ギター バックナンバー

nitt('07年3月号)

nitt

新しく環境が変わる人へ贈るnittからのプレゼント『NEW DAY』

広島出身の新田兄弟によるユニット“nitt”。結成後アジア6カ国を巡る音楽修業を敢行したり、タイ最大のロックイベント『FAT FES』に出演を果たす。この海外での体験が彼らにとって体で感じるリズムサウンドとの出会いであった。
どこか異国の香りを漂わせる心と体を踊らせるリズムアンサンブルは、ライブ会場に来たオーディエンスの体が自然と踊り出す程に心地よく、さすが兄弟とも言うべき2人の息の合ったハーモニーにその体を預けることができる。今年はライブハウスのみならず、様々な活動をしていくnitt。彼らの音楽探究の旅は、まだまだ終わらない。(interview:やまだともこ)


兄弟ユニットのメリット

──ではまず、Rooftopインタビュー初登場なので自己紹介を…と思いましたが、兄弟ですのでお互いを紹介してください。

新田篤(弟/Vo&G):お兄ちゃんは神経質です。神経質だけど適当です。よくわからない人です。

新田誠一郎(兄/Vo&G):篤は何を考えてるかわからない。何を考えているかわからないけど、意外と考えてる。

──今の話だとお互いまだ理解できていないところがありそうですね…。では兄弟でバンドを結成していてメリット・デメリットってあります?

:デメリットは詰まると2人で詰まってる。曲を作っていても先に進まない。ハマるタイミングが一緒なんです。メリットは言いたいことを言いやすい。

誠一郎:作る上で言いたいこと言えた方がいいですからね。他人だと考えが逸れると言いづらい時もあると思うんですよ。今は逸れてきてもどっかで締めようぜっていうのができるから。だよね?

:うん。

誠一郎:楽です。

──お2人とも幼い頃から聴いてきた音楽っていうのは一緒なんですか?

誠一郎:細かく言うと違うんですが、ポイントは一緒ですね。

──上京してからnittを結成されてますが結成したきっかけは?

誠一郎:元々やっていたバンドが解散した後も、バンドをやりたいっていう気持ちはあったんだけど、メンバーを探す作業とかが嫌だったんです。だから、全部自分でやってみようって思って…。それなのに自分では歌えない歌を作っちゃって、カラオケが上手かった篤に「歌って」って頼んだ。声が高いし。そういう安易な始まり。で、いろんなところにデモテープ送ったら前の事務所が気に入ってくれてやることになった。その時、篤は大阪で大学生だったから、卒業して東京出てきたらやりましょう!ってなったんです。なんかいいからやろうよみたいな、そういうノリです。

──じゃあまさかこんな多くの人の前で歌うとはって感じですね。

誠一郎:最初はその責任感はなかったです。聴いてくれてる人の思い出に残ったり泣いてくれてる人を見て、やっとみたいな。そういう風に思うんだなって。なかったね。

:初めはね。歌わなければならないから歌ってるみたいな。ちょっとやらされてる感じだった。いないんだったらしょうがないって(笑)。歌は好きなんですけど、伝えるまでは考えなかったから。

誠一郎:「篤のほうがマシ!」から始まってますから(笑)。


海外で学んだ“自分達らしさ”

──今回3年ぶり、4枚目のミニアルバム『NEW DAY』がリリースされますけど、音源からも十分楽しんでる感じが伝わってきましたが、実際のレコーディングは楽しくできました?

誠一郎:できました。楽しくやるように心掛けていたから。

──以前の作品から3年が経っているので、気持ちを新たにできたと思うんですが、他にどういうところが変わってきてます?

:前はカッチリカッチリだったけど、リリースがなかった間にもライブはやっていたからバンドらしさというところでも変わってきたと思いますよ。

誠一郎:ライブの雰囲気をそのままCDに閉じこめたかったので、そこはどうしようかいろいろ考えましたね。

──私は、nittのライブらしい、ゆらゆらとした感じがそのまま入っていたと思いましたよ。

誠一郎:一時、ライブとCDが違う! みたいなことを言われてたことがあるんです。CDの方が良かったのかライブが良かったのかはわかりませんが、その差を埋めようと思いました。今はライブでもCDと同じ事ができるよっていうところですね。

──『拍手を贈ろう』と『シリウス』はライブ音源を収録してますしね。

誠一郎:ライブ録音ってやったことなかったんですけど、ライブの雰囲気や、見たことないっていう人に対して、ライブだとこんな感じというのが伝わるものを入れたかった。

──篤さんがライブで見せる予想外の自由さが伝わってきます。

誠一郎:ライブ盤じゃない4曲だけだと、篤がただのさわやか青年みたいなので、そうじゃない人間だとわかってもらえれば。アルバムの中でいろんな顔を出したかったんです。でもライブ中に録ってるって思うと一瞬意識を失いそうになるんですよ。俺等も絶対に間違えない、でも固くならないって(笑)。ソロの場所間違えたらどうしようとか、歌はずしたらどうしようとか。弦切れたらどうしようと。でも意外とよく録れててビックリしました。

:僕の場合は、コール&レスポンスで長すぎたらどうしたらいいんだろうってそこばっかり。

誠一郎:僕「お兄ちゃんも前行けよー」って煽られて前に出たとたん、シールドがブチって抜けちゃって…。その音が入ってるんです…。

:だってねー。動く方のシールドが3メートル。アンプ側に繋ぐ方が5メートル。なんで動くほうが短いの? 普通逆だろ(笑)。

誠一郎:感覚的に抜けると思わなかった。どこまでも続いていると思ってた(笑)。

──ライブ録音としてはかなり思い通りに録れたと。

誠一郎:ライブ盤にしてはかなりいい。

:閉じこめられたな。

──『NEW DAY』はnittを取り囲む環境の変化や、幕開けとか季節的に旅立ちという意味が含まれているのかなと思ったんです。だからアルバムの1曲目で勢いというのも重視されたのかと思ったんですが…。

誠一郎:自分らの心境ともかぶったんですよ。事務所も変わったし、新しい作品を出すし、季節的にもそうだし。そういう気持ちを歌った曲を作ろうかって。この時期に環境が変わる人もいっぱいいますからね。

:不安だけど楽しいみたいな、ワクワクした感じになればいいですよね。

──全曲“written by nitt”になってますが、『NEW DAY』をメインに作ったのはどちらですか?

:これはアニキかな。

誠一郎:今まで作ったものよりわかりやすくしようって意図で作ったんだけど、楽曲的にかなり変わったから本当にこれでいいのかなとは思っていたんです。でも、間違ってなかったのかなって言うのはまわりの人たちに聴いてもらってわかった。シンプルだからそれが良かったのかも。

──他の曲はアジアンテイストだけど、この曲は「キラリ」とか「ユラリ」というフレーズも出てきますしポップですよね。

誠一郎:それぐらい軽い方が俺ららしい。

:プロデューサー的にはここでお客さんに振り付けをして欲しいらしいんですけど…。全然浸透させてないけど。(右手をクルクルと2回まわすしぐさ。ここで篤による振り付けが披露されるが、まったくリズミカルではない/笑)こういうの。…これ失敗しないかな(苦笑)。

──一では誠一郎さんと篤さんが作る曲で、明らかに違う曲のテイストってどんなところですか?

:僕が作る曲の方が明るいです。だから『NEW DAY』はアニキが作った中では珍しく明るい。

誠一郎:篤はポップでキャッチーなものを作ってくる。俺は基本的に暗い方が得意なんです。泥臭いのを聴いてるし、渋めの曲を作ってしまう。土着的な…そういうルーツがあるのを聴いてるから。基本、自分がやりたいことというのが、年をとっても聴いていける音楽。曲を作る時のベースは、どちらかが持って来たものに手を加えるという作業ですね。その方が質は上がりますから、まるまる1曲は最近作ってないですよ。作ってきた曲を客観視するヤツが一番近くにいますから。

──お互いが最初のリスナーですからね。ところで、私はギターに詳しくはないですが、誠一郎さんのギターはすごくいい音だと思うんです。あれは何ていうギターですか?

誠一郎: GRETSCHのCountry Gentleman。ギターって音もそうだけど、見た目がいいのも重要だから買うときは形で選びました。でも、実際音も良かったんですよ。

──だから余計にセクシーに聴こえるんですかね。

誠一郎:おっ。でも新品で買ったので、使い始めた当初は新人らしい安い音がしてたんですよ。

:大丈夫か? と思った(笑)。

誠一郎:馴染んでくると木が育っていい音になるんです。古くて状態が良ければいい音が鳴るんです。3〜4年してだいぶいい音になってきた。

──『遊べよコラソン』のギターフレーズとか聴いていてゾクゾクします。ところで、この曲の“コラソン”ってどんな意味なんですか?

:ポルトガル語で情熱とか心とか。

誠一郎:その時期に英語じゃない単語で歌を作ろうっていうのがあって。

──詞の中に出てくる「ノリノリのブラザー」はどんなイメージが?

誠一郎:それはねー。篤とタイのディスコに行った時に、一番前のお立ち台で腰をものすごく振って「フー!」って言ってた人を思い出したんです(実際に腰を振ってマネをする誠一郎)。その部分です。

:…そこに関してはね(苦笑)。詞としてはタイって男の人がダラダラして女の人が働く習慣があって、日本は働きすぎだよっていうところから。

──2004年にタイのバンコクで行われたタイ最大のロックイベント『FAT FESTIVAL』に出演されてますが、そういう経験が自分達の音楽に影響されていることってありますか?

:それから以降が自分達らしさが出てきた。作品に言いたいことが込めれるようになった。それまでは感情を殺してましたから。でも行ったから作品ができたっていうわけでもないし、作風変わったっていうわけでもない。心境的に生きていくもの。ワールド的な事は昔からやってきたから、出しやすくなった。

誠一郎:海外に行ったことがあるのとないのとでは気分が違うじゃないですか。

:ラテンの国へは行ってないけどね(苦笑)。


曖昧な男の子の気持ちを代弁した!?『太陽と海と君と』

──海外に行って詞がストレートに出せるようになったと言われてましたけど、4曲ともストレートでリアルな歌詞が多いのかなっていう気はします。『太陽と海と君と』とかモロに出てますよね。

:僕がこういう人間だと思ってくれてもjっいいぐらいの濁し方をしてますね。

──この曲の最後にある「答えを見つけたよ」の答えは濁されてますよね、というか出てきてないですよね。

:それは僕の心の中で見つけたんです。あとは自分で作って下さいっていうつもりで作ってます。(いきなりヒートアップする篤)答えまで書いたらおもしろくないですから! この詞の最後に「愛してるよ、君が〜♪」じゃおかしいでしょ!? 嘘でもいいから好きと言っておけばいいという人間ではございませんよ! 言わなくてもわかるでしょ!? 日本男子ですよ!!! 一緒にいる時点でわかってるだろ的な。この曲はそういう曲なんです!!! …相当がんばって書きましたよ。もっとぼやかして終わるつもりだったけど、「ハッピーエンドにしよう」って言えてるでしょ。

──メロディーは聴きやすいけど、詞の内容をじっくり読んでみると煮え切らない曖昧な感じ(笑)。

誠一郎:そのギャップですよね。あなたが好きっていう歌じゃない。歌だから好きだよって言えるわけでもなく、歌でも好きだよって言えない(笑)。

──篤さんらしいと言えばらしいですが…。

誠一郎:そう。篤らしさが消えちゃうと何なのかわからない。それはそれで味だと思うから。

──詞にはどれぐらい時間がかかったんですか?

:女の子の心境を考えましたからね。曖昧であるが故に微妙な感情が難しい。好きって言っちゃった方がよっぽど楽なのかなって思う。(またヒートアップする篤)でもこれは世の男子の気持ちを代弁してるんですよ! だから男の人には共感してもらえるかも! ワシは代弁するよ!!!!!

誠一郎:歌にするのはおもしろいですけどね。歌でもはっきりしない男(笑)。

:はっきりしないけど一緒にいたいよっていう気持ちは出してるでしょ。

──は、はい…。という、現代の男性を代弁する曖昧な曲がありつつ『ジャスミンの花を飾ろう』のような結婚式ソングもあり。

誠一郎:そうですね。これは結婚式に出席している第三者の視点の歌なんですよ。新郎の気分ではない。だからこそ歌える。俺らが作った結婚式ソングの内容が、新郎の気持ちを歌った「アナタが好きです」はおかしいでしょ(笑)。

:当人じゃない視点のほうがおもしろいし、意味あるよねって。

誠一郎:ホントに結婚式が多い時期に作ったから気分が出てると思うんですよ。悲しい話なんかまったくない。2人は苦労してきたね。みたいな。山アリ谷アリだから。祝福しようじゃないかみたいな。

──アルバムを通していい流れになってますね。

2人:そうだと思います。

誠一郎:日常を切り取ったリアルが出てますよね。嘘は言ってないですよ。

──今後もこのままのスタンスで?

誠一郎:やりたいですね。もっともっと篤が曖昧になっていけば(笑)。女子の反感を買ってもどんどん作っていけばいいんじゃないかと思います。今後も自分達の思ってることに巻き込むというか、同意を求めるつもりはないけど、そういう人もいるっていうことをわかって欲しいですね。

──最近はライブもたくさんやられていますが、ランチライブがあったり、もっともっとnittにしかできないことをやっていいと思いますよ。

誠一郎:今って、ライブはお客さんと近い距離にあるから、お客さんがどう思っているかをより感じることができるじゃないですか。そこでこういう意見もあるんだっていうのを取り入れていったらいいんじゃないかなって思ってます。一番の共感者を作った時にわかることっていっぱいありますからね。

──今年の大きな活動とか野望とかはあります?

:大きなイベントに出たい。

誠一郎:夏を楽しく過ごしたい。いろんな形のライブをやりたいと思っているんで、今年は実のあることをしたい。ランチライブをやったり、今度はバーでライブをやりますし、今までとは違う形の活動もしていきたいですね。そういうところから広げていきたい。

──では、最後に一言お願いします。

:『NEW DAY』は、とにかく楽しいアルバムなので聴いて下さい。室内でも野外でも聴けるアルバムなので、聴いてワクワクドキドキしてください。


NEW DAY

NEW DAY

TBCD-1030 / 1,000yen(tax in)
3.07 IN STORES
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Live info.

3.02(Fri)下北沢TROCADERO
3.06(Tue)下北沢440
3.10(Sat)広島紙屋町SUNMALL 5F YYY(ワイワイワイ)スタジオ (公開生放送)
3.18(Sun)渋谷GIG-ANTIC
3.22(Thu)大阪十三FANDNAGO
3.23(Fri)神戸VARIT
3.24(Sat)京都SOLE CAFE
3.25(Sun)タワーレコード梅田大阪マルビル店イベントスペース
3.25(Sun)大阪心斎橋club jungle
3.30(Fri)下北沢TROCADERO
3.31(Sat)下北沢CLUB QUE ※ALL NIGHT

nitt OFFICIAL WEB SITE
http://nitt.boy.jp/

posted by Rooftop at 18:00 | TrackBack(0) | バックナンバー

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