ギター バックナンバー

植木遊人&町田直隆 ('06年11月号)

植木遊人&町田直隆

考えるヒマがあったら動けばいい。やってみなきゃわからない。

ライブは常にがむしゃらで人間臭い。同じライブは2度としない。あのステージを見て感動の涙を流す人、殺意を覚える人さまざまだと思うが、絶対に言えるのは何も感じない人はいない。心に焼き付ける何かがある。生きていることを実感する。
その人生を賭けたステージを繰り広げる“歌う学園ドラマ”植木遊人と“武蔵野のジャックナイフ”町田直隆のSPLIT CD(共闘)がHAGE(ヘイグ) Recordよりリリースされることとなった。今回はSET YOU FREEの千葉さんとHAGE Recordの首謀者やこぶさん(欠席)を迎え、リリース記念対談。一言一言に重みがあり、改めて彼らの魅力を感じた。(interview:やまだともこ)


魂の色が同じだった

植木:俺、Rooftopのインタビューちゃんと受けるの初めてだよ!

──そうでしたっけ? すごいいっぱい載ってるイメージありましたけど…。じゃあ、祝!初インタビューということで、植木遊人&町田直隆でリリースする『DOWNTOWN REVOLUTION』のお話を聞きたいんですが、この2人でスプリットを出そうと思ったのはどんなきっかけですか?

植木:SET YOU FREEの千葉さんが、いつも無理矢理イベントを組むんですよ。お互いまだバンドで活動している時に僕と町田君が仙台で出るSET YOU FREEのイベント(2005/9/19)があって、ソロとして呼ばれたと思ってタイムテーブル見たらなぜか植木遊人&町田直隆になってたんだよ(笑)。バンド数が多いからっていう理由でそうなったのが始まり。その時はお互い面識もあまりなかったんだけど、一緒にやってみたら面白かったので、その月にあったワタナベイビー37回目の誕生日(2005/10/17@ロフトプラスワン)で初めてY.U&マッチーになった。その前にちゃんと話をしたのは十三ファンダンゴ(2005/9/14)のイベントの時だよね。

町田:行きの新幹線がたまたま一緒で、同い年だし意気投合したんです。共感できる部分があったんだよね。

植木:その時はバンドしながらのソロ活動でソロの方では空気をぶち壊すライブがしてくて、それを見てた町田くんがバンドのことで悩んでいる時期でもあったし何かしらの触発を受けて目覚めたのかな。

町田:もとから要素を持ち合わせていたのを刺激されたんだよ。

植木:それからツアーに一緒に行くようになり、俺も町田君も負けず嫌いだから絶対譲らないわけ。俺が脚立だったらマッチーも脚立だし。

町田:バトルだったよね。

植木:そういうのを何ヶ月かやって町田劇場が立ち上がって3回連続俺が出たんだけど、自分がメインじゃないから悔しくてつぶしてやろうと思ってやってたし、その中ですごく深まったというかわかちあった。

町田:青春映画っぽくお互い殴り合って仲良くなった感じ。

植木:そういう感じあるね。BUNGEE JUMP FESTIVALの時はとっぽくてかっこつけてるかと思ってた。

町田:ダブルオーテレサでのY.Uはアイドルみたいな感じだった。

植木:お互いそういう誤解を持っていたのが、ツアーをやる中で「コイツひょっとして人間は気持ち悪いんだ」と思ったんです。

──一番最初に会ったときっていつ頃ですか?

植木:バンジーとダブルオーで対バンしてるからいつだろう。宇都宮で餃子一緒に食ったよね。

町田:でもそんなに話さなかったね。僕昔はあんまり喋らなかったから。でもオモシロイもんだよね、それまでバンドとしては接点なかったのに。

植木:運命だよ。新幹線の中でマッチーが話していたことを覚えているんだけど、「俺は吉祥寺を盛り上げたい。シーンを若い子に繋げていきたい。」俺は「下北沢を繋げていきたい」。そこはすごく共感できたんですよ。

町田:そういうところから武蔵野のジャックナイフって言ってるんだろうね。ロフトの日に思いつきで言ったのがきっかけです。

植木:あとさ、その間にKING BROTHERSと東北ツアーに回ったのが大きかったよね。LINK、キンブラ、俺、マッチーで。

町田:ソロなのにバンドと一緒にやることで刺激もいっぱいもらったし。ソロはまったりするっていうイメージを崩して、バンドよりもアグレッシブなことをしたかったんだよね。

植木:そういうのが共感したよね。それを千葉さんがおもしろがってくれたから、お互い肩書きも“歌う学園ドラマ植木遊人”と“武蔵野のジャックナイフ”っていうのが出来て、実際ロックシンガー兼エンターテイナーっていないじゃないですか。足りないと思ってるんですよ。だから俺達がやろうって繋がった時があったよね。

──千葉さんは2人の第一印象ってどうでした?

千葉:マッチーはバンドのことで悩んでいる時期だったから、ちょっと鬱入ってたよね。で、人の話を聞いてなさそうなのに実はちょっと聞いてて(笑)。バンジーはCDは聴いたことあったけどライブは見たことないっていう状態で紹介されましたね。

町田:僕もSET YOU FREE自体は知ってたけどどういうイベントかは知らなかったです。4年ぐらい前に紹介されて「今度セッチュー出ない?」って言われたけど、心ここにあらずの状態だったから…。バンジーが再始動して、千葉さんがまた誘ってくれてそこから出るようになった。

千葉:ダブルオーはアイドル的な印象で思っていて、スペシャ列伝見たら、「意外にいけてないな、こっち側かな」って(笑)。

植木:僕はSET YOU FREEを知っいて、羨望の眼差しでした。その人がライブを見ておもしろいって言ってくれたことが非常に嬉しかったですね。

──昔、植木くんはアイドルっぽくて町田くんはクールな感じが?だしたんだけどSET YOU FREEに出るようになってからすごく変わった気がする。

植木:俺はアイドルから獣に変わった(笑)。

千葉:マッチーは今の方が普通だと思いますよ。バンジーの時だって歌詞は綺麗なこと歌ってないじゃないですか。なんで女の子にしか受けない音楽なんだって思ってました。僕は女の子のお客さんしかいないバンドに男のお客さんを増やすのが好きなんです。バンジーのお客さんは「あの町田くんが」って言うけど、それってもともとCDに入ってたんじゃない?って思うんですよ。今の流れというのは予想できてた。これぐらいは出来る人だろって。

町田:でも今は今でリアルにやりたいことやってるわけだから迷いはない。

千葉:Y.Uは会った時期が変革期だった。

植木:起伏が激しい人間なので対人恐怖症にもなったし、そういう時期を知ってる人は今の俺を見ると不思議がるんですけど、精神的には変わってないです。植木遊人という人間が生きてる上でのテーマはほぼ変わってない。

町田:でも僕もバンドはカットアウトってわけじゃないんですよ。バンジーはバンジーでその時のリアルを歌ってるんだけど、人はいつまでも同じじゃない。今は町田直隆のリアルを歌っている。

植木:俺は自分の描いた夢をずっと見ているんです。だから、ソロでやってると夢が追えないのかもと思ってすごく不安だったからダブルオーを辞めた月に新しいバンドを始めた。そいつらと絆として繋がっていきたいと思った。今はソロとバンドの境界線なんてないです。テーマは一緒。「誰かと繋がっていたい」それだけでいいんです。その中で夢を見たいし、誰かが目の前にいたらその人を楽しませたいっていうのはすごくある。町田くんとはそのバランス感覚を共感したんだと思う。スプリットは結論として、自然の流れ。共闘相手がコイツしかいないんだもん。だから今までいろんなバトルしてきて、その上で一緒にCDを作りたいって思った。

町田:立ってる場所とか姿勢とかスタンスとかは違うんだけど、魂の色が同じだったんだよ。

植木:タイミングが来たなっていう時にマッチーにスプリットの話をしたのよ。自分がソロデビューするときに、俺はこういう仲間がいるというところから始めたいと思った。町田くんもやりたいって言ってくれたのも嬉しいし、やこぶさんもリンダさんも「じゃあやれよ」って言ってくれたのも嬉しいし。

──でも、ここでY.U&マッチーと一緒だと思われる懸念はないですか?

植木:ないでしょ。曲を聴きたいって人は植木&町田に来ればいいの。Y.U&マッチーは全然違うモノを提案する自信があるので。でもライブだったら目の前にいるヤツを楽しませたいでしょ。

町田:目の前にいるやつしか楽しませたくない。

植木:やっぱ現場でしょ。

町田:現場に来るってことはそれなりの覚悟を決めて来てるヤツが多いんだよ。

植木:そいつだけは楽しませて帰りたいっていつも思う。

──しかも2人のCDでライブは想像できない。

千葉:まったく違いますからね。

植木:俺等発表会をしたいわけじゃないし、人生をぶちまけたいんだもん。

町田:ライブをしたいの。


バックトゥースクール

──ところでスプリットのレコーディングはではお互いその場にはいたんですか?

植木:いた。でもあえて手の内を見せない。どの曲にするかも教えないようにしてた。

町田:何も知らない分あいつに負けないようにしなきゃってすごく思った。

植木:それで、ビックリしたのが1曲目が俺の『サンキスト』。初恋の来た道を戻れるか戻れないかという曲があるんですけど、初恋のバンド・ダブルオーに対する歌なんです。で、次の曲が『オリオン座流星群』で「この道はどこへ続くのか」って。3曲目の『遊星より愛を込めて』でタイトルもつながっていて、最後『さらば×××ランド』。お互いのクセが分かった上で選んだし、並びもそうなったし、全部つながっていて、テーマは近くなってるんだよね。

町田:計算してないんだよね。

植木:長年付き添ったカップルみたいなことがツアーでできたの。だからスプリットを出す意味はあったの。やっぱり。

町田:俺も思った。

──じゃあお互いの曲を評価しあってください。

植木:マッチーはずるいよ(苦笑)。

町田:俺からするとY.Uはずるいよ。Y.Uは僕に表現できないことが表現できるんだよね。自分の思いをストーリーに置き換えて思いを込めることができる。僕はフィクションだから。

植木:マッチーは自分の立ち位置を自分の言葉で言うんだけど、俺は自分の立ち位置を物語にしちゃうの。それは全然違うよね。それが大きく言うと町田劇場と植木学級の違いかも。

千葉:全然違うよ。メインのアーティストが相手を知らされないイベントなんてないよね。

植木:町田劇場はそうですね。植木はこちらから招待する。

町田:その時のバイオリズムが左右する。だからその時の気分とか生き様が出ちゃう。お笑いはY.U&マッチーだよね

植木:あれはお笑いじゃないよ。芸術だよ。

千葉:ヒューマンドラマ。

植木:誰もが憧れる学生時代にできなかったことを俺等がしてる。

町田:下手したら学生より学生である自信があるよね。

千葉:バックトゥースクール。

──遅れてきた青春。ところで、ジャケットはどこかで見たことあるような…。

町田:有名なジャケをね…(笑)。場所はハイライン。でもこれ、カメラマンさんが時間なくて帰っちゃってその場にいたお客さんに撮ってもらった。撮れそうな雰囲気だったんだよね(笑)。

植木:全部行き当たりばったりだ!(笑)

千葉:だいたいノリでやってるよね。

──マニュアルはないんですね。

千葉:ないです。ファイナルだってその前のツアーが決まってないんだからどうなるかわからない。

植木:それの答えを出すのが俺等の仕事だから。答えが出れば良くても悪くてもいいわけ。

千葉:5ヶ月間の間に変化がないわけじゃないから、今想像できるものがファイナルであるとは思わない。

植木:だいたいの人がする前に何か不安がったりするでしょ。そういうの大っ嫌い。

千葉:どうしようっていうのがこの3人はないんですよ。やってみろ、とりあえず。

植木:やってみなきゃわからないことって人生いっぱいあるから。バンドや音楽に対しても「ワクワクしてるのかよ!」って思うことが多い。音楽だけじゃなくてワクワク生きてる。

町田:音楽って何かを表現したい人が始めたことなんですよ。音楽があって表現があると思ってるけど、表現があって音楽がある。一度メジャーデビューして、表現とはどういうことなのかっていうのをお互い突き詰めた結果が今に出ていると思う。

植木:それはしなきゃわからないし、やってみなきゃわからない。生きてる事全部だね。だからスプリットをやってみたんだ。

──小芝居(!?)を含めたライブしか見てなかったからCDを聞いて歌声だけがすごく聞こえた。いいなって思った。

植木:小芝居じゃないよ!

町田:大芝居って言ってほしいよね。

植木:人生劇場だよ。芝居じゃなくて表現。

町田:そんなに計算出来るほど俺等賢くない。

植木:俺が仕掛けた罠をこいつがどう回避するか。こいつが仕掛けた罠をどう回避するかっていう劇場なの。

──あと、CD聴いてもライブは想像できない。ライブが先だったらCD聴いてビックリする。

千葉:表現したいこととは違うからねぇ。

植木:歌を残すことと、人間が残りたいからね。

町田:そうだね、人間ありきだね。

植木:だからこれでいいんだよ。

千葉:ソロ=アコースティックがおとなしいっていう概念は完全に壊した。

植木:やってる人がいないなら僕らがトライしようっていう話なんです。いろんなものがごっちゃになって成立する表現なので、そこはドラマだと思うし。

千葉:「町田直隆って曲やらないで叫んでる人でしょ?」って言う人もいれば、「あの人歌いいんだよね」って言う人もいる。同じことをやってないから。レコ発もどうなるかわからない。レコ発は宝くじ買う感覚で来てもらったらいいんだよ(笑)。当たりか外れかもわかんない。全部当たりかもしれないし。

植木:絶対に感じるモノがあることしかしてないから。あとは好き嫌いの問題だよね。

町田:でもさ、好きか嫌いかはどっちにしろ興味があるってことだから。

千葉:覚えてないとは言わせないライブはやってる。

植木:バッシングありますよ。いい曲歌うのになんでこんなことするんだろうって(苦笑)。

町田:俺、「殺意を覚えました」って言われたことある(苦笑)。

植木:でもそれでいいの。その時の自分の気持ちをぶちまけてるから。じゃないと文化は繋がらないよ。俺達が今置かれている状況はもっと自分達でもできるんじゃないかっていうところから始めてるし、後押ししてくれる人もいるから限界までは行きたい。常にオモシロイヤツがいいと思うよ。

町田:単純に楽しいこととかオモシロイことをしたいってだけだよな。ワクワクしてドキドキして。

植木:「それ忘れてませんか?」っていう提唱が今回のスプリットです。ツアーって言っても曲やるかもわかんないしね(笑)。「それが悪いことなんですか?」っていうこと。

千葉:マニュアルを壊したい。

町田:みんなホントはそういうことに飢えているんだよ。そういうのが欲しくてライブハウスに行く。なのにそこには現実があって、決まりがあって。それは俺達がやることじゃない。

千葉:型にはまらないことが当たり前の人が手を組んでるだけだから。

町田:ライブをやる側としてお客さんが1000人だろうが1人だろうが関係ない。客1人だから手抜きとかありえない選択肢。

植木:3人とも共通しているのが現場イズオール。現場にいる人をどれだけ楽しませたいかっていう気持ちは伝わっていると思う。心を揺さぶる自信はある。安定した何かじゃないけど。

──これまでの話を聞いていて、お互いがリスペクトしていますがここだけは直して欲しいってあります?

町田:夜寝ない事ですね。僕は2、3時には寝たいのに。

植木:僕、何年も朝寝て夜起きる生活が続いているんです。一緒のホテルもあるからキツイ?

町田:ううん。Y.Uの生活をジャマする気はないので耳栓とか用意して行こうと思います。ただ朝方「マッチー飲みにいこう」っていうのは辞めて欲しい(笑)。

植木:断られて一人で立ち飲み屋に行くんだ。マッチーは口癖が「チクショー」なのは直して欲しい。

町田:追い込まれると昔いじめられてたこととか思い出して、イチ(「殺し屋イチ」より)みたいになる(苦笑)。

──(笑)。最後に何か…。

植木:まとめとすれば考える前に動く努力。どんなリスクがあるとかじゃなくて、やってみないとわからないことがいっぱいあるから。もともと俺等の出会いが思いつきだから。何かに対して意味を付けようと努力するのはもうダメ。考えるヒマがあったら動けばいいの。だから今回のCDは思いつきです(笑)。

町田:タイトルの『DOWNTOWN REVOLUTION』も思いつきです!!


DOWNTOWN REVOLUTION

DOWNTOWN REVOLUTION

DDCA-3004 / 1,200yen(tax in)
11.22 IN STORES
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Live info.

植木遊人&町田直隆 SPLIT CD 「DOWNTOWN REVOLUTION」発売記念ツアー
11月21日(火) 元住吉スナック微笑(前夜祭)
11月22日(水) 新宿モーション
11月23日(木) 名古屋ハックフィンファクトリー
11月24日(金) 大阪マンボカフェ
その他スケジュールはHPで確認してください。
http://setyoufree.biz/

植木遊人&町田直隆のお二人から素敵なプレゼントがあります!

posted by Rooftop at 18:00 | TrackBack(0) | バックナンバー

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