ギター バックナンバー

THE NEATBEATS ('06年11月号)

THE NEATBEATS

日本屈指のロックンロール・バンドから届いたスペシャル・クリスマス・プレゼント!!

THE NEATBEATSの新作『ROCK'N'ROLL CHRISTMAS』は、その名の通り、クリスマス・ナンバーを集めた9曲入りのミニ・アルバム。エルヴィス・プレスリー、チャック・ベリー、ブライアン・ウィルソンのカヴァー曲を含む本作からは彼らのルーツがガツンと伝わってくるし、シンプルにしてソリッドなバンド・サウンドには、「とにかくロックンロールがやりたいんだ!」という激しい初期衝動がガッツリと込められている。今年も130本を越えるライヴ(!)を敢行、さらにプライヴェート・スタジオの設立に着手するなど、精力的という言葉が陳腐に感じてしまうほどの勢いで自らのロックンロールを邁進させているTHE NEATBEATS。結成10周年を来年に控え、ますますスピード・アップしている現在のテンションについて、ヴォーカル&ギターの“MR.PAN”こと真鍋 崇に聞いた。(interview:森 朋之)


スタジオじゃなく、パーティー会場を作ってる感覚

──今、スタジオを作ってるんですよね? もう完成間近ですか?

真鍋:あ、昨日ね、(ミキサー)卓が入ったよ。もうね、めっちゃ大変やってん。アナログの卓を買ったんだけど、重さが380キロって言われて。

──え、そんなに重いんですか!?

真鍋:そう。運送屋から電話があった時は「380キロ? ちょっと対処方法を考えるから、しばらく待って」って言ったんやけど、「保管料がもの凄いかかるから、とにかく早く引き取ってくれ」って言われて。まぁ、届いたもんは運ばないとしゃあないってことで、とにかくベースの三浦(誓山)と一緒に待ってたら、ごっついチャーター便がドーンとやって来て。

──ははははは!

真鍋:もうね、運送屋のおっちゃんも困ってんのよ。「こんなの、絶対に入らないですよ」って。実際、ビクともせえへんし…。30分くらい3人でボーっと卓を見つめてたもんね。「どうする? これ、持ち上がらへんよ」って。

──まぁ、380キロですからねぇ……。

真鍋:「バラして入れる?」とか言ってたんだけど、誰も工具持ってないしね。うわー、困ったなぁって思ってたら、たまたま工事にやって来た水道屋さんが「僕、工具持ってますよ」って言ってきて。その水道屋さん、凄いんよ。とりあえず卓の足を外して、「じゃあ、運びましょうか!」って、階段に毛布を引いて、一段ずつずらしながら、少しずつ入れていって…。最後にバラした足をキュキュッと取り付けて、「じゃあ、僕はこれで!」やで? いや、もう、びっくりしたよ。三浦と2人で「あの水道屋さん、めちゃめちゃ恰好いい! ローディーに欲しい!」って(笑)。

──まさに救世主っすね(笑)。

真鍋:そうそう。しかし、あれは重すぎるね。みんなが「古い卓は要らない」って言うのは、あの重さのせいやね、きっと。

──何はともあれ、卓が入ればレコーディングも出来ますよね。

真鍋:うん。機材は一通り揃ったから、これから内装して。「スタジオ作る」って言い出し時には「やめとき」とか「無理やって」っていう人もいたけど、そんなふうに言われたら余計に燃えるから(笑)。もう、“絶対にやってやる!”っていう。

──でも、思い切りましたよね。スタジオ持ってるバンドって、あんまり聞いたことないし。ラヴ・サイケデリコくらいかな。

真鍋:ははははは! いや、でも、あの人らは売れてるやん。俺らは売れてないのに作ったからね。そこは凄いと思うよ(笑)。

──そうっすね(笑)。

真鍋:まぁ、スタジオっちゅうより、パーティーしたいんやけどね。スタジオじゃなくて、パーティー会場を作ってる感覚のほうが強い(笑)。レコーディングのスタジオって無機質やし、だいたいどこも同じような感じなんですよ。で、あらかじめいろいろと用意していって、「さぁ、録りましょうか」っていう…。そうではなくて、仲間とワイワイ遊んでるうちに生まれるものって言うか、遊んでるような感覚で演奏して、そこで生まれる偶然の産物を録りたいなって気持ちがあったから。時間を気にせんと、ずっとテープを回せるような環境ってことになると、やっぱり自分らで場所を作るしかないかなぁって。あと、作る側の楽しみも欲しいからね。単にレコーディングしてただけじゃなくて、実はそこで夜な夜なパーティが開かれていて、それがすげぇ楽しかったんだよっていう。スタジオがあったら、みんなをどんどん呼べるやん? 「ビール、飲みに来てよ」って。そこで弾いてもらって、「よしOK! バッチリ録った! ギャラはビールで!!」とか(笑)。


真夏にレコーディングしたクリスマス・アルバム

──楽しそう(笑)。えーと、10月25日にリリースされたクリスマス・ミニ・アルバムの話を。

真鍋:はい。お願いします。

──『ROCK'N'ROLL CHRISTMAS』っていう非常に判りやすいタイトルが付いてますが、クリスマスをテーマにした音源って、初めてですよね。

真鍋:そうですね。ロックンロール・バンドにとっては意外と必要なアイテムやから、昔からやってみたいなって思ってたんですよ。来年(バンド結成から)10年なんで、それを前にして、余裕っぽい感じも見せておきたかったし(笑)。もともとは自分らで出そうと思ってたんですよ。どっちにしても売れへんやろうし。

──いやいや、そんなことないでしょう!

真鍋:いや、ホントに。大して売れへんのは判ってたから、「自分らで出すわ。迷惑かけるのもイヤだし」って言ってたんだけど、今の(レコード)会社が「いいよ、ウチで出すよ」って言ってくれて、「あ、そう? じゃあ…」っていう。

──クリスマス・アルバムって最近、少ないですよね。

真鍋:うん。みんな、意外とやりたがらないね、こういうの。クリスマスに限らず、“シーズンもの”って少ないよね。だいたい決まってるしね、クリスマス・ソングって。山下達郎さんとか、あとは織田裕二の微妙なカヴァーとか(笑)。

──ありましたね、「ラスト・クリスマス」。

真鍋:あんなんやったらジョージ・マイケルでええやん、っていう(笑)。あと、ビーチ・ボーイズとかエルヴィスのクリスマス・アルバムも好きやったし。アメリカって、いっぱいあるんですよ。クリスマス・シーズンにレコード屋行ったら、クリスマス・アルバムがドーンとピックアップされてて、“え、こんなにあんの!?”ってビックリするもん。飾り付けとかも派手やしね、あっちは。

──真鍋さんもやったりするんですか? クリスマスの飾り付けとか。

真鍋:いや、全然(笑)。「もうええやん、そんなの」って言うか、どっちかって言うとアンチ・クリスマス派やね。子供の頃は好きだったけどね、プレゼントも貰えるし。まぁ、「サンタって、親父でしょ?」っていう現実派だったけど(笑)。

──(笑)で、どうでした? クリスマス・アルバムのレコーディングは。

真鍋:うん、面白かったよ。クリスマスの雰囲気を自分で作るっていうのが楽しいよね、まず。ベルの音入れて、“うわー、クリスマスっぽいね”とか。ただ、レコーディング時期が真夏やったから、そこはちょっと難しかったけど。まず、『ホーム・アローン』観たよ(笑)。なんかクリスマスっぽいでしょ、あれ。

──そうっすね。ビーチ・ボーイズのカヴァー(「CHRISTMAS DAY」)もやってますが、これ、難しそうですね。

真鍋:いや、実際、ムチャクチャ難しくて。「さぁ、やろうか」って言ったら、出来へんのよ。だんだん不安になって、みんなヴォリュームを落とし始めたりして。しまいには普通に喋れるくらいの音量になってたからね。普段、あれだけ爆音でやってるのに。

──ははははは。

真鍋:やっぱりね、あの感じはビーチ・ボーイズじゃないと出されへんよ。俺、ブライアン・ウィルソンが凄く好きなんやけど、ライヴ観たらビックリするもん。凄いよ、ホント。まぁ、今回は何とかやりましたけど(笑)。

──あとはチャック・ベリーの「RUN RUDOLPH RUN」、エルヴィスの「BLUE CHRISTMAS」っていう有名なナンバーも。

真鍋:まぁ、そのへんは単純に好きやから。でも、結構知らへんのちゃうかなぁ、プレスリーにしてもチャック・ベリーにしても。

──若い子は知らないかもしれないですね。オリジナルの曲に関しては?

真鍋:このアルバムのために“限定”で作った感じですね。と言っても、それほどクリスマスっぽいわけでもなくて、普通にライヴで出来る曲ばっかりなんやけど。そのへんは適当ですね。「カヴァーとオリジナル、半々くらいでやるか? 3日くらいあったら出来るやろ?」みたいな(笑)。


バンドは常にライヴをやっていないと価値がない

──で、このアルバムが発売された翌日の10月26日から新しいツアー『ROCK'N'ROLL CHRISTMAS TOUR 2006』が始まったわけですが……10月24日まで『AUTUMN TOUR 2006』をやってて、1日置いて、すぐに次のツアーが始まるっていう。

真鍋:それね、ライヴの日程はずっと前から決まってるんですよ。その間にアルバムを出すことになったから、ツアーの名前を変えただけ。ずっと秋のツアーをやってて、“はい、今日からクリスマス!”っていう(笑)。デパートと同じですね。クリスマスが終わったと思ったら、いきなり正月の飾り付けになるっていう、あんなノリです。

──じゃあ、ツアーの内容も…。

真鍋:あんまり変わらないんちゃうかなぁ。クリスマス・アルバムとか出してるわりには(笑)。

──でも、今年も凄い数のライヴをやってますよね。何本くらいですか?

真鍋:130くらい。ぶっちゃっけ、ちょっと多すぎたね、今年は。130本はヤバい。何にも出来ないからね、他のことが。家具を改造したいな、とか、ジーパン修理したいな、とか、そういうことが何も出来ない。ジーパンの穴は開いたままです。

──130本もライヴをやれば、そうなるでしょうね。

真鍋:残りは最低限の日常生活だけですね。去年は110本くらいだったんだけど、100から110がちょうどいいよ。130はちょっと……アホちゃう? っていう本数だから。

──なんでそんなに増えちゃったんですか?

真鍋:たとえばさぁ、ひとつのライヴハウスから呼ばれるでしょ。で、「いいよ、OK」って言ったら、その近隣のライヴハウスから「ウチにも来て下さいよ」って言われるんですよ。そうやってどんどん繋がっていくっていう。あと、「どうして今回、ウチには来てくれないんですか!?」っていう苦情もあるしね。「すいません。じゃあ、次は行きますわ」とか言ってるうちに…。

──どんどん増えていく、と。

真鍋:うん。しかも“去年はたくさんやったから、今年はやらない”とかではないから。ずっと100本以上やってるからね、毎年のように。一番少ない年で70本くらいだったんだけど、“すげぇ少ない! 暇!”って思ったもん。

──70本でも充分多いですけどね。まぁ、ライヴはバンドの生命線ですからね。

真鍋:それは絶対。それしかないと思う。ライヴハウスの雑誌の取材だから言ってるわけではなくて、それしかないもん。CDとか音源も必要なものではあるが、そこで旬の自分らを出せるわけではないから。バンドは生モノだから、ライヴをやって常に動いてないと、価値がないと思う。それに音源とかって、どこにでも転がってるでしょ、今や。

──ケータイとかでも聴けますからね。

真鍋:そうそうそう。CDって今や、手に入れるのも簡単、作るのも簡単っていうものだから。それはそれで大事なんだけど、俺らはCDが作りたい、CDを聴いてもらいたいためにバンドをやってるんじゃなくて、人前で演奏したいっていうほうが先だと思うんですよ、絶対。それは誰でも同じだと思うんだけど。最初からCDを出すのが目的でバンドをやるヤツっていないから。

──そうっすね。

真鍋:そのことを忘れないためにも、やっぱりライヴをやるべきなんだと思う。仲間と一緒に楽しみたいっていう、そのレヴェルでいいと思うんだよね、バンドって。あとね、地方に行くと「全然来てくれないんですよ」っていう声をよく聞くのね。そうすると、やっぱりツアーやらないとダメだなって思う。

──CDは誰でも簡単に作れるけど、年間130本のライヴはちょっと出来ないですからね。

真鍋:うん、簡単には出来ない。コピーも出来ないしね。毎回違うから。

──ただ、余りにもツアーが過酷すぎて、バンド内の空気が悪くなったって話は多いじゃないですか。イエローモンキーとかもそうだったし。

真鍋:ははははは!

──それが遠因になって解散したわけでしょ、あれって。

真鍋:いきなりやるからダメなんよ。最初からそのペースでやったら大丈夫やって。俺らは最初から、“めちゃめちゃライヴやりたい”っていうバンドやったから…。まぁ、“うわーキツイなぁ”っていうのはあるよ。メンバーの間で、“ちょっと違うんちゃうか?”っていうこともあるし。でも、それが大きな問題になることはないなぁ。ツラい時はみんなツラい。“しんどいねん、俺”って時は、みんなもしんどいから。

──ニートビーツにとってはライヴが日常と言うか。

真鍋:アメリカとイギリスに1年くらい住んでたことがあるんだけど、その時にやっぱり、“ライヴをやってないとバンドじゃないな”って思ったことがあって。毎日やってるでしょ、普通に。生きる術としてライヴをやってて、それが凄くリアルで。ウィルコ・ジョンソンとかも、普通に自分で機材を運んでるからね。最初は“え、こんなことしてるの?”っていう感じやったけど、よく考えてみると、それが当たり前なんよ。日本は恵まれすぎてると思うね。

──確かに、そうですね。

真鍋:俺らもね、“え、こんなところでやるの?”っていう場所もあるけど、面白いんですよ、それが。まぁ、今はどこもちゃんとしてるけどね。1年振りに行ってみたらバッチリ改装してて、“うわ、めちゃめちゃ良くなってるやん! ちゃんと防音効いてるやん!”とか。

──結論としては、今年もライヴをたくさんやった、と。

真鍋:そう。毎年同じです(笑)。でも、これは続けたもん勝ちやと思うで、絶対。たまに、「相変わらずですね。ずっとライヴやってるんですか?」って言われたりするけど、そんなもん、「そりゃ、やってるよ!」ってことだから。だって、自分、会社に就職したら、毎日会社に行くやろう? それと同じやっていう。あと、アルバムとか作ってて、“今月は5本くらいしかライヴできへんな”っていう時もあるじゃない? そしたらもう、「なんでライヴやらないんですか? 少ないですよ!」って言われるしね。いやいや、レコーディングもやらなあかんやろ! っていう(笑)。




レコーディングで一番大事なのはその場の雰囲気

──次のアルバムは、完成したばかりのプライヴェート・スタジオでレコーディングですか?

真鍋:録りたいね、是非。今までもずっとセルフ・プロデュースでやってきたんやけど、レコーディングで一番大事なのは、その場の雰囲気だと思うんだよね。それが“自分達のスタジオを作る”っていう発想に繋がってると言うか。他のバンドにも使ってほしいね、是非。ただ、限界があるけどね。「直しはできません」とか。「後から直すことは出来ないので、細かいミスはそちらで対処して下さい。妥協するなり、そこだけ聴かないようにするなり」って。

──ははははは! まぁ、ロック・バンドですからね。

真鍋:そうそう。直したりするのは、面白くないもん。あれは良くないよ、絶対。大切なデータをちゃんと保管しておく、みたいな利点もあると思うけど、人間味がないもんね。マウスをカチカチやるよりも、ツマミをグイーンって回したり、押したり、引っ張ったりしたほうがいいと思う。なんか、東大阪の中小企業的な感じやけどね。「モノ作りというのは…」みたいな(笑)。

──話が最初に戻りますけど、ちゃんと卓も入ったことだし。

真鍋:うん、気分が上がったね。やっぱりいいよ、アナログの卓は。デレク&ザ・ドミノスのエンジニアをやってたトム・ダウドって人が凄く好きなんやけど、その人が使ってたシリーズの卓なんですよ。当然ヴィンテージやけど、値段も手頃やったし。まだ判んないけどね。“このボタン、何やろう? 押してみたら、どうなるんや?”っていうレヴェルやから。

──他の機材もすべてヴィンテージ?

真鍋:うん、ほとんど。ヴィンテージの機材はずっと集めてて、今回スタジオに運び込んだものも、自分らの機材がほとんどやったから。ほとんど見た目で決めてるんですけどね。ロゴがカッコイイとか色が渋いとか、デザインが原子力発電所みたいや! とか(笑)。

──ははははは! 大丈夫っすか?

真鍋:いやいや、見た目の良さと性能っていうのは比例するんですよ。知り合いのエンジニアに見てもらった時も、「かなりいい機材が揃ってる」って言ってたし。ただ、メンテが大変やけどね。真空管、何本要るの? って。

──そうでしょうね。質のいい真空管も、ヴィンテージじゃないと揃わないだろうし。

真鍋:そうなんっすよね。真空管ってパワー管っていうのとプリ管っていうのがあって、俺はその中間の規格が欲しいんだけど、なかなか見つからなくて……って、どんどん真空管に詳しくなっていく自分がイヤなんだけど(笑)。たとえば彼女とかがいて、「見てみい、この真空管。凄いやろ?」って言っても、全然話が広がらへんやろうし。「これ、1本で3万円もするんやで」「は? アホちゃう?」っていう。そう言えば名古屋におんのよ、家族全員、真空管が好きっていう電気屋の一家が。まず、弟に真空管を見せるやん? そうすると、「あ、これはいいですね。大切にしたほうがいいですよ」って言って、自分の兄貴にも見せようとするんですよ。で、次に親父が出てきて、「おー、これは懐かしいな」って言ったかと思うと、今度はおかんが「何? いいわね、これ。今、結構高いでしょ?」みたいな。なんで全員、真空管のことが判るねん。気持ち悪っ! っていう(笑)。

──(笑)でも、やらなくちゃいけないことが無限にありますよね、きっと。

真鍋:そう、時間が足りないっていうことだけが悩みやね、ホントに。昨日も卓を入れた後、自分ちの引っ越ししたからね。俺、凄いなって思ったよ(笑)。タイムテーブルもきっちり作って、“押してます”とかないからね。“巻きでどんどん行きますよ!”みたいな(笑)。

──なんでまた、そんな日に引越しなんか…。

真鍋:4日前くらいかな、“よし、引越ししよう! 今すぐやろう!”っていきなり思って。引越屋とかに電話しても全然予約が取れないから、赤帽に頼んで。やって来たのがヨボヨボのおじいちゃんやったんやけど、人を呼んで、2トン・トラック分の荷物を2時間で運びきって。もうね、“俺は何でもできる! やれないことはない!”って思ったね、昨日。そう言えば赤帽の人もビックリしてたよ。「この卓、どうやって入れたんですか? 凄いですね」って。「やれば出来るんですよ、何でも!」って言ってやりました(笑)。


何かが足らない時にどう補うかが重要

──来年はデビュー10周年ってこともあり、さらに忙しくなりそうな…。まずはオリジナル・アルバムですか?

真鍋:出しますね、確実に。来年はね、いろいろやりたいと思ってるんですよ。オリジナル・アルバムはもちろん出すんですけど、10年経った今──まぁ、10年だからどうこうって意識はあんまりないんですけど──最初の頃にやってたことをもう一度やってみるのもいいかなって思ってて。マージービートだけのカヴァー・アルバムとかね。

──おお、いいっすね。今マージービートをやると、10年前とは変化してる部分もあるだろうし。

真鍋:うん…。もちろん進化した部分っていうのはあると思うんだけど、ほら、「音が変わってきたね」なんて言われることもあるやん? でも、俺はそういう時、「見方を変えたのは君のほうや」っていう気がするんだよね。好きなものは変わってないわけやし、やってるほうの気持ちも全然変わってないから。そういうところを見せたいんかもしれないね。

──今回のクリスマス・アルバムも、初期のニートビーツに近い手触りがありますよね。

真鍋:そう、ちょっと古い感じはありますよね。こういうことをやらない人も多いと思うんですよ。“今さらそんなこと出来んよ”とかって。俺らは別にそんなこと思わないから、今回はこういう感じでやってみた……って言うか、適当なんですよ。いや、適当ちゃうな。臨機応変(笑)。“レコーディングは4日間しかない? まぁ、何とかなるよ”っていう。

──まぁ、60年代とかはそうだったわけですからね。

真鍋:そうそう、ストーンズもビートルズも、みんなそうやったわけやん? 時間も機材もなかったけど、その中で名盤を作ってきたっていう…。そういうのがね、だんだん判ってきたと言うか。

──と、言うと?

真鍋:モノが揃ってても、ダメなもんはダメなんすよ。何かが足らない、じゃあ、それをどうやって補うかって考える。そういう時に出てきたアイデアが重要であって、すべてビシッと揃えたとしても、ええもんは出来ないって言うか。バンドは今、そういう時期に来てる気がするね。職人的に全部自分らでやるっていうのもそのひとつやし。コンピュータを使いこなすものも大事かもしれへんけど……そう、俺ねぇ、スタジオの中では白衣を着ようと思って。

──ん? 何でですか?

真鍋:音の研究者っていう感じで(笑)。エンジニアもね、昔と今では意識が違うと思うんですよ。単に音を整えるっていうんじゃなくて、モノを作るっていう気持ちが強かったような気がする、昔は。車のメカニックとかと一緒で。

──もしかして、全部自分達でやろうと思ってるんですか…?

真鍋:まぁ、最初は知り合いのエンジニアに頼もうと思ってるけど、そのうちに自分でも録ってみようかな、と。大丈夫やと思うよ。技術はないけど、センスはあるから(笑)。知り合いのバンドも結構、期待してくれてるからね。「そういうスタジオがあったら、是非やりたい」って。自分らが好きな音を広めていく、っていう意味もあるし。

──そうっすね。「昔の機材でレコーディングできるスタジオがない」って話はよく聞くし。

真鍋:リハスタで働いてる人と話してるとね、「この機材、古いんです」とかって言うんですよ。古いって言ってもね、マーシャルの結構新しいヤツなんだよ、それ。で、「なんでコレだとまずいの?」って言うと、「今年のモデルを入れないとまずいんですよ。そういうスタジオが近所に出来て、みんなそっちに行っちゃうから」って。そんなもん、新しいからええっていう話と違うやん?

──そうですね。

真鍋:ねぇ? 新しいものが好き、っていうのは否定しないけど、常に新しいものがいいわけではないから。そういうのはね、面白くないよ。多分、ウチのスタジオを人に使ってもらったら、必ずトラブルが起きると思うよ。

──トラブルって?

真鍋:だって、「こういう機材を使いたいんですけど…」って言われても、「ないよ。これしかないから」って(笑)。「メニューはこれだけ! “デザートを付けろ”って言っても無理!」っていう。

──ははははは!

真鍋:アンプとかだって、50、60年代のものばっかりだから。逆にこっちから注文するかもしれないね。「なるべくエフェクターとか使わないでね」とか。

──スタジオの人がバンドのレコーディング方法にどんどん口を出すっていう(笑)。

真鍋:そうそう(笑)。まぁ、年明けくらいからちゃんとやりたいなって思ってますけどね。夢やったからね、スタジオを作るっていうのも。夢=借金だったりするけど。

──(苦笑)。

真鍋:一応ね、69歳までに返そうと思ってて。ロック(69)の年までに(笑)。やっぱりねぇ、おだてられたらアカンね。「いいよ、やりなよ」って言われると、「よっしゃ!」って思っちゃうから。で、実際に準備を始めたら、「ホンマに大丈夫か?」とか言いやがって。ひどいもんですよ、みんな。


真鍋オトン&オカン、老いて益々血気盛ん!

──いやいや、期待してますよ。でも、130本ライヴやって、レコーディングして、スタジオまで作って…。それだけ忙しいと、野球を観る時間もなさそうっすね。

真鍋:いや、今年も何回か観に行ったよ。忙しい合間をぬって、“今から行けば、5回くらいから観られる!”って横浜まで行ったり。でも、横浜はアカンね。あれはファンがアカンわ。阪神のほうが多いねんもん。あれは可哀想やったなぁ…。

──阪神、優勝できませんでしたね。

真鍋:今年は中日が強かったね。阪神もねぇ、とにかく中日に勝てなかったから。6勝くらいしかしてないんちゃうかな、確か。

──名古屋ドームで10連敗くらいしてましたからねぇ。

真鍋:そうそう。でも、来年も強いと思うで、阪神。めちゃめちゃバランスいいから。巨人は無理やな。原はアカンと思うよ、あれは……そう言えばこの前、中日が優勝する前の日かなんかにちょうど名古屋におって、ELLの人に連れられて“ピカイチ”っていう中華屋に行って。そこ、“中日、大好き!”っていう店やから、「阪神ファンって言ったらアカンで」とか言いながら(笑)。でも、たまたまその日は阪神が勝ってて、「お、阪神勝ってるで!」って言ってたら、バレてもうて。そしたらもう、店のおばちゃんがいきなり、「今日は高いわよ」って(笑)。

──値段が変わるんだ?(笑)

真鍋:そこね、中日の選手がよく来るらしいんやけど、みんな、阪神戦はやりにくいって言ってるらしいよ。甲子園とか行くと、ヤジがひどいもん。清原なんかさんざんヤジられて、しまいには「こら、無視すんなや!」ですから。無視しとるんやなくて、プレイしてるんや、っていう。

──ははははは!

真鍋:審判に対しても、いちいちブーイングやからね。阪神の選手がハーフ・スイングを取られたら、「今の振ってないよ! どこに目ぇ付けとるんや!? マスクみたいの付けてるから、見えへんのちゃうか?」とか(笑)。

──神宮とかでもタチ悪いっすもん、阪神ファン。

真鍋:おもろいけどね。そう、甲子園のデー・ゲームを観に行ったら、隣に座ってたおばちゃんが「暑くてかなわんわ。今日は帰らせてもらうわ」って言い出して。「大丈夫?」って言ってたら、「お兄ちゃん、ひとつだけ頼みたいことがあるんやけど」って。何かと思ったら、「アニキ(阪神・金本選手のニックネーム)によろしく言っといて」やて(笑)。どうやって言うねん、ムチャクチャやなぁっていう。

──大阪のおばちゃんですね、まさしく。

真鍋:そういうのが好きやね、やっぱり。東京で同じことやったら、「え、何ですか?」ってなっちゃうじゃない。昨日もな、引越しの後でメシ食ってたんやけど、「領収書ちょうだい」って言ったら、店の兄ちゃんが間違って“平成10年”って書き始めて。“平成10年って、いくつやった?”って訊いたら、つめたーい感じで「二十歳です」って言われたもん。もうちょっと何かあるやろ? っていう。

──あー、なるほど。

真鍋:なんかね、不審者みたいに思われるねんな。“何でそんなに話し掛けてくるの?”っていう。でも、ウチの親父も同じやから、しょうがないよ。親父、大阪のライヴに来てたんやけど、その時はヨコロコとフラカンと一緒で。ヨコロコとフラカンって、ベースがどっちも前さん(グレート前川)やん? お客の女の子が「あれ、あのベースの人、さっきと同じ…?」って言ってたらしいんやけど、後ろに座ってたウチの親父が、「あれな、前さん言うてな、2つのバンドでベースやってんねん。服は違うけど、同じ人や」っていきなり話し掛けたみたいで。で、何でか知らんけどメールアドレスも交換してるんよ。もう63やのに(笑)。

──ははははは!

真鍋:ファンダンゴは顔パスやからね。「おっ!」って手を挙げて、そのまま入ってしまうという。オカンも凄いんよ。キングコブラの楽屋に来て、フラカンのセットリスト見ながら「ふーん、『脳内百景』やるんや? ニュー・アルバムの曲やんなぁ」って(笑)。何でそんなに詳しいねん!? しかもめっちゃ派手な赤のアロハ・シャツ着てるし。スタッフの子に「派手ですね」って言われたら、「そんなもん、年取ったら派手なカッコせな!」って。意味判らんわ。……って、何の話をしてるんや、俺は。

──(笑)とりあえず来年10周年ってことで。いろいろと期待してます。

真鍋:はい。期待しとって下さい!


ROCK'N'ROLL CHRISTMAS

ROCK'N'ROLL CHRISTMAS

BMG JAPAN BVCR-17046
2,400yen (tax in)
IN STORES NOW
★amazonで購入する

Live info.

ROCK'N'ROLL CHRISTMAS TOUR 2006
10月26日(木)新宿RED CLOTH
10月30日(月)大阪:十三ファンダンゴ
11月1日(水)奈良ネバーランド
11月3日(金)福岡CB
11月4日(土)鹿児島CAPARVO HALL
11月5日(日)熊本Django
11月7日(火)神戸VARIT.
11月18日(土)新潟WOODY
11月19日(日)金沢van van v4
11月22日(水)秋田Club SWINDLE
11月23日(木)八戸ROXX【ワンマンショウ】
11月25日(土)函館BAY CITY 'S STREET
11月26日(日)札幌SUSUKINO810
11月29日(水)和歌山GATE
12月1日(金)大阪:梅田シャングリラ【ワンマンショウ】
12月2日(土)姫路MUSHROOM
12月3日(日)徳島ジッターバグ
12月5日(火)高松DIME
12月6日(水)岡山PEPPER LAND
12月7日(木)広島ナミキジャンクション【ワンマンショウ】
12月9日(土)和田山HIGH/GAIN
12月10日(日)名古屋ell.FITS ALL【ワンマンショウ】
12月14日 (木)下北沢CLUB QUE【ワンマンショウ】
12月15日(金)下北沢CLUB QUE【ワンマンショウ】
12月17日(日)仙台LIVE HOUSE enn【ワンマンショウ】

EXTRA SHOW
10月27日(金)札幌SOUND CREW【"SPIRAL SCRATCH NIGHT"】
11月10日(金)神戸WYNTERLAND【“ビル・グラハム祭り in 神戸”- 前夜祭 -】
12月15日(金)23:00〜 下北沢CLUB QUE【"MAJESTIC NITE" 2006】
12月22日(金)豊橋CLUB BIRTH【"MAJESTIC NITE" 2006】

THE NEATBEATS OFFICIAL WEB SITE
http://www.neatbeats.net/

posted by Rooftop at 13:00 | TrackBack(0) | バックナンバー

この記事へのトラックバック