男がひとたび外に出ると七人の敵がいるんです
2001年に結成され、現在下北沢を中心に精力的にライブ活動を行っている男女混合のスリーピースバンド・ピンチブロック。あたたかい歌声とメロディーが魅力的で、聴いていると雲の上をフワフワと気持ちよく歩いているような錯覚にさえ陥る。今回2年ぶりにリリースされる『七人の敵』の、道路でポーズを決めているジャケットだけではあんな素晴らしい曲を歌っているとは思えない…(失礼)。こんな素敵な楽曲を作るピンチブロックってどんな人たちなんだろう?
ようやくお会いしインタビューでお話を聞いた時は楽曲とのギャップに驚かされたものの、彼らの持つ雰囲気とか人柄が、ひとつの作品そのままなんだとわかったような気がする。こんなにいいバンドがいたんだ…と心から思ったのは嘘ではない。(interview:やまだともこ)
照れ隠し!?
──3月10日にリリースされるニューシングル『七人の敵』の話を伺いたいのですが、まず最初に聞きたいのはタイトルにもなっている『七人の敵』の“七人”は何を表しているのですか? 私は、詞の中に“明日”という言葉が出来ているので、曜日を表してるのかと思ったんですが…。
橋岡(vo.g):深読みしすぎですね(笑)。男がひとたび外に出ると七人の敵がいるんですよ。だから注意深くしとかないと、だめなんです。
──…ん?(笑)
ダミアン(Ba):わからないですよね(苦笑)。
──イメージ通り、橋岡さんは一癖ありますね…。
橋岡:…その辺は否定しないです。漫画家の島本和彦さんという方がいらっしゃるんですけど、その方が書いている漫画に出てくる台詞なんです。詞は全部僕が書いているんですけど、深読みはしないほうがいいと思います(笑)。『たまに思う』(M-1)が一番ストレートに書けましたね。『七人の敵』(M-3)は歌詞がなかなか出てこなくて一番苦労した曲です。
──今回のシングルでは、曲で言うと橋岡さんはやわらかい印象、ダミアンさんはノリの良いロック調だったのですが、分担が自然と出来てたりするんですか?
橋岡:多少は考えてますよ。だから先に作ったもん勝ちっていうところがありますね。最初に出来たのを聴いたら、そういう曲調とは別のにしようとは考えています。
ダミアン:せっかく2人とも作るから、違うものをいれたほうがいいじゃないですか。そのほうが1枚の中でバラエティーが出ますしね。
──もともとの作る曲は似てるんですか?
橋岡:似てはいないですよ。
──曲調は違うんだけど違和感なく聴ける。これはアレンジの段階で意見を出し合っていかれるんですか。
橋岡:そうですね。
ダミアン:アレンジしたときになんとなく中間点に寄ってっていうかんじです。だから最近は2人の作った曲の区別がつかなくなってきたって言われるんです。
──ところで、これまでもジャケットに顔写真を使ってますが、イメージ画をジャケットにするバンドが多い中、顔を出していくというのは…。
橋岡:僕らがやってるから僕らが出た方がいいのかなって。あと、知り合いに絵を描ける人がいない。なんでみんな知り合いに絵を描ける人がいるんだ(笑)?
ダミアン:あえて顔を出していこうと。このほうが、どんな人たちなのかがわかりやすいじゃないですか。
──でもジャケを見て思ったのは、もっとポップな曲のイメージだったので、CD聴いてギャップにビックリしましたよ。
ダミアン:曲は自信があるので、その他の部分ではストレートにかっこいい部分を出すのが恥ずかしいんです。タイトルからも曲のイメージはできないですよね(苦笑)。
──だから、最初に人柄を知ったらあの曲は想像しなかったし、ジャケを見ても想像しなかった。曲を最初に聴いたから想像してた人が違った。そのギャップが魅力的ですね。今後もその方向で?
橋岡:いきたいですね。もっとわかりやすくしたほうがいいとも言われますけど、それはおもしろくない。
ダミアン:今は自分達がやっていて楽しいって思えるからこの状態がいいんです。かっこつけてる人たちを否定しないですけど、自分達でやるのは恥ずかしい。照れ隠しなのかもしれないですね。
──でも曲で聴かせますからね。ところで、前回のCDはいつ出されたんでしたっけ?
ダミアン:ミニアルバムは2年前。あとはフリーのCD-R出したり、コンピに入れてもらったりはしてたんですが…。
──2年ぶりって感慨深いですね。
ダミアン:レコーディングもよくできていたと思いますよ。それが大きいですね。
──2年前のリリース時からサウンド的やバンドのモチベーションなど確実にここが変わったとかありますか?
橋岡:サウンドに対するアプローチが変わりましたね。以前はもっと固く鋭い音だったんですけど、それよりはもう少しやわらかくなりました。ライブでもサポートを入れて4人編成でやっているので、ギターが一人とは違うものになってますしね。独りよがりが通用しないようになっています。
ダミアン:CDになっている形が一番やりたいことだったんですが、3人だけではライブで完全には再現できてなかったんです。だからサポートでギターが入って、より理想に近づけたという感じです。
──CDを聴いて、ギターのメロディーがやさしくて綺麗だなという印象を受けたので、ピンチブロックのメンバー像を勝手に作り上げていたんです(笑)。こういう楽曲はどんな時にできるんですか?
ダミアン:他の人のライブを観た後に作ることが多いですね。私だったらこういう曲を聴きたいなってて思って作ります。あとは思いついたことを…。
橋岡:僕はライブを見に行ってインスパイアされることはないですね。
──ダミアンさんは詞は書かれないんですよね。
ダミアン:いろんなバンドを見に行ったんですけど、歌う人が詞をO?書いている形が一番美しいかなって思うので(橋岡に)がんばって書いてもらってます。
橋岡:別の人が書いた時点でこの形は崩れると思うんです。
ダミアン:バンドの形として他のメンバーが歌ったりとか歌詞を書くのはまだやらなくてもいいかなって…。
やってみないとわからない
──よくライブを見に行ったりすると言われてましたが、普段どういう方々を聴かれてます?
橋岡:僕は洋楽志向なんですけど、アニメソングも好きですね。ガンダムとか聴いてますよ。
ダミアン:ガンダム!? …3人で共通してるのはスピッツですね。
橋岡:だからと言ってそれが原点ではないですね。僕は基本的にはメタル。
──えっ! もともとメタルなんですか!? それがどうしたら、あんなにやわらかくガラリと変わるんでスカね。
橋岡:いつのまにか…です。アレを聴いて感動したとか、いい話はないですよ(苦笑)。きっかけも特に…。当時は、早くてうるさくないと音楽じゃないっていうのがありましたから。だから実はピンチブロックにはメタルテイストもつまってるんですよ。
ダミアン:時々ギターソロで、すっとんきょうなギターソロを入れたりするんですよ。いわゆるギターポップの人がやらないようなギターソロを入れることが多いんです。
──血が騒ぐんですかね。
橋岡:でもモニターに足をかけたことはないですよ。
──…今の曲でモニターに足をかけるタイミングはないですよね(苦笑)。では、みなさんそれぞれこだわりを持って作られてるというのは曲から伝わってきますが、曲を作るにあたって、ここだけは誰が何と言っても譲れないっていうところはありますか?
橋岡:この人(ダミアン)はよく文句言いますね。
ダミアン:自分の曲のイメージをなんとか伝えようと思うんです。作った時に自分の中で鳴った音をできるだけ再現したいと思って…。昔はそれがもっと顕著で、ドラムにしても打ち込みで1曲のデモを作ってたんですけど、最近はメロディーだけ出してみんなでアレンジしたほうが私の想像を言うより良くなってきました。初期の頃に自分のイメージを強く言ってたから、最近は説明しなくても思い通りにできるようになってきてますね。
──長年連れ添った夫婦のような…。
橋岡:…いや、わかんないですよ! 「これやって」って言われた通りにやっても「違う! 違う!」って(笑)。最後にはちゃんと出来てるんですけどね。言ってたのはこれか! って(笑)。
──橋岡さんが絶対譲れないのは?
橋岡:曲に関しては良くなればなんでもいいっていうのが基本的なスタイルです。ダメだって言われたら違うのにすることもありますし、アイディア出したりもしますけど、ボツをくらうことも多いです。でもどんなに「違うんじゃない?」って言わても、試してみるまでは引かないですけど。やってみて納得しなかったらダメだって。やらないとわからないじゃないですか。なので気にくわないことをやれって言われてもとりあえずやります。 中村(Dr) やるようになったんだよね。
橋岡:やってみて良かったらいいよって感じです。だから良くなればいいっていうのがこだわりといえばそうかもしれませんが…。
中村:僕も自分がどうというよりかは、曲が良くなれば…。それはちょっと…というのでも、やってと言われればとりあえずやってみます。
──バンドのスタンスとして、やってみなきゃわからないっていうところなんですね。
橋岡:やってみたらこれけっこう良いんじゃないのっていうのがたまにあるので、やるっていうのが前提ですね。
──この3曲のなかで一番苦労したのは?
橋岡:『たまに思う』以外の2曲は時間がかかりました。
──ダミアンさんの曲ですね。どこが困難だったんですか?
中村:曲のイメージ的なものですね。
橋岡:ダミアンが最初に持って来たとき、何がしたいのかさっぱりわからなかったですもん。1曲目は自分の曲なのでほぼ再現できたんですが…。
ダミアン:私はメロディーを提出するんですけど、橋岡はある程度アレンジしたサウンドを持ってくるから、私が作った曲の方が苦戦する。1から3人でやる状態になると、練ってる時間も長くなるし、『ドラマチック天気』(M-2)に関しては今までにないような展開をするんです。しっくりいく形に行くまで考えていろいろやってみる。まだ良くなるんじゃないかっていう気もしてますし。
──今後はこういうのをやりたいとかイメージができてたりします?
ダミアン:アルバム1枚で雰囲気があるようなものを作ってみたいと思ってます。コンセプトアルバムまでいかなくても、流れから作ってみたいですね。
──ではバンドとして今年はどんな1年にしたいですか?
橋岡:『七人の敵』は完成して発売を待つだけなので、次に目が行ってるというところはありますね。次の展開です。今回のシングルは確実に越えていきたい。
ダミアン:曲自体が良い自信があって、+αよりO?広げていきたいです。ライブで曲を聴く+いいものが見えればお客さんももっと増えると思いますし…。
──ライブはけっこうやられてるので、そこで知ってもらって…。
ダミアン:ジャケット見ただけじゃわからないから、CDを聴いてもらいたいですね。『七人の敵』を機に広がりたいです。
──発売日の3月10日には渋谷屋根裏でレコ発も行われますしね。
ダミアン:はい。4月ぐらいには名古屋・大阪をまわる計画があるんですよ。
──とにかく聴いてもらいたいですね。橋岡さんの素敵な声を届けていきたいですよね。
ダミアン:でもかっこつけられないからね。
橋岡:それがいかんのかい? 現状は残念ながらこうなので…(笑)。でも、今年はモテたいと思ってますよ。
一同:(失笑)
七人の敵
NHCR-1041 / 1,000yen(tax in)
2007.3.10(sat)IN STORES
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★iTunes Storeで購入する(PC ONLY)
Live info.
2/3(土)宇都宮Heaven'sRock
2/16(金)西荻窪w.jaz
3/10(土)渋谷屋根裏
ピンチブロックマキシシングル「七人の敵」発売記念イベント!!!
『あの素晴しいアレをもう一度』
w/ghq、カモレ
ピンチブロック OFFICIAL WEB SITE
http://www.pinchblock-band.com/