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社会科見学に行こう!('06年11月号)

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社会科見学に行こう!

社会科見学。そうえいば、小学校の時あんまり面白く思ってなかった。
「ああ、今行ったら、また面白いだろうなぁ」と思ってもどうやって行ったらいいのかわからない。一人で行ってもつまらない。でも行こうと思えばいけるんだ。そんなことをネットというサークルを使ってやってしまった人がいる。「社会科見学に行こう!」。ネット上で活動を展開し、現在mixi上のコミュニティは5000人以上。イベントを行っても「こんな世界があったのか!」と驚嘆する人多数。そんな会を主催しているぴろり、さんにお話を伺ってみた。(TEXT:斉藤 友里子)


「こういった場所に入るにはどうしたらいいんだろう」

──「社会科見学に行こう!」をやろう!と思った経緯を教えて下さい。

ぴろり、:もともと特殊な場所に入るのが好きだったんですが、B級スポット的なところとか。で、2004年の3月ぐらいに東京ジオサイトプロジェクト(※1)という、虎ノ門にある日比谷共同溝に入るイベントがあって、それをたまたま、はてなダイアリーでみつけて参加してみたんですよ。そうしたら、すごく面白くて「こういった場所に入るにはどうしたらいいんだろう」と思い始めたのがきっかけかもしれません。あとその頃はじめたmixiも大きいですね。そこでまずは知り合いで集まって、発電所とかしょう油工場とかに行ったりしてたんですけど、段々と人が集まって今に至るんですが。やっぱり見ると興奮したりしてしまうんですよね。


科学的になればなるほど、有機的

──何に興奮するんですか?

ぴろり、:例えばパイプ、とか。なんて言うんでしょうか。発電所でも、工事現場でも基本的にわざと美しく作ろうとしてないですよね。機能や理論があって、自然となった形がそこにある。それが美しく思えたりすると興奮するんですよね。

──混沌としているのに、そこに秩序があるような感じでしょうか。

ぴろり、:ええ。不思議なことに科学的になればなるほど、その機器やそれがある場所は有機的にみえるんですよね。例えば先日のイベントでみてもらった加速器(※2)のコード類。束になり過ぎていて、神経組織にすらみえますよね。

──はい。筋肉組織にもみえたり。完璧なシンメトリーだったり。しかし「はぁ....美しい」ってなんで思っちゃうんですかね。

ぴろり、:それをわざわざ狙って作っているわけじゃないんですよね。そこがまた美しく思ってしまう。理論があってそれを追求した結果、ビジュアル的な美しさも生むってスゴイなぁと。それを考えるとたまんないですよね。

──なんでしょうか、この興奮は。脳が歓喜している、としかいいようがないのでしょうか。興奮して「鼻血でるーー!」と思ったんですが、本当に鼻血でてました(笑)

ぴろり、:そこまで興奮してくれると、うれしい限りです(笑)


素粒子、加速器すげぇ

──あのイベントは本当に....。「機器は美しくないと動かないんですよ」とか名言多かったですよ! あと素粒子という存在。素粒子を加速させて調べる可能性。ロマンチック過ぎて倒れます! フォース(スターウォーズに出てくるやつ)は本当にあるかも。時間も戻れるかも。瞬間に移動できるかも。って完全にSFじゃないですか。それを大まじめに研究してる頭のいい大人がいるわけですよね? 豪気で素敵過ぎる遊びに思えて、また興奮してしまうんですよ! 電気代一日一億円って!(以後、インタビューにかかわらず大暴走)

ぴろり、:は、は、はいはい。おっしゃる通りだと思いますが(笑)、言われたように非常に色んな意味でエネルギーがかかる研究だったりします。素粒子という極小の世界から極大の宇宙という世界を知ろうというのは、いわば宇宙の模型を作るということなんじゃないかと思うんですよ。だから大きな国際的な施設を作る計画が動いてるみたいなんですよ。大きくなれば、お金も施設も人も多くなる。そうすると研究の規模が大きくなって、ゆくゆくは地球をコントロールできちゃう、なんて考えているみたいなんですよね。本当に夢っぽくって、僕もよくわかってないんですが。

──まず、加速器の仕組みは一瞬悩みました。なんで小さい物質が走るといろんなことわかんの?って。で、私は恋とかに置き換えて考えた時にああそうか、って思ってしまったのですが。

ぴろり、:なんすかそれ?

──素粒子というのは理論上なんでもできる物質ですよね?

ぴろり、:アインシュタインがみつけた理論らしいですけど。

──てことは重さ、速さ、時間が自由自在。どこにでもなんでもできる何かってことですよね。素粒子というのは。で、加速させると自由自在のはずなのに、重くなっていくという実験結果があったと博士達がイベントで言ってました。例えば、素粒子を「想い」に置き換えてみたんですよ。「想い」「空想」でもいいんですけど、人の空想は自由じゃないですか。考えることに制限はない。で、色々と考えはじめると繊細になる。で、よりまた考える。そうするとまたその想いが加速する。加速すると強い思いになる。で重さが出てくる。早すぎると重くなって、妄想とかになる。なぁんて考えてしまって面白かったんですよ! あの博士たちの話し!

ぴろり、:はいはいはい(笑) でもそうかもしれないですけどね。観測者の理論(見てる人間によってその対象物の状態が変わる。正確にその対象物をみるというのは不可能という理論)もありますから、まず博士たちが夢を持っていないとそこに向かえないかもしれませんよね。

──そのせめぎ合いも大変ですねぇ。夢と現実。

ぴろり、:だから博士達はより魅力的なのかもしれませんよ。

──ダークマターの話なんかも面白かったですね。

ぴろり、:ダークマター、ほんとSFっぽいですよね。宇宙にある物質らしいけれども、光も電波もでないため確認がとれないという物質って。説はたくさんあって、結局のところなんだかわからない物質だけど、「ある」ということはわかっているらしく、しかも宇宙を構成する90%近くがこのわけわかんない物質。観測できるまともな素粒子は8%だけって。でもこのダークマターがなかったら、もしかしたらビックバンはなかったかもしれないって、すごい話ですよね。

──わかんないことだらけですね、人は。

ぴろり、:そうですね。それを少しでもわかろうと、こういった施設を作っているようなんですよね。日本にそれがあったということも驚きだったし。

──この機会がなかったら知らなかったです。

ぴろり、:僕もネットで「高エネルギー加速器研究機構」って見た時、興奮しましたよ。「高い」「エネルギー」「加速」「研究」!? って何研究してんの!って。

──その興味を持って、KEK(※3)をたずねられたんですね。

ぴろり、:KEKの方も知っててくれて、トントントンと話しが進んだりしたんですよ。あと情報公開の時期に出会えて本当によかったです。

──情報公開?

ぴろり、:国際的な施設の建設計画があって、みんな「わがの国へ」というふうに村おこしならぬ、国おこしをやろうとしているんですよ。トップレベルの頭脳が集まるメリットは大きいんでしょうね。

──はぁ、でっかい話しですねぇ。

ぴろり、:それが僕たちが住んでいる日本で起こってるってすごいですよね。


※1 東京ジオサイトプロジェクト
東京ジオサイトプロジェクトは「共同溝」の工事現場を数日間だけ文化的な目的で使うことに挑戦する実験的プロジェクト。
※2 加速器
極小とされている物質、素粒子を高速で走らせる機械。その走る過程を観測することによって、様々な地球や宇宙の謎を追究しようとしている。
※3 KEK
高エネルギー物理学研究所のローマ字表記(KouEnerugii ButsurigakuKenkyusho)
巨大な加速器と呼ばれる装置群を使って基礎科学の研究を行っている場所。エネルギーの粒子を衝突させ、宇宙誕生時に多数存在した粒子を発生させて反応を調べる研究などから物質の根源や宇宙誕生時の物質の起源にせまる謎を解明してくれる基礎科学研究施設。



posted by Rooftop at 11:00 | TrackBack(0) | バックナンバー

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