ギター バックナンバー

CD REVIEW ('07年1月号)

LOFT PROJECTのスタッフがイチオシのCD・DVDを紹介!!
レビューページの画像をクリックすると、Amazonのページにリンクします。

★以下のジャケットをクリックすると、各レビューが読めます。

浅草ジンタ / ゼロの世界 -sky "zero"-
BDAD-0017 2,625yen (tax in) / 1.20 IN STORES

つくばエクスプレス開通記念ソング『浅草音頭』、落語芸術協会創立75周年記念音盤『芸協音づくし』、映画『猫目小僧』の主題歌『あしゅらの道のまん中で』とコンスタントにリリースは続いたものの、単独のフル・アルバムとしては『浅草ロック』以来2年振りとなる浅草ジンタ渾身のニュー・アルバム。これまで置かれていた環境から心機一転、新たに新天地を求めて興した自主レーベルからのリリースとなる。浅草の路地裏で生まれた魂の跳ねビート“エジャニカ”は新たに加入したゴメのタイトなドラムを軸に更なるビルドアップを遂げ、うねりを上げる怒濤のハードマーチングはより一層ハードに増幅。「東京イーストエンドロッカーズ」というそのものズバリな曲もあるように、全編を通してロック血中濃度は過去随一だ。渡世の義理人情を粋にいなせに唄い上げる姿勢は不変ながら、タイトルの“ゼロの空”という言葉通り彼らは今一度自分達の足元を見つめ直し、純和風なコンセプチュアルから逸脱したより大きなフィールドへの第一歩を踏み出した。足取りも“ビバブンブン”と軽やかに、今日も彼らは浅草から世界を変えていく。その新たな門出を祝うには申し分のない一枚だ。そう、叫べばいいのさ。魂のままに。


Rooftop:椎名宗之


ANA / EXTRA
CSCS-005 1,500yen(tax in) / 1.24 In STORES

昨年彼等が出した作品『DRILL』以降、私がすっかりハマっているANAの待望のニューシングル『EXTRA』。地元福岡を拠点に活動し、数々のイベントやフェスに出演しては、その名を全国区にしつつあるANA。彼等が学生時代に存分に体験し、尊敬して止まない電気グルーヴ、TOKYO NO.1 SOUL SET、コーネリアスをはじめとした渋谷系にスチャダラパー等の影響をANAなりに消化し、他の誰でもない、ジャンル分けには頭を悩ます程新しいものとして世の中に発信する事に見事成功させた。
ただ言える事は、とにかく聴いていて気持ちが良い。家で、ライブハウスで、クラブで、場所を選ばずとにかく気持ち良く聴ける。彼等が発信するバンドサウンドと打ち込みがあわさったダンスミュージックは、今年さらに広く多くの人々の身体に響く事間違いなし!また、収録されている『DEEP IMAGINATION』は、スタジオ4℃製作のアニメ映画「DEEP IMAGINATION」主題歌であり、4曲目『PASS』は日本マクドナルドラジオCMタイアップ曲である。


SONG-CRUX:樋口寛子


阿部薫 / アカシアの雨がやむとき
MTCJ-5505 2,100yen(tax in) / IN STORES NOW

フリージャズの名手阿部薫の1971年のコンサートの模様を録音したものだ。ジャズと聞くと、リズム隊やピアノ、サックス等が、ある程度即興で遊ぶ…という自由な音楽のはず。しかし、複数人でやるからには自然と規律が生まれ、不自由と感じた阿部薫は一人になることで純粋となれる環境を作ったのだろう。この音源で聴くことのできる阿部薫の、『吹奏の終わり=生の終わりとなるべき“自己実現”計画の遂行』ともいえるプレイは、その後の多くの音楽家、また今の感情を忠実に音に反映すべく、真摯に自分自身と向き合う姿勢と純粋であることの難しさを提示してきたことだろう。
この音源に収録されている4曲は全て既成の曲のカバーであるが、それらは即興のためのフレーズのきっかけであったり、イマジネーションを呼び起こすための素材であったりと、ほとんど原形を留めていないが、なにかしら阿部薫の世界観を感じることができるだろう。
阿部薫は紛れも無く、人間らしからぬアーティスト気取りに鉄槌を下し得る力を持った、孤高の地下アーティストなのである。


Naked Loft:荒木卓


Alpha Boy School / BELIEVE IN YOURSELF
JHCB-1002 2,520yen(tax in) / 1.24 IN STORES

ドイツスカシーンの最重要バンド「Alpha Boy School」の初来日が決定した。その来日に先駆け、彼らのベスト盤がリリース。
私的にはドイツのネオスカバンドと聴いていたのに、このベストの1曲目からヘビィのレゲエなのか?? と思いつつ、次の曲はビッグバンドパーティチューン風のイントロから裏打ちの王道ska songが始まる。そして何故かブルージーな曲、ムーディーな曲からロックな曲まで、本当にジャンルレスなアルバム。最近ミクスチャーバンドが増えて来たとはいえ、ここまでどの曲もタイトで自然に吸収されたバンドはなかなか居ないように感じる。あと特に感じたのは、ボーカルの声。一度聴いたら絶対に離れられない不思議な魅力。「Alpha Boy School」の最大の魅力とも言えるかもしれない。
 とりあえず、これを買って2月3日深夜のロフトへ遊びに来てください。


新宿ロフト店長:大塚智昭


植木遊人 / SET YOU FREE vol.172「Y.は地球を救う」ツアーファイナル〜Y.は地球を救えたのか? 24時間ライブ
2,000yen(tax in) / ライブ会場のみ販売

2006年の8月に高円寺クラブライナーで行われた植木遊人の24時間ライブの映像がDVDとなって登場。24時間を2時間にするなんて内容量少なくないか? と思いながらいざ見てみるとそんなことない。24時間のうちのポイントはうま〜く押さえられていて、ライブの記憶が生々しくよみがえってくる。その中で、12時間を迎える深夜2時のカウントダウンでステージが見せた祭囃子は斬新すぎた(笑)。あんな祭囃子の振り付けは今までに見たことがない! 言うなれば獅子舞である。しかもカウント、完全にY.U時間。
このカウントダウン後、イベントがさらにカオスに、そしてダークになる様子も完全再現。今まで見たDVDの中で桜島(植木版)に続く壮絶さ。高円寺散歩では高円寺に行くつもりがうっかり氷川神社に。「氷川神社だけどいい?」と生徒に聞くY.U。「いいよー。」完全に友達になってる。
そして、最後は感動のフィナーレ。泣きじゃくるY.U。会場は声援で返す。24時間をここにいるみんなで完走した充実感いっぱいのY.Uの一言「絆っていいよね」で幕を閉じた…わけがない。この続きはDVDで。イベントに参加した人もしなかった人も買って見る価値あり!


Rooftop:やまだともこ


宇多田ヒカル/Utada / UTADA UNITED 2006
TOBF-5506 6,500yen(tax in) / IN STORES NOW

「簡素だなぁ、ステージ」。開演前に、正直そう思った。そして、開演。だ、だまされた!! 光が入れば、そこはセットなどいらぬステージ。光が全てを演出していた。背景には180度ぐるりとスクリーン。そしてステージ自体も発光する映像。後ろからも下からも歌い手を動く光が照らす。その圧倒される演出に負けぬ、それ以上の歌の力。気づけばその状況に巻き込まれてしまった……。生で見た感想はこれ以上ない。光と音、気持ちのいいアッパーと切なさ。それをもらって帰った。後で考えれば、手ぇ込んでたよな凄く……としか。それをこの映像で追体験した。
「宇多田ヒカル・ファン」と自分が言うのは恥ずかしい。宇多田ヒカルが恥ずかしいのではない。女の子的な気持ちを感じているのを自覚するのが嫌だからだ。でもドンキで歯ブラシを選んでいても、彼女の歌が耳に入る。歌舞伎町で泥酔していても耳に入る。なんなんだ! この歌の力は!と腹が立つ程に。どこで聞いたって彼女の歌。その透明感に匹敵する演出、音源以上の生の体験を、と願った人がいたのか? それが現実のモノとなっているのは、なんなのだろう。とにかく光であった演出。そして音。その瞬間の映像。客席からはわからなかったけれど、ステージを頭上からみれば瞳の形のようにみえた。その瞳に様々な色と光。それが彼女を照らしていたのか。見えないようなところまで……。キュンとさせるって…。


斉藤友里子


SA / THE SPECTER ON MY TRAIL
DDBQ-6001 3,675yen (tax in) / IN STORES NOW

SAのライヴはアツい。
毎回熱心なファンが大集合して、飛んだり跳ねたりダイヴしてみたりで自家発電の熱を放出するから、会場の温度は当然上昇して物理的に「暑い」んだけれども、それに加えてvo.タイセイの兄貴肌な熱いMCに引っぱられて昂揚する気持ちのおかげで、体感温度は実際より多分ずっと上。物理的にも精神的にも、脳ミソが沸騰するぐらい、アツい。
そんな熱がそのまま収められた一枚。全国24箇所に渡るツアーのファイナル、2006年6月30日恵比寿リキッドルームでのライヴをほぼノーカットで収録。実際に会場にいるような錯覚を起こす程の臨場感に溢れたカメラワークがとにかく秀逸! SAライヴ特有の「あの空気」が、画面から溢れるぐらい、何なら溢れて部屋の温度が2、3度上がるぐらい、リアルに詰め込まれている。夏の濃縮された空気は鮮度を保ったまま、匂いすらしてきそうな程だ。あの日会場にいた人はもちろん、行けなかった人にも、SAのライヴを未体験の人にもマスト! 但し、部屋でひとりでダイヴしたくなっても責任持ちません。


LOFT PROJECT:稲垣ユカ


ザ・ガールハント / セカイクル
FLOWER-083 2,100yen(tax in) / 01.17 IN STORES

「ザ・ガールハントの2ndフルアルバム『セカイクル』ようやくリリース。このタイトルには“世界が来る”っていう意味も含まれてるとのこと。シークレットトラックの『中チン☆サンタ』を入れても40分弱というスピーディーに駆け抜けていくこのアルバム。まず気になるのは、リリースされる1月に『中チン☆サンタ』を聴く人達はどんな思いで聴くんだろう。全くの季節外れ。1年の中でクリスマスだけは、12月25日が終わった瞬間に例えばサンタの衣装とか着てたら「まだクリスマス気分でいるの?」って空気が流れちゃうぐらい季節外れとなってしまう日だと思うんだけど、それをすっかり越した1月の半ばにサンタの曲を聴く気持ち。…複雑。でも、ガルハンのCDの最後にこういうのが入ってるのがまた楽しみでもあったりするんです。それまでの11曲は共同で作った曲や、マスくんやチバさんの曲が交互に入っていて、何度聴いても心が躍る感じが薄れない。『中チン☆サンタ』もある意味何度聴いてもウキウキする。それは、たぶん今聴いてるのがクリスマス前だからなんだろうな。
あー! 『中チン☆サンタ』の事を書きすぎて文字数なくなっちゃったので、アルバムの詳しい事はインタビューページで! でも、このアルバムはトータルで聴いて、「何でこんなワクワクした気持ちになるんだろ」って思うのは確か。ホントに多くの人に聴いてもらいたい1枚。んで、みんなでセカイクリングに出かけたらいいじゃん。


Rooftop:やまだともこ


しゃるろっと / しゃるでなしブルース
初回盤:POCE-93004 3,500(tax in)・通常盤:POCE-13006 3,000yen(tax in) / IN STOERS NOW

記念すべきファースト・フルアルバムをメジャーより12/13に発売したしゃるろっと。単なるヴィジュアルバンドと思ったら大間違い! 何と言っても彼らはエンターテイナーなんです! ライヴはまさしくエンターテインメント・ショー! 初めて観る人や曲を知らない人でも“ショー”として楽しめちゃう! そんなしゃるろっとの持ち味は、激しいロック、ノリの良いポップ、切ないバラードなど幅広い曲を独自の世界観で聴かせてくれる所ではないでしょうか。ほとんどの人が経験しているであろう「学園」をテーマとしているので、共感出来る部分があったり、懐かしい気持ちになれたり、今一度ドキドキ出来たりします☆聴く人によってはそれが進行形だったり過去形だったりするんでしょうけどね! またメンバー全員の出身地「横浜」がキーワードになっているので更に増すリアリティ☆地名が出ると親近感が湧いて身近に感じてしまうのは何故でしょう(笑)? 今回のこのアルバムでも変わらずそんな“しゃるろっと道”を突っ走っております! ちなみに最近の私のBGMはずっとコレです。忙しい仕事の合間の癒しになっております♪


新宿LOFT:どうきょうみゆき


真摯 / 硬派
BTSP-007 2,000yen(tax in) / IN STORES NOW

ファーストアルバム『桜』から5年、ボーカル以外のすべてのメンバーチェンジという苦難を乗り越え、新生“真摯”としてセカンドアルバム『硬派』が完成した。個人的にはM-3の『絆』なんかが好きでしたが、M-4『負けを知る』や『硬派』のような曲には、スキンへッズシーンのバンドとして捉えられているバンドではあるが、メロディや歌詞のメッセージの部分でも、誰にでも解るような親しみやすさが有り、そういったバンドを特に好んで聴いている人でなくても共感できる部分が多くあります。そして、最近では実にいろいろなイベントでもライブを演っているので、ちゃんとそのお客さんにもいい部分が伝わって行けばその先には、、、。と非常に可能性を秘めたバンドと言えると思います。


LOFT RECORDS/TIGER HOLE:オオサワシンタロウ


蝉時雨 / 北風ハンカチーフ
UPCH-5426 1,100yen(tax in) / IN STORES NOW

昨年の夏に満を持してデビューをしてから半年近く。早くも2枚目のシングル『北風ハンカチーフ』が届きました。前作『待ち人に花』に続き、根岸孝旨氏をプロデューサーに迎え、爽やかなボーカル、迷う事なく入ってくる耳馴染みの良いアップテンポなメロディがとても印象的な作品。また、この作品はTBS系テレビ『CDTV』12月度のエンディングテーマにも起用された、広く多く聴かすべき作品でもあるのです。
ライブでは力強い演奏で骨太なサウンドを出す硬派な一面も持ち、MCではキャラクターが滲み出るかの様なやりとりが何とも愛らしいのである。知人の紹介により、私は蝉時雨をインディーズ時代の頃から知っていますが、その頃から一環して言えるのはエバーグリーンなロック&ポップを奏でるバンドだなぁという事。早くも次の作品が楽しみでなりません。そして、遂に1/17に新宿ロフトで実施の『おとそライブ2007』に出演します!この日のステージで生の彼等を体感して欲しいものです!


SONG-CRUX:樋口寛子


曽我部恵一 / LOVE CITY
ROSE-45 2,500yen(tax in) / IN STORES NOW

曽我部さんからのクリスマスプレゼントのようなタイミングで届けられた今回のアルバム『ラブシティ』はこれまでのロックンロールとポジティヴィティが溢れたアルバム『STRAWBERRY』『LOVE LETTER』や、はたまた静寂でアコースティックな佇まいの『sketch of shimokitazawa』『東京コンサート』ともまたちょっと違う、とても温かく優しいメロウでポップな、言ってしまえばサニーデイサービスの頃を彷佛とさせるスウィートなマスターピースとなってます。1曲目の「土曜の夜に」が流れた瞬間にフッと吸い込まれるような音像がただ心地よい。そして8曲目の「東京 2006 冬」から9曲目の「WINDY」への流れがほんと素晴らしく秀逸で泣きそうになります。あぁ、『ラブシティ』を大好きな人と聴けたらほんと最高だなーなんて考えてます。ひとりぼっちの部屋でこのレヴューを書きながら。


LOFT/PLUS ONE:白井絢介


DICKERVE / WHAT'S THE STORY?
STR-01 1,050yen(tax in) / IN STORES NOW

こんなにも軽快に飛ばしてくれるバンドが存在していたなんてびっくりした! CDデッキの再生ボタンを押してから自動でCDの回転が止まるまでの間に一度たりとも気を抜いている瞬間は無かったであろう。なぜならそのキャッチーなメロディーにワイルドなギターのリフ! 心地よいベースラインに一糸乱れぬドラム! この3人がそろった理由は僕は知らないが最強の3人が集まってしまった。歌モノでもない。定番パンクでもない。その絶妙なところを彼らは押さえていると思う! UKメロディックだとかPOP PUNKだとか例え方は様々だろうがとりあえず聞いてみるのが早いと思う。そうすれば彼らの音楽が“定番”と呼ばれる日がいつかくることを確信出来るであろう!


新宿LOFT:HxGxK


TOKIO / TOKIO Special GIGs 2006〜Get Your Dream〜
UPBH-1203 6,300yen(tax in) / IN STORES NOW

TOKIOが2006年8月〜9月にかけて、初めて行なったライブハウスツアー(ライブハウスと言ってもZeppですがね…)のDVDです。ライブDVDとしては2004年の10周年ライブ以来のリリース。
このライブハウスツアー、1ツアーで東京なら武道館4公演やる人たちが、Zeppで3公演なんだからチケット取れないにも程がある。なので、残念ながらZeppに行けなかったたくさんの人のためにも出してくれたのかしらね。
ライブの映像はもちろん、楽屋風景やメッセージをキャメラに向かって喋り続けるリーダーなど、ドキドキポイントが多数収録。私が一番好きな場面は、『コンクリート ジャパニーズ サンデー』の長瀬くんの無邪気な表情。あれは「わぉ!」って言いながら何回も繰り返して見ちゃう。あと本編最後で歌われた『Sunset. Sunrise』。曲も大好きなんだけど、演奏している最中にフロント4人がタイミングを目で合図しているところがあって、その雰囲気がすごくいい。会場ではステージが遠くて表情まで見ることが出来なかったから、そういうのを見れるライブDVDってホントに貴重。
 そうそう、「TOKIOはほんとに弾いてるのか?」と未だにウワサになっているようですが、このDVD観たらその概念は完全に消えます。いえ、消させます。アイドル・TOKIOじゃなくて、バンド・TOKIOっていうイメージが作り上がると思う。ファンじゃなくても見て欲しい1枚。ちなみにジュリエット家では毎晩上映されているそうです。


ジュリエットやまだ


PANICSMILE / E.F.Y.L.+1/72
TRACK-004 2,200yen (tax in) / IN STORES NOW

長らく廃盤の憂き目に遭っていたPANICSMILEのファースト・アルバム『E.F.Y.L.』('98年発表)がリマスタリング復刻された。快挙だ。しかも'95年に発表された14曲入りのカセット音源『scale kit 1/72 100% PLASTIC』まで追加収録されて全27曲・税込2,200円という大盤振る舞いである。快挙だ快挙だ。さらに思い切ってデザインまでリマスタリングだ!ってことでオリジナル・デザインを手掛けた三栖一明(eye pop)がジャケットを新装したデジパック仕様。快挙だ快挙だ快挙だ。もっと言えば「90年代当時の証言記録」として、向井秀徳(ZAZEN BOYS)、豊嶋義之(ex.ロレッタセコハン)、そして中尾憲太郎(SLOTH LOVE CHUNKS, SPIRAL CHORD)というあの日あの時あの場所でPANICSMILEと共に一時代を築き上げた盟友3者による寄稿まで付いている。快挙だ快挙だ快挙だ快挙だ。ノイズまみれの轟音と不安定ながら革新的なビート、舌の上で溶ける水飴のように音像が変わる変幻自在の楽曲の妙は今なおその鮮度を失っていない。NUMBER GIRLやロレッタセコハンらと共に現在に繋がる福岡シーンの礎を築こうと躍起になっていた蒼の時代の熱い息吹を伝えるドキュメンタリー音源としても聴ける。不世出の名盤とはこういうアルバムのことを言う。嗚呼、快挙だ快挙だ快挙だ快挙だ快挙だ。


Rooftop:椎名宗之


FUGAZI / 5-29-92 BORDEAUX,FRANCE THEATER BARBEY

92年フガジinフランス。今まで何度も「このライブの流れが最高だ」的な感想を述べてきましたが、今回のが最高だと現段階で断言します。曲の流れ、メンバーのテンション+年齢的な問題も含め最高なライブ盤となってます。BRENDAN#1→MARCHANDISE→TURNOVER(1、2、3曲目)の流れとボーカルエフェクト、DISC1ハイライトTWO BEATS OFF→REPEATER(18、19曲目)などやたらと熱すぎです。DISC2は2回のアンコールを含めラストはPROMISES。2回目アンコールは会場もおそらく客出しBGMが流れ、客電がついてもお客さんが動かなかった為にもう一回やった感じですが、流れでやってなくテンションが落ちないところが怖いぐらいに素晴らしいです。シラフでここまでのテンションってどうやって出せるんでしょうか? 映像化希望。


下北沢SHELTER店長:西村等


MINUTEMEN / POST-MERSH,VOL.2
SST CD 139

最近下北沢ユニオンで「SST祭」がやっていた。最近の若い子はSST関係なんてチェックするんかな? なんて思ってたら「フェアー対象商品購入者にSST レーベルガイドプレゼント」なんて入門者にも分かりやすい素晴らしすぎる企画が。最高だな、なんて思ってたら対象商品はほとんど持ってました…残念。シェルターに出演して頂いたnot great menさん(バンド名からすでにSST好きっぽさが伺える)が持っていたのでちら見させて頂きました。欲しい…で、新宿で個人的に思い入れのありすぎるレコードショップが閉店との噂を聞いて行ってみましたら、「全品50%OFF」なんて嬉しいんだか悲しいんだか。物色後、目に付いたCDがこのCD。 2in1の第二弾。あぁCDって素晴らしい(近年家でアナログが聞けない状況なのです)MINUTEMENが大好きだという訳ではないのですが、前にも書きましたがやっぱりSST話とかDISCHORD話とか出来るバンドさんには親近感が沸くのですよ。「あの頃はよかった」だけでなくそこを踏まえつつかっこいいことが出来るバンドやレーベルとは長く付き合いたいですね〜。


下北沢SHELTER店長:西村等


MINUTEMEN / We jam econo
KIBF409 4,410yen(tax in) / IN STORES NOW

RAMONES の“END OF THE CENTURY”や映画“反逆のパンクロック”等、薄々、「キングレコードのDVD侮るべからず」と思っていましたが、今回もやってくれました。80年代初頭のアメリカのパンク/ハードコアのドキュメントを貴重な映像とともに確認する事ができる3枚がほぼ同時期に発売された。“BAD BRAINS/LIVE AT CBGB1982”“AGNOSTIC FRONT/LIVE AT CBGB”そしてこの“minutemen/We jam econo:THE STORY OF THE MINUTEMEN ”。 そして2月には“AMERICAN HARDCORE”も控えている。85年に他界してしまった、ギターのD.ブーンに捧ぐ、と始まるように、ベースのマイクワットとの出会〜初めての楽器〜バンド結成〜それから〜という流れを関係者や親族、影響を受けたミュージシャンのインタビューと当時のライブ映像で振り返るのだが、インタビューを受けたミュージシャンもヘンリーロリンズ、イアンマッケイを始めフレアやJマスシス、サーストンムーア、リチャードヘルといった錚々たる面々が登場し、その名前だけで影響力の凄まじさが推し量れ、改めて偉大なバンドだと思わされるのである。
“異端”“突然変異的なバンド”という形容をされがちなバンドであり、そう言ったところで取っ付きにくい印象を持たれがちなバンドだが、「ジャッカス」の番組テーマやVOLVOのCMにも使われているらしく先入観無しに聴けば、実はとてもキャッチーで頭に残りやすいサウンドなので是非この機会に観てもらい、ミニットメンにの音楽に触れてもらいたいです。


LOFT RECORDS/TIGER HOLE:オオサワシンタロウ


Milco / ARCH
DLSA-2001 1,680yen(tax in) / 1.17 IN STORES

The autumn stoneのボーカルとしてメジャーデビューした菅原龍平氏が始めたプロジェクト“Milco”。今はベースに元SOULSBERRYの佐々木達氏、ドラムにはTHE WONDER SOUL STYLEの土屋聡氏を迎えて活動中ということなのだが、まず演奏がカッチリしていて、やはりというか何というか、キャリアがある方々が揃っているだけあって初聴きでありながら嫌味な音が一切ない。菅原さんのロックシンガーというに相応しい歌声はどこかキザではあるものの、『ARCH』(M-1)の歌詞にある「君と恋に落ちていた 無限の星が降りそそいだ夜」なんて歌われてしまったら、菅原さんに恋をしてしまいそうになる。また『春のあらし』(M-3)では美しいコーラスも聞こえ、やわらかい緑の草木がそよ風になびく様を想像させる。その次の『Honeymoon to hell』の「君は今日からマイワイフ」というフレーズ。もし自分に旦那ができて陽気に言われたらちょっと嫌だけど、力強いドラムと力強いボーカルのおかげで、この曲ではこれから始まる結婚生活がすごく華やかなものだと想像させる。全6曲、Milcoの世界をお楽しみいただきたい。


Rooftop:やまだともこ


ムーンライダーズ / MOON OVER the ROSEBUD
XPCA-1004 3,045yen(tax in) / IN STORES NOW

メンバーの方それぞれの音楽活動が活発なので、何度も目にする名前でありながら、正直なところ、ムーンライダーズのアルバムを買うのは今回が初めてです。長い歴史を前にさてどうしようと腰がひけていたところを、30周年の記念盤にして最高傑作という噂を聴き、それではと気軽に、“カートに入れる”をしてしまってからがさあ大変。一曲目から「僕らには 虹が見えた/燃え尽きそうな 虹が見えた」と甘くも力強い言葉。続くリコーダーのメロディ。ここでリコーダーって! そして終盤にかかるほどに重く深くなる歌詞と音像。心の中で突っ伏し床を叩きながら(やってしまった! 聴いたら惚れてしまうのは分かっていたのについ買ってしまった!)と甘い大後悔。さて私、これからムーンライダーズ様の足跡を辿って戻るために、どれだけの時間をかけることになるのでしょう。


Naked Loft:こだま


LOUDNESS / BREAKING THE TABOO
TKCA-73137 3,000yen(tax in) / IN STORES NOW

最近ちょっとしたヘビメタブームが来ていてその昔「ヘビメタフアン」だった私はちょっとうれしくもある。ルーフトップ編集部からヘビメタにうるさい(?)平野さんに「ラウドネスの25周年記念アルバムのレコード評を願います」と言われた。そう言えば80年代、BOWWOW、アースシェイカー、TENSAWなんかの東京勢を中心としていたヘビメタ時代があって、そこに大野祥之(音楽評論家)さん率いる「関西ヘビメタ殴り込みギグ」と言ってアンセム、44マグナム、マリノ、XーRAY等が東京にやってきたのは日本のロックシーンにとってものすごく衝撃的な事件だった。しかし、そこにはラウドネスの名はなく、なぜ当時からラウドネスがロフトで全然ライブをやらなかったのか、彼らラウドネスがロフトを嫌っていたのか、きっと何か「ロフトではやらない」って言う問題意識が彼らにあったんだと思う。だってこの高崎晃の圧倒的なテクニックを含めそのギターサウンドは当時もものすごい世界的評判を獲得し、私もファンだったからだ。
現代に肉薄するこのヘヴィーサウンド『BREAKING THE TABOO』は昔のラウドネスのメロディックな軟弱なイメージをぶっ飛ばしてくれる。今回の歌詞も凄く挑発的だ。だがこのマニアックな心臓をたたきつけるような爆音は、今のガキンチョには通用しないかも知れないと言う不安がよぎってしまう。だが聞いている内にその不安は全くの杞憂であることがわかる。この高崎晃をはじめとする世界に通じる数少ない職人的一流プレイヤー達は、長い年月を真摯にロック音楽と血みどろな格闘をしてきたのだと感じた。この盤に見られる「モダン・ヘビメタ」な世界を創造し深化し続けている挑戦者に祝福あれと言いたい。世界にも羽ばたくこのサウンドの躍動感を味わって欲しい。ヘビメタマニアにとっては絶対の他の追随を許さない盤である。


新人ロック評論家・平野悠


RAZORS EDGE / SWEET 10 THRASHERS
PZCA-32 1,365yen(tax in) / IN STORES NOW

皆さん、既にご存知でしょうがRAZORS EDGE始動から10周年記念アルバムです。SHELTER15周年のツアー等でも参加していまして、Zepp Tokyoでも盛り上がりに盛り上がってついつい激写されてしまいました。このアルバム、なんと! 30曲入り… と言っても10×3。なんですがラストの曲にボーナストラックがあるんですよ! それがなんと! あのピザのコンピレーションアルバムの『RADIO “PUNK 007”』の続編? まぁ聴いてみてくださいませ。アガリます! でも、なんだかんだ言ってもライブが最高ですよね。今後も目が離せないわ。


下北沢SHELTER:飯岡


V.A / THE FAR EAST SWING
STR-1001 2,310yen / IN STORES NOW

ジャズ、スウィング、ジャンプ&ジャイブ。小難しく聞こえるだろうか? もしそう感じるなら改めてほしい。答えはいたって単純、リズムに合わせて足を踏み鳴らして、サックスとトランペットの音に腰を揺らすだけ。難しい事なんて何もないんんです。20世紀初頭に過酷な労働を強いられていた黒人が唯一楽しむだけに始めた音楽。Louis JordanがいてFats Dominoがいて毎晩仕事の事は一切忘れてダンスしていた音楽。ロックンロールとは全てのポップミュージックの原点であり、これがなければレッチリもオアシスも、ストーンズやビートルズだってこの世に存在しなかったはず。
さて前置きが長くなりました。名付けて「THE FAR EAST SWING」あえて収録バンドは紹介しません。日本人の気質として先入観で物を見る人が多いから。先にも言いましたが、決して難しい音楽では無いって事、とにかくポップでとにかくダンサブル。このCDのプロデューサーに言わせれば、「みんなが楽しめる音楽」って事です。この「SWING」って言葉に何か感じられるなら、これを聴いてみて下さい。「SWING」って素敵な言葉じゃないですか、頭を振るのも、腰を振るのもあなた次第。


新宿ロフト:水野ハルヲ


V.A. / 昭和元禄NOW! 第2集
BQGS-12 2,300yen (tax in) / NOW IN STORES

僕が子供の頃(昭和時代)は、ちょっと昔の曲は「なつメロ」って言われてた。だから、ザ・スターリン全盛期の遠藤ミチロウが、ジャックスの曲をカバーした時はすごく新鮮だった。よい音楽というのは時代を越えるということを初めて実感したのだ。しかし音楽文化が成熟した今の時代、なつメロなんてものは存在しないのかもしれない。ジャンル、時代に関係なくいいものはいいというのが今の聴き方なのだろう。それを象徴するかのようなコンピCDがこの「昭和元禄NOW!」だ。こうしたシーンの第一人者・サミー前田が監修選曲を務めているのだが、第1集に引き続きこの第2集も、絶妙な人選と選曲がなされている。ザ・サイクロンズ、thee 50's high teens、夜のストレンジャーズといった勢いのあるバンドから、ザ・ハプニングス・フォー、田渕純(元マヒナスターズ)という渋い所までが、それぞれ歌謡曲、GS、フォーク、洋楽などをカバーしているのだが、不思議と統一感がある。その感覚を「昭和元禄」というワードで表しているのがキモだ。是非とも第3集を期待したい。


加藤梅造


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