本番で脚光を浴びてる時が一番楽しい
『大久保佳代子劇団第二回公演「村娘」』が、10月14日より恵比寿エコー劇場にて上演される。『大久保佳代子劇団第一回公演「尼と恥美」』が昨年10月に行われているので、ちょうど1年振りとなる。『尼と恥美』は、1人の尼の半生を描いたコメディで、笑いもありつつ全ての欲を剥き出しにする女性を演じた大久保さんの演技に釘付けになった。
今作『村娘』は、まだ全容を明かすことはできないものの、前作のお話も交え、女優・大久保佳代子に話を伺った。(interview:やまだともこ)
乳首以外は見えてもオッケー
──『大久保佳代子劇団第一回公演「尼と恥美」』を拝見しましたけど、すごく体を張った演技でしたね。
「張ってますよね、ほぼ半裸で出てましたからね。稽古が始まった時に演出家の光浦さんからは、汚さがおもしろいから、もっと太ってもっと汚い体になれって言われたんです。敢えて太ったわけでもなくて、あのまんまなんですけどね(苦笑)」
──光浦さんからは、演出家さんとしていろいろと要望があったんですか?
「いえ、そのぐらい。四十前の女性が肌を露出した時の、汚さと切なさと強欲なのが大事だと」
──そもそも『大久保佳代子劇団』は、どのような経緯で立ち上げたんですか?
「単独ライブも長くやってなかったので、ぼちぼち何かしなきゃいけないなと思ったんです。ただ二人だとリスクも大きいし、劇団にして何人か入れちゃえば良いんじゃないかって。基本光浦さんが台本を書いているんですけど、今は二人のコントを書くよりも1時間半もののストーリーのほうが書きやすいんだと思います」
──『大久保佳代子劇団』は、光浦さんが作・演出、大久保さんが主役でほぼ出ずっぱりですね。
「1時間半ものの舞台で何かやるというのは初めてではないですけど、これだけ出ずっぱりなのはないですね。『明日図鑑』(牧田明宏主宰の劇団)では、“声張れよ!”って客席が言いたくなるような静かな演劇と呼ばれるもので、衣装もほとんど変わらず、こちらはまったく毛色が違いますし」
──『尼と恥美』では、衣装もすごく変わりましたからね。
「着替えがメチャメチャ大変なんですよ」
──ほぼ半裸の状態で衣装替えですか?
「半裸で、乳首以外なら見えてもオッケーという気持ちでやってます。光浦さんは途中あまり出ていないので、服を脱がせてくれたり、初めて私のために甲斐甲斐しくやってくれたんですけど、汗をかいてるから服も脱げないし、袖が通らないってイーッ!! ってキレて…(笑)」
──『尼と恥美』は、光浦さん演じる尼が“私がなぜ尼になったかお話ししましょう”というところからストーリーが始まり、常に自分が脚光を浴びたいと言う業の深さというか、1時間半の中でかなり情報が詰め込まれている感じがありましたね。
「ブスで業が深い。自分が自分がっていう。自分にもなきにしもあらずだと思っています」
──テレビで見る大久保さんの強欲なイメージってあるんですけど、そういう部分が細かく出ている作品でした。
「性欲を含め、欲深いところとか、意外と人を裏切れることができたりとか、めんどくさいと思ったら逃げちゃうところもあります(笑)」
──作と演出は光浦さんですけど、大久保さんからの意向はどのぐらい入っているんですか?
「良いのか悪いのか、書いてきたものの中でなんとかしようと思うので、物理的に無理なことは言いますけど、それ以外はオール受け身です。私のことをよくわかっていて、おもしろくしてくれる風に書いているという信頼がありますから」
──光浦さんの脚本は、お稽古の間にけっこう変わるんですか?
「変わりますね。見て、まどろっこしい部分をカットしたり、説明が足りないと思ったら小屋入り3日前にセリフが増えたこともありました」
──芝居中に、アドリブはどのぐらい入っているんですか?
「稽古場でちょっと膨らませると、それもセリフになっちゃうので、本番でセリフが増えてるかって言ったらほぼ増えてない。芸人さんがたくさん出ているので、芝居芝居してなくてラフな感じはあります」
──舞台を作り込む面白さって感じてますか?
「いや〜、私は作り込むのはそんなに好きじゃない。本番で脚光を浴びてる時が一番楽しい。なんなら本番ばかりやってたいぐらい」
──練習はしたくない?
「それが芸人としてダメなところなんですけどね。光浦さんはこうしようって考えるのが好きだから、脚本を書いているんですよね。私は本番が一番良いな。テレビだと再現Vっていうのがあるんです。台本が出来てて、自分でアレンジするぐらいの幅があって、当日カメラの前に立つっていう、あの仕事が一番好き」
好きな人には見せられない
──前作は、最後に宮崎吐夢さんを筆頭に歌われていた歌まで、1時間半がすごい早さで過ぎていく舞台でしたよ。
「飽きないような1時間半にしたいというのがあって、ダンスとか格闘技が好きだから、そういうシーンがあったり、歌を歌ったり。舞台で歌を歌ったりするのもおもしろいし、格闘シーンは光浦さんがやりたいって言ってやってるんですけど。だって、あの場面であのシーンは関係ないでしょ(笑)? JAE(ジャパンアクションエンタープライズ)の人たちに来てもらって。長くこの世界にいるせいか、ありがたいことに知り合いはいっぱいいるのでやってみました」
──この舞台は次の『村娘』が『大久保佳代子劇団第二回公演』になるんですよね。
「メインで名前を付けてもらってますけど、池谷のぶえさんとか、たんぽぽとか、非常におもしろい方々がたくさん出るので、自分がかすみそうな気がして危機感を感じてます」
──次はどんな感じになりそうなんですか?
「『尼と恥美』よりちょっと人数が増えているんですけど、誰が増えてるかと言うとブスが増えているんです。たんぽぽしかり、池谷さんもどっちかと言ったらおばさんだし、ブスばかりいる村の話。その村をふらっと訪れた一人の若者が事件に巻き込まれていくという。まだ本読みしたばかりですけど、ここに歌を入れようとか、こういうシーンを入れようというのが増えてくると思うので、また前回みたいな感じになるのかなと思います」
──人前で演じて歓声がそのまま跳ね返ってくると、やみつきになるんですか?
「気持ち良いです。でも、舞台は生ものなので、ここで来るぞって思って言ったときに来なかった時の顔には出さない動揺ぶりだとか、来るだろうなと思って来た時の気持ち良さとか、意外に冷静に芝居しながら考えてます。前回で言えば、最初のセーラー服の時点で、くすくすって笑ってくれたら、期待に添えると思いますっていう感じでした」
──セーラー服って抵抗ないですか?
「全くないです。逆に楽しい。大丈夫だったでしょ?」
──だっ…大丈夫だと思います!!
「思ったより大丈夫だなって確認しながら、あと4〜5年は行けると思ってます」
──4〜5年!? そしたら、次の公演も大久保さんの衣装も楽しみですね。
「今のところおとなしい感じですけど。ただ、毎回恒例のイケメンが出るんですけど、イケメンとの絡みのシーンもあるみたいで…」
──イケメンは高橋健一(キングオブコメディ)さん?
「高橋さんではない。(冨森)ジャスティンですよ。イケメンが1人欲しいという時に、“良いハーフがいるんです”って紹介してもらったんですけど、本読みの時、ジャスティンがブスに囲まれて座ってる感じは、“かわいそうに、こんなところに来ちゃって”って思いましたけど(笑)」
──大久保さんって魅力的な女性なのに、“ブス”みたいな扱いをされることに対してはどうなんですか?
「慣れますよ。現場によりますけどね。むやみにブスって言われるとオッ? とは思う。でもこの現場は、それありきの舞台だから。ただ、好きな人ができちゃったりして、この舞台を見に来られたら嫌だなと思います(笑)。親と好きな人には極力見られたくないなというのはありますね。前回、お兄ちゃんが急に来るとか言い始めたから、チケットがホントにないんだよね〜って言って阻止しました。さすがに見せられない」
──今後、ご自分で作・演出を手がける野望は?
「今のところないかな。演出は上に立ってまとめなきゃいけないじゃないですか。二番手か三番手でついていくほうが良いんです。でも、書いてくれたものをウケさせなきゃいけないという責任感は常に持ってますよ」
──では、最後に読者のみなさんにひと言お願いします。
「なかなか今二人で揃ってどうこうがなくて、オアシズワールド的なものがここで一番見れると思うので、ぜひ見に来てもらいたいです」
──前回が即完だったと伺ってますが、次は前回よりも会場が少し大きくなるんですよね?
「そうみたいですね。恵比寿のエコー劇場というところで。調子こいて気持ち大きくしましたけど。公演数も多いから体力を付けないと。最近は駅まで歩くのにヘェヘェ言ってるぐらいですから。前回も、回を重ねる毎にみんながへとへとになって、噛んだりとか段取りミスが最終日に出てきたので、体力付けつつ楽しくやれたらと思ってます」
大久保佳代子劇団第二回公演「村娘」
10月14日(木)〜10月17日(日)恵比寿エコー劇場(渋谷区東3丁目18-2 エコービル)
10月14日(木)18:30開場 / 19:00開演
10月15日(金)18:30開場 / 19:00開演
10月16日(土)13:30開場 / 14:00開演
10月16日(土)17:30開場 / 18:00開演
10月17日(日)13:00開場 / 13:30開演
10月17日(日)17:00開場 / 17:30開演
作・演出:光浦靖子
【出演】大久保佳代子、光浦靖子、高橋健一(キングオブコメディ)、いけだてつや、花輪淳一(ヒラヰトハナワ)、川村エミコ(たんぽぽ)、白鳥久美子(たんぽぽ)、みはる、福田麻衣、冨森ジャスティン/池谷のぶえ、宮崎吐夢
前売 ¥ 4,000 / 当日 ¥4,300(全席自由・整理番号付き)
チケット:イープラス、ローソンチケット発売中
プロダクション人力舎オフィシャルウェブサイト
http://www.p-jinriki.com/