自分がなりたかった自分になれたかどうかを探求した結果生まれた『4次元方程式』
2006年2月にフル・アルバム『三千世界に鳴り響け』をリリースしたC-999のメジャーファーストシングル『4次元方程式』が完成! 今回はサウンドプロデューサーにくるりやGRAPEVINEも手掛ける根岸孝旨氏を迎え、以前に比べよりバンドというものを意識した作品に仕上がっています。
今回インタビューに答えていただいたのは、ボーカル・ギターの遠藤慎平さんとギターの小野田卓史さん。伝えたいことが溢れまくっていて、細かいところまでたくさんお話ししていただけました。全部掲載できないのが残念ですが、彼らの思いを少しでもわかっていただけたらと思います。(interview:やまだともこ)
理想に近づくことができた作品
──以前Rooftopのインタビューが2005年9月で、この間にメジャーデビューしたり激動の変化があったと思うんですが、メジャーデビューをして変わったことってありますか?
遠藤(Vo./Guitar):ライブが変わったかなっていうのはありますね。ライブに行く先々で、曲を先に聴いて俺等が来るのを待っていてくれる人がいるようになった。行ったことある場所もそうですけど、行ったことない地域でも、来るのをすごく待っていてくれる。インディーズの頃は、ライブで聴いて僕らを知ってもらうという感じだったんで、それは嬉しかったです。だからお客さんも初めて聴く曲じゃないから自然とリズムをとってくれていたり、それを受けて見せ方的に変わっていきましたし、そういう面では変わったなって思いますよ。あと、レコーディングでも自分達のイメージする楽曲に対応できる楽器だったり関わってくれる人だったり、そういうものに出逢えていけるようになったっていうのは大きいかな。今までは頭の中に完成形はあるんですけど、それをどうやって再現したらよいのか、こういう楽器が必要なんだけど自分じゃできない。でもこういうギターやアンプが使いたいっていうのも試せたりできてるので、音に対する探求心もそうだし、自分達の理想に近づくというのもできるようになりましたね。
──今回プロデューサーに根岸さんを迎えたのも大きいのではないですか?
遠藤:だいぶ大きかったです。自分達が限界を感じてたからプロデューサーさんを立ててというところではないんですけど、もしかしたら新しい刺激とか学べたり、自分達だけでは気付かなかったところに気付けるんじゃないかとかがあってプロデューサーさんを立ててやってみたいって思ってたんです。それで今のC-999に根岸さんがすごく合ってると思うってスタッフの方に言われていて、紹介してもらったんです。ライブを見て気に入ってもらって、初めてスタジオに入った時は「どういうこと言われるんだろう」って不安だったんですけど「気にしないでいいから演奏して」って、自分達が想像していたプロデューサーさんとは違ったんですよ。実際やってみるとメンバーと同じ目線でやってくれる。一人メンバーが増えたっていう感じでアドバイスしてくれました。
小野田(Guitar):熱いものを感じましたよ。
遠藤:もちろん今まで気付かなかったダメなところも教えてくれるし、いいなっていう部分は伸ばそうとしてくれるっていうのが大きかった。あと根岸さんと会って、C-999の4人でしか出せない音っていう意味合いを教えられたっていうのは大きかったです。ステージに立てば4人でやるしかない。でもレコーディングって今は技術が進んでいるから音を重ねることもできるし、何回も録り直しができるじゃないですか。昔の自分達もこだわりたいっていう気持ちから、そこに甘えてたんです。でも実際は4人の息がばっちり合っていればOKというように、このほうがグルーブもパワーもあるんですよね。だから『4次元方程式』は全部一発録り。どうしてもこれは…というところしか直さない。微調整ぐらいですね。細かいこと言ったら『三千世界に鳴り響け』のほうが、細かいところは綺麗に録れているかもしれないんだけど、『4次元方程式』はその時にしか出せない空気を重視しました。自分達が聴いてても違うなって思います。
──『4次元方程式』の音が綺麗だったので、一発録りとは気付きませんでしたよ。
遠藤:基本となるところは一発で録ったから緊張感があってバンドの成長にもすごいつながったなって思うし、自分の弱点も気づけた。でもかなり緊張したよね。
小野田:うん。
遠藤:緊張で脂汗がすごかったですもん(笑)。でも直しちゃうとノリがなくなってしまうから…。
小野田:あとで弾いちゃうとその時のテンションとは違うから。
初期衝動忘れるべからず
──ところで、『4次元方程式』の詞なんですが、掴みたいのに掴みきれない状態、もがいている状況が伝わってきたんです。
遠藤:アルバムと同時進行で曲作りをしてけっこうな数が出来たんですけど、メジャーになると関わってくる人が増えるじゃないですか。それはいいことなんですけど、人がたくさん関わっている分、出来上がった曲に対していろんな意見が出てくるんです。自分だけがいいと思っていることもあって、自分を見失いかけてもがいて気持ち悪い時期がずっと続いていたんです。その時に考えたのが「なんで歌ってるのか」とか、「表現者として伝えたいことをやってるのか」。それでバンドを始めた時の誰かに憧れる自分だったり、こうなりたいと思っていた時の自分を思い出したんです。自分にしかできないことをやりたいし、自分にしかできないことを歌いたい。そうやって自分が描いていた理想に近づくために、これまでもいろんな選択を自然にしてきたんですよね。それで、今回悩みながらアルバム以降に作った曲を聞き直して「最初にやりたかったこととは違う」って思った時に出来た曲です。メンバーに聴かせたら「かっこいい」って言ってもらって…。もともとうちら4人とも影があるような音が好きで、メジャーファーストシングルの1曲目として出すなら「初期衝動忘れるべからず」みたいなものをこの位置で出すべきじゃないかっていうことをみんな思ってたんです。
──さっき「影があるような曲ができた」とおっしゃってましたけど、影がありながらもさらに上に行こうっていう曲でしたよ。
遠藤:C-999を結成して4年。原点に立ち返ったところに、今までに培ってきたものが足されて新しいものができたんだと思います。うちら的には懐かしいっていうのもあるし、聴く人によっては新しい、それはすごく良かったと思いますよ。影がありすぎず、次へ向かおうとしているっていうのはすごくいい。
──星とか宇宙という言葉が出てくると印象がまた全然変わりますからね。
遠藤:C-999の曲の作り方は、最初は日本語とも英語ともとれない言葉で歌いながらメロディー作っていくんだけど無意識に言葉が出てくる時があるんです。それは自分でも驚くようなフレーズで、無意識の部分が触発されて出た言葉だからメロディーが呼んでる言葉かなって思うんです。『4次元方程式』で出てきたのが“宇宙船”。そこに思いをリンクさせながら書いてみようかなと。
──では詞になっている「アナタになりたいと思った」の“アナタ”というのは誰を指しているんですか?
遠藤:自分が描いていた理想の自分になりたいと思ったけど大丈夫か?っていうところです。表現者だから“理想にどれだけ近づけるか”を歌うべきなんじゃないかと思い、その通りに生きるのは難しいなって思う自分もいるけど、そう生きたいなっていう自分もいると思いながら書きました。
──自分に向けたということですか?
遠藤:そうですね。メジャーファーストでこれを出すことによって、今後の自分達の戒めにもなるし、忘れた頃にこれを聴いて何やってるんだろうって思う自分がいるのか、大丈夫だって思う自分がいるのか。
──では、バンド始めてなかったら何になりたかったですか?
遠藤:昔はボクサーとかアメリカの消防士。いろいろありますけど、音楽でやっていくって思ってからはもうこれしかないって思いました。
小野田:僕は漫画家か陸上の選手。あとは、大学に入るきっかけがうちの近くに病院があるんですけど、すぐ近くの開かずの踏切のせいで間に合わなかった人がいたって話を聞いて、解決するために橋を造ればいいのにってずっと思ったんです。だからそういう仕事に就きたいって思ってました。でも音楽にのめりこんで…。
遠藤:俺の誘惑を受けてしまった…(笑)。
──でも今は選んだ方向に迷いは?
2人:全くないですね。
遠藤:自分達をすごく知ってもらいたい。自分達が良いと思っているものが、世の中とイコールになっていったらいいなと思うんですよ。ここまで来た以上C-999の世界とか自分らの作る音楽はこういうのなんだよって、どうよコレ! みたいな気持ちではいきたい。
──前回のインタビューでも歌を伝えていきたいって言われてましたね。ところでこの曲は特にギターのメロディーがインパクトありましたね。
小野田:けっこう苦労したんです。今までコードの理論とか勉強したことがないから、根岸さんに相談して理論的なものに触れて、この曲に一番生きるものを意識して作りつつ、宇宙っぽいものを意識しつつ、熱い感じにできたらいいなと。熱い部分を出した方が歌詞もより伝わるから、…やっちゃいました(笑)。
遠藤:今までのC-999の中では小野田君を一番困らせた曲かもしれないです。最初にピアノで作ったんですがギターで弾きたいと思ったんです。普通に弾いたら「なんだこの不協和音!」っていう音なんですけど、普通のチューニングでは出せない響きで今までこんなことないな、これで行こうって。今回は小野田君にがんばってもらった。悪いことしたなって(笑)。
小野田:ホントだよ。参ったよ(笑)。
──ライブもそれで?
遠藤:その時だけチューニング変えて。
内容量ギッシリの『4次元方程式』
──メジャーシングル1曲目に自分達へのメッセージが入った曲ということで大事にされているというのはすごく伝わりました。では2曲目の『スターライト』。こちらもメッセージを含んでますね。世界的にも戦争とか争いで命が奪われて失われていく。そういう世界に対しての怒りっていうのはあります?
小野田:人が殺されていることとか、戦争だったりをテーマで詞を書きたいっていうのはあったんです。何気なくニュースを見ているとすごく悲しくなったりするんですよね。その気持ちを忘れずに、そういうことって良くないという意味のある詞を書いてみたいって思ったんです。でもいざ書いたらすごく難しくなって、戦争に関しても勉強してみたんですけどどれが正義でどれが悪というのはそれぞれの立場であって、一概にこれが良くないとは言えないって思ったんですよ。それでメンバーに相談して…。
遠藤:テーマがテーマだけに最初持って来たときにすごく重たくて自分も考えることではあるんだけど、あまりに内容が重いから議論になったんです。メンバーも内容に関しては共感しているんだけど、戦争反対を思っている一人ではあるから小野田君が感じた気持ちがわかる部分もある。でもそれだけ重いテーマだから聴いてもらうにはどうしようかって悩んだんです。それでたどり着いたのは身近なところに訴えかけるものにしてったら良いんじゃないかって。目の前の人を笑わせたり愛することだったり、それが小野田君が言ってることに繋がっていくっていうような形にしてその輪が広がればいいかなって。
小野田:その輪が広がって個々人が感じて戦争に対する興味なりを考えたり感じたりしてくれればいいのかなって。あと、これを聴いて冷たくしちゃった友達にやさしく接してあげたりっていうきっかけになってくれたら。
──愛があふれる曲になってますからね。
遠藤:ピースフルだね。
──やさしそうなイメージの小野田さんらしいですね。
小野田:やさしくはないんですけど…。
──人は見かけによらないと(笑)。で、最後3曲目のピアノが入った『幻曲』。
遠藤:この曲は最終段階で時間がかかった曲ですね。サビは一緒なんですけど、AメロとBメロが違う曲だったんです。テンポもジャズとかスイング寄りのリズムだったんですけど、歌いながらどうも違うっていうのを感じたんです。もっと大きく歌いたい、それで空間とかそういうものを出したいって思ったんです。この曲で求めている空間って言うのはギターのアルペジオで出す空間ではなくて、ピアノの音を1音1音おいていくことでしか出せない空間。それでこの形になったんです。
──ピアノが入るとイメージがガラッと変わりますしね。
遠藤:鍵盤ものは好きなんです。でも何せ弾けない(苦笑)。ある程度は弾けるけどCDに入れるというレベルではなくて断念しているところが多いんです。だから今回は根岸さんに紹介していただいた柴田さんに弾いてもらったんです。
──今後もピアノの曲が増えたりとか予定は?
遠藤:ピアノの音があるだけで、すごい存在感だと思いますから入れていければ…というところです。
──『4次元方程式』はシングルなのにシングルっぽくないぐらい、内容がギッシリしていましたね。
遠藤:いつも考えながら出していくわけではなくて、その時にあるベストを出す。アルバムなら10曲とも自分達がいいと思う曲。シングルだったら3曲のどれでも1曲目になる曲を。でも今回全部良すぎてもったいなかったかなって思った(苦笑)。
2007年は理想により近づく
──では、年末号なので2007年の豊富を語っていただけますか?
遠藤:ライブでは行ったことがないところにどんどん行きたい。自分達がいいと思っている音楽とリスナーがイコールになればいいと思うし、より大きいところでライブとかできれば見せ方も変わってくるから。基本は変わらず自分達が理想のものを常に突き詰めながら進んで行ければいいな。あとは裏の小野田を表に引っぱり出す(笑)。
──小野田さんは2007年にはバージョンアップするということで…。
小野田:それは…(笑)。僕らを初めて知るっていう人もライブハウスに行ったことないっていう人もいっぱいいると思うので、CDを聴いて気に入ってもらえたら、ライブハウスに足を運んで頂いてライブの楽しみ方も僕らで知って音楽を楽しんでもらいたいですね。そういうきっかけになる作品をこれからも作っていきたいって思います。
4次元方程式
AVCD-31093 / 1,000yen(tax in)
IN STORES NOW
binyl records
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Live info.
bayfm MUSIC DAYz Vol.3
2006年12月1日(金)柏ZaX
Hello My Real ROCK「4次元-CREATION」
2006年12月12日(火)福島2nd LINE(大阪)
Hello My Real ROCK「4次元-CREATION」
2006年12月21日(木)新宿MARZ
C-999 LIVE IN GAYA
2006年12月26日(火)fm fukuoka GAYA
Hello My Real ROCK「4次元-CREATION」
2007年1月19日(金)新宿MARZ
Hello My Real ROCK「4次元-CREATION」
2007年1月24日(水) 名古屋ell.FITS ALL
Hello My Real ROCK「4次元-CREATION」
2007年1月25日(木) 福島2nd LINE(大阪)