ギター 今月のRooftop

川畑アキラ('10年10月号)

川畑アキラ

家族のために走り続ける親父達に向けた応援歌
『親父殿よ〜ウヤウムイノウタ〜』


 与論島から上京してザ・コブラツイスターズとして活躍し、ソロとなった今、沖縄に拠点を移して活動している川畑アキラが、『親父殿よ〜ウヤウムイノウタ〜』を今年4月にリリースした。バンドで活動していた時と同じく魂の熱さは変わらずに、生きてきた歴史が加味され、リアリティとぬくもりも感じる作品になっている。“ウヤウムイ”とは島の言葉で“親思い”という意味があり、今離れて暮らしている両親に届けたいと思う温かみのある一枚だ。
 9月23日にNaked LOFTで行われた“Naked Loft × OKINAWA LIVE!!「唐船ど〜い」”に出演された川畑アキラ氏を楽屋にて直撃した。余談だが、この日のアンコールでザ・コブラツイスターズの『運命船サラバ号出発』を歌われたのだが、何年経っても色褪せない名曲だった。(interview:やまだともこ)


音楽を制作する場所を変えたかった

──2008年にザ・コブラツイスターズが解散し、その後すぐに活動の拠点を沖縄に移されたんですか?

川畑:同時というか、2008年の2月に解散を発表して移ったのは3月の後半です。ソロ名義でインディーズから出した『忘れたんじゃない思い出さなくなるだけさ』(2008年7月リリース)の制作もあったもんですから、バンドの解散も決まっているのであれば沖縄に住んじゃえって即決で。今は那覇を拠点に活動しています。

──沖縄は地元ではないんですよね?

川畑:生まれも育ちも与論島で実家もあるんですが、東京でも活動をしようと思うと与論島は離島なので出てくるのが大変なんですよ。沖縄は民謡もジャズもロックも盛んですし、移るんだったら沖縄が良いんじゃないかと思っていたんです。

──今は、どれぐらいの頻度で東京と沖縄を行ったり来たりしているんですか?

川畑:『親父殿よ〜ウヤウムイノウタ』を出して以降は、レコード会社から月1で東京に来てほしいと言われているので、そのぐらいで。来たら1週間から10日ぐらいはいます。たまに名古屋とかも行くので、沖縄に住んだとは言え定住している感じでもないかもしれませんが、各地に待ってらっしゃる方もいるので、ちょうど良いのかなと。バンドでやっていた時は、メンバー全員東京に住んでましたけど、1人であれば東京じゃなくても良いんじゃないかと思いますし、一番は音楽を制作する上で場所を変えたかったんです。東京も好きですけど、いつも同じスタジオに行って、アパートに帰って音楽を作るというのを10年以上続けてきたわけです。そういうのも全部変えたいというか、たまには海でも行ってギターを弾きたいと思った事もあります。だから、最初は湘南方面に引っ越そうとかも考えたんですよ。今はバンド時代と熱い部分は変わらないですけど、肩の力が抜けた音楽の部分も出てきたかなと思います。

──そして、『親父殿よ〜ウヤウムイノウタ』が2月に配信でリリース、そして4月にはシングルでリリースされましたけど、今回どうしてこういった曲を作ることになったんですか?

川畑:きっかけは、ザ・コブラツイスターズとして活動していた時に、テイチク・レコードの方から、「ソロ名義でお父さんに向けたコンピレーション・アルバムを出さないか」と言われ、『親父殿よ』という曲で『オヤジパパトーサン』(2007年8月)に参加したんです。昔から、人との繋がりや、島のルーツ、自分のルーツを大切にしようと歌ってきてましたけど、その話を頂いた時になかなか照れて言い出せない親父に対して曲を書こうと思い、曲がゴソっと出てたんです。今回リリースした『親父殿よ〜ウヤウムイノウタ』とは歌詞とアレンジが違うフォークロックっぽいバージョンです。その後、この曲をぜひシングルとして出したいというお話を頂き、せっかく沖縄に住んでいるので、より島の風景も入れて、三線を入れて、ちょっとプライベートな歌詞に変えて、バージョンアップした形で『親父殿よ〜ウヤウムイノウタ』を作ったという経緯です。



父親のことを少しでも考える曲に

──実際川畑さんのお父様をモデルにして書いたんですか?

川畑:『親父殿よ』は、自分の父親がモデルではあったんですけど、働いているお父さんたちに向けてサビの歌詞が出来ていったんです。『親父殿よ〜ウヤウムイノウタ』は、沖縄に住んで実家にも近くなりましたし、父親ともたくさん話をするようになり、父親に対しての近い気持ちが掘り下げられたなと思います。

──男の人と女の人って父親との付き合い方が違うんですよね。なので、女子だったらこうは思わないっていう部分もありましたが、同性から見た“お父さん”がすごく伝わる作品だと思いましたよ。

川畑:ザ・コブラツイスターズ時代から女心はひとつもわかってなかったですからね(笑)。

──この曲を聴いて、お父様はどんな感想でした?

川畑:照れもあるんでしょうけど、「良い曲だね」と言ってましけど、出来上がったポスターを持って島にある居酒屋やショッピングセンターに貼りに行って、すごく喜んでくれているみたいです。

──こういった楽曲を届けることができたというのは、私からしたら一番の親孝行なんじゃないかと思いましたけど。

川畑:この曲を作ったことによって、父親との会話も増えたんですよ。あと、この曲を歌っていることによって、いろんな方のお父さんの話が聞けるというのが良いなと思いました。そうやって、聴いてくれた人がお父さんのことを思い出したり、お父さんについての話をしてくれていたら、それが一番良いんだと思っています。

──歌詞は川畑さんから生まれた言葉ですけど、父親に贈りたいCDだなと思いましたし。

川畑:いろいろなところでライブをやっていると、若い方がCDを購入してくれて、お父さんの名前を一筆入れてもらえませんか? と言われるんです。お父さんに贈りたいって。そういう声を聞くと、嬉しいなと思います。この曲は、家族のために一生懸命走り続けた父親が誇らしくて、人生の勝ち負けなんてひとつの物差しでは測れないというのが、一番強く言いたいところでもあります。

──今、家族の距離って広がってしまってる気がしますけど、改めて見直してみようという思いはあるんですか?

川畑:親は自分のことを一番知っていて、小さい時はどんなだったかを教えてくれる存在なんですよね。だから、世代を繋いでいくという意味でも親と話をすることは大事だと思います。反対に親のことを一番認めてあげられるのは子供達だと思うんです。今、家族愛がなくなっているとは思っていて、僕もアマチュアでライブ活動している時は自分に自信がないというのもありましたけど、親と向き合ってなかったような気はしますし。でも、実は応援してくれていて、すごくありがたいなと思いました。口には出さなかったけれど、親とは強く繋がっているんですよね。



シンプルに表現出来るようになった

──ところで、今作は歌を重視して聴かせるというアレンジになっていると思いましたが。

川畑:歌のメッセージを真っ直ぐ届けたいと思ったんです。

──ストリングスは生ですか?

川畑:はい。自分でアコースティックギターを重ねて、カホンを叩いて、ベースとストリングスは弾いてもらいました。曲の持ってるあったかい感じで歌を歌うというイメージが出来ていたので、全然時間はかからなかったです。今回アレンジをして頂いた金武功さんという方が、縁なのか沖縄出身の方で、今は神奈川県の三浦にプライベートスタジオを持っていて、そこでレコーディングをやらせて頂いたんです。冬の三浦半島に泊まり込みだったので、海に近い旅館に泊まったんですが、料理もうまいし、すごい有名なところなのに、部屋に置かれているテレビもエアコンも100円玉を入れないと動かないタイプのもので(笑)。しかも、いくらか入れておけば連続で使えるわけじゃなくてキッチリ100円で止まっちゃうから、1時間毎に起きて100円入れて夜を過ごしたんですけど、あれはキツかったです(笑)。

──この作品以降も、曲はたくさん出来上がっているんですか?

川畑:沖縄で新曲も書いてますし、ライブで演奏している曲もありますし、来年辺りにはアルバムのリリースを予定しています。『親父殿よ』に負けないぐらいの良い曲が出来上がってますよ。

──新曲は、どんな感じの曲が多いんですか?

川畑:歌と三線、曲によっては歌とアコースティックギターで、バンド時代のようなイケイケの曲もありますし、より島に近い曲もありますし、自分の持ち味は出していこうと思っています。それが今の自分に合う良い音楽であればという感じで、いろいろやってます。

──沖縄で吸収したものは出てきていますか?

川畑:そういったものもありつつ、自分が好きなロックやソウルもありつつ、いきなり打ち込みに行く事はないと思います(笑)。カチッと決めずに、やりたいですね。10月4日にある恵比寿の天窓のライブはアコースティック編成なんですが、12月13日には同じく恵比寿の天窓でバンド編成でワンマンを予定しています。

──最後に、沖縄に活動を移し、音楽を作る上で原点回帰したみたいな感じってあるんですか?

川畑:ザ・コブラツイスターズでもやってましたけど、自分のルーツである与論、沖縄、奄美だったり、音楽が好きでもともと持っていた影響の部分、とにかく歌を歌うということ、自分の声を活かす音楽をやるというところが原点なので、シンプルに立ち返ることができたんじゃないかなと思います。



川畑アキラ
親父殿よ〜ウヤウムイノウタ〜

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ザ・コブラツイスターズ
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川畑アキラ official website
http://1000show.jp/kawabata/

posted by Rooftop at 21:37 | 今月のRooftop