ACTION! PASSION!! VIOLENCE!!! 内奥のパトスを激しく揺さぶる石井聰亙の狂い咲いた世界
新宿ロフトがオープンした'76年、日本大学芸術学部入学直後に撮った8mm映画デビュー作『高校大パニック』で熱狂的な支持を得て以降、『狂い咲きサンダーロード』('80年)、『爆裂都市 〜Burst City〜』('82年)といった斬新かつ前衛的なアクション映画を相次いで発表、ジャパニーズ・ニューウェイヴの急先鋒となった映画監督・石井聰亙。時代を超越したその作品群の中から、現在では鑑賞が困難になっていた初期の作品がこの度DVDボックスとして晴れて発表されることになった。これを記念してロフトプラスワンでのトーク・イヴェント『BATTLE TALKERS』、新宿ロフトでの3daysライヴ『BURST GIG 1,2,3』、吉祥寺バウスシアターでの上映会『超爆音上映3DAYS』と連動イヴェントが多数開催決定している。無軌道なエナジーが迸る彼の革新的な映像表現手法に絶大な影響を受けたというGuitar Wolfのセイジ、怒髪天の増子直純を迎え、まずはこの本誌独占爆裂鼎談で狂い咲きだ!!!(interview:椎名宗之)
最高の状態で作品を残せたと思う(石井)
──今回、監督が初期の映像作品をDVDボックスにまとめようと思い立った理由というのは?
石井:『狂い咲きサンダーロード』を何とかいい形で残したい、っていうのがまずあったんです。その流れで、こういう機会に初期の作品を全部まとめてDVD化したい、と。あとはデジタル技術の発達ですね。8mmの作品でもいい状態で復元できる機械が出来たし、リリースする態勢が整ったことも大きいです。過去の作品を振り返る行為は、自分ではかなり恥ずかしかったですけどね(笑)。でも、そういった作品はもう自分のものじゃないと言うか、当時一緒に作品を作ったスタッフとキャスト全員のもの、あるいは観客のものだと思ってるんですよ。確かに自分が言い出しっぺではあるけど、みんな仕事じゃなかったですからね。無償で、身を削ってやってくれた彼らに対して、作品をソフトとしてキチッと保存することも凄く大事だと考えて。そういうことは恰好悪いとずっと思ってたんですけど、そんな時期なのかな、と。今回は結果的に凄くいい形で、最高の状態で作品を残せたと思ってますね。
セイジ:そのお陰で、俺は知らなかった作品が観れますね。
増子:俺は知ってたけど観れなかった。観たくても手に入らなかったからね。
石井:発表したくてもできなかったんですよ、実際の話。
増子:今回のボックスも、出る話は随分と前から聞いてて、いつ出るんだ!? ってもうずっと気になってましたから。
──完成に漕ぎ着けるまではかなりの時間を要しましたか?
石井:結局、発売までに2年くらいは掛かったのかな。権利関係をクリアにするのと、何よりもリマスターの作業に時間を掛けましたね。非常に丁寧に作ったし、人に任せておけなかったんです。DVDを観てくれるごく限られた人達(笑)に向けて、ベストなものを提供したかったから。
増子:このボックスが出ることによって、カルチャー・ショックを受ける若い奴がたくさん出てくると思いますよ。今までは後輩とかに「観ろよ」って薦めても、テレビから録画したのを貸すしかなかったですからね。途中で懐かしいCMがガンガン入ってるし(笑)、雰囲気も何もあったもんじゃなかったから。
セイジ:そうだね。こうして30年経ってまた新たに世に出て、観ることのできる奴が増えるっていうのはデカいだろうね。
石井:前に出た『〜サンダーロード』のビデオが良くなかったんですよ。東映が勝手に出したもので、画質も音も酷くて。そういうソフトへの愛情のなさが堪りに堪っていて、“本当はもっと凄いんだぞ”っていう思いがずっとあったんですけど、今回のDVD化でそれがやっと解消されましたね。非常にいい状態ですよ。今年は全国で上映イヴェントをやっていて、基本的に年齢層は高いんだけど、下は高校生とか若い世代の人達もたくさん観に来てくれたんです。その中間層が余りいなくて。
増子:今のロックとかパンクもまさにそうですよ。上の世代か下の世代かで、真ん中がスッポリ抜けてますから。
石井:『高校大パニック』を観た高校生…中学生だったな?…が、「これ、今の自分達と同じですね。リアルですよ」と言ってくれたんです。僕らが作った当時とはまた見方が違うのかもしれないけど。
増子:『〜サンダーロード』のファッションも、一回りして今がまさにちょうどだから。今観ても“うわッ、この服欲ッしい!”っていう衣装を着てるからね。
ここ一発のライヴがある時は『サンダーロード』を観る(セイジ)
──セイジさんも増子さんも、言うまでもなく『〜サンダーロード』には絶大な影響を受けていらっしゃいますよね。
セイジ:うん。今でも自分が“ここ一発!”っていうライヴがある時には、前夜に必ず観ますね。『〜サンダーロード』か『燃えよドラゴン』のどっちか(笑)。俺の映画ベスト3はその2本と『バック・トゥ・ザ・フューチャー』だから。あの決断の時…グワァーって重低音が鳴って、「やってやろうじゃねぇの!」って主人公のジンが叫ぶシーンとか好きだね。あと、ジンが廃墟をうろついてる時に知恵の輪をやってる人がいたり、井上陽水みたいな人がギターを弾いてたり…。
増子:あれ、『爆裂都市』の中にも出てくるでしょ?(笑) 街角で何かやってる人。
セイジ:ジンが武器の売人に「殺したい奴がいるんだ…」って言う時のあの顔とか、気合いが入るなぁ(笑)。右手を切断されて行き場をなくしたジンがガラスを叩き割ったり、無理矢理バイクを走らせる、もうどうしようもない青春の叫びみたいなところとか、好きだなぁ…。まさに自分達の心がそのまま映像として出てるような強烈さがある。工事現場で訳も判らず叫んだりね。“ああ、こういうのあるよな…”って思えるし、感情がそのままダイレクトに映画の中に出てるところが好きですね。
増子:俺は当時まだ中学生でね、スターリンの『trash』とかを聴かせてくれるような友達の姉ちゃんがいて、『〜サンダーロード』を教えてくれた。観たらもうブッ飛んで、どれだけ登場人物の真似をしたか判らないよ。高校の時に一緒にバンドをやってたベースの奴といっつも真似してた。そいつは卒業してから警官になって…それもまた『〜サンダーロード』っぽいんだけどさ(笑)。何をやるにも「やってやろうじゃねぇの!」って言うし、風邪薬の錠剤を飲むにも、ラムネを食うにも「ああああ〜」って頭を振ってうがいをするように飲み込んでたね(笑)。あとね、悪ガキの小太郎の真似をして、昆虫採集の針の先を折って革ジャンの襟に刺したりした。もちろんあの宇宙人のマスクも持ってたしね。ホンット好きだった。未だに大好きだね。最近はライヴでも髪を下ろしてるけど、『〜サンダーロード』を観るとまたリーゼントにしたくなるんだよ。それと、幸男が口の周りに付けてたハーモニカ・ホルダみたいなのも良かったよね(笑)。
石井:あれはね、歯の矯正のつもりだったんです(笑)。
セイジ:一番最後のシーンの、雪が降ってるのは何処なんですか? この間、根室にライヴに行った時にちょうど似たような場所を見つけたんですけど。
石井:根室じゃなくて、箱根の大涌谷ですね。北海道へは行ってないんですよ。大涌谷をメインに使って、あとは阿蘇山と組み合わせてます。僕ね、火山フェチなんですよ(笑)。火山が凄く好きでね。非常に美しく感じるし、まるで地球が怒ってるようにも思える。現地の人には申し訳ないけど、噴火したら必ず見に行くんですよね(笑)。
──強引に結び付けると(笑)、監督の作品は充満したエネルギーの捌け口を求めて噴火する火山の在り方と非常によく似ているものがあると思うのですが。
石井:僕は普段は凄く大人しい人間ですけど、その奥底には何か燃えたぎるものがあるんでしょうね。衝動や本能もあると思うし。それが何なのか、子供の頃からずっと謎でしたけど、きっと訳が判らないからそれを映画にしてるんですよ。回答はないと思ってるんですけどね。それって結構ロックと繋がってると思いますね。
“この映画の主人公は俺だ!”って思い込めた(増子)
セイジ:DVDになるんだったら、英語でサブタイトルと字幕を付けて、アメリカからも出して欲しいな。
──『爆裂都市』は海外で勝手に字幕の付いた海賊版があるという話を聞きますね。
石井:うん。僕もそれはYouTubeで観たことありますね。
セイジ:知り合いの外人のお姉さんとかに字幕を作ってもらえば、知らないうちにドイツに行ってたりとかしますよ。自分達が出た『ワイルドゼロ』っていう映画も、字幕を強引に付けたら、気が付けばスペイン語になってたりとかしますから(笑)。今やホント、いろんな国の字幕が付いて流出してますよ。
石井:(クエンティン・)タランティーノが『〜サンダーロード』を観たがっていて、どこかの都市の映画祭で上映された英語の字幕が付いたフィルムを勝手に家に持ち帰って観たそうですよ。「かつて観たオートバイ映画の中でこれが最高だ」って言ってましたね。
セイジ:これを「最高じゃない」って言う人がいたら、ちょっと信じられないな。
増子:そういう人は、『ゴースト〜ニューヨークの幻〜』とかが感動した映画なんだろうね(笑)。どちらかと言えば、『〜サンダーロード』よりも『爆裂都市』のほうが取っ付きやすいと言うか、ハマりやすいでしょ? その2本は、俺からすると『デスペラード』と『エル・マリアッチ』の関係に似た感覚なんだよね。『爆裂都市』が『デスペラード』で、『〜サンダーロード』が『エル・マリアッチ』。『エル・マリアッチ』のほうが怖いからね。それと同じように、『〜サンダーロード』のほうがより現実に近い、って言うか。暴力シーンも現実味を帯びていてヤバいでしょ?
石井:よく『〜サンダーロード』派と『爆裂都市』派に分かれますよね。
セイジ:俺は『〜サンダーロード』派だなぁ…。
増子:俺もそうだね。
石井:『〜サンダーロード』を福岡の中洲っていう、東京で言えば歌舞伎町のど真ん中みたいな所でオールナイト上映した時は、『仁義なき戦い』に出てくるようなホンマもんがいっぱいいて(笑)、もう騒然たる雰囲気でしたよ。上映が始まってもウォーウォー叫んで静かにならないんです。始まってしばらくしてシーンとなりましたけどね。それは凄く記憶に残ってます。それと、札幌で『〜サンダーロード』を観たファンが『爆裂都市』の上映初日にバイクに乗って大挙して来てくれたんですよ。でも観てつまらないと思ったのか、ワーッと引いてそのまま帰っちゃったんです(笑)。それは有名な話ですけどね。
増子:俺達のちょっと上の先輩達でしょうね(笑)。時代的にはまだロックの文化が根付いてなくて、暴走族からパンクに流れてくる中間くらいの時期だったから、バンドものとか判らなかったんでしょうね。
石井:今にして思うと、映画じゃなかったですよね。映画として観てると言うよりは、事件とかそういうのをg?追い掛ける感じ。憧れて堪らなくなりたい奴…ロックやりたい奴、バイク乗りたい奴が観てたような記憶がある。中学生や高校生くらいで、バイクが欲しいけど買えない奴、ロックやりたいけどまだやれてない奴…そんな連中の熱さが上映会の異様な殺気を生んでいた気がしますね(笑)。
増子:まさにそうですよ。バンドをやりたくても、何をどうしていいか判らない時期ですからね。だからこそ、『〜サンダーロード』や『爆裂都市』を観て“この主人公は俺だ!”って思い込めたんだと思う。
上映したらそれで終わるものだと思ってた(石井)
セイジ:(DVDボックスのパンフレットを見ながら)あれッ!? 『高校大パニック』って全部で16分ですっけ?
石井:日活が作った劇場版(主演:山本 茂、浅野温子/'78年)はリメイクなんですよ。今度のボックスに入ってるほうがオリジナルで、8mmで撮ったものなんです。結構パンクですよ。リメイク版のほうは共同監督だったんで、自分の作品歴からは外してるんです。
セイジ:ああ、そうすか。それは凄く楽しみですね。劇場版は、その宣伝のイメージからしてもっと激しいパンクっぽい感じかと思ったんだけど、それほど強烈な…ズギューン! っていう衝撃はなかったな。でも、『高校大パニック』っていうタイトル自体に俺は相当影響を受けてるかもしれない。
石井:『高校大パニック』は、取り立ててドラマは要らないと思ってたんです。主人公の高校生と警官隊の闘いだけでいいと思ってた。でも、日活にはそれが受け入れられなかったんですよ。
増子:浅野温子が教室で小便するっていう、あの衝撃たるや…俺が“大パニック”になってたっていう(笑)。
──こうした初期の作品群は、監督自身にとってはやはり稚拙さが目立って映るのでしょうか?
石井:恥ずかしいですよ(苦笑)。だって、『〜サンダーロード』は26年前の作品だから。『高校大パニック』なんて30年前ですよ。そういう映像を今観ると、自分の息子が撮影してるのかな? っていう感じがします(笑)。
増子:でも、30年前の映像がちゃんと残ってるっていうのが凄いですよね。
石井:フィルムは大丈夫なんですよ。ビデオがダメなんですよね。時間が経つと画面にノイズが走ったり、突然映らなかったりするんです。8mmで撮っていた後にビデオ全盛の時代になって、当時自分でもビデオで『爆裂都市』のメイキングとかライヴをいっぱい撮ったし、ルースターズも『パラノイアック・ライヴ』くらいからは持ってるんだけど、そのほとんどがもう使い物になりませんよ。保存をちゃんとすればいいんでしょうけどね。
増子:昔のビデオをちゃんと再生させる技術とかありそうですけどね。
石井:どうかなぁ…。フィルムで撮ったものは残ってますけど、ダメになったビデオは全部捨てちゃいましたね。 セイジ・
増子:エエッ!?
セイジ:もったいないっすねぇ(笑)。CDも一回ダメになるともうダメじゃない? でも、レコードなら溝をチョッチョッチョッと綺麗にすれば直りそうな気がするよね。
増子:そうだね。この間、一番耐久年数の長いメディアは何かを検証する番組をテレビで見たんだけど、最終的には紙なんだってね。太古の昔からパピルス(古代エジプトで記録材料として利用され、紙の起源とされる)みたいなものも残ってるし、最終的には紙に書くのが一番だという…。何だか禅問答みたいな話だけどね(笑)。アナログに近ければ近いものほど後世まで残るっていうさ。
セイジ:なるほどね。
石井:昔は、映画は上映したらなくなるものだと思ってましたね。一回一回傷も付くし、コマが飛んだりもするし。なんかそういうのも恰好いいなと思ってたんです。消えてなくなっていく、っていうのが。『〜サンダーロード』だって、当時はビデオなんてなかったから、上映したらそれで終わるものだと思ってた。
──ライヴの発想に近いですね。
石井:そうですね。気分的にはライヴに近いですよ。
「バイク持ってきてくれよ!」って未だに言うよ(セイジ)
──監督の作品で個人的に見事だと思うのは、タイトルのネーミング・センスなんです。『高校大パニック』『狂い咲きサンダーロード』『爆裂都市 〜Burst City〜』…どれももの凄くイメージが湧いて、ウズウズしてくるタイトルじゃないですか。
石井:いいタイトルが浮かべば、映画が出来たも同然なんですよ。いいタイトルが出来ないとやる気がしないんです。ロックもそうでしょう?
セイジ:俺達もタイトルが先ですね。だから凄くよく判ります。
増子:ウチはタイトルが一番最後ですけど(笑)。
──DVDボックスのサブタイトルに“PUNK YEARS 1976-1983”とありますが、これほどパンク/ニューウェイヴの音楽と共鳴するヴィヴィッドな映像も他に類を見ないですよね。
石井:でもね、『〜サンダーロード』を撮った頃はもうパンクは聴いていたけれど、映像表現の手法に反映はg?まだされてない前の段階なんですよ。反映されるのは『爆裂都市』からですね。『〜サンダーロード』の映画音楽を担当してくれた森やん(森山達也/ザ・モッズ)には「クラッシュみたいな感じでやってくれ」って注文した記憶はありますけど。それよりも、当時ベースとしてあったのは泉谷(しげる)さんの音楽だったんです。
増子:泉谷さん、凄くイイですよね。十代の頃は『爆裂都市』のほうが音楽はパンクで恰好いいと思ってたんだけど、大人になってから観ると、『〜サンダーロード』の泉谷さんの音楽のほうが胸にグッと来るんですよ。エンディングの「翼なき野郎ども」とか、ホントにイイ!
セイジ:そう、「とびきりの女に会いに行こう」って歌詞、最高だよね。
増子:あの曲を聴いてるだけで、呑んでたらボトルが一本余裕で空くからね(笑)。
セイジ:俺、誰かにバイクを持ってきてもらう時とか、「バイク…バイク持ってきてくれよ!」って最後のシーンのジンの台詞を今でもよく真似するからね。
増子:ははは。右手がそれじゃブレーキ掛けられねぇぞ! っていうさ(笑)。
石井:『〜サンダーロード』はね、こっちの気持ちも本物だったんです。それまでああいう映画はなかったから、何としてでも作り上げたかった。それを体現してくれたのが、主演の山田辰夫さんという俳優だったんです。こっちも本物だったし、山田さんも本物だった。全身全霊の本物で、山田さんも実際にあの通りの人だったんですよ(笑)。
増子:だってホンット恰好イイもんなぁ…。
石井:あのガラスを割るシーンも、何の仕掛けもしてないんですよ。僕も何も考えてなくて必死だったから、「山田さん、ガツンと行きましょうよ!」って言って、ガラスをガンガン叩き割りまくって。山田さんも血だらけですよ(笑)。バカですよね。お互いに意地を張り合ってたのかもしれないけど。今なら怖くてできないですよ。
増子:山辰さんは今でも凄くいい役者ですよね。『〜サンダーロード』の山辰さんと『爆裂都市』の陣内(孝則)さんという両主役の今の立ち位置を見ると、ちょっと思うところがありますね。山辰さんはやっぱり本物だったんだな、と思いますから。
石井:だから山田さんとは、今でもヘタに仕事はできないですね。
セイジ:俺、山田さんが支配人役で出てたから『はるちゃん』とかもちょっと見てたもんな(笑)。前に一度、山田さんと対談したことがあったんですよ。結構喋ってくれたな。
石井:『〜サンダーロード』の台本を山田さんから渡されたって聞きましたよ。今やもう誰も持ってない貴重な品ですよ(笑)。
セイジ:自分がそんなものを持ってていいのかと思ったけど(笑)、凄く嬉しかったですよ。
技術的に上手なものを観たいわけじゃない(増子)
──監督は'82年9月に“石井聰亙&バチラス・アーミー・プロジェクト”というバンドを結成して、翌年には『アジアの逆襲』というアルバムを発表したり(今回発売される『石井聰亙 作品集 DVD-BOX I』に特典として紙ジャケットCDで復刻)、当時の新宿ロフトでもライヴを行なっていますが、世に出る手段として音楽の選択肢はなかったですか?
石井:音楽はやりたかったんだけど、才能がなかったんですよ(笑)。高校の時もバンドを組みたかったけど、うまく行かなくて。「お前は協調性がない」って言われてね。サイド・ギターとかでも勝手に暴走しちゃうんで(笑)。
増子:それはもう、ヴォーカルをやるしかないですよ(笑)。俺も、ベースもギターもクビになってますからね(笑)。
石井:バチラス・アーミーの時はヴォーカルと作詞をやらせてもらって、バンドをやりたいという長年くすぶってた思いを晴らすことができましたね。実際にやってみて、“やっぱりダメだな”って思いましたけど(笑)。ロフトには当時結構出たんですよね。福岡でもやったし、東京だと屋根裏でもライヴをやりましたね。もう、畏れ多いことですよ(笑)。
──ギターは、後にルースターズへ加入する下山 淳さんでしたね。
石井:ギターはずっと下山君で、彼がアマチュアの頃からやってもらってました。他のメンバーは流動的で、最後は晋太郎君(故・杉山晋太郎/ザ・スターリン)にベースを弾いてもらったり。今回のDVDボックスの特典にバチラス・アーミーのラスト・ライヴ映像が入りますけど、ほとんど拷問のようですね(笑)。
増子:今度のロフトの『BURST GIG』に出演して下さればいいのに。シークレット・ゲストとして(笑)。
セイジ:(相変わらずDVDボックスのパンフレットを見ながら)しかしこれ、観たいなぁ。初期の作品は『高校大パニック』しか知らなかったから。
石井:『アジアの逆襲』もいいですよ、訳の判らない怒りにみんな燃えてて。『1/880000の孤独』はもの凄く暗くて、鉛のように重たいですけど(笑)。
セイジ:こういう激しいエネルギーを持ったものをまとめて観れるのはやっぱり凄く嬉しいですねg?。なんかまた曲が出来そうだな。
増子:「これ面白いよ」って薦められて観た映画でも、まぁまぁかなって思うのがほとんどなんだけど、このDVDボックスは絶対凄いでしょ。しかもずっと観たかったものだからね。『〜サンダーロード』も、年齢を重ねていろんな経験を積んでから観ると全然違うよね。俺が凄く幸せだったと思うのは、『〜サンダーロード』も『爆裂都市』も、あと『さらば青春の光』もそうだけど、ガキの頃に観れてホントに良かったってこと。あの頃にブッ飛んだまま100%受け入れることができて良かったと思うね。東京は絶対にああいう恐ろしい所だと思い込んでたから、だいぶ気合い入れて札幌から上京してきたからね。バトルスーツみたいな肩パット付けて来たら俺だけだった、っていう(笑)。あとさ、バトルスーツのパーツも売ってるものじゃなくて、その辺にあるものを組み合わせてるのがまたいいんだよ。実際に喧嘩に行く時だってヘルメットを被ってみたり、家にあるものを持って行ったしね。『爆裂都市』になると、近未来にはこんな衣装があるんだろうな、っていう感じになるんだけど。
石井:金がなかったですから。バトルスーツも、ホントにその辺にあるものを組み合わせて作ったんですよ。
増子:予算云々じゃない、ってことですよね。情熱とアイディアさえあれば、『〜サンダーロード』みたいに歴史に残るような作品がちゃんとできるんだから。バンドもそうなんですよ。技術的に向上してる若いバンドが増えたけど、別に上手なものを観たいわけじゃないですから。
ロフトの『爆裂都市』打ち上げ話は映画にできる(石井)
増子:とにかく、俺はバトルスーツを1/6サイズのフィギュアで出して欲しいですね。即買いですよ! 動かしてみたいもん。
石井:その時は、右腕に付ける鉤の爪も是非付けて欲しいですね(笑)。
増子:よく言ってましたよ。何か事故を起こして手がもし切れたりしても、あの鉤爪を付ければイイんじゃない? って(笑)。
石井:『イージーライダー』のフロント・フォークを長くしたカスタム・バイクとか、『エスケープ・フロム・L.A.』で主人公のスネークがしてるアイパッチとか、どデカいガキのアイテムが凄く大事だったんですよ。それが『〜サンダーロード』ではバトルスーツであり、宇宙人のマスクや鉤の爪だったわけです。
増子:歯の矯正器具もまた然り(笑)。
石井:それは思いもしなかったけど(笑)、あれくらいやらないとつまらないと思って。今回のDVDのオーディオ・コメンタリーでそういう謎解きを色々としてるんですけどね。
──ロフトで行なわれる『BURST GIG』には、セイジさんが初日、増子さんが3日目にそれぞれ出演されますね。
石井:本当にありがとうございます。興奮してます。身体が持つかどうか判りませんけど(笑)。当日、場内では各バンドに沿った僕の作品を上映しますよ。Guitar Wolfはもう決まってるでしょう?
セイジ:おおッ! 『〜サンダーロード』の前で演奏できるなんて緊張しますね、ホント。
石井:最終日は当然…公表できないものを流します(笑)。
増子:もう…出てる場合じゃないぞ! 俺も客席で観ないと! っていう(笑)。
石井:ロフトと言えば、『爆裂都市』の完成打ち上げの話…あれは映画になりますね。今でも克明に覚えてますよ。
増子:茂さん(仲野 茂/アナーキー)、いっつも言ってますもんね。「俺達を映画に出してくれなかったから、スターリンのライヴにグラスをガンガン投げ付けてやった」って(笑)。
石井:あと、じゃがたらとルースターズも大喧嘩してましたよ。2ヶ所同時で暴動が起きてましたから(笑)。
増子:しかも、『爆裂都市』のキチガイ兄弟(戸井十月と町田町蔵)のバイク、あれ茂さんが撮影終わった後に貰って、ずっと持ってましたよ。
石井:エッ! ホントですか!?
増子:はい。公道じゃ走れないから倉庫に入れておいたら、サイドカーの部分が錆びて真ん中から折れちゃったみたいですけど(笑)。監督にはまた是非、バンドをテーマにしたパンクで無軌道な映画を作って欲しいですね。
セイジ:俺、『〜サンダーロード』を観てから同じような映画が他にもいっぱいあるのかなと思って色々探し回ってるんだけど…全然見当たらないですね。
増子:『〜サンダーロード』も『爆裂都市』も、若者って言うかガキどもの反乱だったでしょう? でも、今は絶対にガキよりもオヤジのほうが怒ってるから、オッサンばっかりの怒れる映画を作って頂きたいですね。
セイジ:それじゃ『逆噴射家族』だよ(笑)。
石井聰亙 profile1957年、福岡県出身。'76年、日本大学芸術学部入学直後、8mm映画デビュー作『高校大パニック』を撮り、熱狂的な支持を得る。 |
石井聰亙 作品集 DVD-BOX I 〜PUNK YEARS 1976-1983〜
仕様:DVD7枚組(特典ディスク含む)+CD1枚+超豪華特典
特典:(1)特典映像ディスク (2)オリジナルブックレット (3)『狂い咲きサンダーロード』上映用ポジフィルムコマ (4)『アジアの逆襲』オリジナルサウンドトラック復刻盤紙ジャケットCD
発売元:アグン株式会社/株式会社トランスフォーマー 販売元:株式会社トランスフォーマー
品番:TMSS-031/JANコード:4522178004971 価格:\24,990(税込)
発売日:10月28日(土)
◆伝説的映画『狂い咲きサンダーロード』デジタル・リマスター版を含む、石井聰亙監督初期6作品+特典ディスクを一挙収録!!
◆全作品、初DVD化! 初期8mm映画を始め、このBOXでしか観られない貴重な作品群!!
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『石井聰亙 作品集 DVD-BOX I』収録作品
高校大パニック |
1976年/カラー/17分/狂映舎 |
1/880000の孤独 |
11977年/カラー/43分 |
突撃!博多愚連隊 |
1978年/カラー/75分/狂映舎 |
狂い咲きサンダーロード |
1980年/カラー/98分/狂映舎=ダイナマイトプロ |
シャッフル |
1981年/カラー/B&W/38分/ダイナマイトプロ |
アジアの逆襲 〜2005 REMIX LIVE VERSION〜 |
2005年/カラー/31分/AGUNG.inc |
特典映像ディスク収録予定内容
◇『突撃!博多愚連隊』撮影風景:同作品の撮影風景を収録した貴重な8mmフィルムを本作のためだけに初公開。 その他収録予定特典
◇オリジナルブックレット:『映画秘宝』編集部による160P以上で構成される小冊子。作品解説、貴重な資料、スチール、インタビューなど満載。 |
Live info.
SOGO ISHII DVD BOX発売前夜祭『BATTLE TALKERS』supported by ROCK OF AGES
10月15日(日)ロフトプラスワン
出演:石井聰亙、山田辰夫、緒方明、池畑潤二、伊勢田勇人、他超豪華ゲスト出演/進行:スマイリー原島
OPEN 18:30 / START 19:30〜 終了時間未定(とことんやります!)
TICKETS: advance-2,500yen(1オーダー別)
【info.】LOFT/PLUS ONE:03-3205-6864
BURST GIG 1,2,3
〜SOGO ISHII & LOFT 30th ANNIVERSARY BATTLE supported by ROCK OF AGES〜
10月23日(月)・24日(火)・25日(水)新宿ロフト
OPEN 18:30 / START 19:30
TICKETS: advance-3,300yen / door-3,800yen(共にDRINK代別)
*Tシャツ付きチケット有り!(渋谷・新宿タワーレコードにて限定販売中! 5,000yen/DRINK代別)
*石井聰亙監督編集によるスペシャル上映作品有り!
LINE-UP
◇GIG 1:23日(月)出演:GUITAR WOLF / 日本脳炎 / FOE
◇GIG 2:24日(火)出演:FRICTION (RECK/中村達也) / 恒松正敏グループ / dip
◇GIG 3:25日(水)出演:ROCK'N'ROLL GYPSIES / 怒髪天 / bloodthirsty butchers
【info.】shinjuku LOFT:03-5272-0382
超爆音上映3DAYS 〜石井聰亙レトロスペクティブ〜
10月26日(木)・27日(金)・28日(土)吉祥寺バウスシアター
START 21:00 (レイト) / 23:00 (オールナイト・28日のみ)
TICKETS: レイト advance-2,000yen / door-2,300yen
オールナイト (28日のみ) advance-3,000yen / door-3,300yen
上映プログラム
◇26日(木):監督舞台挨拶/花田裕之アコースティック・ライブ/『ザ・ルースターズ/RE・BIRTH II・ライブ版』
◇27日(金):監督舞台挨拶/恒松正敏アコースティック・ライブ/『E.D.P.S/LAST LIVE@1984.12.24 SHIBUYA LIVE INN』/『フリクション/DUMB NUMB LIVE』
◇28日(土):監督舞台挨拶/秘蔵フィルム・ライブ(ザ・フールズ/ザ・スターリン/EP-4/じゃがたら)+トークセッション/『ザ・スターリン/絶賛解散中!!
FORNEVER』
◇28日(土)オールナイト:PANTAアコースティック・ライブ/『アジアの逆襲〜REMIX LIVE VERSION』/『シャッフル』/『Street Noise』(『TOKYO BLOOD』より)/『ELECTRIC DRAGON 80000V』/『DEAD END RUN』/『狂い咲きサンダーロード』
【info.】吉祥寺バウスシアター:0422-22-3555/トランスフォーマー:03-5457-7767