ギター バックナンバー

センチライン('06年12月号)

センチライン

あとちょっと 数センチ先に 手を伸ばせば 掴めるはずなんだ ここから始めよう(『introduction』より)

「黄昏シリーズ」と銘打ち、2006年5月〜9月まで5ヶ月連続でシングルをリリースしたセンチライン期待のニューミニアルバム『tasogare』。8曲それぞれが短編小説を読んでいるようで、温かくもあり切なくもある物語の数々は聴いている時の心境や状況が重なると、この物語をよりリアルに浮かび上がらせる。
センチメンタルなメロディーラインが好きと言っていたセンチラインのファーストにして、今のセンチラインが詰め込まれたベスト集となった『tasogare』が多くの人に届けば良いと心から思う。(interview:やまだともこ)


ある意味ベスト。2年間悩み、もがいた末に生まれたニューアルバム『tasogare』

──Rooftop初登場になるので、バンドの成り立ちから今に至るまでを簡単にお話してもらえますか。

枝松(Vo.&Guitar):2001年の夏ぐらいに大学のサークルでメンバーを集めたんです。それで、僕がテープとかMTRとかに録ってたデモをみんなに渡してやっていけそうやなというところが始まり。偶然にこの4人が出会ったという感じ。ライブハウスに出るようになってからは、デモのCD-Rを無料配布してガンガン配ってました。それから『僕の住む街』(2004.6.9リリースの1st.マキシシングル)を録って、すぐに次を出したかったんですけどバンドの方向性がちゃんと定まっていなかったのと、力不足を実感したというか波に乗っていく力がなかったんです。

尾崎(Bass):どんな曲を作っても納得いかないって言う時期が続いたんだよね。

枝松:実際、「黄昏シリーズ」の『WALL』とかは『僕の住む街』の直後にできたんですけど、こういう感じでいいのかなっていう迷いがあったんです。『僕の住む街』に入っている『sun grow』が僕らの中で出来がよかった曲。それを越えないとって思っていたんです。

尾崎:自分達でハードルを設定したという感じです。

枝松:『sun grow』より良くないから出せないって。“伝えていく”ことに対して今ほどは整理がついてなかった時期で、でも活動は途切れさせたくはなかったのでライブやイベントをやって、バンドとはなんぞやというのを探していたんです。それでイベントの回を重ねていった時にいろんなことがみえてきたんです。例えば、音楽っていろんな捉え方があるけど結局は人と人とのコミュニケーション。僕らの音楽はメッセージ性が強く、話をしているような感覚で作っているんですけど、それでいいんじゃないかって。ステージに立って目の前にいる人と話をしたいんだっていう曲があるんですけど、そこに『僕の住む街』以降の2年間のことが繋がったという感じです。

──「黄昏シリーズ」を出して状況が変わったりしました?

尾崎:お客さんが増えたっていうのはありますよ。あと、ライブに対する意識も変わったような気がします。

枝松:自分の中で変わったことの方が大きいかな。

河相(Guitar):もっと成長したいとも思ったし。

──毎月CDを出すって大変ですよね。

河相:ライブ無料券を入れていて、ライブに来てくれる機会を増やすために1ヶ月に5・6本ライブをしたのは初めてだったので、5ヶ月続いてライブ的に成長してる反面しんどかった(苦笑)。あとで思ったけど、この5ヶ月すごい早く終わったなぁ。

枝松:リリース毎に周りのプレッシャーが大きくなっていくような感じはしてましたね。ライブがんばらんととか、お客さん増やさんととか、そういうプレッシャーは大変でした…。


“黄昏”をテーマにした統一感

──そこで「黄昏シリーズ」の5曲も入ったニューアルバムの『tasogare』がリリースされますが…。

枝松:ある意味、ベスト状態になってしまってますね。

──『tasogare』自体はどれぐらい時間かけて作ったんですか?

枝松:『僕の住む街』が出て、新しい音源を作ろうってなってから録ってたので2年ぐらいになります。

──でもその2年の間も、目指していた方向が一緒だったというか、統一された曲の流れが出来てますね。

枝松:そうかもしれないですね。『tasogare』以降に作った曲はどんどん変化しているんです。でもそれまでの2年間って悩んだり葛藤を繰り返したりして、いい意味で統一感のある曲が並んでいるのかなって思うんです。だからそこに入っている8曲も違和感なく聴けてるのかもしれないですね。ある意味違和感ない“黄昏”をテーマにした統一感があるんでしょうけど、今後はもっと変化に富んだものができたらいいなと思いますよ。

──全曲ともメッセージ性が強く、通して聴いてみて情景が浮かぶ歌詞が多かったです。

枝松:そういってもらえるのが嬉しいんです。僕はTHE BOOMが好きで歌聴いてるだけで情景が浮かぶので、その感覚で聴いてる人が受けてくれているのならば、すごいことだなって思います。そういうのを目指したいっていうのもある。

──歌声と楽曲もバッチリ合ってますしね。

枝松:自分で作った曲というのは自分が一番合うって話を聞いたことがあるんですけど、そうなのかなって思いますね。音楽はいろいろ聴くんですが、作るとなるとこういう感じの曲しか作れないんです。今は山下達郎さんにハマっています。洋楽は昔はすごく聴いてたんですけど最近はあんま聴かへんくなりましたね。

──ご自身が作る曲は日本語というのが根底にあると思うんですが、それって達郎さんの影響とか多少は受けてるんですかね。

枝松:まだ影響は出ていないんですよ。達郎さんぽくしたいとは思うんですけど、たぶん今のセンチラインを聴いても達郎さんっぽくていいっていう人はたぶん誰もいない(笑)。

──やっぱり日本語の詞がいいですよね。では『intoroduction』(M-1/「黄昏シリーズ」第2弾)は本を開いたときのような感覚でしたが狙って1曲目にされたのですか?

枝松:はい。『僕の住む街』から時間があいてしまったので、始まりの曲という意味でもあるこの曲を最初に入れようって。詞は聴いてくれる人みんなに当てはまるように書いてますけど、今のセンチライン含めっていう感じです。

──開けた感じがしますもんね。でも、2曲目の『season』は詞を読みながら聴いてると、泣きたい気持ちになるんです。

枝松:本当は経験したことのない恋愛のことを書こうかと思っていたんですけど、そこまでイメージが湧かなくて悩んで、やっぱりホンマにあることしか書けないなと思って作った曲なので共感を受けてくれてる人は、そういう経験があったのかなーって(笑)。

──うっ…(苦笑)。で、、、でも聞いてる側がこんなに切なくなるんだから、その時の気持ちを今も歌うっていうのは切なくならないのかと思うんですが…。

枝松:やっぱりそう思いますよね。言うたら、過去の話やもんな。それをリアルに思い出しながら歌うのはけっこう…。でも辛くはないですよ。『season』を歌うときは、過去の自分とだぶらせるというよりは、ひとつの物語としてみんなに伝えているような感覚で歌ってることが多いかも。過去を思い出して歌うのも辛いから(笑)。

河相:余談ですけど『season』はシュガーベイブの影響がギターに出てるかな。

枝松:『season』作ってるときって、70年代や80年代のバンドサウンドをかっこいいなと思って、グルービィーな感じが出せてますね。でもやりすぎないようにマネにならないように。

河相:実際は狙ってるわけでもなかったもんな。

枝松:今の俺ら。この先はもっと違う形にも変化していきたいんです。


聴く人によって思い出が思い起こさせる曲の力

──“黄昏”という言葉は秋のしんみりしたイメージがあるんですが…。

枝松:僕らの中では“切ない”の代名詞で使っていて、でも『tasogare』っていうアルバムの中身はしんみりした曲ばっかりじゃないよ。この8曲を通して“黄昏”を感じてほしいっていうことですね。

堀内(Drums):聴く人によって特定の季節だったり思い出だったりが思い起こされる曲。思い出だったり経験だったりを歌に重ねて思い起こさせる力がある。そういうのが強いんですよ。

──『ガーデニア』(M-8)もそうですね。その人の心境によって変化する曲。聴く人の経験と曲が持つイメージがうまくリンクすると、聴いた人がワーってなる。

尾崎:ワーってなる(笑)。

──女の子は小説とか物語が好きなので、まず女の子が好きそうな詞だなって思いました。小説の主人公に自分を当てはめてみたりとかするので。

枝松:制作者の意図としては曲に自分をおいてもらったりとか、情景が呼び起こされたらいいなと思って作ってるから、そういうふうに聴いてもらえたら嬉しいですよ。センチラインの曲は楽曲もさることながら、内容にも深く入っていって欲しいです。

──私が洋楽を一切聴かないし、英語もできないので日本語で意味が伝わる曲が好きなんです。

枝松:僕も一時期それであんまり聴かなかったんです。意味わからんって。

──『手紙』(M-4)も「拝啓」で始まって、日本人らしくてすごい好きなんです。最近手紙って書かないですけど、この曲を聴いたら書きたくなりました。

枝松:手紙を書くという行為自体が気持ちを伝えているようなものなんです。めんどくさいじゃないですか。便せん選んで書いて送って届くのを待つという行為をすること自体が手紙のいいところなんです。

──彼女を思う気持ちとかメロディーもあったかくて。

枝松:鍵盤やアコースティックギターが入ったのもあったかくなった要因かな。歌詞はなんとなく手紙を書いてみたっていう曲だったんですが、気持ちを書いたりしたら普段は忙しくて会えなかったりするけど手紙を書いてまで伝えたいことがあったんやなってすごく思いました。

──最近は全部メールで済ませちゃいますからね。あと、鍵盤の音が入るだけでだいぶ変わりますね。

枝松:深夜のテンションで書いてるんですけど、ローズ(鍵盤)が入ることによってより深夜になった。いろんな効果がある。録音に関しては手紙が一番好きなんです。音がいい。

尾崎:他の楽器の音色もメロとか合うようにやさしい音にしたりとか。

枝松:あと音がいいのは『FREE WAY』(M-3)。サウンドが豪華なんです。

──豪華!?

河相:ギラギラしてるしキラキラしてるし鮮やか。

──「行くぞ!」っていう感じは充分に伝わりましたが…。

枝松:内容もそうやし、派手な感じ。それをa?たぶん俺等は豪華って言ってる。アレンジもすごい豪華。お腹いっぱいになるかんじ。

──3曲目でお腹いっぱいにさせたらダメですよ(笑)

枝松:そうや、そりゃいかん。お腹いっぱいになったらあかん。まだまだ残ってる。

──(笑)豪華になったということは、時間かけて作った曲なんですか?

枝松:『FREE WAY』はそんなに時間かけてない(笑)。

河相:なんでやねん(笑)!

枝松:できてみたら豪華やった。

堀内:1曲目に録ったわりにすんなり録れた。のびのびとできたっていうのもありつつ、そんなかんじに聴いてみたらキラキラした感じが出た。

──勢いある詞が今のセンチラインですね。

枝松:「センチラインについてこい」というようなことも書いてるんですけど、今までのセンチラインにはなかったポップさが出ている。歌詞の内容的には遠回りして見つけた道とか自分らの目の前にある道は自由だよ。どこにでも行けるんだよ、と。それは8曲の共通のテーマである悩んでいる君とか、そんな君を引っぱってやるっていう感じです。でも基本的にはグイグイ引っぱってくことを考えてはいないんです。聴く人と僕らは常に同じ位置にいたいと思ってるんです。そうじゃないと説得力がないときもある。そんな中でたまにはリードしないと…(笑)。

──バンドの中でリードしているのは?

尾崎:枝松ですね。

枝松:ひっぱってるというよりは「付いてきてくれよぉ」みたいなところはある。一緒に上がって行けたらって思ってます。でも引っぱってますね。僕が引っぱらないと誰も引っぱらないですもん(笑)。全部は引っぱって行けない。音楽面では僕が引っぱってます。


2007年は幅をもっと広げていく

──みなさん仲よさそうですね。

枝松:そんな良くないと思う(笑)。普通なんじゃない?

河相:でも共通の話題があるとものすごい盛り上がる。ゲームしてる時は盛り上がる。

枝松:あとマンガの話と音楽の話。

河相:でも休みがあって友達と遊んでもひさしぶりに遊ぶから気を使ってたりするんです。居心地はバンドの方がいいな。楽かな。

枝松:それはあるかも。

河相:しゃべらんときはしゃべらんし。

枝松:家族とかみたいな括りでバンドメンバーっていう繋がり。

──みなさんが一緒に盛り上がるマンガってなんですか?

枝松:最近は『賭博堕天録カイジ』の福本伸行先生が好き。リアリティーはないんですけど、指南書の感じで読んでるところがあって、「この言葉アツイよな」ってその言葉を胸に一週間ぐらい過ごしてみるとか(笑)。俺らそういうことが好きやったりするんです。バイブル的な感じで読んでる。作家に先生をつけてしまう。

河相:先生は、『ナニワ金融道』の青木雄二先生から始まった(笑)。

枝松:ドラえもんも流行ったな。藤子不二雄先生は天才なんですよ。

尾崎:あんなに道具をいっぱい考えられる頭の柔軟さはすごい。

枝松:1話でオチまで付けて。

堀内:2ページで話が完結している話があるんです。それ読んで感動したな。

枝松:ドラえもんを1話読み終わって面白かったって言わずに第一声が「天才やな」って(笑)。まとめっぷりに感動してる。それは思い付かんかったな。

枝松:音楽の話は車でツアー回る時にカーステで流しながら話してる。

河相:さっきはツェッペリンの話をしてたんです。

枝松:音楽を聴いてるっていうのは勉強しているようなものですから。洋楽とか車内で流す音楽はそういう感性を常に取り入れてる感じは。

河相:ツェッペリンに影響されてめっちゃ早弾きしてますよ。

枝松:使わんのにな(笑)。

──(笑)あと、センチライン初の全国ツアーが来年の1ヶ月から始まるんですよね。

枝松:すごく楽しみ。

──東京より北はこの季節大変そうですよね。

枝松:雪用にしとかんと大変らしい。そういう不安もありますけど、初のツアーなのでしおりを作りたいんです。

河相:旅のしおり。

枝松:行く前に遠足みたいなかんじで、おかし(500円まで)とか。

──初ツアーならおもしろいかもしれないですね。

枝松:やろうか。おもしろそう。

河相:僕は絵が描きたいんです。水彩画が描きたい。

枝松:書けばええやん(笑)。

河相:紅葉とか描きに行きたいんですけど(笑)。21カ所の画集ができるかも。

──河相先生ですね。

河相:先生っていいですね(笑)。

枝松:(笑)行ったことないところでライブするし、かなり試されるものになること間違いないかな。またバンドとして成長してこないと。

河相:黄昏ツアーのときは東名阪だけやったから不安はあるんですけど、良いライブしてっていう気持ちの方が強いから楽しみです。

枝松:今回のツアーは後から振り返っても楽しかったなって言えるものをやってのけたいって思ってるんです。めちゃ楽しいものにしたい。それで泣けるツアーにしたいです。

──そのツアーの感想を楽しみにしています。あとは河相画伯が描いた絵を。

河相:画伯?

──あっ、先生ですね。河相先生(笑)。

枝松:俺も“先生”欲しい。旅の小説描こうかな。

──歌詞描いてるからもう先生ですよ。

枝松:ノーベルを描きたい。

──…じゃあ、2007年は先生と呼ばれることを目標に。

枝松:何か1個先生の称号を得る(笑)。

──では最後にバンドとして個人として、2007年の目標ってありますか?

尾崎:12月に自主企画イベント「TASOGARE Night」をやるので成功させたいというのと、やっとCDも出し始めたのでもうちょっと大きい動きができたら…。もっと音楽を楽しめるようになりたい。昔はピックで弾いてたんですけど指で弾いてみたり幅も広げたいですね。

堀内:僕もドラマーとしての幅を広げたい。いろんなことができるような人間になりたいと思います。

枝松:曲をいっぱい作る。個人的なものも含めても50曲ぐらい作らんとあかんやろ。

河相:僕は打ち上げとかでギタリストのところに行くのが苦手なんです。俺に話に来る状況を作りたい(笑)。聞かれるレベルに達したい。先生って呼ばれたいんです(笑)。


tasogare

tasogare

TBCD-1028 / 1,890yen(tax in)
12.06 IN STORES
初回盤特典:DVD付「season」(MUSIC CLIP)
★amazonで購入する
★iTunes Storeで購入する(PC ONLY) icon

Live info.

12.09(土)LIVE SQUARE 2ndLINE
センチライン presents『TASOGARE Night vol.8』

OPEN 18:00 / START 18:30
ADV.2,000 / DOOR.2,500(+1drink)
W)Prof.Moriarty&Smiley-Todd / SUZAN / WONDERS

12.17(日)下北沢GARAGE
センチライン presents『TASOGARE Night vol.9』

OPEN 18:00 / START 18:30
ADV.2,000 / DOOR.2,500(+1drink)
センチライン / セツナブルースター / PIECE4LINE / and more...

ミニアルバム「tasogare」発売ツアー
『黄昏ツアー〜sound of sentiment07〜』

1.19(金)大阪LIVE SQUARE 2ndLINE
1.20(土)KYOTO MOJO
1.22(月)名古屋CLUB ROCK'N'ROLL
1.23(火)千葉LOOK
1.24(水)Shibuya O-Crest
1.25(木)さいたま新都心HEAVEN’S ROCK
1.28(日)水戸ライトハウス
1.31(水)仙台MACANA
2.03(土)新潟CLUB JUNK BOX mini
2.07(水)下北沢GARAGE
2.08(木)高円寺CLUB LINER
2.10(土)神戸STAR CLUB
2.12(月)松山サロンキティ
2.13(火)大分T.O.P.S
2.14(水)鹿児島SR HALL
2.16(金)福岡DRUM SON
2.17(土)熊本DRUM Be-9
2.18(日)長崎DRUM Be-7
2.20(火)広島ナミキジャンクション
2.21(水)岡山PEPPER LAND
2.23(金)OSAKA MUSE


センチライン OFFICIAL WEB SITE

http://www.sentiline.net/

センチラインの皆様から素敵なプレゼントがあります!

posted by Rooftop at 16:00 | TrackBack(0) | バックナンバー

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