キラ星の如く輝く楽曲群を乗せた『stars』という列車の出発駅
『curtain call』に応えてから約2年。同胞afterpilotとのスプリット・ミニ・アルバム、メンバーの人事異動などの紆余曲折を経て、彼らが『stars』を携えて帰ってきた。随分待たされた感があるが、そのぶん前作より洗練されたメロディ、疾走感が前面に押し出されたサウンド・メイキング、よりまとまりを見せたバンド・サウンドでその1曲1曲がキラ星の如く輝いている万華鏡のようなこの『stars』。お決まりのカヴァーも2曲搭載し、これを傑作と言わずして何と言う!? 今回はソングライティングを手掛けるochii(vo, g)と、前作発表後にバンドに加わり、ochiiとは縁の深いsasaki(ds/これが人生初インタビュー!)に話を訊いた。エニ・ミニーがもてなす3分クッキングならぬ極上の3分ポップを召し上がれ!(interview:椎名宗之+植村孝幸)
生活密着型、爽快感満載のエニ・ミニー・サウンド
──単独作としては約2年振りとなりますが…。
katsuhito ochii:意外と間が空いちゃいましたね。
minoru sasaki:メンバー・チェンジとかもあって…あとは練習量とかも週一ペースでスローな感じなんで。でも、作り出してからは早かったかなと思うんですけどね。
──曲作りとライヴとレコーディングを並行活動して、7ヵ月掛かったそうですね。
ochii:まとめ録りしたらそんなに掛からなかったのかもしれないですね。レコーディング・スタジオが空いてなかったりして、2回に分けて録ったんですよ。
sasaki:最初は去年の夏で、2回目は今年に入ってすぐの頃に録りました。
ochii:最初に全部録ってたらもうちょっと出せるのが早かったと思うんですけどね。
──エニ・ミニーは生活と音楽を両立させるところに主眼を置いているんですか?
ochii:そうですね。生活臭のある曲が多々あると思うし…生活密着型なんで(笑)。
──『stars』というタイトルですが、確かエニ・ミニーの俗語が“星に願いを”という意味だったと記憶しているんですけど…。
ochii:ああ、よくご存知で。ベース(masaki naganuma)がイメージ先行で付けちゃって(笑)。
sasaki:僕も最近知ったんですけど(笑)。
──そこから派生して名付けられたタイトルなんですか?
sasaki:星がキラキラしているようなイメージではあるとは思うんですけど。
ochii:なんか因縁深い感じで…最初は仮タイトルだったんですけどね。1個1個単体の曲の集まりみたいな感じで、1語でタイトルを付けたかったというのがあって。
sasaki:enie meenie『○○』みたいな感じで、ズバッと。
ochii:それでとりあえずジャケを作っていったら…『stars』でいいんじゃない? って(笑)。
──前作『curtain call』同様、曲の粒がギッシリと詰まっていて、まさに捨て曲ナシという感じなんですが、何かコンセプト立ててレコーディングに臨んだんですか?
ochii:前作は歌モノっぽい構成で作ったんですけど、今回はどちらかと言えば若干変化を重視した、ドラマティックな曲を好んで入れましたね。
sasaki:展開重視みたいな、自然な感じで。
ochii:だから、前作のほうが意識してよりシンプルに作った感じがしますね。
──前作は、歌の輪郭がくっきりした曲が多かったですよね。
sasaki:ドラムも前任者が叩いていたんで、ちょっと違った感じですよね。僕はafterpilotとのスプリットでひねくれたドラムを注ぎ込み過ぎちゃったんで、基本に戻ろうと思って叩いたんです。でも結局、手数が多くてちょっと出しゃばってしまったところはありましたけど(苦笑)。
──そのひねくれたドラムというのは、変拍子を多用したりとか?
sasaki:曲に合わせて叩くんですけど、逆に曲の展開に合わせ過ぎて叩き過ぎたり…細かいところなんですけどね。普通に8ビートっていうのが余りなかったりとか。
ochii:逆にすんなりと自然な感じなんですけどね。
──狙ったりとかではなく?
ochii:そうですね。そういった意味では前作のほうが考えてたのかなって。
──「Mirage」や「Peaches」のように、曲の構成や展開が目まぐるしく変わる曲がとりわけ印象的で、それがこの『stars』における大きな特徴のひとつだと思ったんですよ。
ochii:そういう感じの曲が好きなんですよね。
sasaki:逆にみんなついて来れるのかな? っていう不安はありますが(笑)。
ochii:そこまで冒険してないよ(笑)。元々sasakiと一緒にハードコア系のバンド(16reasons)をやっていて、曲展開重視、シャウト一発のちょっとニュースクールみたいな感じでコロコロ展開が変わった音楽だったんですよ。どうしてもそういうのが根っこの部分にあるんですよね。
sasaki:結局、やってるスタンスは変わらないんですよね。
──sasakiさんのドラムになって、ochiiさんはかなり唄いやすくなったんじゃないですか?
ochii:そうですね。ホントいつも通りの感じが戻ってきたと言うか。
──sasakiさんのドラムだからこそ安心して歌に専念できたりとか?
sasaki:(ochiiに)そうか?
ochii:ライヴではちょっと(ドラムが)走っちゃうけど(笑)。走り過ぎて息をする時間がないところはありますけどね(笑)。
──転調の激しい曲はライヴでの演奏が難しいんじゃないかと単純に思いますけど…。
sasaki:そこはもう練習しかないですよ。
ochii:刷り込みですよね。癖をつけて覚え込むしかないですね。まぁ、自分で作っているので何とかなりますよ。
──曲の良さはさることながら、キーボードのアレンジが絶妙で非常に効果的なのも『stars』の特徴のひとつですよね。
ochii:前作ではキーボードが1個の楽器として主張する曲があったんですけど、今回は必要な部分だけに特化して使った感じですね。
──「Small Weeds」や「GO」でのキーボードの入り方は、まさに適材適音という感じですね。
ochii:その辺は打ち合わせ通りで、狙ったところですね。
──それはochiiさんが「ここはこうして」と細かく指示をするんですか?
ochii:いや、最初はとりあえず考えてきてもらって、その後にスタジオで「ここはこういう感じの音で」と伝える感じです。それで更に考えてきてもらって、2人で調整していくんです。「もうちょっと抑えようか?」とか、「このフレーズはこうしよう」とか。でも、結構言い過ぎてしまうところもあるんですけどね。
『stars』を完成させてようやくスタートラインに立てた
──幾度となくメンバー・チェンジを重ねて、今のエニ・ミニーはバンドっぽさが増した感がありますね。でも一番大きなポイントはsasakiさんの加入だったんじゃないかと思うんですが。
ochii:うん。やっぱり大きく変わりましたよね。
sasaki:「男臭くなった」って最初に言われましたね。余り男臭くなるのもどうかと思って抑えようと思ったんですけど、気持ちいいぶん叩いちゃったみたいなところもありまして…。それが功を奏したのかどうか不安ですけどね。
ochii:sasaki君はそんな器用なことは出来ないですよ(笑)。
sasaki:もう音がついていかないですもん。
ochii:チューニングとか判んないもんね。もう何年もやってるのに(笑)。
sasaki:“こういう音が気持ちいいな”っていうのは判ってるんで、ホント感覚でやっちゃってて(苦笑)。
──ライヴでは音源と違って激しい部分も多々あると思うんですが、音源ではそこまでの激しさがないぶん、押し引きや強弱のバランスが難しいんじゃないですか?
sasaki:いや、やっていてそんなに難しいとは思わないですけどね。
ochii:でも、何も考えてないじゃん(笑)。
sasaki:考えてるって!
──越中詩郎じゃないんですから(笑)。
ochii:sasaki君は何も考えてないってバンド内では通ってますから(笑)。楽しければいいんだろ? みたいなね。
──sasakiさんが加入して音楽的な変遷を経て、この『stars』を発表してようやくバンドがスタートラインに立てた感じもありますよね。
ochii:そうですね。ここからもっともっと広がっていけると思うし、メロコアやパワーポップという枠に括りきれない幅も出来たし、バンドとしての音楽的な偏りはなくなったという気がしますね。
sasaki:うん。これでやっと土台が出来たかなって思いますね。
──今後のバンドの在り方としては、良い意味で雑食性の高い音楽を志向していくという感じでしょうか?
sasaki:「何がやりたいんだ?」って言われそうですけどね、余り雑食過ぎると(笑)。でも、それでもいいかなと思いますね。“エニ・ミニー色”を出しつつね。
──お2人が考える“エニ・ミニー色”ってどんなところだと考えていますか?
ochii:何だかんだ言ってポップなところとかですかね。いろんなことをやってるようだけど、結局芯の部分はポップ・ソングだったりとか。最近はいろんな音楽を聴いて音楽的な意欲がどんどん高まっているので、手詰まり感っていうのがなくなってきてるんですよね。
sasaki:心強いなぁ。じゃあ、これまでと違う方向性のエニ・ミニーも出せる感じだね。
ochii:でも、そんなことを言いながらも何だかんだと3分ポップだったりして(笑)。
──この『stars』にしても、全10曲収録でトータルタイムが30分を切っているのが潔いですよね(笑)。これはポップの大原則に則っていると思いますよ。やはり余り長尺にはしたくないんですか?
ochii:今作ってる曲がかなり理想の尺ですね。逆に長い曲の場合はクラシックみたいに長くないと中途半端な感じがするんですよ。ロックで4、5分って、何だか中途半端に終わっちゃってる感じがするんですよね。だったらもっとパキッと切ったほうがいいと思って。
──でも、展開を短くするとパーツを削ぎ落とす作業が難しいんじゃないですか?
ochii:僕自身が繰り返しとかに飽きちゃうんですよ。1番が終わってサビが終わってもう2番とか、そういう感じが出来ないんですよね(笑)。
sasaki:繰り返しはあるんだけど、リズムを変えたりとかしてるよね。
ochii:メロディを変えたりとかね。元来の飽き症が転じて何とか3分にまとまってる感じですね。
──では最後に、『stars』に関して読者に一言お願いします。
sasaki:ホント聴いて欲しいですね。
ochii:僕らはシャイですけど、シャイなりの素っ裸になった感じが出てると思うので。「見ないで」って言ってるのに何故か素っ裸みたいな(笑)。そういうイメージでライヴを観て欲しいし、アルバムを聴いて欲しいですね。
sasaki:もっと堂々としなよ(笑)。
──今回はツアーも地方まで隈無く回りますね。
sasaki:相変わらず土日祝日限定ですけどね。
ochii:ちょうどタイミング良くゴールデンウィークと重なったので、これなら遠くにも行けると思って。
sasaki:でもこの間、「福岡は飛行機で行く」って言ったら他のバンドマンに怒られましたけどね(笑)。「ツアーは車で回ってこそナンボのもんじゃい!」ってね。
ochii:でも現実的、時間的にムリなんです(笑)。でも、そういう行脚も必要だと思ってますよ。今回は久しぶりに遠くに行けるので、何か伝説を残したいですね。
sasaki:ドラム・ダイヴとか?(笑)
ochii:僕、昔sasakiとやってたバンドでドラムにダイヴして弁償したことがあるんですよね(笑)。そんな伝説を残せたらと思ってます(笑)。
1st full album
stars
LASTRUM MUSIC ENTARTAINMENT LACD-0105
2,310yen (tax in)
4.04 IN STORES
★amazonで購入する
★iTunes Storeで購入する(PC ONLY)
Live info.
"stars" tour 2007
4月21日(土)千葉LOOK【with creamstock, SKYBEAVER, AndMarkHer】
4月22日(日)熊谷Blue Forest【with creamstock, nature living, and more...】
4月28日(土)静岡WAVE【with FREAKYFROG, and more...】
4月29日(日)岡山CRAZYMAMA 2nd room【with FREAKYFROG, and more...】
5月3日(木・祝)名古屋APOLLO THEATER【with the chef cooks me, 24, RUFUS, and more...】
5月4日(金・祝)大阪福島2nd LINE【with the chef cooks me, RUFUS, Maegashira, and more...】
5月12日(土)福岡VIVRE HALL【with Autumn Leaf, fullcounter, and more...】
5月19日(土)宇都宮HEAVEN'S ROCK VJ-2【with ala, Fed Music (ex-ZARIGANI5), FREAKYFROG, THE CALLENDERS】
5月20日(日)仙台MACANA【with ala, Fed Music (ex-ZARIGANI5), FREAKYFROG, and more...】
5月26日(土)札幌BESSIE HALL【with 未定】
6月3日(土)東京代官山UNIT -tour final-【with riddim saunter, BANDWAGON, the chef cooks me】
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