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BRAZILIANSIZE×wash? ('06年9月号)

BRAZILIANSIZE×wash?

4106×奥村 大
スプリット・アルバム『THEY'RE NERD #2』発売記念対談


堅い絆で結ばれた盟友バンドによる会心のスプリット・アルバム

taeとのスプリット・アルバム『THEY'RE NERD #1』に続くBRAZILIANSIZEの“おたく(NERD)同志”コラボレーション企画第2弾、お相手は一卵性双生児的盟友・wash?である。昨年から今年にかけて2度の合同ツアーを行ない、公私にわたって良好な関係を保ち堅い絆で結ばれた両者が心腹の友だからこそ本気汁120%で臨んだタイマン・スプリット、その内容が悪いわけがない。両者共に今秋発表されるニュー・アルバムの確かな感触が窺える新曲3曲ずつに互いのカヴァー1曲ずつを加えた全8曲、単なる企画盤の域に留まらない高いクオリティと濃度の高いALCOHOLISMを誇ったトータル30分強の充実作だ。かつて同じバンドのメンバーとして蜜月を過ごした4106(BRAZILIANSIZE)と奥村大(wash?)の両雄に存分に語り倒してもらった。(interview:椎名宗之)

「CYDER」でちゃんと茶化してくれたのが凄く嬉しかった(奥村)

――まず、この『THEY'RE NERD』というスプリット・アルバムを継続的に出そうとした経緯を4106さんにお伺いしたいのですが。第1弾のカップリングはtaeでしたね。

4106:wash?とtaeのどっちを先にしたかったというのもなく、単純に一発目が大ちゃんだと照れ臭かったんですよね(笑)。箱ブッキングで対バンが4つ以上とかのライヴをやっていると、もっと少ない数で長い時間やりたくなるんですよ。そんな話をtaeのメンバーとしていて、彼らと2マンをやることになり、その記念に会場限定販売のCD-Rを一緒に作ろうと。でも、どうせ作るならちゃんとしたものにしたいと僕が言って、こんな形になったわけです。

――“NERD”(ナード)は“変わり者”とか、そんな意味のスラングですよね。

4106:“おたく”っていう意味ですね。“ヤツらはおたく”っていう(笑)。

奥村:俺達も自他共に認めるおたくだからね(笑)。特に俺と南波(政人)は音楽がなかったらまともに社会と向き合えないから。

4106:ここで言う“おたく”っていうのは、“自分が内に秘めた好きなもの”という意味なんです。いろんな人が「イイね!」って言ってくれなくてもいい、「俺が好きなんだからイイじゃん!」っていう“おたく”感なんですよ。いわゆるA系の“おたく”じゃなくて、もっと開かれた感じなんですよね。

――しかも、TOWER RECORDとHMVの500枚限定発売という入手困難なアイテムでもあり。

奥村:そういうところも“おたく”心をくすぐるわけだね(笑)。

――4106さんと奥村さんはかつてTrophyというバンドを組んでいた盟友でもあるし、いつかはこんなスプリット・アルバムが発表されるんじゃないかという期待がファンにはずっとあったと思いますが。

奥村:4106とは“腐れ縁”という言葉が一番ピッタリくるよね。こういう作品を出せたきっかけとしては、去年ブラサイと一緒に廻ったツアーがやっぱり大きかったと思う。

4106:ドラム談義から始まってね。

奥村:ドラムの趣味は似てるよね。ロックでもパンクでも、基本的にドラムが主張する強い音楽がお互い好きだし。技でニヤリというタイプよりも、大鉈でドーンと振り上げるようなその人独特のノリがあるほうがいい。

――今回の収録曲は、両者共にアルバムの制作と並行して作られたものですよね。

奥村:最初はお互い2曲ずつで、っていう話だったんだよ。それがある日「やっぱり3曲ずつでやろうよ」って4106に言われて、じゃあ3曲目はお互いのカヴァー曲にしようと俺が提案して。それがどういうわけかプラス1曲としてカウントされて、結果的には4曲ずつになったんだよね(笑)。wash?としてはこのスプリット用に2曲(「シンクロ」「三羽の小鳥」)書き下ろして。このスプリットには希望の歌を入れたかったし、俺にしては相当明るい面が出た曲が並んでると思う。聴く人が聴けば、それでも暗い曲に思われるかもしれないけどね。

――ただ、「LOSER」はちょっとヘヴィな楽曲ですよね。

奥村:うん。これはどうしても入れたかったから。最初は「スカーレット・ヨハンソン」を入れようかと思ったんだけど、これだけ聴くとバンドが誤解されるかなと思って。同じ誤解されるなら「LOSER」で誤解されたほうがいいし。

――収録曲はいずれもシングル・カット可能な水準だし、単なる企画盤の域に留まらない高いクオリティを誇る仕上がりとなりましたね。一枚の作品として充分すぎるほどの聴き応えがある。

奥村:そうだね。曲になって出てきた形はまるで違うのに、面白いよね。

――アルバムと同時進行となると、その生みの苦しみたるやさぞ難儀だったと思いますが…。

奥村:「スプリットを4曲にしたら、僕らもぶっちゃけ大変なことになってます」ってkansaからチラッと聞いたよ(笑)。ブラサイはスプリット2枚とアルバム1枚の3枚同時進行だったからね。気ィ狂うわ、俺だったら(笑)。10曲を超えた辺りから苦しみ度がグッと上がるからねぇ…。

4106:全部で13〜14曲くらいあったのかな? でも、負担は全部自分だったりするので、勢いで何とかなるかなぁ、と。

――実際のレコーディングでも両者それぞれの曲にゲスト参加しているんですよね。

4106:1曲目の「NEBRASKA」は、その昔大ちゃんがネブラスカ・トースターズっていう裏打ちのバンドをやっていて、裏打ちをやりたいがために僕がこの曲を書き、その裏打ちを大ちゃんに弾いてもらったんですよ。

奥村:俺がスチャッ、スチャッ、スチャッと弾くなんて、ここ数年知り合った人達には想像できないだろうね。元々スカやレゲエは大好きだし、ああいうのを弾くのも実は結構得意分野なんだよ。

――「wash?の曲をカヴァーするなら『CYDER』がいい」と、以前から410?如6さんは仰ってましたよね。

4106:ええ。凄く好きな曲なんですよ。まぁ、kansaの「パズル」っていうのも候補にはあったんですけど(笑)。

奥村:ははは。「CYDER」は最初、ニューオーダーがもうちょっと頭悪くて大きい音に頼っちゃうようなバンドだったら…っていうテーマで作った曲なんだよ(笑)。実際にレコーディングしてみたらイギリス=7、アメリカ=3っていう比率の曲になったんだけど、ブラサイのカヴァーは完全にそれが逆になってるよね。俺の中では90年代初頭の音のイメージだったのに、ブラサイは90年代後半の西海岸の匂いがする感じになった(笑)。だからホント、自分にはない部分を持ってるんだな、って思ったよ。

4106:やってるほうは全然判んないんですけどね。それよりも僕は、大ちゃんに「CYDER」を聴かせるのがとにかく恥ずかしくてしょうがなかったですよ(苦笑)。

奥村:ブラサイの「CYDER」は、リズムが複雑すぎて俺にだって唄えないもん(笑)。でも、ブラサイの懐の深さがよく出てるよね。しっかり音を楽しんで演奏してるし、ちゃんと茶化してくれてるのが何より凄く嬉しかったな。


このスプリットは僕にとって物凄く意味がある(4106)

――一方、wash?によるBRAZILIANSIZEのカヴァーは「ウィーラブブラジリアンサイズベリーマッチ」という一筋縄では行かない合わせ技一本ですね。

奥村:どの曲をやりたいか、バンド内で意見が分かれたんだよね。で、「揺るがざる日々」は歌詞も含めて俺が好きだからメインに据えることにして、他のメンバーが好きな「PRETENCE」と「here」も部分的に採り入れてみた。南波と2人でwash?を始めた最初の頃はダブ・ユニットだったから、その頃の感じをベースにやろうかなと。

4106:リミックスに近いよね。

奥村:そうそう。我ながら笑ったよ。「これ、人力リミックスじゃない?」って(笑)。ブラサイの曲は元々高い次元でアレンジされてるから、改めてアレンジし直すのが難しいんだよ。だったら引っこ抜いて解体したほうがいいなと思って。このカヴァーに限らずだけど、ちゃんといい曲を書いてきてまずブラサイを驚かせたいと思ったんだよね。

――盟友関係にありながらも、馴れ合いによる弛緩みたいなものは一切感じられないし。

4106:ええ。いい意味でプレッシャーは与え合ったと思うし、あと僕としては大ちゃんにBRAZILIANSIZEの曲でギターを弾いて欲しかったんですよ。

奥村:コーラスとちょっとギターを入れる程度のつもりでスタジオに行ったら、「あれも弾いてくれ、これも弾いてくれ」って次々と弾くことが増えていった(笑)。

4106:歪んでないものはほとんど大ちゃんに弾いてもらったのかな?(笑)

奥村:俺達も4106達にコーラスを入れてもらったんだけど、ブラサイから受けた一番の影響はコーラスだと思ってるんだよ。ライヴでのコーラスの重要性、人間の声の力の凄さを改めて気付かせてくれたんだ。だから、そんなことを再認識させてくれた連中の声を山ほど入れてやれ! と思った。

――奥村さんはBRAZILIANSIZEの「WISH」でも印象的なギターを弾いていますね。

4106:「WISH」は大ちゃんとツアーを廻った後に書いた曲なんです。大ちゃんとの今までの出来事を考えながら作った曲だから、絶対にこのスプリットに入れたかったんですよね。そしてこの曲に大ちゃんのギターを入れるっていうのが僕の中で完成形だったんです。だから大ちゃんにも最初から「これを弾いて欲しい」って言わなかったんですよ。

奥村:ああ、なるほどね。

4106:大ちゃんに弾いてもらう前に、まず自分で一回弾いてるんです。で、大ちゃんがスタジオに来た時に「なんか巧く弾けないから、これを弾き直して欲しい」ってお願いして(笑)。「WISH」は、大ちゃんの弾くあのギターがポイントなんですよ。だから僕には珍しく重いタイプの曲だし、このスプリット自体、僕にとって物凄く意味のあるものなんです。「CHOSE」という曲にしても、Trophyを経てBRAZILIANSIZEがあり、wash?があり、僕らは僕らでこの道を選んだ(CHOSE)から…っていう内容の歌詞をちょっとハードな楽曲に乗せてみたわけですよ。

奥村:“ハードな楽曲に乗せて”って、何だその安っぽいディスクジョッキーみたいな言い回し(笑)。

――4106さんと奥村さんの作曲スタイルの違いも、今回改めて浮き彫りになったんじゃないですか?

奥村:そうだね。俺はどんどん煮詰めていって隙間をなくすことばかり考えるタイプなんだけど、4106は締まり切らないタイミングで放置できる程良い塩梅を知っている。俺は人生でも何でもやりすぎちゃう傾向にあるからね(笑)。

4106:ははははは。重いよ、大ちゃん(笑)。僕の場合は、“あ、これなかなかイイんじゃない?”っていうのがたまたまラッキーなことに続いてるだけですよ。いつも半分くらいしか考えないでレコーディングしたりしてますから。

奥村:俺達もブラサイとツアーを廻って以降に作った曲に関しては、スタジオでもいい塩梅のところで途中で投げてみるというか、レコーディングの魔法みたいなものを信じるようになった。テイク数も凄く減ったし…あとはやっぱり、(長谷川)道夫の加入が大きいよね。放っておいても暴走機関車の匂いを放つから、不安にならないで済む。思いっきり甘い曲をやってもちゃんとギザギザしてるし、決して甘さに流されないから。だいぶ自分も楽になれたよ。

4106:だって、最近の大ちゃんはライヴ中に笑顔が出るようになったからね。今までじゃあり得ないよ。

――今秋、同時期に発表される双方のアルバムにも互いに受けた影響が色濃く出ていますか?

奥村:俺達は間違いなくそうだね。本質的な部分は不変だけど、この数年で最も劇的に変わったと思うし、その影響で一番大きいのはブラサイの存在だと思ってるから。俺が提示できるのはしかめっ面みたいなところばかりなんだけど(笑)、他のメンバーがそこを茶化せるようになってきたし。丸になろうと思って丸の中からその丸を見るんじゃなくて、輪っかに片足を引っ掛けてさえいればどんな形になってもいいってそれぞれのメンバーが考えるようになった。バンドってキーホルダーみたいなもので、そこにぶら下がってるカギはどんな形でも大きさでもいい。キーホルダーに繋がってさえいればいい。ただし、絶対にそこから離れちゃダメなんだ。それをwash?でやっと少しだけ実現できたかな、と思う。

4106:みんな小さいところで互いに影響を受け合ってるんだろうけど、見た目とかじゃなくて、もっと精神的なところで俺は影響を受けてるし、今回一緒にやったレコーディングも純粋に楽しかったなぁって言うしかないかな。今度のアルバムは、1曲1曲作るものに対して意味が出てきたと自分では思ってるんです。だからちょっとは知恵が付いちゃってるのかもしれないですね(笑)。

――今回の共同作業を通じて、かつて同じ釜の飯を食べたお2人だからこそ感じる互いの成長というのもあったでしょうね。

4106:もうホントに、考えるのはそればっかりですよ。

奥村:俺もそう。ライバルって言ったらヘンだけど、一番身近にいる仲間達と切磋琢磨してないとウソだと思うし、そういうところがないと面白くないから。このスプリットとアルバムを録り終わった辺りからメンバーの心の矢印がいい方向に向いているので、今はそれを折らないようにしたい。ライヴを観たりアルバムを聴いてくれる人にも、俺達のこのいい流れが伝染するといいよね。



THEY'RE NERD #2

BRAZILIANSIZE/wash?
THEY'RE NERD #2

SPROCKET DISC ZNCA-9003
2,000yen (tax in)
IN STORES NOW


*wash? 3rdアルバム『HOWLING』は9月27日、BRAZILIANSIZE 2ndアルバム『6』は10月4日にそれぞれ発売決定!

Live info.

◇BRAZILIANSIZE
9月14日(木)F.A.D YOKOHAMA
9月18日(月)下北沢440

◇BRAZILIANSIZE with tae SPLIT TOUR
9月26日(火)名古屋アポロシアター
9月28日(木)京都MOJO
9月29日(金)大阪福島2nd Line
9月30日(土)神戸スタークラブ
10月6日(金)渋谷O-Crest

◇wash?
9月18日(月)下北沢440[素wash?]
9月24日(日)本八幡ROUTE14
10月8日(日)MINAMI WHEEL 2006

BRAZILIANSIZE OFFICIAL WEB SITE
http://www.braziliansize.com/

wash? OFFICIAL WEB SITE
http://www.xplasma.com/wash/

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