヒダカ:10代、20代の時って、必ずそこでぶち当たりますよね。俺も高校生の時、YMOだか(高橋)幸宏さんのコピーだかをやることになって、シーケンスに合わせて演奏してみたことがあるんだけど、全然できませんでしたから。「なんだこれ? 全然合わねぇ!」ってなって、3回やって断念(笑)。YMOってやっぱりすげぇ、って言いながら。

クボタ:(メンバーが変わった)4年前に、新しいバンドになったんですよね。ビート・クルセイダース自体は10年の歴史ですけど、技術的なことや人間関係も含めて、まったく新しいバンドになったと思ってるので。2年前と比べても、かなり違いますよね。曲を構成するスピードも凄く速くなってるし。

カトウ:もともとオレ達も“畑”が全然違ったもんね。

クボタ:そう、お互いに好きな音楽も全然違ってたんですよ。

カトウ:クボタは最初、「ヘヴィ・メタルは聴かない、全然ダメ」って言ってたんですよ。でも、モーターヘッドを聴かせたら…。

クボタ:「あ、これ知ってる!」って。10代の時に行ってた“ロンドンナイト”でかかってたから。

──クロスオーヴァー的な動きがあったわけですね、バンドのなかに。

ヒダカ:そういう動き、たとえばグランジとかも、実は日本のほうが早かったんじゃないですか。『ルーフトップ』だから言いますけど、メタルとパンクを一番最初に融合したバンドはアサイラムですよ。ゾアとかYBO2とか、あの頃のバンドはホントに偉大だと思う。DOOMとか、ガーゼとか、海外のスラッシュ・バンドもみんなリスペクトしてるし。

カトウ:そういう話ができるようになったってのも大きいですよね。そのぶん、やれることの幅、遊び心みたいなものも増えてると思うので。

クボタ:以前だったら、それはナシでしょ! ってことになってたことも、どんどんやれるっていう。

ヒダカ:DOOMがどうのこうの言ってる人達が、カエラに楽曲提供してるっていうギャップが面白いですよね。ホント、音楽やってて良かったって思います。リスナーもそこを面白がってくれてるし、期待もされてると思うので。

──ジャンルとか世代の線引きがどんどんなくなってるのは、いいことですよね。

ヒダカ:ブラフマンとかと一緒にいると、普通に(ガーゼの)ドラムのヒロさんが来てたりしますからね。ハードコアの人達も全然線なんか引いてない。もちろん、インディーとメジャーのシバリもなくなってきてるし。

──そうですね。

ヒダカ:いろんなシーンが邂逅していく、っていうのも面白いんですよね。俺、バンド・ブームの前のホコ天も見てるんですけど、最初はハードコアのバンドばっかりだったんですよ。そこでファンジンをもらったりしてたんですけど、そのことをヒロさんに話したら、「それ、俺の友達が作ってた」って。

──バンドもシーンも、いろいろと交錯している時期なのかも。

クボタ:今考えてみると、クラッシュだってブルーハーツだって、メジャーで活動してたんですよね。そういう構図みたいなものが、やっと最近になって見えてきたというか。

ヒダカ:今回のアルバムを『未知との遭遇』になぞらえているのも、そういう意味だったりするんですよ。未知なるPOPな音楽と出会っていくアルバムでもあると思うので。

──なるほど。

ヒダカ:俺、ライヴとかで“奥様”ってよく言ってるんですけど、最近ホントに、人妻のファンが増えてきてるんですよ(笑)。そういうことも、こっちから呼びかけなかったら、あり得ないわけで。だって普通は聴かないでしょ、こんなうるさい音楽。まぁ、ヨン様に比べれば微々たる影響力ですけど(笑)。

──「POPミュージックと遭遇しちゃいなさいよ」っていう。

ヒダカ:そうそう、「ユー、遭遇しちゃいなよ」って(笑)。

カトウ:「奥さん、遭遇しちゃったんだって?」とか。

ヒダカ:ジャニーさんから、みのもんたまで(笑)。



POPとはオンリーワンな存在であり、思わず追随したくなるモノ

──(笑)でも、このアルバムでPOPミュージックに出会えるっていうのは、凄い体験だと思いますよ。

ヒダカ:かなり、ネジ曲がっちゃうかもしれないですけど(笑)。

カトウ:とにかく1曲目から衝撃的ですからね。そこから広がっていって、いろんな景色を見てもらえるかもしれないし。

──音楽的にも豊かですからね。たとえば「PERFECT DAY」における独特な混ざり具合とか。

クボタ:表面上はかなりサラッとしてるんですけどね。

ヒダカ:ギターPOP的な要素はずっとありましたからね。この曲って、パンクでもメロコアでもEMOでもなく、かと言って、純然たるギターPOPでもない。つまり、俺達にとっても“未知”なんですよね。これがどういうふうに受け取られて、どんなふうに呼ばれるかっていうのが、楽しみでもあって。

クボタ:POPな要素っていうのは、メタルにもテクノにもパンクにもあるし。そういうのを何でも取り入れてしまうっていう凄さですよね。それは自分でも感じました、この曲を作ってる時に。

──POPっていうものに対する解釈が自由なんですよね。

ヒダカ:オンリーワンな存在であり、思わず追随したくなる。そういうものがPOPだと思うんです。アンディ・ウォーホルもそうですよね。カッコいいシルクスクリーンの作品を、あえて量産する──つまり、オンリーワンを捨てることでオンリーワンになったっていう。

──「CUM ON FEEL THE NOIZE」も楽しませてもらいました。クワイエット・ライオットに同じタイトルの有名な曲がありますが…。

ヒダカ:カヴァーじゃないんだ? っていうね(笑)。それも狙いのひとつなんですよね。メロディや曲調は全然違うんだけど、たまたまタイトルが一緒になっちゃった、っていう。そういう引用だったり仕掛けだったりは、いろんなところにあるので、そこも楽しんでもらえれば。

──「LETS ESCAPE TOGETHER」は'80年代ニューウェイヴ経由の4つ打ちをフィーチャーしたナンバー。これもユニークというか、独特なPOPチューンですよね。

ヒダカ:これ、マシータが大好きらしいですよ。さっきの取材で初めて知ったんですけど(笑)。

マシータ:4つ打ちの歌モノって多いじゃないですか、今。

ヒダカ:アジカン以降の流れ、ジンとかベース・ボール・ベアとかね。

マシータ:オラ達も30代なりの4つ打ちというか(笑)、ニューウェイヴ的なアプローチの曲はずっとやってきたんだけど、そのオイシイところが全部凝縮されてると思うんですよ、この曲。で、いいなぁ、みたいな(笑)。

カトウ:この曲、オレがけっこう唄ってるんですよ。1曲目のイラッとした感じの「プレイバックPART2」っていう感じで、ここでもかなりイラッとした感情が放出されるポイントなんじゃないかな、と。あと、オートチューンのヴォーカルで遊んでみたりしてます。

ヒダカ:ダフト・パンク的な。(カトウの声質は)オートチューンの掛かりがいいんですよ。俺は全然乗らないので。

クボタ:カトウに唄わせてる理由はそれだけです(笑)。

ヒダカ:でも、考えてみると、ニューオーダーとか初期のキュアー、ギャング・オブ・フォーとかワイヤーとかなんかも、4つ打ちで踊れる曲っていうのをたくさんやってるんですよね。それを21世紀にやろうと思ったらこうなるって感じですね、自分では。

──80年代のニューウェイヴって、実はダンス・ミュージックだったっていう。

ヒダカ:向こうにはクラブっていうものがあったから、パンクでもロックでも打ち込みでも、踊れる音楽として認識されてたと思うんですけどね。日本でいえば、やっぱり“ロンドンナイト”かな。

クボタ:ごちゃ混ぜだったからね、ハードコアもレゲエも。

カトウ:モーターヘッドもね(笑)。

クボタ:パンテラとマキシ・プリーストが同じ日にかかってたり。

ヒダカ:(大貫)憲章さんって、やっぱりすげぇ! っていう。


エンターテインメントが信じられなくなった時代の閉塞感

──そういえば吉川晃司さんも“ロンドンナイト”に行ってたらしいですね。あのダンスも、“ロンドンナイト”で覚えたっていう…。

ヒダカ:そうか、つまり吉川晃司だったんだ…「TONIGHT, TONIGHT, TONIGHT」も、(吉川風の発音で)“トゥナイッ、トゥナイッ、トゥナイッ”って唄わないと。

──ハハハハハ!

ヒダカ:でも、さっきも言ったけど、後ろ向きなリヴァイヴァルではなくて、並列でありたいんですよね。キュアーとシステム・オブ・ア・ダウンが同じ高さにあるっていう。向こうって、そうじゃないですか。システム〜もマリリン・マンソンも、キュアーだったりディペッシュ・モードが大好きなわけで。そういうところをリスナーとして楽しむっていうのも、失わないでいたいですよね。

──基本はリスナー体質である、と。

ヒダカ:そこは変わらないですね。メジャーなものから日本中で200人くらいしか聴かないようなものまで、幅広くチェックスしてるので。そういうこともどんどん面白くなってきてるというか。

──では、アルバムの最後に収録されている「ZENITH」があれほどまでにダークなのはどうしてですか?

ヒダカ:ハッピーエンドでは終わらせないぞ、っていうところですね。これ、30代に評判がいいんですよ。なんかね、グランジを思い出すみたいで。

──あ、なるほど。

ヒダカ:年代で言うと、80sから90sに差し掛かる辺り。結局、グランジによって混沌としていくわけじゃないですか。きらびやかなものがなくなってきて、“なんだ、結局、ハッピーエンドなんかないじゃん”って。

クボタ:ちょうど中学生くらいなんですけど、だんだんエンターテインメントが信じられなくなってきて、“アメリカってウソつきじゃん”って思うようになったりとか。

ヒダカ:映画で言うと『氷の微笑』とかね。あと、あれなんだっけ、グレン・クロースと不倫してさ、マイケル・ダグラスがどんどん追い詰められていくっていう…。

クボタ:『危険な情事』?

ヒダカ:そうそう。つまり、どれもハッピーエンドではないんですよね。あんな感じですね、イメージとしては。あと、アナログからデジタルに移り変わる最後の時期っていうのもあるんですよ。アルバムのジャケットも『未知との遭遇』がモチーフになってるんですけど、CGではなくて、ちゃんとセットを組んで撮影したんですよ、木更津のキャンプ場で。ちなみにドラムのマシータは、ここでも裸でした(笑)。

マシータ:さすがにアレは寒かった!(笑)

ヒダカ:ほら、『E.T.』って着グルミじゃないですか。なかに人が入ってて。

クボタ:それを判ってたうえで楽しめるっていう感覚があったんですよね。でも、その後はどんどんリアルなものが求められるようになってきて。内容よりも技術が先行するようになる、っていうのかな。

ヒダカ:ハリウッドで言うと『ジュラシック・パーク』から、ですよね。あの映画はちゃんと面白いんだけど。音楽で言うと、今はエディットも自由にできるわけだけど、このアルバムに関しては“フィーリング一発”ってところで、ギリギリ踏ん張ってる。

──達成感も強いのでは?

ヒダカ:出し切った感はありますね。まだライヴでやったことのない曲が多いから、ツアーが楽しみなんですよ。ここからどの曲が残っていくのか…。「ZENITH」みたいな暗い曲だけが残るかもしれないし、その逆もあり得るし。次はどういうモードになるのか、っていうのは自分達も判らないですからね。映画でいうと…ソフィア・コッポラ辺りかな。

クボタ:それか、デヴィッド・リンチ。

──どっちにしても、それほどハッピーな感じではないですね。閉塞感たっぷり、っていう。

ヒダカ:そうですね(笑)。ハッピーエンドではないし、しかも、何も解決しないまま終わってしまうっていう。

クボタ:でも、アルバムの評価っていうのは、リスナーの反応にもよると思うんですよ。これがモンスターになるのか、善人になっていくのかっていうのは、今の時点では判らない。

──まずはそのまま“優れたPOPアルバム”として受け入れられると思いますけどね。

クボタ:うん、そうだといいんですけどね。


EPopMAKING 〜Popとの遭遇〜

EPopMAKING 〜Popとの遭遇〜

初回生産限定盤:DFCL-1371〜DFCL-1372 / 3,330yen (tax in) *DVD付2枚組、ボーナストラック3曲入
通常盤:DFCL-1373 / 2,730yen (tax in)
5.30 IN STORES
★amazonで購入する

Live info.

BEAT CRUSADERS presents『サーガは気まぐれ』
ACT:YOUR SONG IS GOOD / TROPICAL GORILLA / ASPARAGUS / BEAT CRUSADERS
5月13日(日)沖縄:ナムラホール
OPEN 17:00 / START 18:00
TICKETS: advance-2,500yen
【info.】ピーエムエージェンシー:098-898-1331

DEVILOCK presents『DEVILOCK 1』
ACT:BEAT CRUSADERS / FRONTIER BACKYARD / 9mm Parabellum Bullet / and more!
5月17日(木)東京都:Zepp Tokyo
OPEN 17:30 / START 18:30
TICKETS: advance-3,000yen (+1DRINK)
【info.】VINTAGE ROCK:03-5486-1099(平日12:00〜17:00)/BACK STAGE PROJECT:03-3357-8080(平日12:00〜19:00)

BEAT CRUSADERS tour“EPop MAKING SENSE 2007”
5月31日(木)静岡県:SUNASH
6月2日(土)奈良県:NEVERLAND
6月3日(日)滋賀県:U★STONE
6月6日(水)山梨県:甲府KAZOO HALL
6月7日(木)岐阜県:CLUB ROOTS
6月9日(土)石川県:金沢EIGHT HALL
6月10日(日)富山県:club MAIRO
6月14日(木)広島県:CLUB QUATTRO
6月16日(土)宮崎県:WEATHER KING
6月17日(日)熊本県:BATTLE STAGE
6月19日(火)佐賀県:GEILS
6月21日(木)山口県:周南TIKI-TA
6月23日(土)香川県:オリーブホール
6月24日(日)徳島県:JITTER BUG
7月1日(日)京都府:磔磔
7月5日(木)兵庫県:神戸VARIT.
7月7日(土)島根県:松江eurus
7月8日(日)鳥取県:米子BELIER
7月11日(水)北海道:旭川CASINO DRIVE
7月12日(木)北海道:北見オニオンホール
7月14日(土)北海道:帯広MEGA STONE
7月15日(日)北海道:苫小牧 音楽館
7月18日(水)青森県:青森QUARTER
7月19日(木)福島県:郡山Hip Shot Japan
7月26日(木)群馬県:高崎club FLEEZ
to be continued!
発売日:2007年5月19日(土)10:00〜 全国一斉発売!

NOT REBOUND presents -ONE FINE DAY in NAGOYA#3- CLUB DIAMOND HALL 15TH ANNIVERSARY
ACT:NOT REBOUND / BEAT CRUSADERS / DR.SNUFKIN
6月30日(土)愛知県:名古屋CLUB DIAMOND HALL
OPEN 18:00 / START 19:00
【info.】ジェイルハウス: 052-936-6041

SETSTOCK'07
7月21日(土)広島県:国営備北丘陵公演
OPEN 11:00 / START 13:00
【info.】SETSTOCK'07インフォメーションダイヤル:0180-998-900

RSR2007
8月17日(金)〜18日(土)北海道:石狩湾新港ふ頭横野外特設ステージ
OPEN 11:00 *BEAT CRUSADERSの出演日は後日発表
【info.】WESS:011-614-9999

MONSTER baSH 2007
8月25日(土)〜26日(日)香川県:国営讃岐まんのう公園内芝生広場
OPEN 9:00 / START 11:00
*BEAT CRUSADERSの出演日は後日発表
【info.】DUKE高松:087-822-2520

BEAT CRUSADERS OFFICIAL WEB SITE
http://www.beatcrusaders.net/

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