“刹那さ”を殺せない!
遂に新境地を開拓した大人の哀愁ソング『GHOST』、ここに完成!!
昨年、YOUR SONG IS GOOD、TROPICAL GORILLA、ASPARAGUSという強者達とのスプリット3部作をリリースしたお面PUNKバンド、BEAT CRUSADERSより早くも単独シングルが到着。初回盤にはなんと彼らの真骨頂でもあるライヴ映像が収録されたDVDも付いてくるというこのシングル。気になる内容はというと、ひと肌もふた肌も剥けて、お面までも剥いじゃうんじゃないかってくらいのビタ〜な哀愁ソングだった。一体彼らに何が起こったのか? 気になるすべてを残念ながら欠席だったクボタマサヒコ(Ba&Vo)を除く、ヒダカトオル(Vo&G)、カトウタロウ(G&Vo)、マシータ(Dr)、ケイタイモ(Key)に聞いてきた。(interview:有馬和浩/エビスパブリッシング)
スプリットをやって振り切っていいんだって思った
──今回のシングルを聴いた瞬間かなりビックリしました。特に1曲目の『GHOST』。今までのビークルにはない、大人な曲に仕上がっていますけど、これは何か心境の変化があったのですか?
ヒダカ:元々、この曲は2005年の暮れぐらいからあったんですよ。でも、全然大人すぎちゃって、どうアレンジしても俺たちには背伸びしてるようにしか聴こえないなっていうことで、そのまま放置プレイ?(笑)してたんです。そんなこんなで、YOUR SONG IS GOOD、TROPICAL GORILLA、ASPARAGUSというロフトでもお馴染みの面々とスプリット制作に入ったんですが、そのスプリット3部作をこなした結果、いよいよ単独でシングルを出そうぜ!! って時にこの曲を引っ張りだして来たら、5分でアレンジが決まっちゃったんです(笑)…俺たち大人になったねぇ〜って思いマシータ(笑)。
──(笑)なるほど。最初ボツにしたのは何が原因だったのですか?
ヒダカ:やっぱ「BEAT CRUSADERSにしては暗過ぎんじゃないのか?」だったり「ギターPOP過ぎんじゃねーの?」っていうのがあって、色々迷ってたんですけど。
──その時のBEAT CRUSADERSではできなかったと。
ヒダカ:はい。でも、 スプリット3部作やって「振り切っちゃえばいいじゃない!!」ってのが判ったんですよね。
──じゃあ、スプリット3部作でかなりお相手のバンドから影響を受けたと?
ヒダカ:受けましたね…受けまくりマシータ!!
YOUR SONG IS GOODから学んだアレンジ術
──それぞれのバンドのどこに影響を受けたかっていうのを聞きたかったりするんですけど。
ヒダカ:え〜、まずYOUR SONG IS GOOD。カリプソとかソウルっていう、全然ロック的な文脈のアレンジじゃないバンドでしょ? だからまず、アレンジが凄い勉強になりましたね。単純にハット、スネア、キックの位置っていうのが置き所によってこんなに変わるのかっていうのが判りました。特にYOUR SONG IS GOODがやったウチの曲だったり、ウチがやったYOUR SONG IS GOODの曲は全然聴こえが違うっていうね。鳴ってる楽器はそんなに違わないのに。それが凄い斬新でしたね…まぁ、言うほどYOUR SONG IS GOODは最近カリプソやってないんですけど!!(笑)
──ハット、スネア、キックの位置っていうのは、4つで取るか、裏で取るかみたいなことですか?
ヒダカ:そうですね。だから、カリプソも4つ打ちで成立はしちゃうんだけど、YOUR SONG IS GOODってよくよく聴くと別に4つ打ちではないし。で、純粋なトリニダードとかキューバのラテン音楽を聴いてみるとYOUR SONG IS GOODっぽいかって言ったらそうでもないし。
カトウ:それは本人たちも言ってました。あういう音楽ってホントはもっと大人数でやったりするから、ズィ〜レイ(YOUR SONG IS GOOD/Dr)が手数多くやってるところって、ホントはパーカッションの人がやったりすることであって、基本的にドラムは一定なんですよ。人数足りないからやらざるを得なくなってるだけという。 ──なるほど。その人数の足りなさがアレンジとして上手く形になっているということですね。
カトウ:まぁ、そうとらえてあげると向こうは喜びますね(笑)。
TROPICAL GORILLAから受けた初期衝動
──TROPICAL GORILLAからはどんなことを学びました?
ヒダカ:TROPICAL GORILLAはやっぱりコード感ですね。パンクの持つ悪〜いコード進行を学びました。それまで俺たちって明るめの曲なほうに寄っちゃってたところがあって、まぁ、お面だし「バカやってなんぼでは?」っていうのがあったんですけど…でも別に、悪い音で鳴らしてもBEAT CRUSADERSっぽくなるんですよね。で、TROPICAL GORILLAがウチの曲やってもちゃんと悪く聴こえるんですよ。
──そこら辺の違いって何なんですかね?
ヒダカ:たぶん、センスです。単純に。Gの後、Cに行かないで、C#に行っちゃうみたいなね…そういう良い意味での力技感。そういうところはTROPICAL GORILLAとやって凄く勉強になりましたね。結局、自分たちだけだと論理立てて考えちゃうんですよ…スケールだったり、ノート的に次はこうなんだっていうセオリーについつい足を取られちゃうと、TROPICAL GORILLAみたいな曲はできないですね。Cim(TROPICAL GORILLA/Ba)は逆に学術的な音楽理論がまったくないから、それが思い切り良くて気持ち良かったりするんですよ。あ、これ悪口ではないですからね…お互い頭悪いとは言ってますけど(笑)…そこがね、ホントにスカッとするんですよ。「全然気にしなくていいじゃん、コード進行なんて」っていう感じで。もともと、彼はベーシストだからベースで曲を作ってるんで、彼の中でコード進行は二の次なんですよ。“鳴り”として気持ち良ければ。
カトウ:初期衝動感が半端ないです!! 小学生ぐらいの勢いを持つ人ですね(笑)。
ヒダカ:そいういった意味では大槻ケンヂさんに近いんだなと。前に大槻さんもベースから曲を作るって聞いたことあるから。Cimとは全然出てくるものが違うけど、初期衝動感は何か似てますよね。あ〜、TROPICAL GORILLAって筋肉少女帯なんだなって思いマシータ(笑)。
カトウ:(笑)新しい解釈だね!!
ASPARAGUSからは論理と感覚を成立させることを学んだ
──(笑)では、ASPARAGUSにはどんなところを学びましたか?
ヒダカ: ASPARAGUSに関しては、みなさんライヴを観ればよく判ると思うんですけど、とりあえず何やってるかさっぱり判らない(笑)。3人しかいないのに、全員何やってるか判らないという凄いバンドです。パッと見ね、YOUR SONG IS GOODのほうが何やってるか判らなそうに見えるんですけど、実はYOUR SONG IS GOODのほうが何プレイしているか判りやすいんですよ。でも、シノッピー(渡邊忍・ASPARAGUS/Vo&G)も自分が使ってるコードの名前とか知らないんですけど、彼の中で独自のセオリーがちゃんとあるんですよね。ある意味、TROPICAL GORILLAと対極にいるというか。でも2バンドともPOPだったりキャッチーだったりというところはちゃんと持ってるんですよねぇ。だから、アプローチの仕方で全然音楽の面白さも変わってくるんだなと思って、ヒッジョーに勉強になりましたね。
──わりと『GHOST』はASPARAGUSのコード感に影響受けた感じがしたんですが。
ヒダカ:そうですね。もともとそういうコード感で作っていたんですけど、去年の段階では上手くいかなくて。一緒にやったことで、ひとつのヒントをもらいましたね…「あっ、こうすればいいんだ」っていうのが判ったというか…ASPARAGUSがやっぱり一番天才肌ですね。J×J×(YOUR SONG IS GOOD/Organ&Vo)とCimにはホントに悪いんですけど(笑)…シノッピーは天才ですよ。ノーベル賞もらっちゃう人みたいな(笑)。
──ヒダカさんは音楽を論理立てて作るタイプですよね?
ヒダカ:はい、今までは。でも、スプリット3部作を経て「論理なんか捨てちゃえよ」っていう時と「論理をこう転ばせば面白くなる」っていうのを使い別けられるようになったと思います。理論派か理論派じゃないかっていうのは、どちらが正しいとか間違ってるとかそういう問題ではない…どっちも面白いぞっていう。
──なるほど。理論とフィーリングとの狭間がいいと。そのバランス感覚がスプリット3部作を通して養われたわけですね。
ヒダカ:そうですね。今まで論理で曲を作ってたんですけど、そこに頭の中で鳴ってる音をフィーリングで足すこともできるようになったというか。それは結構ASPARAGUSがそうなんですよね。YOUR SONG IS GOODはやっぱりウチのように論理があって作ってるんです。TROPICAL GORILLAとやったことにより、その論理が少しなくなり、で、ASPARAGUSはその両方を上手く成立させてたんですよ。それを見てて何となく、頭の中で鳴ってる気持ちいいコード感をちゃんと音にするっていうことが上手くできるようになったと思うんです。そこは凄い収穫でした!!
メンバー間で芽生えてきた共通意識
──曲はどうやって作ってるんですか?
ヒダカ:歌と簡単なコードだけを持っていって、みんなでセッションしながら作ってますが、結局はだいたい俺とクボタさんで完成させています…他の3人はあんまり役に立ってないです(笑)。
マシータ:あの〜あんまりそれ書かないでもらってもいいですか?(笑)
ヒダカ:いや、遠慮なく書いてください!!(笑)
──(笑)先に歌があってそれにオケを付けていくんですか? それともコード進行があって、歌を付けていく感じですか?
ヒダカ:いや、だいたい歌が先にあって、それを元にクボタさんとコードを付けたら、味付けを各パートにお任せします。任せた結果、ひどかったらビンタしながら直すみたいな(笑)。
カトウ:そのビンタされてるのはだいたいオレっすね!!(笑)
ヒダカ:今回に関しては、アンスラックスみたいなギターをハメてくれって言ったのに、イングヴェイ・マルムスティーンみたいなソロばっか弾いて、俺に怒られたっていう(笑)。
カトウ:どうしてもメタルが出ちゃうんです…「そこピロピロじゃなくてガシガシだぞ」って言われて(笑)。
ヒダカ:スラッシュっぽくしろって言ってるのに、王道なメタルが出てきちゃうんですよ(笑)。
──そういう、音に関する表現の言葉って聴いてるものへの共通項がないと人それぞれ捉え方が違うじゃないですか?
マシータ:あー、でも特に最近はみんな意識的に共通してきてると思いますね。
ヒダカ:前のアルバムの時は判らないものが結構あって…マノネグラみたいに弾いてくれって言ったら「それ、誰?」みたいなね…俺とクボタさんとケイタイモしか判んないみたいな。で、逆にツェッペリンみたいにしてくれって言ったら、俺とマシータとタロウしか判んないんですよ。そこら辺はね、5人いるから、2対3だったり、3対2だったり、意見が割れちゃうんですけど、そういうのが最近減ってきました。
──減ってきたっていうのはみんなに共通の理解が生まれてきたってことですか?
ヒダカ:いや、そうじゃなくて、自分が強制的に聴かせてるんです(笑)。寝てる間に耳元でこうね。
マシータ:調教されてますね(笑)。
──メンバーのみなさんはヒダカさんからこういうの聴きなさいって渡されるんですか?
マシータ:もちろんヒダカが一番音楽的知識を持ってるんですけど、オラたちにもあるわけじゃないですか。だから、お互いこれが好きだったってのを言い合ったりして。
ヒダカ:良いCDを見つけたらやっぱりみんなに聴かせますけど…いっつもマシータは、クボタさんが1年前にぐらいにオススメしてたヤツを1年後に「これ最高です!!」って持ってくる(笑)。
マシータ:さも自分が見つけてきたかのように(笑)。
ヒダカ:もの凄いクボタさん大激怒ですよ(笑)…その後はね、石ころ帽子の刑に処されますね(笑)。
──マシータさんは薦められると聴きたくなくなるタイプなんですか?
マシータ:その時はうんうんって聴いてるんですけど、忘れちゃうんですよね(苦笑)。
ヒダカ:記憶力が異様に低いんですよ…一番受験に向かないタイプ(笑)。
カトウ:頭の中に消しゴムがあるんです!!(笑)
──(笑)では、年々共通意識っていうのが出てきているわけですね?
ヒダカ:スプリット3部作で第3者とバンドをやる中で、共通項がないと作業は難しいよねっていうのが意識できましたね…だからやっぱり、やって良かったなと。
──『GOHST』は歌からあったんですか?
ヒダカ:歌からあったハズです…1年以上前にできた曲なので、もう憶えてないですけど(笑)。
何唄っても、何弾いてもお面してるから大丈夫
──この曲は1回ポシャってるわけじゃないですか? そこからまた完成させるに至までに難しかったとこってどこなんですか?
ヒダカ:何か作った時の感情が減っちゃうんですよね…自分でも日々忘れて行っちゃうし。これってちょうど『DAY AFTER DAY』のシングルを出した頃にできた曲で…前のアルバムが意外と評判良く、どんどんステージがでかくなっていってる頃だったんです。「俺たちヘタクソだし、お面のオジさんたちなのにイベントとかフェスで何万の前で演奏していていいのだろうか…?」っていう自己矛盾がもの凄くある時期だったから、『DAY AFTER DAY』と合わせて意外と暗い曲なんですよね。でも、あの曲はBPMが速いから印象として暗く感じないですけど、『GHOST』はミドル・テンポなんでより、大人らしさというか暗さが強調されてる感じが自分たちでしてて。それで「こんなに暗い曲やってもなぁ、俺たちレディオヘッドじゃないしなぁ(笑)」ってのがあって…基本的に自分の悩みをドロドロと一方的に垂れ流すのは嫌なので、躊躇してたんですよね。
──なるほど。それができるようになったのは何か心境の変化があったんですか?
ヒダカ:変化というより、1年経って冷静に考えてみたら「あー、あの時こんなに暗かったんだ、俺?」みたいに客観的に考えられるようになったってことですよね。
──ではいろんなことを経験して、精神的にひと回り大きくなれたと。
ヒダカ:はい。自分の陰な部分を出したからといって、それを「嫌」っていう人は別にいないんだなぁと思えるようになったんですよ…だってそもそも、コアでミクロな志向性を持った音楽を好き好んで聴いてきた連中が、2万、3万の人間の前で演奏することのほうがおかしいんですから(笑)。それこそね、この間スペースシャワーTVのイベントでMr.childrenとか平井堅さんと一緒に出たんですけど、俺たちが存在するのはよく考えればおかしいんですから(笑)。かと言って、出たくないわけじゃないんですよ。Mr.childrenや平井堅さんだって実際のステージを観ればやっぱり完成度が高いから勉強になるし、POPだし。キャッチーだと思う基準が違うだけであって、POPだっていう意味では並列なんですよね。そこが凄い吹っ切れたというか。たまたまこっちはTHE ADICTSやTOY DOLLSをキャッチーと思って生きてきたからこうなっただけで、エリカ・バドゥやスティーヴィー・ワンダーをキャッチーだなって思って生きてきた人もいるわけで。そこにそんなにこだわる必要はないなと思ったんですよ。
──そこで分けるのは変だと。
ヒダカ:はい。スプリットやった3バンドも全然違いましたからね。Cimにとっては例えば、SHAM69とかStiff Little Fingersみたいなのが全然キャッチーになるでしょうし、それはたぶん、ASPARAGUSにとっては全然違うだろうし。YOUR SONG IS GOODが聴いてるカリプソがASPARAGUSやTROPICAL GORILLAにとってキャッチーに聴こえるかって言ったらそうじゃないだろうし。皆それぞれのキャッチーさがあって、そこを目指してるっていうか。友達同士でもこんなに違うんだから、そこをあんまり気にしなくてもいいのかな? って吹っ切れマシータ。
──それってなんか「何をやってもBEAT CRUSADERSだぞ!!」っていう強い意志が確立したように聞こえますけど。
ヒダカ:そうですね。何唄っても、何弾いても「お面してるから大丈夫か」っていうね(笑)。
──(笑)結局はそこなんですね。
ヒダカ:はい。そこなんです(笑)!!
胸をグッと締め付けてしまうメロディを常に模索してる
──イントロのギターフレーズからかなりの哀愁を漂わせていますが。
ヒダカ:はいはい。中年の哀愁が出てますね…『おふくろさん』、もう唄えないみたいなね(笑)。 (一同爆笑!!)
──はい(笑)。あのフレーズはサビでも出てくるし、この曲のキーポイントになっていますよね?
ヒダカ:ウチはわりと裏メロ思考なんで、主旋律の裏で別のモノが何か鳴ってるのが好きですね。
──キーボードもいいメロディ奏でてますものね。
ヒダカ:そうですね、鍵盤もまた全然違うことやってるんですけど、全員が合致した時に1個の塊になるってのが理想ですね。それは、昔コーネリアスが8cmCDを2枚出して、同時にかけてくれってのがあったじゃないですか? 『スターフルーツ』と『サーフライダー』ってやつ。あれかっこいいじゃないですか…単独でかけてもかっこいいし、同時にかけてもかっこいいし。そういう、何かを抜いて聴いても成立するのって凄いかっこいいなって思ってて。ウチでもその精度は高くなってきたと思います。今まではなんとなくそういうのをやってたんですけど、より狙ってできるようになったんじゃないかニャ、と。
──聴いてるこっちも飽きないですしね。聴く度にいろんな発見があるので。
ヒダカ:よく考えればビートルズの頃からあることなんでしょうけど、俺らなりの裏メロ感みたいなものはだいぶ掴めてきマシータ。
──その裏メロも手伝ってか、サビの歌メロが凄くいいですよね。こう胸の奥から込み上げてくるような感覚があって。
タロウ:それ、気持ち悪いってことですか!?(笑) 胸のムカつきがあってオロロロ〜ってもどしちゃうみたいな!?(笑)
──違いますよ!(笑) 気持ちが込み上げてくるってことですよ。
ヒダカ:そうですよね(笑)。よく考えるとそもそもそれがエモの定義だったと思うんですよね…結局今ってスタイルの部分でエモって言われがちじゃないですか? だから、実際元祖的にエモをやってる人たちってどんどんそこから離れちゃってるし。ウチもそこは失いたくないですよね。自分の中でも込み上げてくる感じのメロディ、コード感を常に模索してます。YOUR SONG IS GOODもライヴはエモいじゃないですか? CDでもたまにエモい瞬間ありますけど、やっぱりライヴを観てるとみんなね、グッと胸を締め付けられるようなエモい瞬間があるんですよ。もはやジャンルのエモではなく、そういうことでいいんじゃないかなと思いますね…新しいエモの提唱! で、それをエモと呼ぶのがはばかられるなら、名前は“エコ”とかね。
──意味が違っちゃうじゃないですか!(笑)
ヒダカ:ははは。“エコロック”みたいなね…ap bankか? みたいな(笑)。まぁ、今はたぶんそれに対する呼び名がないからみんな上手く表現できないでしょうけど。
マシータ: ちなみに、ASPARAGUSのシノッピーはそういうのを“グリップ系”って言ってますよ(笑)。
──“グリップ系”?
マシータ:胸を手でグッと掴んでしまうじゃないですか? そういうメロディって、グッと掴むってことで“グリップ系”(笑)。
──はいはい。なるほど。いい表現すね、それ。
ヒダカ:じゃあ“グリップ系”でいきますか。でも、俺らのは親指を人差し指の下にくぐらせたグリップですけどね(笑)。
──(笑)ビーグリップってことですね?
ヒダカ:上手いですね!(笑) そうしましょう!
裏側の悲しみが見えない底抜け感は俺たちにはいらない
──他のメンバーさんは『GHOST』で苦労したところってありますか?
ヒダカ:マシータは今だに怒られてるもんね、ライヴで(笑)。
──そうなんですか?
マシータ:そうなんすよ…この曲は。最後の繰り返しでかなり“グリップ”して終わる予定なんですけど、特に何回やって終わるって決めてないんですよ。だから、自分はこのタイミングで“グリップ”しきったって思って終わらすんですけど、他のメンバーはまだ“グリップ”しきってないみたいでズレちゃう(笑)。
ケイタイモ:そうなんですよ! 同じタイミングでエクスタシーを感じたことはないです…一緒にイッタことないみたいな(笑)。
──でも、それって難しいですよね。同じタイミングで終われるってのは。
ヒダカ:そうそう。でもそこに無限の可能性があるから面白いっていうか…意外なところで一致したりしますからね。スペースシャワーTVのイベントで、俺たちのステージにYOUR SONG IS GOODを迎えて、一緒に共作曲をやったんですけど、それが思いのほか“グリップ”になったんですよね。武道館にBEAT CRUSADERSとYOUR SONG IS GOODが立ってるっていう構図も面白かったから、それはそれで“グリップ系”だったと思いますね(笑)。
──(笑)“グリップ系”、これはかなり重要なキーワードですね。
ヒダカ:みんな普段は照れちゃうからあんまり表だってそういこと言わない人たちだけど、ライヴでは絶対どこかの瞬間で“グリップ”してるから、対バンであれ共演であれ、そういう瞬間があるって面白いですよね。それがお客さんに波及したって伝わる瞬間もあるし、逆に今ハズしたねって判る瞬間もあるし…ライヴはそのやりとりが面白いです。
──また日本人が作るメロディほど“グリップ”するものはないですものね。
ヒダカ:ホントそう。俺個人的にはアイリッシュに近い気がするんですけどね…アイルランドの“グリップ”感はね、やっぱりグッと来るじゃないですか。イギリスじゃなくてアイルランド! みたいなね。
──そうですよね。唄い上げてる感じですよね?
ヒダカ:そうそう。何かアイルランドの音楽って能天気に聴こえないじゃないですか。The Poguesだって相当能天気にやってるハズなのに、何故か哀愁が漂っちゃうみたいなね。あの感じに近いんじゃないかなって思います。やっぱNOFXみたいな底抜け感ってなかなか出せないんですよね…NOFXなりの哀愁もあったりするんですけど…だからたぶん、裏側の悲しみが見えない底抜け感は俺たちにはいらないってことですよね。ニール・ヤングはいいけどブライアン・アダムスはダメみたいな?(笑) たぶん基準ってそこなんですよね…背景にあるエモさが見えてくるっていうか。だから、そういうバンドでありたいし、そういう音楽をこれからも聴きたいなと思います。まぁ、今のブライアン・アダムスはある意味エモいのかもしれないです…なんて言うんですか、長渕剛さん的なね(笑)。
2万人の前でも200人の前でもやることは変わらない
──歌詞もまた意味深な感じになってますけど。
ヒダカ:歌詞は最近書いたんです。前はもうちょっとストーリー性を持たせようと思って書いてマシータけど、最近はストーリー性すらももういいのかなぁと思ってて…ちょっと不親切なモードにはなってますけど(笑)。前は誤解されないようにストーリー性を持たせてたんですけど、今はもう誤解されちゃってもいいかなっていう、そういう吹っ切りも出てきましたね…だって、ASPARAGUSの歌詞なんかメチャメチャ暗いんですよ…MCはあんなにふざけてるのに!!(笑) 最近なんかくまのプーさんのモノマネまでしてて(笑)…全然似てないのに!!(笑) わりとそれはどのバンドもそうで、YOUR SONG IS GOODもTROPICAL GORILLAも「暗いね」って言われちゃうような歌詞をちゃんと歌い切ってますよね。
──じゃあ、歌詞も吹っ切ったことにより、新しいヴィジョンが見えたと。
ヒダカ:そうですね。自分でもどっちが言いたいのか判らない時があるんですけど、それでいいんじゃないかニャ、と。いちいち結論を持って言わなくてもね、やりながら答えを出していけばいいんじゃないかなって思ってます。誤解を恐れて書いちゃうと上手く書けないモノってあると思うんですよ。
──それは、聴き手によっては取り方が全然違ってもいいっていう?
ヒダカ:はい。その結果「そんなことを唄うBEAT CRUSADERS嫌いだ」って言われてもいいじゃんってくらいの覚悟ですよね。リスナーって鋭いから、嘘を唄ってたらしらけちゃうと思うんですよ。だから、そこは正直に。
──今の気持ちをストレートに書いているということですよね?
ヒダカ:俺なりのストレートですけどね…青春パンク的なストレートとは違うと思うんですけど。でも、別にそう思った人がいてもいいし、どっちに取ってもらってもいいです。
──そのどう取られてもいいっていうのは1、2年前にはなかったんですか?
ヒダカ:なかったです。どうしても升が広がれば守りに入ろうとしちゃうじゃないですか? せっかく何万人の前でやるんだからみたいな発想になってしまっていたんですけど、結局2万人いても200人いてもやることは変わらないんだから、できるだけ等身大の自分たちをいつでも見せれるようになれればと。そこら辺の吹っ切りはできるようになりましたね。COUNT DOWN JAPANで2万人の前でTROPICAL GORILLAと共作曲をやったんですけど、ライヴハウスという狭い空間の中でやってたことが、2万人の前になったら急にいい子ちゃんになっちゃうってのはおかしいでしょ?
──おかしいですね。
ヒダカ:やっぱりそこはスプリットをやったバンドたちから学んだ姿勢ですね。J×J×なんかは何万人の前でやろうとMCが長いですからね(笑)。
──2万人の前と200人の前でやるのは気持ち的には違いますか?
ヒダカ: 演奏する緊張感は変わらないですけど、誤解される覚悟が違いますね。オマ○コールなんてそうじゃないですか? ウチを観に来た200人の前でやれば誰も文句は言わないと思いますけど、フェスとかの不特定多数の前でやれば誰かしら不快に感じる人はいると思います…でも、やると思いますけど(笑)。
たくさんの人に聴いてもらうにはハートを支える技術が必要
──2曲目の『SECOND THAT EMOTION』についても聞きたいのですが。これは、またもやセルフカヴァーという。
ヒダカ:はい。ASPARAGUSがカヴァーしてくれた曲ですけど、そのアンサー・ソングとして(笑)。
──インディーズ時代の曲ですよね?
ヒダカ:シングルのカップリングはインディーズ時代のリメイクという暗黙の了解があったので、何やろうかって考えてた時にASPARAGUSが『SECOND THAT EMOTION』やってたから、これいいんじゃないかってことで。俺たちが本物だってとこを見せようと思ったんですけど、意外とやってみたら難しかったっていうね(笑)。
──あれ? そうなんですか?
ヒダカ:ルーフトップ読者の方々は、インディーズ時代のBEAT CRUSADERSを知ってると思うんですけど、前のドラムのarakiの完コピは、マシータもできなかったんですよ…ASPARAGUSの一瀬もあのドラムは難しいって言ってました…あんなに上手いのに。arakiが下手すぎて逆に難しいっていうね(笑)。
マシータ:究極の一筆書きドラムです。たぶん、本人も二度と同じように叩けないんじゃないかと(笑)。
──芸術作品みたいなものなんですかね?
マシータ:あれは芸術ですね!
ヒダカ:インディーズの善し悪しですよね。味で上手くいく時もあれば、逆にちゃちく聴こえる時もあるというね。インディーズ時代のBEAT CRUSADERSはその危ういバランスの上で成り立っていたんだなって(笑)。今は味でごまかしちゃダメだっていう厳しさが、大人になるにつれて出てくる感じです。
──今は確かな技術を持ってないとってことですよね?
ヒダカ:そうそう。アートをちゃんとした技術で描かないとね、いけないワケですよ。ハートだけだったら、リスナーがそっぽ向いちゃうと思うんです。だって、メジャーにいて「できるだけ多くの人に聴いてもらおう」ってつもりでやってるんだったら「そっぽ向かれてもいい」って思ってやるのは矛盾した考えだと思うんで、1人でも多くの人に聴いてもらうには、そのハートを支える技術がないとまずいということで、マシータさんをスパルタ教育してたら…去年足を壊しちゃったと(笑)。
──(笑)大変ですね。この曲をカヴァーするにあたって、何か狙いみたいなものはありましたか?
ヒダカ:なるべくやってることを変えないで、どれだけ鳴りが違うものが作れるかってところに注意しました。だから、レコーディングの録り音とかはじっくりやりましたね。で、プレイはサクッとやって…一筆書き感覚でね。
──ちゃんと現代版BEAT CRUSADERSナンバーにはなってますよね。
ヒダカ:はい。そこに翻訳した感じがないとカヴァーしている意味がないので。マシータさんなりの一筆書きは出たんじゃないかと思います。
マシータ:はい。おそらく。
ヒダカ:珍しくパンチ・インしなかったみたいな(笑)。
カトウ:マシータの新たな一面ですね(笑)。
──まさに一筆書きで録れたと。
ヒダカ:普段はガンガンパンチ・インするんで、1回エンジニアさんに呆れられたんですよ(笑)。
マシータ:「どんだけパンチ・インすれば気が済むの! どぉんだけーっ!?」みたいなね…もうパンチ・インだけの別料金取ろうかってくらいに怒られて(笑)。
──え? そうなんですか? 聴いてるとマシータさん上手いな〜。タイトなドラム叩くな〜って思いますけどね。
マシータ:あららららら! それは嬉しいお言葉ですけど、現場じゃすっごい怒られながらやってるんすよ…どうやらリズム的に突っ込み癖があるらしくて。
──個人的にノリが凄い好きなんですけどね。
ヒダカ:それは、俺のノリが好きだってことですよ(笑)。
──(笑)そうなんですね。話は変わりますが、5月末にはアルバムの発売も控えているという。
ヒダカ:はい…遂に禁断の(?)フル・アルバムが発売されます!
──これがまた大ボリュームで、19曲も収録されるんですね?
ヒダカ:初回盤はスプリットの共作曲が1曲づつ入るので、通常盤は16曲です。それでもBEAT CRUSADERS史上最大のスケールとボリュームですよ。さらにかなりの濃厚さなので、是非とも聴いて頂けたらと思います。
──では、スプリット3部作を経ての集大成がここにすべて入っていると。
ヒダカ:そうですね。それがもうカオティックに無秩序に入っているので(笑)、是非! 楽しみにしていてください!!
GHOST
DefSTAR RECORDS
初回盤:DFCL-1366〜67 1,500yen (tax in)
通常盤:DFCL-1368 1,020yen (tax in)
【CD】
1. GHOST
2. SECOND THAT EMOTION
【初回盤DVD】
1. GHOST (MV)
2. GHOST (LIVE)
3. DAY AFTER DAY (LIVE)
4. TONIGHT, TONIGHT, TONIGHT (LIVE)
4.18 IN STORES
Live info.
fuzz maniax supported by smart
ACT:BEAT CRUSADERS / bloodthirsty butchers / チャットモンチー / opening act:藍坊主
4月4日(水)東京:LIQUIDROOM
OPEN 17:80 / START 18:00
TICKETS: advance-3,000yen (+1DRINK)
【info.】ハイウェーブ:098-942-2777(平日10:00〜18:00)
SPACESHOWER TV presents "World Ride Live Vol.1"
ACT:BEAT CRUSADERS / マキシマム ザ ホルモン / CURSIVE (from USA)
4月27日(金)東京:SHIBUYA-AX
OPEN 18:00 / START 19:00
TICKETS: advance-4,000yen
【info.】ハイウェーブ東京:03-5464-1535
ARABAKI ROCK FEST.07
4月29日(土)宮城:エコキャンプみちのく
OPEN 9:00
【info.】ARABAKI PROJECT(ジー・アイ・ピー内):022-222-7355
BEAT CRUSADERS presents『サーガは気まぐれ』
ACT:BEAT CRUSADERS / YOUR SONG IS GOOD / TROPICAL GORILLA / ASPARAGUS
5月13日(日)沖縄:ナムラホール
OPEN 17:00 / START 18:00
TICKETS: advance-2,500yen
【info.】ピエームエージェンシー:098-898-1331
BEAT CRUSADERS OFFICIAL WEB SITE
http://www.beatcrusaders.net/