ストラングラーズ、15年振りの来日公演決定!
英吉利のサムライ、ジャン・ジャック・バーネルかく語りき!!
ジャン・ジャック・バーネルはそこに立っていた。知的であり暴力的であること、黒と白の間を、善と悪の間を、男と女の間を、生々しい体温と冷たい機械の間を、彼はバリバリと歪んだベースの音で切り開いてきたのだ。ストラングラーズの活動開始から30年以上の時が流れている。その間にすっかり世界の情勢は変化し、東と西、右と左という対立構造は古臭い2元論となったが、今だからこそ訊ける、語れることがあると思う。ストラングラーズは今もそこにいて、そんなバンドであり続けている思う。(interview:吉田 肇/PANICSMILE)
創造的な行為にルールはあるべきではない
──最新作『Suite XVI』、最高に恰好良くて聴きまくっています! 僕は日本でPANICSMILEというバンドでヴォーカルとギターをやっている吉田 肇と申します。僕が最初に聴いたストラングラーズのアルバムは『DEREAM TIME』(幻夢)で、その後の僕の音楽観にかなり影響を与えました。その当時、まさかストラングラーズのメンバーであるあなたにインタビューできるとは夢にも思っていませんでした。何卒宜しくお願い致します。
J・J:こんにちは、ハジメ。回答が遅くなって申し訳ない。ところで、「ハジメ」というのは空手を始める時によく使われる用語だよ。
──僕はストラングラーズの一貫したポップ・センスが大好きです。実際にあなたが影響を受けたアーティストを教えて下さい。
J・J:これは大まかな感じの質問だね。もちろん、長い間いろいろな影響を受けてきたし、中には自分のマインドに長く影響を与え続けているものもある。ストラングラーズのサウンドを一緒に作ってきたバンドのメンバーそれぞれが違った影響を受けてきているし、彼らのことを考えると答えにくいね。ただ、長く一貫して影響を受けている音楽ということでは、ドビュッシー、サティ、ショパン、ザ・ドアーズ、ザ・フー、ジャンゴ・ラインハルト、ジャック・ブレル、クラフトワークかな。
──デイヴ・グリーンフィールドさんの音楽的バックグラウンドを教えて下さい。また、彼はジャズやクラシックの教養があるのでしょうか?
J・J:デイヴはまったくの独学だよ。最初に始めた楽器はギターだったんだよ!
──僕は、全作品を通してある種の音楽的なマジックを感じます。作曲クレジットがメンバー全員の名前になっているのですが、作曲作業はジャム・セッションからスタートするのでしょうか? またその独特の演奏に乗るヴォーカル・ライン、歌詞などは曲よりも先に作られるのでしょうか? もしくは曲が構築されてから乗せられるものなのでしょうか?
J・J:ソングライティングにルールはないよ。創造的な行為にルールはあるべきではないね。ジャム・セッションからアイデアが生まれる時もあるし、リズム、リフ、歌詞、メロディ、テーマといったものから曲が始まっていくこともある。私がバンドに対して何かを提示する時は、もしそのアイデアが受け入れられ、発展していけば、それはバンド全体のものになると判った上でのことなんだ。
──僕も三島由紀夫の小説を読み、彼の「盾の会」の事件に思いを馳せることがあります。また、学生運動当時の全共闘学生やその後の日本赤軍の事件にシンパシーを感じることがあります。この2つはやり方や思想は違うにせよ、日本を変えていこうとする動きだったと思うのですが、あなたはこの60年代、70年代の日本の状況をどう思われていましたか?
J・J:三島は右翼だと考えられていたけれど、在日米軍基地の現状を変えなければならないという意識基盤は当時の左翼学生と共通していた。米軍基地を日本から撤退させる、その理由は違ったけれどね。当時はベトナム戦争を背景として、まだ資本主義と共産主義のイデオロギー闘争というものがあったんだ。
──またちょうど、ストラングラーズが初来日した頃は日本社会のそういった焦燥感が落ち着き始め、80年代という悠長な時代を予感させる時期だったと思うのですが、あなたはその空気を感じ取っていましたか? 「SOMETHING BETTER CHANGE」を3回連続で演奏したというエピソードは、僕達のような後の世代にも伝わっています。僕はその当時9歳で、リアルタイムで知ることはできませんでしたが。
J・J:我々が初めて日本に行った時は、人々が行儀よく、思慮深いことに驚いたものさ。しかし、ストラングラーズのコンサートでは、そういうことは期待していなかったんだよ! イギリスとアメリカの後では、そういう状況に慣れていなかったのさ。イデオロギー闘争が終結して、人々は大量消費に流れていった。資本主義の勝利だね。
ルネッサンス的人物としての三島由紀夫に興味がある
──世界的にもそうだと思うのですが、現在でも日本では馬鹿げた予定調和な商業主義音楽に拍手し、お金を投じ、刹那的なバカ騒ぎをするのがメイン・ストリームの現状です。音楽を通して「NO」を言っているバンドは、メイン・ストリームでは皆無に近いです。ただ、音楽以外の表現行為において(例えば小説や映画など)敗戦後の日本をもう一度見直して、日本人のアイデンティティを見つめ直そうというメッセージを受け取ることがあります。このような現状に対してのあなたの意見を聞かせて下さい。
J・J:この質問は理解できているかよく判らないけれど…。もし、あなたが言おうとしていることが「メイン・ストリームの音楽はいつも商業的な音楽に支配されている」ということであれば、答えは「もちろん」さ。これはどんなポピュラー芸術でも同じことだ。定義として、売れるものは商業主義的だからね。しかし、もしあなたが「メインストリームにおいて、誠実さというものが入る余地がない」というのであれば、私はいつもそうとは限らないと思う。また、何かがコマーシャルなものであるためには、多くの人にアピールするために難しいものであってはならず、エンターテインメント性というものを帯びてくる。そのエンターテイメント性というのは、非商業主義的音楽には余りないものではあるが、それゆえに、時に商業主義的な音楽と同様、非商業的音楽は退屈なものにもなり得る。言うべき大切なことがあるのであれば、それを言うことは難しくなくてもいいのではないかな。
──ストラングラーズはその楽曲やアルバムの中で、様々な世の中の現象や思想や観念をテーマとして取り上げてきました。アメリカでの事件「BOSTON STRANGLER」(ボストンの絞殺魔)からバンド名を付けたり、UFO現象やMIB云々をキリスト教批判の比喩表現として扱ったり、オーストラリア原住民アボリジニの思想哲学からインスパイアされた作品であったり、また三島由紀夫に捧げた楽曲や、はたまた日本人殺人犯・佐川一政を取り上げていたりと多種多様です。こういった、いわゆる世間一般ではタブー視されがちなことに光を当てようとする行為の根源は、メンバーの中に常にあるのでしょうか? もしくは、どなたかが突出してそういう傾向にあるのでしょうか?
J・J:もちろんグループとして、レコーディング前にはあるテーマに対して全員が同意していることが必要だよ。しかし、時にはあるテーマに対して誰かが他のメンバーより強い興味を持っているということはあるね。
──あなたが三島由紀夫のファンであることは有名な話ですが、それは彼の文学面でのファンですか? それとも行動者、「盾の会」の三島由紀夫に対してシンパシーを感じているのでしょうか?
J・J:私の三島に対する興味は、ルネッサンス的人物としての三島にある。彼は一次元的な人間ではなく、矛盾に満ちていた。彼はいろいろなことに興味を持っていた。一方では彼は繊細なアーティストであり、一方ではボディ・ビルダーであり、武道家だった。右翼的なナショナリストだったが、西洋的なスタイルを好んだ。父であり、同性愛者であった。作家であり、行動する人だった。
──僕は三島氏を単なる「右翼」ではないと思うのですが、あなたはどう思われますか?
J・J:君の意見に賛成するよ。
──最後の質問です。鍋島藩の『葉隠』はお読みになりましたか? “死ぬこと”に対する心構え(イコール、如何に生きるか)を書いた本であると思うのですが、この“尊厳ある死”という考え方はキリスト教社会ではやはりタブーな思想なのでしょうか?
J・J:オリジナルのものと、三島の作品と両方読んだよ。キリスト教では自殺はタブーではあるが、一方で気高く死ぬことはとてもキリスト教的だ。よく殉教と言われるものだ。死を静かに受け入れること、死を迎え入れることは偉大なるキリスト教の伝統だ。信仰のために磔にされたり、火炙りにされたりした数多くの人々のことを考えれば判るだろう。質問してくれて有難う。考えさせられる質問だったよ。日本にまた行くのが楽しみだ。OSU(押忍)。
The Stranglers 16th original album
Suite XVI
SIDEOUT RECORDS VSO-0029
2,300yen (tax in)
日本盤オリジナル・パッケージ/ボーナストラック「Instead Of This」「Death And Night And Blood」(いずれもライヴ・ヴァージョン)収録
IN STORES NOW
★amazonで購入する
★iTunes Storeで購入する(PC ONLY)
パンク/ニュー・ウェーヴシーンの真っ只中に登場し、過激なパフォーマンス、他のバンドとは一線を画す知的で革新的なサウンドで多くの音楽ファンを虜にしてきたザ・ストラングラーズが完全復活。ヴォーカルの脱退を経て録音された本作は、初期の激しさと最新のUKロックの理想的な融合を聴かせる傑作である。
「ひとつ確かなのは、今の俺たちは過去20年間で最高のストラングラーズだってことさ!」(ジャン・ジャック・バーネル)
「ジャン・ジャックが戻って来た! ストラングラーズが甦った。そして、新作はこのテンションの高さだ。パンクの初期衝動は、30年もその衝動を保ち続けたのである」(渋谷陽一/ロッキング・オン)
「最近、イギリスの若いバンド、いや、イギリスに限らず、ヨーロッパ各地から威勢のいい楽しいロックをやる連中が増えているのには昔からのファンのひとりとして嬉しいかぎり。でも、ベテランも随所でシブい輝きを見せているのも見逃せない。そんなシーンにまた大きな驚きだ。あのストラングラーズが甦った。実際は地道な活動を継続していたが、今回はジャン・ジャックが再び唸り声を上げたのだ。まったく、ベテランなんて怒られそうなアブナイ衝動を感じる気合いの一撃。でもって曲もイイから、さすがなんだな」(大貫憲章/KENROCKS)
Live info.
ザ・ストラングラーズ、15年振りに来日決定!!
SUMMER SONIC 07
8月11日(土)・12日(日)
東京:千葉マリンスタジアム&幕張メッセ
大阪:舞洲サマーソニック大阪特設会場
OPEN 9:00 am / START 11:00 am
TICKETS:東京=1日券 \15,000 / 2日券 \27,500 (税込・ブロック指定) 大阪=未定
http://www.summersonic.com/
The Stranglers OFFICIAL WEB SITE:The Rat's Lair
http://www.stranglers.net/
The Stranglers OFFICIAL WEB SITE in JAPAN:狂人館
http://homepage1.nifty.com/earlinblack/
SIDEOUT RECORDS WEB SITE
http://www.v-again.co.jp/sideout/