君がカラスの色を黄色って呼ぶなら 僕だって胸を張って黄色と呼ぼう
'05年に『ワンダー / つながる夜空』『東京ライフ / 改札口の恋』の2枚のシングルをリリースし、インディーチャートで上位にランクインした幸か不幸かわからないバンド名を持つLucky13。'06年に入りリズム隊に新メンバーを迎え、10月18日『カラスの色は』をリリースする。表題曲にもなっている『カラスの色は』の詞にドキッとした。これまでにこんなにあたたかいラブソングがあっただろうか。Vo.中瀬氏が発する一言一言が心に刻まれ、大切なものを思い起こさせてくれるようであった。こんな素敵なバンドに出逢えたことが自体ラッキーです。(interview:やまだともこ)
メンバーチェンジをしたらやりたいことが多くなりました
──今年に入りメンバーチェンジをして10ヶ月ぐらい経ってますけど、バンドの雰囲気はどうですか?
井上寛隆(Dr.):楽しいですね。やればやるほどもっとやんなきゃってすごくいい感じ。常にポジティブでいられるし、次のステップにいくことを考えています。
中瀬至(vo.):一番充実している感じがあります。
──個人的に感じたことなんですけど、今までのLucky13はもっと音が軽いイメージだったんです。でも、今作『カラスの色は』を聴いたら重量感もあって、それはメンバーが代わったのも影響してるのかなと。
中瀬:レコーディングが実質3回目ぐらいなので分かってきたというのもありますけど、やっぱりメンバーが代わったのも大きいですね。今までは基礎からやるということが多かったけど、入って来た井上くんとマッキー(千葉牧人 / Ba)が基本以上の事ができるので、いろいろ楽になったというのもあるしやりやすくなった。
──でもリズム隊が2人代わるのは大きいですよね。
中瀬:そうですね。ただ、2人いっぺんに代わると昔の曲やっても新鮮なので、それはそれでいいんです。自分のリズム感をそこまでいいものだと最近思わないので、今はこのリズム隊にお任せしちゃってますね。
──目標も高くなりましたか?
中瀬:やりたいことは多くなりました。ライブでミニキーボード使ったり、『その永遠』(M-5)はガチでピアノなのでミニキーボードじゃ対応できない曲もありますから。
──『ヒナゲシ』(M-3)にピアノが入ったのは新鮮でしたね。
中瀬:あんなに大々的に入れるつもりはなかったんですけど、持っていったフレーズが良かったんで、最初はうっすらとだったんだけどミックスの作業でレベルが上がっていったんです。でもピアノって押せば音が鳴るすごい楽器ですよね、ってこんな年になって言うことでもないけどね(笑)。今懸念してるのは、あれをライブでやったらピアノが無くてがっかりと言われかねないなと(笑)。
──どうですかねぇ。でもこれからはもっとやりたい楽器が増えてきますね。
中瀬:機会があれば…。管楽器とか入っても面白いと思いますしね。前は自分をギターとボーカルをやる人って思ってたんですけど、いろんなことを手広くというかつまみ食いしながらやりたい。
僕の革命はどう?
──では、『大きすぎない歌』(M-1)ですが、詞を読むと存在を主張している曲だという印象を受けた曲でしたが。
中瀬:僕の考えていることを知って欲しいというのはありますね。ただ、考えを押しつける気は全くないので、「僕の革命はどう?」って聞いてるんです。基本的に確固として自分があるわけではなくて、常に「何言いたいんだろ?」って思いながら生活していて、自分はこういう人間だというのを決められないので、常に疑って生きているんです。相手のことも疑うし自分の事も疑うけど、それは悪いことではなくて、疑った上で君が好きだっていう人のほうがよっぽど信用できる。だから「世界はひとつなんだよ」って押しつけるより、お互い考えることも違うしっていうのを踏まえて共存したほうがいいんじゃないかと思ったんです。他者との違いを見つけることって一見悪いことのように見えるけど、巡り巡ってそれが一番大切なことなんですよね。「君と僕は違う」っていうのからまず始めた方がいいんじゃないかと思って、『We are the world』に盾突いてみたんですよ(笑)。悪くないんですけどね。僕がこの曲を作るより多くの寄付金をアフリカに渡してるんだから実のあることをしてるんだけど疑問を感じますね。違いを認め合うのがテーマなので、僕と同じように考えろというと矛盾するんです。だから問いかけなきゃいけない。CDが発売されて答えがちょっとでも返ってくると嬉しいなと思いますよ。
──4曲目の『エコー』も「君ならどう?」の曲ですね。
中瀬:これこれこうだからこう思うという詞が多かったんですけど、そうじゃないのが作りたいと思って意識した曲です。人と繋がることって、必ずしないと生きていけないもの、そういうのを突き詰めてただ呼び合うのもいいかもっていう詞になったんです。
──なるほど。ところで、『2000年目の友達』って今のLucky13を象徴している曲ですよね。
中瀬:まさしくそのとおりです。今の4人で最初のセッションの時に僕がアコギ1本で持っていった曲で、すごい短時間でできたよね。
井上:「ちょっと叩いてみて」って言われて「あっ! できちゃった!」みたいな(笑)。
中瀬:その間栄次郎はトイレに行っていて「今の曲ってみんなどうしたの?」って(笑)。
──出産の瞬間に間に合わなかったお父さんみたいですね(笑)。
熊坂栄次郎(G):自分の中では衝撃でしたよ。出来てたのも衝撃でしたけど、中瀬さんがキーボードを弾くと言い出してどうしようって。U^盾今までギター2人だったのに、僕のギター1本で支えなきゃいけないというのはあまりない経験だったので、僕が変わらないきゃいけないって思った転機的な曲ですね。
──産まれた瞬間も奇跡的、気持ちも詞も前向き。今のLucky13をキュッと詰め込んだ作品になったんですね。
中瀬:詞は意識しましたよ。ずっと僕の中で「2000年」って凄いなって思ってたんです。西暦2000年ですよ! 1998年ぐらいからドキドキしてましたもん。
──…えぇ。じゃあ2000年になった瞬間って何してました?
中瀬:銚子電鉄に乗って銚子に初日の出見に行ってました。銚子電鉄は単線なので、人出が多くなろうが銚子の先に行く電車は1時間に5本ぐらいしかないんです。この1本を逃すと初日の出の時間、犬吠埼に着けないっていう電車に乗り合わせちゃって、人間の醜い部分が全部出るような電車だった(笑)。人間ってあんなに電車に詰まれるんだとか、あと一人乗れる、あと一人乗れるって。それで着いてみたら曇りだった(笑)。それが僕の2000年だったと思います。これだけ話して曲のイメージに犬吠埼はないんですけどね(笑)。
──「船出」というフレーズがあるじゃないですか(笑)。
中瀬:そうでした(笑)。
──そういえば、中瀬さんって『ヒナゲシ』の詞を読んで思ったんですが、別れ話中の辛い状況でも「ラブソングを歌わなくちゃ」とあるように、辛い時にこそ楽しくしなきゃという気持ちになる人なのかなっていうのを感じましたが。
中瀬:「ラブソングを歌わなくちゃ」は相手がいて実質終わってたとしても、その子と一緒にいることに固執する自分がいて、この子といたいからラブソング歌わなきゃ、みたいな感じですね。
──それは本気のラブソングじゃないですよね。
中瀬:だからそのラブソングがどんなだったかは出てこないんです。
──ということは、恋愛にしても消化してから曲にするタイプですか?
中瀬:冷静になってから曲にするっていうパターンのほうが多いですね。即物的な歌にはしないですね。
全てを疑ってかかるのは悪くないと思います
──これまでの話を聞いていると、中瀬さんは人を100%は信じてないのかなって思います。
中瀬:信じないっていうとネガティブに聞こえますけど、基本疑いますね、人に対して。本当にこれがやりたいのかとか、自分に対しても疑ってますから。何か常に探している感じ。全てを疑ってかかるのは悪くないと思いますよ。疑問に思った上で導き出す方が僕は好きになれますね。そういう過程を経ながら生きてくべきだと思う。1個1個が解決するかはわからないけど、何も考えないよりは、プロセスを経ていくほうが豊かになれる。
──『正しい人』(M-6)も「大事な人をも疑うことで」というフレーズがありますが…。
中瀬:それがその人を一番好きになる方法だと思ってます。
──考え方がけっこうひねくれた感じ…。
中瀬:そうなのか。けっこう素直のつもりなんですけど(笑)。でもせっかく脳味噌持ってますから、いろいろ考えた方が豊かになるんですよ。
──では、タイトルにもなっている『カラスの色は』(M-7)。これって不思議な言葉ですけど、どんな時に浮かんだ言葉ですか?
中瀬:絶対的な価値観っていうのはあやふやであるっていうのを思うわけですよ。物事の基準があやふやであるならば、君と僕の間にそれをおけばいいんじゃないかっていうのを歌ったラブソングです。だからカラスの色がその子にとって黄色ならそれでいいんだ。
──この曲を聴いた時、君が言うからこうしようっていう言葉に聞こえて、恋愛に関してはひっぱられるタイプなのかなっていう感じがしました。
中瀬:さっきと矛盾するかもしれないけど、その曲に関しては君の全てを信じるみたいな感じですね。でも恋愛は臨機応変ですよ(笑)。
──中瀬さんの思うカラスの色は何色ですか?
中瀬:今のところ黒ですね…。一人でいるときは…残念ながら、ひねりようもなく黒ですよ!
全員:(笑)
井上:究極の例えですよね。カラスの色って言ったら誰もが黒っていうのは当たり前だけど、2人の間で共有しているっていう気持ちが素敵ですよね。僕はそこが好きなんです。
中瀬:Aメロからそういう感じなんですよ。月が丸いのは天文学的に言うと…とかあるけど、僕が磨くから丸なんだよって言うのも2人の間で正解ならそれでいいんですよ。
──あったかいですねぇ。となると、今回のアルバムは、Lucky13全員がカラスの色が同じ色に見えたということですね。
中瀬:あるかもしれないね。音楽というカラスが共有化された。バンドはそういうものなのでね。
──アルバムリリースして10月は渋谷ラママで昼、11月は下北沢Club Queでそれぞれワンマンがあるんですが、普段ライブに対してそれぞれどうお考えか聞かせて下さい。
熊坂:僕は自信を持てるタイプではないのですが、ライU^盾ブの時客席の笑顔を見ると「いいんだよ」って助けてもらえる場所ですね。楽しむことで自分も変われるし、日常の自分よりもステージに立ってる自分のほうが好きだし、変われる場所です。
井上:こういう人間なんだっていうのを表現する唯一の場所の気がしますね。一番熱く表現できる場所。日頃の音楽活動の全部があのステージの上のためだけにやってると言っても過言ではないと思ってます。
千葉:昔Lucky13のライブを見てたとき涙ぐむことがけっこうあって、見てる人に同じ様な気持ちになってもらえたらいいなと思ってステージに上がってます。そうするためには4人の意志がライブ中に重なり合わないといけないのでニコニコするようにしてます。自分が何をするかってよりはお客さんがどう思ってもらうっていうのが一番大切だと考えているので。
中瀬:最近ようやくレコーディングとライブが別物かなって思えるようになったんです。それぞれを楽しむようになってきましたね。自分を見せる場としてライブは大切かなと再確認しますね。
──お客さんも楽しみにしていると思いますよ。ラママではグランドピアノを弾くんですか?
中瀬:はい。練習します。10月のラママの昼はパーティーなので一緒に楽しめたらと思います。
熊坂:まずはCD聴いてライブに足を運んでもらいたいです。
全員:うんうん。
カラスの色は
rpc-014 / 1,800yen(tax in)
10.18 IN STORES
★amazonで購入する
Live info.
10.14(sat) 下北沢CLUB Que
CLUB Que12th ANNIVERSARY EVENT“SEACH TWELVE CONSTELLATIONS”
「VIVA SAY YOUNG! 〜謎の黒幕現る!!」
Lucky13セカンドミニアルバム『カラスの色は』発売記念ツアーColor of カラース
10.29(sun) 渋谷La.mama
『“昼下がりのグランドピアノ編”』
OPEN11:30 / START12:00
Adv / Door 1,800yen(Drink代別)
※渋谷タワーレコードにて『カラスの色は』お買い上げの方に特典として御招待券が付きます。(Drink代別)
11.18(sat) 下北沢CLUB Que
“ツアーファイナルフルカラーワンマン編”
OPEN19:00 / START19:30
Adv 2,000yen / Door 2,500yen(Drink代別)